【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016

第2回「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞は官民連携の飛騨高山国際誘客協議会が受賞

視覚障がい者向け乗車体験やJALホノルルマラソンなどが優秀賞に

2016年9月22日 開催

「ツーリズムEXPOジャパン2016」では、「2016年度 第2回『ジャパン・ツーリズム・アワード』」の表彰式を9月22日の開会式直後に開催した。アワードは、ツーリズム業界の発展・拡大に貢献し、「ツーリズムEXPOジャパン」とのシナジー効果に寄与、または国内や海外の団体、組織、企業の持続可能で優れた取り組みを表彰するものであり、イベントの機会を通じ「観光立国、日本」の実現を目指す取り組みを国内外に周知・啓発していくことを目的としている。

 アワードは「国内・訪日領域」「海外領域」「UNWTO(国連世界観光機関)部門」の3つのカテゴリーが設けられ、今回は158件の応募があったという(第1回は133件)。

公益社団法人日本観光振興協会 会長 山口範雄氏

 表彰式の冒頭では日本観光振興協会 会長の山口範雄氏が登壇し、臨席者へと、ジャパン・ツーリズム・アワードが第2回を迎えたことへの感謝を述べたあと、「2015年から顕彰事業として『ジャパン・ツーリズム・アワード』を創設しましたが、これは団体、地域を表彰し、広く周知することで、国内外に観光の力を発信するとともに、国民の皆さんにより観光への理解と認識を深めていただくためのものでございます」と、アワードの主旨についてまずは説明。

 2015年に大賞を受賞した「瀬戸内国際芸術祭実行委員会」は受賞に対する地元の反響が大変大きく、関係者から効果が非常に大きかったという話もあり、第2回の2016年度は第1回を上回る総数158件の応募があったことを報告した。

 今回の受賞団体の取り組みの傾向は、2020年に向けてさらに盛り上がるインバウンド、地方の魅力をツーリズム事業を通じて発展する取り組みである地方創生、障がいのある人が旅行をより楽しめる取り組みであるユニバーサル・ツーリズム、そういった特徴があったこと。してそれらに対して、先駆・発展性、持続性、社会性をポイントに審査がなされたことが説明された。

 そして、「これらの取り組みを広く周知することで、国内外の皆さまへ、観光の力というものを発信していきたいと思っております。我が国も国際機関であるUNWTOとの連携を通じて、持続可能な観光に向けて取り組み、名実ともに観光大国・日本の実現を目指していきたいと考えております。皆さま、さらなるご協力をお願いし、皆さまのご健勝をお祈りしております。本日はまことにありがとうございます」と挨拶した。

ツーリズムEXPOジャパン2016特別賞は、フランス観光開発機構と三井不動産が受賞

 まず「ツーリズムEXPOジャパン2016特別賞」にはフランス観光開発機構による「フランスへの日本人旅行需要回復に向けた取り組み」と、三井不動産による「日本橋案内所における地域活性化とインバウンド観光受入拡大について」の2組が選ばれたことがあらためて発表された。

フランスへの日本人旅行需要回復に向けた取り組み

領域:海外領域
部門:ツーリズムビジネス部門
受賞団体名:フランス観光開発機構

 選考ポイントは、「テロに負けない国民の力強さで観光を通じて世界平和の実現を目指す取り組みが、ツーリズムEXPOジャパンの目的の1つである交流による相互理解の事例と判断した」としている。

ツーリズムEXPOジャパン2016特別賞に選ばれた「フランスへの日本人旅行需要回復に向けた取り組み」
日本橋案内所における地域活性化とインバウンド観光受入拡大について

領域:国内・訪日領域
部門:地域マネジメント部門
受賞団体名:三井不動産

 選考ポイントは、「地域デベロッパーが観光案内所を運営することで、外国人に日本文化の理解促進を図る好事例である」としている。

ツーリズムEXPOジャパン2016特別賞に選ばれた「日本橋案内所における地域活性化とインバウンド観光受入拡大について」

UNWTO部門賞はKNT-CTホールディングスが受賞

 続いて「UNWTO部門賞」には、KNT-CTホールディングスが受賞したことが発表された。この賞はUNWTOの世界観光倫理憲章に沿った活動をとおして、責任ある観光産業の発展を目指す企業、団体に贈られるもの。

