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SL大樹「土津」試乗してきた。温泉にモグラ駅やダム湖、鬼怒川~会津ルートの見どころは?

2026年6月27日~28日 特別運行
SL大樹「土津」で、SLが先頭に立つのは会津田島~会津若松間のみ。その理由については後述する

 東武鉄道、野岩鉄道、会津鉄道、JR東日本は、SL大樹「土津」(はにつ)を、6月27日~28日に会津若松まで特別運行する。

 特に、会津田島~西若松駅間でSLを運行するのは1974年以来52年ぶりのこと。それに先立ち、6月4日に報道向けの試乗会を行なった。

運行の概要

 今回の特別運行は、2日がかりで1往復。6月27日に下今市から会津若松に向けて、翌28日は会津若松から下今市に向けて運行する。

 愛称の「土津」は、福島県猪苗代町に鎮座する土津神社に由来する。そして会津藩初代藩主・保科正之公の神号であり、五行思想における万物の根本「土」と、会津藩主を意味する「津」を組み合わせた「万物の理を究めた会津藩主」という意味がある。

 乗車に際しては、JR東日本びゅうツーリズム&セールス、またはクラブツーリズムが販売するツアー商品を購入する必要がある。ただ、前者は5月末の時点でキャンセル待ち、後者は6月1日で事前エントリー受け付けが終了している。

 列車の編成は6両で、機関車が2両、客車が3両、車掌車が1両。2両の機関車は、下今市~会津田島間はディーゼル機関車、会津田島~会津若松間は蒸気機関車、と使い分ける。

 これは、野岩鉄道線内にトンネルが多いため。普通に走っていてもトンネル内では煙が回ってくるものだが、なんらかの事情があってトンネル内で停車することにでもなれば、さらに深刻になる。そのための安全策だ。

起点は下今市駅。駅の内外装や駅係員の制服など、レトロ仕立てになっているのが特徴
下今市駅に入線する試運転列車。会津田島まではディーゼル機関車が先頭に立つ
ディーゼル機関車を連結する前の状態
機関車の次位には車掌車を連結している。ただし乗っているのは、車掌ではなく自動列車停止装置(ATS)の機器
観光列車ではよくある「沿線でのお手振り」だが、場所をちゃんと車内で告知しているのはおもしろい
また、「SL大樹の楽しみ方」として、初めて利用する方にも分かりやすくしている
もちろん、グッズ販売も行なっている

 停車駅と時刻は以下のとおり。今回の試乗は下今市~会津田島間を対象とした。

・SL大樹「土津」特別運行(2026年6月27日)
下今市(9時33分発)
会津田島駅(12時22分着~14時40分発)
芦ノ牧温泉駅(15時51分着~16時19分発)
会津若松駅(16時53分着)

・SL大樹「土津」特別運行(2026年6月28日)
会津若松駅(9時30分発)
芦ノ牧温泉駅(10時01分着~10時28分発)
湯野上温泉駅(10時58分着~11時32分発)
会津田島駅(12時20分着~13時45分発)
鬼怒川温泉駅(15時49分着~16時45分発)
下今市駅(17時19分着)

 途中停車駅での停車時間が長くとられているが、これは対向列車との行き違いなどダイヤ設定上の理由だけでなく、途中駅でのイベントや、会津田島駅での機関車連結位置変更作業といった理由もあろう。

会津田島駅でディーゼル機関車を切り離して、後方に向けて移動している途中のひとこま。中間にいるのは会津鉄道のAT-700形気動車で、「AIZUマウントエクスプレス」に加えて一般列車でも使用している
蒸気機関車が先頭に出て、会津田島駅を出発した直後。やはり、煙や蒸気を盛大に出す姿は蒸気機関車っぽさがある
会津田島~会津若松間では、ディーゼル機関車は後端に連結

 会津田島では、両日とも10時~15時の間、駅前広場で「会津田島駅前マルシェ」を開催する。キッチンカーの出店、南会津町の特産品ブースや鉄道会社などのPRブース設置、SLミニレールの乗車体験を予定している。また、27日に限り、沿線のゆるキャラも登場する予定とのこと。

会津田島の駅舎。駅施設はこのなかの一部で、物販や飲食などの店舗も入っている

ふくしまデスティネーションキャンペーンの殿に

 普段、SL大樹は東武鬼怒川線の下今市~鬼怒川温泉間で「SL大樹」、それと東武日光線の下今市~東武日光間で「SL大樹『ふたら』」として運行している。

 このうち前者を北に延長して、野岩鉄道会津鬼怒川線~会津鉄道会津線~JR東日本只見線を経由、会津若松まで運行するのが、今回の特別運行だ。

 会津若松では、地元自治体が設立した「SL大樹等観光列車運行推進協議会」が活動している。同協議会は、日光と会津を結ぶ観光周遊ルートの確立と会津エリアの活性化を目的としている。そして、東武鉄道、野岩鉄道、会津鉄道、JR東日本との連携により、今回の特別運行が実現した。

