【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016

夜の東京・日本橋を盛り上げたツーリズムEXPOジャパン2016の「JAPAN“Smile”Bridge」

江戸火消しの梯乗り、鹿沼彫刻屋台、秋田竿燈まつりなどでにぎわう

2016年9月22日~25日 開催

東京・中央区日本橋の中央通り、日本橋交差点から北詰交差点までパレードが開催される

 ツーリズムEXPOジャパン2016の初日となる9月22日、東京・中央区の日本橋を会場として日本各地の祭や地域の名産品など、日本を魅力を国内外に紹介する「JAPAN NIGHT」が開催された。本稿では、19時より中央通りで行なわれたパレード「Japan“Smile”Bridge」の模様をお伝えする。

「Japan“Smile”Bridge」は19時~21時の間、中央通りの日本橋交差点から北詰交差点までを封鎖してパレードのルートを設置。日本橋の手前に特設ステージが作られ、観客からはステージの奥にちょうど、高速道路に付けられた「日本橋」の銘板が望めるような配置になっている。

 オープニングプログラムでは、特設ステージに東京都中央区長の矢田美英氏、日本橋旦那衆、江戸消防記念会の火消組が登壇。矢田区長は、「魅力に富んだ、きらびやかな日本橋ができつつある。中央区は、日本橋だけではなく、銀座や築地、人形町など素晴らしい場所がたくさんあり、毎日、中央区に行けばなにかをやっているというイベントの街にしよう、大いに楽しめる街にしようと、区議会や地域の皆さんが力を合わせている。4年後にはオリンピック、パラリンピックが中央区を中心に開催される。日本一の街を目指す東京、その牽引役を果たしていきたい」と挨拶した。

 続いて、名橋「日本橋」保存会 会長の中村胤夫氏が、「保存会は、日本橋に青空を取り戻すため、地域と一丸になってがんばっている。今晩、この催しが華やかに行なわれ、にぎやかな街をもう一度再現しよう」と開会宣言をした。

特設ステージは、日本橋の手前に作られた
中央区長の矢田美英氏が「中央区をイベントの街にしようとがんばっている」と挨拶
開会宣言をする名橋「日本橋」保存会 会長の中村胤夫氏

日本橋 伝統ステージ

 最初の演目は、江戸消防記念会45名による「江戸火消し」の木遣り(きやり)、纏振り(まといふり)、梯乗り(はしごのり)のパフォーマンス。江戸時代に消防団として誕生した火消しは、現代では伝統芸能として受け継がれている。当日は雨天のため纏振りと梯乗りの中止がアナウンスされていたが、「JAPAN“Smile”Bridge」開会時は小雨がたまにぱらつく程度だったということもあり、当初の予定通り、纏振りと梯乗りも披露された。

 高さ約2.4m、重さ約20kgある纏を高らかに振り回す「纏振り」。2本の纏が天を衝くたびに、48本のばれんがひらひらと舞い踊る。「納め」の合図で纏振りが終了し、梯乗りとなった。

 長さ6.5mの梯子は、2.5m(8尺)4本、1.8m(6尺)8本の長鈎(ながかぎ)で支えられる。梯子の上で“乗り子”が披露する技は、現在、48種類伝承されている。「一本遠見」「一本邯鄲(かんたん)」「肝つぶし」「膝留」と技を披露したあと乗り子が替わり、「二本遠見」「枕邯鄲」「藤下り」「麻の葉」「象鼻」「腕溜め」「吹流し」と、最後は力業の連続で観客を楽しませた。

 演目の最後は「木遣り」。木遣りはもともと、鳶職人たちを一つにまとめるための掛け声、合図として唄われたもの。ゆったりと流れる木遣りの唄で、休日の静かな日本橋は厳かな空気に包まれた。

江戸消防記念会45名による「江戸火消し」のパフォーマンス。纏を高らかに振り回す「纏振り」
当初、雨天のため中止が告知されていた梯乗りも披露された
長さ6.5mの梯子を12本の長鈎で支え、乗り子が梯子を登っていく
「一本遠見」
「一本邯鄲(かんたん)」
「肝つぶし」
「膝留」
「二本遠見」
「枕邯鄲」
「藤下り」
「麻の葉」
「象鼻」
「腕溜め」
「吹流し」
「江戸火消し」のパフォーマンスに目が釘付けの観客
演目の最後はご祝儀の「木遣り」を披露

