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あの名曲にも登場、「松山行きフェリー」なぜ航路撤退が相次ぐ? 今後はAIVINT・電車延伸に期待
2026年5月27日 13:34
こんなにつらい別れの時が……というフレーズで始まる村下孝蔵さんの「松山行きフェリー」という歌謡曲をご存じだろうか? その船の行先である愛媛県 松山港(松山観光港)はかつて、1日100便近いフェリー・高速船が発着する、瀬戸内海でも有数の一大ターミナルだった。
昭和末期の時刻表を見る限り、広島以外にも関西なら大阪南港・東神戸港、九州なら小倉港・大分港、ほか尾道港・三原港などに航路が伸びている。20年ほど前に建て替える前から、ターミナルビルが堂々とした作りであったのも、うなずける話だ。
しかし、時代の流れとともににぎわいは去り、今や発着する船は広島方面と、沖合いの離島への船が1日数便のみ。2006年の「西瀬戸自動車道」(しまなみ街道)全通によって、広島県・愛媛県が橋でつながったことを差し引いても、フェリーターミナルとしての凋落は急速過ぎる。
瀬戸内海汽船「AIVINT」(5月24日就航)、同「シーパセオ」、石崎汽船「SeaMAX」などの相次ぐ新船就航で、船移動の快適さ・利便性は向上した。しかしなぜ、50万都市・松山の玄関口でもある松山観光港は凋落してしまったのか? 今後の復活の可能性を探るとともに、鉄道延伸による松山観光港の復興の可能性を探ってみよう。
松山観光港は「貨物で稼げない」
今どきのフェリーは、旅客だけでなくトラック・コンテナで貨物を輸送することにより、船会社は安定した収益を得る。ところが、いま就航している各社は、あまり貨物で収益を上げていないようだ。松山観光港の第一の問題は「そもそも貨物輸送に適していない」ことが挙げられる。
「松山港」全体としての貨物取扱量は年間で4.5万TEU程度とそれなりにあるものの、コンテナの無人航送やRORO船の発着は3kmほど南側にある「外港」地区がメインになっており、フェリーはあくまでも旅客輸送がメイン、ここにトラックの積載が加わる状態だという。どうりで、大阪南港や横須賀港などのフェリーターミナルのように、ヘッドに牽引されたコンテナがせわしなく積み込まれて航送される光景を見ないわけだ……。
こういった貨物を集荷しようにも、観光港は高速道路の最寄りインターチェンジ(松山道 松山IC)から10km以上も北に外れた立地にあり、地形の険しさもあって道路事情もよくない。かつ、製紙などの工業が盛んな東予地区は東予港・三島川之江港からのRORO船や「オレンジフェリー」にお任せとあって、わざわざ松山観光港から集荷する必要もなく、トラック輸送もそこまで必要とされているわけがないのが現状だ。
かつ、松山から広島方面はカーフェリーで2時間40分程度。不便な観光港を経由せず、しまなみ海道を走って、運行時間そのものを短縮した方がよい場合もある。また、2025年6月に廃止となった「松山・小倉フェリー」も運航本数の隔日化とともに大きく売上を落としており、トラックも「そのまま遠回りで陸送」に切り替えている。
こういった事情で、松山観光港にフェリーが発着している限り、あまり貨物で稼げない。就航する各社の悩みのタネだ。
あと600m届いていない? どうなる「フェリー接続の鉄道延伸問題」
また、旅客のアクセス面でも“ちょっと惜しい”状況にある。松山市内からのアクセスを担う伊予鉄道 高浜線が、観光港から少し手前の高浜駅で止まっており、バスへの乗り継ぎを要するのだ。
松山市内から高浜駅までは20分少々、520円で到達できるものの、高浜駅から観光港まではバスで約2分、270円。距離にして600mほどなので歩いて行けると思いがちだが、東側にある経ヶ森の山裾が岬のように海まで迫っており、限られた平地を通る道路は歩道すらない。結局、この短距離のためにバスに乗り換えなければならず、アクセスはなかなかめんどうだ。
明治時代に船着場として発展した高浜港へのアクセス路線として、高浜線が開業した経緯があり、戦後の1967年に旅客向けの港として松山観光港が開港(1967年)してからずっと、「観光港が微妙に離れすぎ」問題に悩まされてきた。わずかな距離の延伸プランは事あるごとに蒸し返され、「民間団体の提言」「経済界の要請」などと形を変えていったものの、いまだに実現していない。
なぜ実現しない? 高浜線延伸
一見して簡単に延伸できそうな高浜線の延伸が実現しない理由は「地形」「負担する主体」「航路の衰退」だろう。
2005年に県が実施した調査では、延伸には「高架建設なら49.5億、道路を走行するDMV(デュアルモードビーグル)なら13.8億円」という試算が出ている。伊予鉄は2000年に完成したいまのターミナルビルを管理する「松山観光港ターミナル株式会社」に資本参加したうえで、現在のビルも乗り入れスペースを確保しているが、延伸の課題は「山を削るか、どうにかして道路上を行くか」「誰がこの費用を負担するのか」が、延伸実現の最大の課題だ。
なお、1日1万人に利用される高浜線へ乗り入れるようなDMVの車両は、いまも日本向けに開発できていない。そうなると工費は実質で49.5億円、いまの時期だと倍以上は必要だろう。
伊予鉄も延伸でフェリー利用が便利になることは承知しているものの、この延伸はあまりに短距離過ぎて、そこまでの加算運賃を取れない。松山市でも、限られた土地に100億円単位を注ぎ込んで、山を削るような大規模工事は避けたい。そうこうしているうちに、しまなみ海道の全通とともに、航路衰退も重なってしまい、観光港を発着する船も激減してしまった。
1日100便が発着していた当時なら延伸の大義もあったかもしれないが、半分以下の本数に落ち込み、「関西・九州への玄関口」ではなくなってしまった松山観光港への延伸は、今さら感が漂う。ほかのフェリーターミナルにはなかなかない「鉄道延伸・フェリーターミナルの目の前に乗り入れ」は、なかなか実現しそうにないのが現状だ。
そうなると、松山観光港は「貨物輸送にも不利、旅客のアクセスも微妙」ということになる。さらに、過去の「愛媛阪神フェリー」「関西汽船」「松山小倉フェリー」撤退時にもほとんど手を打たず、代替会社などを探すポートセールスをほとんど展開しなかった松山市の、伝統的な腰の重さも観光港衰退の要因だろう。いわば「延伸を言い出すのが30年遅い」といったところか。
松山市、「鉄道延伸」勉強会を立ち上げ!
それでも、2026年4月には松山市 野志克仁市長が、伊予鉄と共同で、高浜線の延伸に勉強会を立ち上げる意向を示している。段階としては「運行の現状や課題を共有」「実現可能な事業スキームを探る」といった段階ではあるが、延伸へ向けて具体的な動きに発展するかが期待される。
ただ、松山市や伊予鉄は「検討」から先が慎重過ぎるのが伝統でもあり、ほかにも「松山空港への鉄道延伸」(2015年に検討委員会立ち上げ)、砥部方面への鉄道延伸(過去に廃止となった「森松線」の実質的な復活)、JR松山駅の再開発などの案件が乱立しており、そのなかでフェリー航路減少というリスクを持つ、松山観光港への延伸に、どれだけ本気なのか?という課題がある。正直な印象だと、いまの観光港より空港・砥部方面の延伸を優先した方が、まだメリットはありそうな……。
「口だけ延伸計画」ではないのか、半年後に迫る松山市長選向けの打ち上げ花火ではないのか? まず、松山市と伊予鉄の動きを見きわめる必要がありそうだ。





























