ニュース
重文・旧奈良監獄が星野リゾートの手で美術館に。「日常や自由について考える」保存・展示エリアを見てきた
奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート
2026年4月21日 12:43
- 2026年4月27日 開業
星野リゾートは4月27日、重要文化財「旧奈良監獄」を活用した文化施設「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」(奈良県奈良市般若寺町18)を開館する。開館に先立ち、報道向けの内覧会を実施した。
現地でまず目に入るのは、赤レンガの建物そのものだ。旧奈良監獄は1908年に完成した「明治五大監獄」の1つで、その全貌が残る唯一の施設とされる。中央の見張台から舎房が放射状に伸びる「ハヴィランド・システム」や、イギリス積みの赤レンガ壁など、近代監獄建築としての特徴を今に伝えている。1946年から2017年までは奈良少年刑務所として使われ、2017年に重要文化財に指定された。
内覧会では、奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート館長の八十田香枝氏が施設概要を説明した。旧奈良監獄について、明治五大監獄の1つであり、ほぼ全貌が残る貴重な建築だとしたうえで、ここに刻まれた歴史や思いを残すだけでなく、未来につなげていく事業として進めてきたと話した。事業はミュージアムと、6月25日に開業予定の「星のや奈良監獄」(※内覧会時点では非公開)に分かれている。
ミュージアムのコンセプトは「美しき監獄からの問いかけ」。歴史展示にとどまらず、建築、デザイン、アートを通じて監獄という場をひもとき、来館者それぞれが日常や自由について考えるきっかけを作る構成にしたという。
館内は大きく、保存エリアと展示エリアに分かれる。保存エリアの中心になるのは「第三寮」だ。全96室の独居房が並び、ヴォールト状の天井や高い位置に設けられた窓、監視窓付きの木製扉、重い鍵などが残る。建物の成り立ちや意匠を見る場所であると同時に、ここが実際に使われてきた場所だったことも伝わってくる。
展示エリアはA棟、B棟、C棟の3つで構成する。A棟のテーマは「歴史と建築」。奈良監獄の歩みを、日本の行政制度や行刑の歴史とあわせてたどる内容で、設計者の山下啓次郎や、中央看守所から全体を見渡す構造、明治五大監獄の模型などを紹介する。奈良少年刑務所時代についても、高校通信制課程の導入や地域との接点を持っていたことなどが扱われている。
続くB棟では、「規律と暮らし」をテーマに、刑務所のなかで営まれていた日常を見せる。規律、食事、衛生、作業、更生、お金、自由という7つの切り口が用意され、起床から就寝までの生活や、決められた方法で営まれる日々の動きが並ぶ。監獄のなかのルールを説明する展示でありながら、それを見ていくうちに、自分の暮らしや時間の使い方まで引き寄せて考える作りになっている。
このB棟については、アートディレクションを手がけたTSDOの佐藤卓氏の話も印象に残った。佐藤氏は、最初に旧奈良監獄を訪れた際、これほどの建造物がこの状態で残っていること自体に驚いたと振り返る。その一方で、美しい建築でありながら、監獄、刑務所という隔離の場でもあったという対比に強い印象を受けたという。
展示作りでは、自身が長く続けてきた「デザインの解剖」の考え方が生きたと話す。身のまわりにある当たり前のものを一度外側から見つめ直し、言葉や写真、見せ方で再構成していく方法で、特にB棟にその発想が反映されているという。佐藤氏はまた、重要文化財のため建物に手を加えにくく、壁に釘1本打つのにも制約があるなかで展示を組み立てる難しさがあったとも語った。建築自体の力が強いため、展示の内容もそれに負けないものにする必要があったという。
C棟は、かつての医務所を改装したアート展示空間だ。「罪と罰」「時間と命」といったテーマのもと、5組のアーティストによる作品と、受刑者による刑務所アートを展示する。西尾美也氏の「声を縫う」、キュンチョメの「海の中に祈りを溶かす」など、それぞれ質感の異なる作品が並び、建築の静けさとは別の角度からこの場所を見せる。展示の最後には「むすびの部屋」を設け、来館者が感じたことや、誰かに届けたい言葉をカードに記して投函できる「プリズン ポストカード プロジェクト」も実施する。
見学後に立ち寄れるミュージアムカフェとショップも用意する。カフェでは、赤レンガをモチーフにした「レンガカレーパン」や「チーズケーキ 1908」などを提供する。ショップでは、建築をモチーフにしたポストカードや雑貨、アパレルのほか、全国の刑務所作業製品を紹介するギャラリーも併設する。いずれもミュージアム入場者限定の利用になる。
ミュージアムの開館時間は9時から17時までで、最終入館は16時。料金は大人2500円から。公式サイトでは事前予約を推奨している。アクセスは、直通バス「奈良監獄ミュージアム前」下車徒歩1分。近鉄奈良駅から18分、JR奈良駅から25分だ。
このミュージアムは、赤レンガ建築の保存公開に加え、館内では監獄の歴史や暮らし、アート展示を順に見ていく。建物そのものを見るだけでなく、この場所が背負ってきた役割まで含めてたどれる作りになっている。
奈良では今後、同じ旧奈良監獄を活用した「星のや奈良監獄」が6月25日に、明日香村では「星のや飛鳥」が2027年に開業予定だ。




































