鹿沼秋まつり「鹿沼彫刻屋台」

 栃木県鹿沼市にある今宮神社祭の屋台行事「鹿沼秋まつり」から、彫刻屋台が登場。全面が荘厳な彫刻によって飾られている歴史ある屋台の運行は都内初となる。鹿沼市で27台ある彫刻屋台から、重厚で伝統のある下田町の彫刻屋台がパレードに参加した。下田町彫刻屋台は、1862年に制作された白木造彫刻屋台。全屋台のなかで箱棟の高さが最も高く(4.29m)、台輪が最も低いため、彫刻の占める面積が広いのが特徴。

 栃木県知事の福田富一氏が登壇し、「今日は、栃木県鹿沼市が世界に誇る“鹿沼秋まつり”を、ここ東京・日本橋で再現します」と挨拶した。パレード開始の号令は、鹿沼市長の佐藤信氏。元気よく「日本橋に向かって出発するぞ!」と合図し、パレードが始まった。

 鹿沼いまみや付け祭り保存会による「鹿沼秋まつり」は、下田町彫刻屋台と、囃子方5団体が出演し、彫刻屋台を引き回すとともに、てこ回しによる方向転換(キリン)、屋台囃子の競演(ぶっつけ)を披露した。てこ棒により、大きな彫刻屋台が傾き、その後グルグルと回る様は圧巻。観客も大いに盛り上がった。

栃木県知事の福田富一氏が「今日は“鹿沼秋まつり”を日本橋で再現します」と挨拶
鹿沼市長の佐藤信氏が元気よくパレード開始の合図をする
特設ステージても屋台囃子が披露された
下田町の彫刻屋台がパレード。下田町彫刻屋台は1862年に制作され、彫師は日光東照宮造営の流れをくみ2代目石塚直吉を名乗った石塚吉明
てこ棒が差し込まれ、巨大な彫刻屋台が大きく傾く
グルグル回る彫刻屋台に、パレード参加者も観客も来賓も大いに盛り上がる

人力車パレード

 日本橋交差点には、来賓、主催者を乗せた人力車が登場。人力車は列をなし、ゆっくりと特設ステージ向けてパレードをする。4台の人力車に乗っているのは、JNTO(日本政府観光局)理事長 松山良一氏と「柴犬まる」、日本観光振興協会 会長 山口範雄氏、JATA(日本旅行業協会) 会長 田川博己氏、観光庁長官 田村明比古氏。特設ステージに到着すると、それぞれ人力車を降り、そのまま登壇しての挨拶となった。

 主催者のJATA会長 田川博己氏は、「我々ツーリズム業界は、観光で日本をよくしようと活動している。旅を通じて、人生を、世界を変えてほしい」と挨拶した。

 柴犬まると一緒に登場したJNTO理事長 松山良一氏は、「訪日外国人観光客(インバウンド)の傾向が、団体から個人に移行している。個人だと、FacebookやInstagramといったSNSでの口コミが大きな影響力を持つ。我々も多くをフォローしているなかで、柴犬まるちゃんと縁があり、一緒に登場した」と同乗の理由を語った。

 人力車は初体験だったという日本観光振興協会 会長 山口範雄氏は「この4日間(一般公開は2日間)で、18万人がツーリズムEXPOジャパンに来場する。国内旅行、海外旅行、海外から日本へ訪れる旅行の3つについて、あらゆることが展示される」とツーリズムEXPOジャパン2016を、日本橋に集まる多くの観客にアピールした。

来賓、主催者を乗せた人力車がパレードに登場
JNTO(日本政府観光局)理事長 松山良一氏と「柴犬まる」
日本観光振興協会 会長 山口範雄氏
JATA(日本旅行業協会) 会長 田川博己氏
国土交通省 観光庁長官 田村明比古氏
JATA会長 田川博己氏は「旅を通じて、人生を、世界を変えてほしい」と挨拶した

