【イベントレポート】

【ツーリズムEXPO 2017】タイ国政府観光庁 副総裁 シースダー・ワナピンヨーサック氏記者会見

2018年はタイの新たな側面を発見・周知する「Open to New Shades of Thailand」

2017年9月23日 実施

タイ国政府観光庁 副総裁 シースダー・ワナピンヨーサック氏が会見を開いた

 タイ国政府観光庁は、ツーリズムEXPOジャパン2017会期中の9月23日、イベントに合わせて来日中の副総裁 シースダー・ワナピンヨーサック氏の記者会見を行なった。

 2016年の全世界のタイへの外国人旅行者は3260万人(前年比9%増)で、5兆3000億円(同13%増)の利益をもたらしたという。日本は最重要視している5つのマーケットの1つで、2016年は144万人(同5%増)がタイを訪れている。2017年は9月21日時点で推定112万人(前年比6%増)と伸長しており、年末までに150万人(同5.86%増)を見込んでいる。収入に換算すると、日本からは2150億円(同11.5%増)の収益を想定しているという。今後のターゲットとしては、中~高所得層でタイ未訪問者、働き始めの若い女性~大学生を考えているとのこと。

 2018年の日本市場では、新潟県、富山県、石川県の北陸エリアに力を入れるとしている。これは、タイ国政府観光庁 東京事務所が管轄する東日本の20県のなかで、タイへの直行便の有無、人口規模、県民のパスポート所有率の高さ、出国率の高さなどを加味して選びだしたもので、具体的には旅行エージェント向けのセミナー・視察旅行、広告出稿、お得な旅行パッケージの提案などを行なう。

2018年は北陸地方に力を入れていく

 そして、2017年11月から2019年1月までを「Amazing Thailand Tourism Year 2018(アメージング・タイランド観光年2018)」とすると説明。

 まず観光客の受け入れ体制について、観光警察(ツーリストポリス)の組織を「部」から「局」へ格上げしたという。観光警察の働きについては関連記事「タイ王国 観光・スポーツ省大臣 コープガーン・ワッタナワラーングーン氏に聞く」でも触れているが、体制が変わったことで予算が増え、警察官の増員や防犯カメラ設置台数の増加などが実現できる、としている。

 UNWTO(国連世界観光機関)の報告では、2020年にアジア・太平洋地区を訪れる旅行者は年間4億1500万人とみられており、うち1割にあたる4150万人がタイへの旅行者と予想している。タイにとっても受け入れ人数の拡大が急務であり、バンコクのスワンナプーム国際空港は2019年までに旅客キャパシティを4500万人から6000万人へ、南部のプーケット国際空港は現状の1250万人を2021年までに1800万人、2022年に2500万へ拡張する計画がある。

 20年近く使用しているコミュニケーションスローガンである「Amazing Thailand」は引き続き継続するとしながらも、新たに「Open to New Shades of Thailand(タイの新たな側面の発見)」というコンセプトを加える。これはタイの持つ多様性を発見し、伝えていくというメッセージを込めており、例えばよく知られた観光スポットであっても、沿革や地域の特性を知ることで新たな一面を明らかにし、観光商品として育てていく。

 バンコク周辺ですでに商品化されているものの一例としては、クルマやBTS(Bangkok Mass Transit System、高架鉄道)での移動になりがちなバンコクを歩いて散策するウォーキングツアーや、トゥクトゥクで屋台を巡るツアー、自転車で王都のあったエリアを回るナイトサイクリングツアーなどがあるとのこと。

2018年、タイはASEAN ツーリズムフォーラム2018の開催国になる
同じく2018年5月には、第4回UNWTO(国連世界観光機関)ガストロノミー・ツーリズムに関する国際会議を予定している
2017年12月にはミシュランガイドブック・バンコクが発売される

 会見後の質疑応答では、まず2018年の目標に質問が及んだ。シースダー・ワナピンヨーサック氏の回答では、2018年の観光収入は前年(2017年)比8%増を見込んでおり、金額にすると700億バーツ(約2380億円、1バーツ=約3.4円換算)規模になるという。

 タイはバンコクなど中央部、チェンマイ、チェンライなどで知られる北部、プーケットなどリゾートエリアの南部はよく知られているが、東北地方(イサーン)はまだ知名度が低い。この点については、日本市場に適した素材を多く抱えていると考えているものの、東北部は非常に広く、伝統的な行事が多く多様性に富んでいるので、引き続き粘り強く紹介していきたいと述べた。

 最後に、本紙記者が参加した東北地方の視察旅行において、スリン県のエレファントビレッジでほかの参加者が興奮した象にケガをさせられるという事故があった。大事には至らなかったが、その対策の進捗について質問したところ、同氏から状況の説明があった。事故後、すぐに対策ワーキンググループが立ち上がり、日本語、中国語、英語で象に対する注意喚起文を作成し、広く展開していくことが決まったという。また、スリンに限らず、象を扱う地域で共通の安全ガイドラインを設け、アクティビティの前には必ずブリーフィングを行なう。象を扱う業者、象使いに対しても啓蒙活動を進めていくと述べた。