 選考ポイントは、「世界観光倫理憲章を理解し、広くグループ経営、個々の企業活動に反映させており、『コンプライアンスポリシー』として写真に対しても意義の啓発を行なっている。なかでも長年にわたる教育旅行、ユニバーサルツーリズムに対する取り組みで、顕著な成果を見せている。また、環境保全活動や『まつりインハワイ』に代表される、地域交流事業にも継続的に取り組んでいること」としている。壇上ではKNT-CTホールディングス 代表取締役社長 戸川和良氏へ、UNWTO事務局長タレブ・リファイ氏から賞が贈られた。

UNWTO部門賞はKNT-CTホールディングス株式会社が受賞した
写真左からUNWTO事務局長タレブ・リファイ氏、KNT-CTホールディングス株式会社 代表取締役社長 戸川和良氏、山口氏

領域優秀賞はクラブツーリズム、沖縄観光コンベンションビューロー、JALが受賞

 領域優秀賞は「国内・訪日領域」はクラブツーリズムの「世界初! 視覚障がい者 夢の自動車運転体験ツアーの実現」と沖縄観光コンベンションビューローの「沖縄県 めんそ~れ~沖縄観光学習教材」が、「海外領域」ではJAL(日本航空)の「JALホノルルマラソン 需要創造への取り組み」が受賞した。

世界初! 視覚障がい者 夢の自動車運転体験ツアーの実現

領域:国内・訪日領域
部門:ツーリズムビジネス部門
受賞団体名:クラブツーリズム

 全盲のツアー参加者から出た「1度でいいからクルマの運転をしてみたい」という声に応え、開発に着手。実現のために必要とされる、クルマがぶつかる障害物が少ない広い場所、緊急時のための助手席にブレーキがあるクルマ、協力してくれる施設を探した結果、本田技研工業とツインリンクもてぎ(モビリティランド)の協力を得て、世界初となる視覚障がい者が自動車運転を体験できるプログラムを完成。

 選考ポイントは、「視覚障がい者の夢をかなえた取り組みであり、ユニバーサルツーリズムの発展に大きな一歩となっていること」であり、今後のさらなる拡大にも期待するとしている。壇上では山口氏からクラブツーリズム 代表取締役社長 小山佳延氏、発案者の望月操氏と盲導犬のエースに賞が贈られた。

領域優秀賞に選ばれた「世界初! 視覚障がい者 夢の自動車運転体験ツアーの実現」
写真左から山口氏、クラブツーリズム株式会社 代表取締役社長 小山佳延氏、発案者の望月操氏と盲導犬のエース
沖縄県 めんそ~れ~沖縄観光学習教材

領域:国内・訪日領域
部門:地域マネジメント部門
受賞団体名:沖縄観光コンベンションビューロー

 2003年度~2005年度にかけて実施した沖縄県観光産業人材育成事業において、学校教育の段階から沖縄の歴史、文化、自然などを活かした観光産業に対する理解を深める必要があるとの方向性が示されたことを受け、あらたな教材開発に着手。教材は産官学により、子供目線を意識して作成され、2006年から県内の各小学校での授業で活用されている。

 選考ポイントは、「観光立県沖縄県での将来の観光人材育成プログラムであり、将来を担う子供たちへの観光教育に着眼して、継続的に取り組んでいることを評価した」としている。壇上では山口氏から沖縄観光コンベンションビューロー 会長 平良朝敬氏に賞が贈られた。

領域優秀賞に選ばれた「沖縄県 めんそ~れ~沖縄観光学習教材」
山口氏(左)と一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー 会長 平良朝敬氏(右)
JALホノルルマラソン 需要創造への取り組み

領域:海外領域
部門:プロモーション部門
受賞団体名:日本航空

 2016年で44回目の開催となるJALホノルルマラソンを、1984年度の協賛開始から32年間にわたり、日本人参加者の送客を支援、協賛開始当時は2361人だったが、1万人を超える日本人が参加する大会に成長させた。

 選考ポイントは、「観光のオフシーズンにおけるハワイの観光需要喚起に大きな役割を果たすとともに、圧倒的な持続性を示しており、日本のみならず、ハワイのツーリズム産業への貢献が大きいこと」としている。