ブラジル×日本 コラボレーションステージ

 続いては、にぎやかで華やかなプログラム。ブラジル北東部サルバドールのサンバヘギを演奏する女性パフォーマンスバンド「Banda Girassol」と、日本の女性和太鼓「白梅太鼓」とのコラボレーションだ。南米の明るく陽気なリズムと、和太鼓の力強いリズム。どちらも打楽器で、女性だけのグループというのが面白い。

ブラジル北東部サルバドールのサンバヘギを演奏する女性パフォーマンスバンド「Banda Girassol」。Girassolとは、ひまわりという意味
海外でも広く活動をしている日本の女性和太鼓「白梅太鼓」

秋田「竿燈まつり」

秋田「竿燈まつり」の挨拶をする秋田市竿燈会会長 藤原賢一氏

 270年以上の歴史を持ち、国の重要無形民俗文化財に指定されている、秋田「竿燈まつり」。竿燈は、46個の提灯を吊るし、力4分・技6分といわれる絶妙なバランスで支える。大若と呼ばれる竿燈は、長さ12m、重さが50kgにも及び、それを手のひらや額、肩、腰などに移し替えるのが見どころ。

 継ぎ竹を増やして徐々に高さを上げると竿燈が大きく湾曲し、それをバランスよく支える技は、スリリングで迫力がある。開始にあたり秋田市竿燈会会長 藤原賢一氏は、「今日は、よりすぐりの名人が、最高の竿燈妙技を披露する」と挨拶した。

竿燈は、長さ12m、重さが50kgの大若。46個の提灯を吊るす
両手を大きく開いてバランスを取る技の「額」。指の間から静かにずらしながら額に乗せる
かなりの修練が必要な技「腰」。「肩」は差しやすく、もっとも覚えやすい技
継ぎ竹を増やし、徐々に高さを上げていく
提灯が夜の日本橋の空を照らして、幻想的なイメージを醸し出す
竿燈が大きく湾曲し、まさに実った稲穂のよう。それを難しい「腰」で支えバランスを取る様子に、観客から拍手がわき起こった

熊本「牛深ハイヤ踊り」 with くまモン

「JAPAN“Smile”Bridge」もいよいよクライマックスとなった。パレードのトリを飾るのは、熊本県の牛深ハイヤ保存会による「牛深ハイヤ踊り」。

「牛深ハイヤ踊り」の“ハイヤ”とは、帆船に欠かせない「南風」が語源。南風のことを牛深(熊本県天草市)地方の方言で「ハエ風」という。南風で嵐が起こり、漁ができない漁師たちが休みの間に宴に出て、唄った民謡に踊りが加わってできたのが「牛深ハイヤ踊り」といわれ、この踊りが船に乗り、航路と一緒に北上して、「阿波踊り」や「佐渡おけさ」に変化していったといわれている。牛深ハイヤ踊りは、地区住民の9割以上が踊ることができる地元に愛される伝統文化だという。

 牛深ハイヤ踊りのパレードでは、先頭でくまモンが手を振り、パレードを縦横無尽に駆けまわっている。また、後方には、九州・東北のご当地キャラクターたちが練り歩く。東北からは、青森県の「いくべぇ」、岩手県の「そばっち」「うにっち」のわんこきょうだい、秋田県の「んだッチ」、山形県の「きてけろくん」、福島県の「キビタン」。九州からは、佐賀県の「壺侍」、長崎県の「がんばくん」、鹿児島県の「薩摩剣士隼人」が参加。

 パレードが終了すると、パフォーマンスを披露したすべての参加者が登場。参加者と観客の全員で「笑顔を世界へ!」と唱和し、大盛況のうちに幕を閉じた。

パレードの最後を飾るのは「牛深ハイヤ踊り」。先頭では、人気キャラクター「くまモン」が縦横無尽に駆けまわっていた
パレードの後方には、九州・東北のご当地キャラクターたちが歩道の観客に手を振る
会場全員で「笑顔を世界へ!」と叫ぶと、ステージのモニターに花火が上がった