【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016
グローバル観光フォーラム開催、旅行業界の課題と次のステージについて議論
2016年9月24日 09:57
- 2016年9月22日~25日 開催
JATA(日本旅行業協会)と日観振(日本観光振興協会)が主催する世界最大級の旅イベント「ツーリズムEXPOジャパン2016」が9月22日に開幕。同日午後、「輝き続ける日本、そして世界‐インバウンド4000万人時代の交流大国を目指して」というテーマで「グローバル観光フォーラム」が開催された。
冒頭、観光庁長官 田村明比古氏が来賓として挨拶。2015年の世界全体の国際観光客数は、前年より5000万人増の11億8000万人を記録し、なかでもアジア太平洋が著しい成長を見せていることに触れた。また、持続可能なグローバル・ツーリズムの成長には、国境を越えたさらなる連携や相互理解が求められており、いかに調和のとれた開発を進めるかが、世界全体の共通課題となっていると述べた。
責任ある持続可能な業界と、よりよい世界を構築するために
「2020年のオリンピックで、世界中が東京に目を向ける。日本は国際的なリーダーになる大きなチャンスだ。」と話し始めたのは、UNWTO(国連世界観光機関)事務局長のタレブ・リファイ氏。
当初、2020年までに2000万人に届けばよいとされていた訪日外国人旅行者数はすでに達成。日本政府が4000万人を目指そうとしていることや、ほかの地域では見られない大きな成長は大変喜ばしいこととしたうえで、成長と共に生まれる責任について指摘した。そして、あらゆることをいかに容易にするかが重要として4つのテーマを掲げた。
人々の考え方を土台から変える
例えば、ホテルを建てる際には、設計の段階からあらゆる人がアクセスしやすいように考えなければいけない。土台の考え方が変われば残りは簡単だ。
誰でもなんらかの障害をもっていると理解する
健常者と障害者を線引きすることはできない。歩行が困難な人もいれば、食べ物のアレルギーがある人だっている。あらゆる人が旅を楽しめるように考えなければならない。
技術を味方につけて、あらゆる人が観光を享受できるようにする
人々に情報を提供することが大切。テクノロジーはまだ十分に活用されていない。
全体にアクセシビリティを浸透させる
空港に着陸したときからそこを去るときまで、あらゆるサービスをチェーンとしてつなげていく必要がある。そのなかで一つでも弱いものがあれば、すべてが崩壊してしまう。全体を通じてアクセシビリティを浸透させるべきだ。
この業界にはさまざまな分野があるが、すべてに共通して重要なのが「よりよい世界を構築する」という意識だという。リファイ氏は繰り返し「人々のよりよい生活を、よりよい未来を、社会全体をもっと野心的に考えるべきだ」と述べた。
何年先に訪れる人にも、同じものを残せるように
WTTC(世界ツーリズム協議会)理事長 デイビッド・スコースィル氏は、「安全」に重きをおいて話し始めた。「旅行客を対象にしたテロが増えている現在、『旅行の自由』というものが脅威にさらされている。私たちは、国境の安全と同時に、いかに旅行客を確保するかを考えなければいけない。そして現在、世界の象徴的な観光地こそが保護を必要としており、私たちは共に協力し合うことによって、何年先に訪れる人々にも同じものを残せるよう考えるべきだと」述べた。
また、世界中で事件や混乱が起きていることを軽く捉えてはいけないが、人々の旅行意欲は衰えてはおらず、この業界の伸びは政府がどう対応するかが重要になってきているとして、下記のテーマを掲げた。
業界の人材育成
さまざまなスキル、さまざまな言語の教育が必要。
大都市の宿泊施設不足を改善
訪日外国人旅行者数が増加する一方、宿泊施設が不足しているのが現状。いにしえのおもてなしどころを増やし、Airbnb等のシェアリングエコノミーを支援する姿勢も重要。
空港の拡張
すべての空港にいえることだが、特に羽田・成田はターミナルの拡張が必要。
観光客を地方に誘致
大都市を離れ、地方に観光客を誘致する仕組み作り。
これらの目標は日本に限ったことではないが、世界で協力してテロに対応し、観光業界を盛り上げていく必要があると述べた。
「ツーリズムと航空業界はシナジーを求めるべきであり、それによってさらに成長できるはずだ」こう述べるのは、エティハド航空 副社長(国際・広報担当)のヴィジャイ・プーヌーサミー氏。続けて、航空業界というのはツーリズムを促進する役割を担っており、この部門は経済の発展に貢献することができ、持続可能性を保持することができると確信しているとした。
フランス観光開発機構のクリスチャン・マンテイ氏は、日本が2020年までに訪日外国人旅行者数4000万人を達成するために、プロの教育をどうするか、ホテルをどうするか、観光大国になるための戦略を考え、持続的な成長を続けていくことが必要だとした。
JATA会長でWTTC副会長の田川博己氏は、インバウンドの伸びには偏りがあると指摘。日本を訪れる外国人の84%がアジアからで、そのなかでも中国・韓国・香港・台湾に偏っているという。これを世界に拡大していくことが今後の課題とした。また、日本から海外へ出国するのは関東圏ばかりで、もっと日本全体が海外に出ていかないと観光大国にはなれないのではないかと述べた。
首都大学東京東京工業大学 特任教授 本保芳明氏は、危機管理の話が中心となった今回の議論では、「責任」という感覚が非常に重要であると感じ、これが基本になければ、持続可能な観光にはならないとまとめた。