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日本郵船、新造レストランシップ「AMANE(海音)」発表。船首に個室、着席90名の3デッキ構成で曽我社長「東京湾という世界屈指の景観が舞台」

2026年7月6日 実施
2027年春からの就航を予定しているクルーズ船「AMANE」

 日本郵船は7月6日、日本郵船ビル(東京都千代田区)において「東京湾クルーズ船事業プロジェクト発表会」を実施した。

 日本郵船グループが運営しているレストランシップの更新を目指すもので、天王洲アイルを拠点とするレストランシップ「LADY CRYSTAL(レディ クリスタル)」の後継船を建造。同時に環境技術の推進や国産食材の活用による地方創生への貢献など、同社が取り組む挑戦を上質なクルーズ体験とともに感じられることを目指す。「AMANE(海音)」と名付けられた新たなクルーズ船は、2027年春からの就航を予定している。

 新たに建造するAMANEは、500トンクラスのレストランシップ。約90名の着席定員となる船内は3デッキ構造で、1階はメインダイニングや厨房、2階は個室や個室利用者専用の船首デッキ、後方にバーラウンジが備わる。ブリッジのある3階は後方がオープンエアのフライングデッキになる。

外観。船首に個室がある特徴的なレイアウトを採用
上方から。最上階にはフライングデッキを配置。最前部は操舵室、なかほどにドリンクの提供を行なうサービスカウンターがある。詳しい説明はされなかったが一般的な船にある「ファンネル(煙突)」が見当たらないのもデザイン上の特徴といえる
桟橋に停泊中のイメージ。桟橋もライトアップする
ガラス張りの個室が見える

 船内で提供する食事は、かつて同社客船で提供していたフランス料理の伝統を受け継ぎ、レディ クリスタルの総料理長を務める羽山賢二氏が考案した、日本各地の旬の魅力を表現したフレンチのコース料理を用意する。

 特徴的なのはディーゼルエンジンに加えて水素燃料電池システムを利用したハイブリッド推進システムを採用していることで、従来船に比べ振動や騒音、排気ガス臭を大幅に低減することで快適な線内空間を実現する。このシステムはヤンマーパワーソリューションが設計したもので、トヨタ自動車製の水素貯蔵モジュールから供給された水素を水素燃料電池発電システムで発電、バッテリーを介してモーターで駆動するというもの。燃料となる水素はENEOSが供給を行なう。

 プロジェクトコンサルティングは株式会社タイソンズアンドカンパニー 代表取締役社長 寺田心平氏が参画するほか、トータルデザインは株式会社ワンダーウォール 代表 片山正通氏が手掛ける。建造は前畑造船株式会社(長崎県佐世保市)。

発表会に登壇した日本郵船株式会社 代表取締役社長 曽我貴也氏(中央)、株式会社ワンダーウォール 代表 片山正通氏(右)、株式会社タイソンズアンドカンパニー 代表取締役社長 寺田心平氏(左)

AMANE(海音)

全長: 約48m
全幅: 約9.5m
喫水: 約2.1m
総トン数: 約480トン
定員: 約90名(着席時)

上質な船上空間とこだわりのコース料理を通じて新たな東京湾クルーズの体験価値を提供

 発表会冒頭で壇上に立った日本郵船 代表取締役社長の曽我貴也氏は「1885年の創業以来、海洋国家である日本の歴史とともに歩んできた私たち日本郵船は2025年、昨年の10月に創業140周年を迎えることができました」と前置きしつつ、「現在グループ全体で912隻の船舶を運航し、売上高では2.4兆円、グローバルで約4万人の従業員が働いております」と紹介。

 クルーズ船事業に関しては、「戦前より豪華客船を運行し、人や文化を結ぶ海上交通を担ってまいりました。戦後には一度、客船事業から離れた時期もありましたが、1991年には飛鳥クルーズの誕生により客船事業復活させ、現在の『飛鳥II』、そして2025年就航の『飛鳥III』へと、その歴史とおもてなしの精神を受け継いでおります」と述べた。

日本郵船株式会社 代表取締役社長 曽我貴也氏
日本郵船会社概要

 東京湾で行なっているクルーズ船事業については、東京・天王洲アイルを拠点にレストラン船として運航しているレディ クリスタルが36年間の役目を終え2026年11月末に引退することから、新たな船を就航し新しいサービスを提供すると発表。「これまで培ってきたおもてなしの精神を継承しながら、東京湾という世界屈指の景観を最大限に活かし、上質な船上空間とこだわりのコース料理を通じて、新たな東京湾クルーズの体験価値をご提供いたします」とコメントした。