 また、野岩鉄道・会津鉄道・JR東日本は、4月1日から6月30日まで展開中の「ふくしまデスティネーションキャンペーン」に関わっている。つまり、今回のSL大樹「土津」は、このキャンペーンの最後を飾る企画ともいえる。

試乗列車とその沿線

 今回の試乗列車は、乗務員やスタッフの訓練・慣熟が本来の目的。そのため、本番と同じダイヤで走り、沿線の名所・名産などを案内する車内放送も本番と同様に行なわれた。

 実は先にも触れたように、野岩鉄道線内はトンネルが多い。これは建設時期が新しく、山を避ける代わりにトンネルで貫く手法が一般化した時期に建設されたため。だから、トンネルが多い区間で車窓を楽しむのは難しいが、ハイライトとなる場所はある。

 その筆頭が、トンネル内に設置された「モグラ駅」として知られる湯西川温泉駅の北側で、五十里ダムのダム湖(五十里湖)を渡るところ。実は、冬に来ると眺めのよい場所だ。

 また、湯西川温泉駅から外に出たところにある湯西川観光センターでは、食事や買い物に加えて、温泉や足湯の利用もできる。

湯西川温泉駅を通過して、五十里湖を渡る橋梁を通過する模様を動画で
同じ場所を、冬季に外から撮影したもの。栃木県でも山間部なので、積雪は少なくない
湯西川温泉駅のホーム。全体がトンネル内にあるモグラ駅だ
湯西川温泉駅から地上に出たところにある湯西川観光センター。温泉施設もある

 もともと、特に野岩鉄道の沿線は人口が少なく、日常利用が伸び悩んでいる状況にある。よって、他地域からの誘客が求められるのは当然の成り行き。

 野岩鉄道の沿線には川治温泉、湯西川温泉、中三依温泉といった温泉地があるほか、奥会津では冬季にウィンタースポーツも楽しめる。そして今回のSL大樹の特別運行は、野岩鉄道・会津鉄道というルートの存在にスポットを当てる意味もあることが分かる。

 また、このルートは北関東から会津方面に抜ける、距離的な最短ルートでもある。単純に往復する代わりに、磐越西線~東北本線(または東北新幹線)を経由するルートと組み合わせて周遊する、「鉄道の旅」そのものを楽しむルートとしても成立し得る。

 ことにSL大樹の客車は、もともと国鉄時代に作られたものだから、実は「国鉄時代の鉄道旅行」の雰囲気を味わうこともできる。鬼怒川~会津ルートには、そんな楽しみ方もあるのだ。

2号車の下今市寄りはベンチ付きの展望デッキになっており、外の空気を味わえる。ただしトンネル内では、排煙が流れてくるから御用心
展望デッキの内部はこんな按配。照明はレトロ調になっている
試乗列車の1・3号車は簡易リクライニングシート付きの14系客車。このシート、背ずりに寄りかかっていないとリクライニングがもとに戻ってしまうという、もっとも初期の仕様である
1号車のデッキ。この辺りの造作は国鉄時代からほとんど変わっていない
ただしトイレは洋式に改められた
2号車は、もともとボックスシートで作られた12系客車だが、ボックスごとに木製のテーブルが追設されている。グループで利用する場合にはこちらの方が向いているだろう

 なお、会津田島駅の2階にある「はいっと食堂」では、ラーメン以外のメニューはテイクアウトも可能だ。乗り継ぎ時間に余裕がないときには利用を考えてみてもよいかもしれない。

下今市~会津田島間では後ろに機関車がいないので、最後尾客車のデッキから、走り去る風景を眺めることもできる
山間部を走る鉄道ではよくあることだが、車窓に河川が現われる場面もある
鬼怒川水系は発電用のダムが多数立地しており、インフラツーリズムができるエリアでもある。車窓に電力関連施設が現われることもある
そのダム群の1つである川治ダムが放流をしているというので、だいぶ前に観に行ったことがある。野岩鉄道の川治湯元駅から徒歩で5kmほどの場所だが、鬼怒川温泉からバスで行くこともできるようだ
新藤原の隣にある龍王峡は、ホームの半分がトンネル内にある半モグラ駅。残り半分は明かり区間だが、そのすぐ先はまた別のトンネルである

特別運行には準備が必要

 接客を担当する乗務員にとっては、本番と同じダイヤで実際に運転してみて、計画どおりに仕事ができるかどうかを確認できる方が好ましい。

 運転士は運転士で、普段は運転していない区間を走るから、線形や、信号機の位置・見え方を実地に確認して、頭に入れておく必要がある。しかも、ディーゼル機関車や蒸気機関車といった、通常は使用していない車両による乗り入れだ。すると、信号機の見え方1つとっても、普段の電車と同じにはならない。

 そういう意味で、試運転は不可欠のプロセスだ。車両の規格が合うから直通させても大丈夫、ぶっつけ本番でも大丈夫、というほど単純な話ではないのである。