領域優秀賞に選ばれた「JALホノルルマラソン 需要創造への取り組み」
山口氏(左)から日本航空株式会社 常務執行役員 二宮秀生氏へ賞が贈られた

2016年度 第2回「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞

 第2回「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞は飛騨高山国際誘客協議会による「官民協働での外国人観光客の誘致・受入」が受賞した。観光振興に注力している飛騨高山国際誘客協議会は、海外からの観光客の誘客を図るための官民共同で組織された団体で、官民が連携して、海外観光展への出展や、周辺地域と連携し、海外の旅行会社、メディアなどへの招請事業を積極的に展開。

 また、外国人観光客の誘客を強化するために、行政と連携して市内に多言語案内板の整備を進め、10言語の散策マップと12言語対応のWebサイトを用意し、無料の公衆無線LANの整備を行なっている。

官民協働での外国人観光客の誘致・受入

領域:国内・訪日領域
部門:地域マネジメント部門
受賞団体名:飛騨高山国際誘客協議会

2016年度 第2回「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞は、飛騨高山国際誘客協議会の「官民協働での外国人観光客の誘致・受入」が受賞した

 この取り組みなどにより、高山市は2015年の外国人観光客、宿泊者数は36万人と、2014年と比べて30%の伸びを見せた。選考ポイントは、「日本の地域におけるインバウンドへの取り組みの先駆的なモデルであり、地道かつ息の長い取り組みが、外国人観光客を集めている。周辺地域も巻き込んだプロモーションで、さらなる拡大が期待できる」としている。

山口氏から飛騨高山国際誘客協議会 会長 堀泰則氏(写真左)と高山市 市長 國島芳明(くにしまみちひろ)氏(写真右)に賞が贈られた

 山口氏から飛騨高山国際誘客協議会 会長 堀泰則氏と高山市 市長 國島芳明(くにしまみちひろ)氏に賞が贈られ、國島芳明氏は「観光客を誘客することは、行政のみならず、民間の皆さん、そして多くの方々と心を一つにして協力しなければならないことが原理・原則です。長年、その思いで務めてきたことが認められたことを大変光栄に、喜びを感じております。

 お越しいただいた方の立場に立っておもてなしをする、ストレスのない観光地を作ることが私たちが気をつけていることです。これからも国内外を問わず、各国各都市からの目標となるような、高山市であり続ける努力をしたいと思いますので、皆さまご指導ご支援いただくこと、よろしくお願いします。これを励みにこれからもがんばります。ありがとうございました」と挨拶した。

国土交通大臣政務官 大野泰正氏

 続いて国土交通大臣政務官 大野泰正氏が来賓を代表して、「企業、団体、多くの皆さまが本アワードに対してご理解を賜り、ご参加いただいたことに感謝を申し上げます。また、受賞された皆さま、本当に今日までのご努力に敬意を表わしたいと思います。

 私もここへきてお話を聞いていて、長年継続した取り組み、素晴らしい取り組みだったと思います。賞に漏れたものも、1つ1つがおもてなしの心であり、多くの方々の笑顔をつくっていることは間違いありません。本日はまことにおめでとうございます」と挨拶。

審査委員長を務める首都大学東京・東京工業大学 特任教授の本保芳明氏

 最後に本アワードの審査委員長を務める、首都大学東京・東京工業大学 特任教授の本保芳明氏が講評を述べた。審査を通して、応募内容からアワードの成長と成功の手応えを感じているとし、飛騨高山国際誘客協議会による取り組みは第1回での部門賞に続いての大賞受賞であり、インバウンドへの取り組みへの一層の充実など、取り組みの質の向上が大変顕著だとした。

 2016年の選定ポイントは、先駆・発展性、持続性、発展性の3点だが、JALホノルルマラソンは、まさにその典型であると評価。観光立国推進における最重要課題である人材育成については、沖縄観光コンベンションビューローが素晴らしいモデルを見せてくたと話した。