 運航ルートはレディ クリスタルと同様に天王洲アイルの専用桟橋を発着拠点としつつ、当日の気象や他船の運行状況などを踏まえ安全に配慮したうえで柔軟に設定するという。「毎回少しずつ異なる表情の東京湾をお楽しみいただけることも本船ならではの魅力の1つであります。クルーズではレインボーブリッジを間近に臨み、その下をくぐり抜ける迫力ある景色や羽田空港を離着陸する航空機、大井ふ頭に並ぶコンテナターミナルなど、陸上からはなかなか見ることのできない東京ならではの風景をご覧いただきます。東京湾という世界屈指の景観を舞台に、船だからこそ出会える景色とともに特別なひとときをお届けしたいと考えております」

新たなクルーズ船が誕生
スペック
運航ルート

 また、クルーズの提供のみにとどまらず、この船を「日本郵船の新たな挑戦や価値観を社会へ発信する拠点」とするため「新たな客船文化の創造」「国産食材へのこだわり」「環境配慮への取り組み」の3つのポイントを設定。おもてなし、食、環境という3つの価値を通じて「日本郵船が目指す未来や新たな挑戦を体感いただける船」として、「ご乗船そのものが日本郵船という会社をより深く知っていただくきっかけ」になればと考えていると述べた。

新たな挑戦や価値観を社会へ発信する拠点としても期待

 最後に、船名については「新たな船と私たちの思いが広くあまねく人々に届くようにという願いを込めています。また、あまね『海の音』という漢字には穏やかな航海、心地よい海の音が響く情景を重ねています。この船で過ごす時間がお客さまにとって心に残るひとときとなることを願い、この名前を選びました」と明かした。

ブランドロゴ。デザインは平林奈緒美氏
船名の由来

 続いてトータルデザインを手がけたワンダーウォール 代表の片山正通氏が登壇。本船のデザインについては「詫び寂びとエスプリ、未来へ。スタイリングを超えて、体験と記憶のデザイン」をテーマとして設定。台東区にある旧岩崎庭園のように日本の伝統的な文化と新しい文化(フレンチを提供するためフランスの文化を意図)を融合し、「きわめてノーマルで30年、40年後も古くならないようなデザイン」を意識したという。

 船内については「初めて船のデザインを体験」することから、一般的には静粛性を重視して船尾に位置する個室を船首にレイアウト。その「わがまま」を実現するために操舵室を2階から3階に変更しており、従来の船とは異なるクルーズが楽しめるようになっている。最後に「レインボーブリッジを通過する思い出深いシーンを想定しながらデザインしたといっても過言ではありません」「私自身もゲストとして遊びに行きたい」と締めくくった。

株式会社ワンダーウォール 代表 片山正通氏
コンセプトは東京湾に浮かぶ邸宅
デザインテーマ
レセプションからメインダイニングへの廊下
メインダイニングは柱のない広々とした空間とすることでレイアウトの変更に対応する。モダンシンプルなデザインとしながら天井に和の雰囲気を加えている
メインダイニングのサービスカウンター
2階のラウンジ。壁面はスライド可能な大きなガラスで構成されている
2部屋用意される6名用個室。窓横のドアからデッキに出入りが可能
12名用の個室。曲面ガラスにより眺望が確保されている。テーブルサイズの変更などレイアウト変更にも対応している
航行中のイメージ
レインボーブリッジを通過するイメージ

 最後にタイソンズアンドカンパニー 代表取締役社長の寺田心平氏がサービスコンセプト、顧客体験について説明。同社は東京をベースに15業態、17店舗を展開する飲食企業で、AMANEについては「東京湾クルーズのフラグシップ、それを作ろう」としたうえで、「小規模でデザイン性が高く、上質で。でも人と人との距離が近いホスピタリティのある。そんなような距離感のシティクルーズ体験」の実現を目指したという。

 そのため、船上での食事にとどまらず「船に乗って食事を楽しみながら過ごす時間」「その前後を含めてすべての時間が1つの物語としてつながるような体験」の提供を目指した。当日は受付であえて用意された紙の乗船チケットを受け取り、乗船時間までラウンジでウェルカムドリンクを楽しみながらひと息。乗船時には桟橋からAMANEを眺めつつ、ドリンクを片手に船内を見学できる時間を設ける。

 個室利用のゲストは、陸上にも専用の個室を用意するとともにバトラーが帯同して船内を見学できるような特別感のある演出も想定。船内での食事はフランス料理をベースに現代的なエッセンスを加味したもの。日本でしか食べられないフレンチを目指して、国産食材を極力使用したコースメニューを準備中。また、シグネチャーディッシュとして「和食の調味料を隠し味にしながら港で発生する“未利用魚”をベースとしたブイヤベース」を提供する予定だという。

「東京湾という舞台で食事や会話を楽しみながら景色を楽しみ、船名のとおり海の音を感じながら、自分らしい過ごし方を見つけてもらうこと、それがAMANEが目指す新しい都会の都会のクルーズ体験です」とコメントした。

株式会社タイソンズアンドカンパニー 代表取締役社長 寺田心平氏
会社概要
クルーズ体験の流れ
食事のコンセプト
食事後は東京湾クルーズが楽しめる