 また、UNWTO部門賞を受賞したKNT-CTホールディングスのコンプライアンスポリシーを確立した取り組み、グループ会社のクラブツーリズムによる視覚障がい者向けの乗車体験についても触れ、乗車体験についてはリファイ局長からも「ファンタスティック」という言葉があったと述べた。

 そして、「アワードの審査を通じて感じたのは、観光が企業と地域の大きな運動になりつつあることです。この動きを加速し、強化するとともに、日本が観光立国から観光大国へとステージを上がっていくためには、DMOや教育支援といった取り組みがさらに強化されるよう、このアワードもテーマ性を高めるなど進化していくことを期待しております」と講評を締めくくった。

「ジャパン・ツーリズム・アワード」各部門賞の受賞者(国内・訪日領域)

 そのほかの各部門賞については、下記のとおり。

ツーリズムビジネス部門 部門賞(全9件)

・一般社団法人座間味村ホエールウォッチング協会「ホエールウォッチング」
・エコツアーふくみみ「家族連れで楽しむ石垣島の自然体験ツアー」
・全日本空輸株式会社「Tastes of JAPAN by ANA」
・株式会社日本旅行「『トムソーヤクラブ』による子供だけの自然体験ツアーへの取り組み」
・「燕三条 工場の祭典」実行委員会「燕三条 工場の祭典」
・新潟総踊り祭実行委員会「にいがた総おどり」
・株式会社ジェイティービー「JTBの交流文化事業を象徴する『JTB交流文化賞』」
・日の丸自動車興業株式会社「訪日観光客受入れを視野に入れた2階建てオープンバス『スカイバス』の先駆的運行と新しい都市観光ビジネスの開拓」
・株式会社はとバス「訪日外国人対象、通訳案内士ガイドによる東京および東京近郊の観光バスでの案内」

ツーリズムビジネス部門 奨励賞(全2件)

・株式会社ツアー・ステーション「『祭礼行事』の本質に触れる『着地型観光』と『発地型観光』の2WAYツーリズム」
・鶴雅ホールディング株式会社「鶴雅グループが取り組む『鶴雅観光人材養成講座』事業」

地域マネジメント部門 部門賞(全6件)

・長野―新潟スノーリゾートアライアンス実行委員会「スキー観光客等誘致推進事業」
・NPO法人神岡・町づくりネットワーク「レールマウンテンバイク Gattan Go!!(ガッタンゴー!!)」
・一般社団法人九州観光推進機構「『九州オルレ』の取り組み」
・スタービレッジ阿智誘客促進協議会「『日本一の星空』スタービレッジ阿智の取り組み」
・一般財団法人真庭観光連盟「バイオマスツアー真庭」
・株式会社ちいおりアライアンス「三好市東祖谷落合滞在型観光まちづくり事業」

プロモーション部門 部門賞(全4件)

・公益社団法人和歌山県観光連盟「週末は聖地へ ~時忘れの旅~。」
・株式会社JTBパブリッシング「国内外の人々と旅行者を繋いで32年・通巻5000号達成、旅行情報誌『るるぶ』の地域活性化に関する取り組み」
・株式会社i.JTB「訪日外国人向け宿泊・ツアー予約サイト『JAPANiCAN.com』における地域誘客プロモーション」
・山陰・山陽花めぐり街道協議会「山陰・山陽花めぐり街道」

「ジャパン・ツーリズム・アワード」各部門賞の受賞者(海外領域)

ツーリズムビジネス部門 部門賞(全4件)

・KNT-CTホールディングス株式会社「『まつりインハワイ』の取り組み」
・株式会社日本旅行「ジャパンウィークによる国際交流人口拡大の取り組み」
・株式会社JTBコーポーレートセールス(新宿第五事業部 国際協力事業推進チーム)「国際協力支援事業における援助国への観光地域づくり支援」
・ルワンダ開発局「ルワンダにおけるマウンテンゴリラ保護活動及び地域振興事業」

プロモーション部門 部門賞(全3件)

・南部アフリカ地域観光機構(RETOSA:Reginal Tourism Organization for Southern Africa)「日本人観光客誘致に向けた南部アフリカ15カ国の取り組み」
・ニュージーランド政府観光局「100% Pure New Zealand」
・台湾観光局「鉄道をキーワードとした日本と台湾の双方向交流拡大に向けた取り組み」