ニュース

1968年オープン「西新井駅らーめん」消えゆく。全国の「ホーム上の駅ラーメン・そば」存続は難しいのか?

西新井らーめん

西新井「駅ホームのラーメン屋さん」消えゆく

 電車に乗る前に、駅ホームでサッとラーメンを1杯。東武の駅ナカグルメの象徴であった「西新井らーめん」が3月末をもって閉店する。

 1968年(昭和43年)に開業した「西新井らーめん」は、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)の3・4番線ホーム上で、変わらずラーメンを提供し続けてきた。こういったホーム上の立ち食い店舗がそばを提供するなか、なぜか西新井駅では、醤油ラーメンを提供し続けてきたのだ。

 西新井駅はいまも3万人以上の乗降客で、朝晩・日中を問わずにぎわっている。にもかかわらず、西新井駅らーめんは、なぜ閉業しなくてはいけないのか? まずは、半世紀以上も続いた一杯の醤油ラーメンを味わったうえで、「ホーム上の駅そば・駅ラーメン店」の今後を考えていこう。

ストレート麺に、シンプルな醤油スープが合う!

西新井らーめん。間違って食券を買った玉子もつけてもらった
ストレートの麺をリフト

 何十年も通い続ける常連客の方によると、その味はいまも変わらないという。やや黄色みのある中太のストレート麺と、しっかり出汁がきいた醤油ベースのスープの相性は抜群によく、長年食べていても飽きることがないそうだ。

 チャーシューやメンマもあっさり目の味付けで、全体的にバランスが取れているとのこと。「うまい!」と衝撃を受けることはないものの、気が付いたら食べたくなる「飽きがこない味」だ、と力説していた。

 さらに、オプションで頼める白ご飯が「チャーシュー・漬物付き」であり、ここにチャーシュー麺のスープを少しだけかけると美味い。また、たまに胡椒を強めに振ると違う味わいになるそうだ。

 驚くのは、ラーメン店にしては提供が異様に速い。30秒ほどで出てくる駅そばのように茹で置きができないにも関わらず、提供時間は1~2分ほど。よく見るとトッピングが周囲に効率よく並んでおり、麺を湯切りしてからのトッピング作業が、まるで魔法を見るかのような美しさで進んでいく。

 なお、昭和の時代の新聞を見ると、このラーメンを食べている途中に、鉢ごとそのまま乗車してしまう客もいたのだとか。客は食べ終わった鉢を車内に置き、回収した車掌や駅員が西新井駅まで持ってくる、という不文律のシステムがあったという。今なら「車内で熱々のラーメン」など考えられない時代だが、それだけ西新井らーめんが、当時の伊勢崎線にとって欠かせない存在であったのだろう。

都バス王40系統。写真奥が西新井駅

 なぜ西新井駅でホーム上のラーメン店が繁盛するのか? その理由は、この駅が「足立区最大級の乗換・接続ターミナル」であることにほかならない。

 まず鉄道は、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)の普通列車・急行列車が停車する。ここで、通常なら北千住駅などで日比谷線・半蔵門線直通の列車に乗り換えるところを、西新井駅で乗り換えれば、待ち時間でラーメンを食べることができる。

 かつ、上り電車なら北千住で着席を待つより、手前の西新井で乗り換えて北千住で乗客が入れ変わるのを待つ方がよいという。ここに、たった1駅で終着とはいえ、大師線乗り換え客が加わり、西新井駅では人が絶えない。

 さらに、意外と多いのが「都バス(王40系統)乗換」だ。西新井駅から京浜東北線 王寺駅、山手線 池袋駅に向かうこのバスは「1日2万人以上」と都営バストップの利用があり、都心部に向けて南北(タテ)に向かう東武・JRなどを東西(ヨコ)につなぐとあって、ショートカット移動の手段としてかなり利用される。

 バスは日中でも1時間10本近く運行しているため、1~2本遅れたところで待ち時間は延びない。「鉄道→バス乗換」のあいだに、余裕を持ってラーメンを啜る、という人も多いのだという。鉄道の緩急乗り換え、大師線乗り換え、バス乗り換えに、西新井駅で改札内に入る地元民の方々を含めれば、西新井らーめんがにぎわうくらいの人流はあるのだ。

 ただ、全国的に見ると、駅ホームで立ち食いのスタイルをとる駅そば店・ラーメン店は消えつつある。近年だと大船駅(大船軒・大船ホームそば店)、宇都宮駅(野州そば)など……。なぜだろうか?

小山の「きそば」黒字でも閉店。ホーム店舗の厳しさ

JR小山駅ホームにあった「きそば」店舗

 ホーム上の店舗が減少する要因として考えられるのは、「JRのホーム店舗自体が縮小傾向にある」ことにあるといっていいだろう。

 多くの列車が行き交うホーム上での営業はいろいろと制約があり、スペースをとる駅そば・駅ラーメンは、たとえ売上がよくても「営業委託終了」を言い渡されてしまうこともあるという。

 例を挙げると、東北本線 小山駅ホームで長らく営業していた「おやまのきそば」は、コロナ禍の感染拡大が収縮するとともに「まっ先に食べに行きたい!」とばかりに客が押し寄せ、2021年12月には過去最高クラスの売上を記録していた。同店は根っからの「きそば」ファンも多く、コロナ禍以外は黒字経営を保っていたものの、2020年末に話が出ていたという営業終了が覆ることなく、翌1月には閉店してしまった。

 また、JRはそば店・ラーメン店をグループ会社(JR東日本クロスステーション)などで展開しており、店舗の設置場所が「ホームではなくコンコース・通路」へと変わりつつある。

 例えば、京浜東北線 大船駅ホームでの大船軒店舗は閉業したものの、コンコースではJR東日本系列の「濱そば」が店を構えている。ホーム上の店舗だと限られた方向の乗客しか利用できないものの、全ホームとつながったコンコースなら、より多くの利用者が見込まれるというワケだ。

 そしてやはり、「コンビニや駅ナカグルメの充実」により、選択肢が駅そば・駅ラーメン以外に増えてしまった。もちろん駅ナカ以外、駅前の飲食店もライバルであり、「わざわざホームで何か食べなくてもよい」といった状態になってしまう。

 そして、昔ながらの駅そば・駅ラーメンは小規模・個人経営の業者が多く、代替わりでの閉店も多い。こうして、ホーム上の店舗は徐々に消え去っていったのだ。

保健所の「囲いがないとホーム店舗は営業できない」は本当?

在りし日の「小山駅きそば」ホーム上の店舗にて。栃木名物・岩下の新生姜をトッピング。

 ホーム上の店舗はよく「周囲に“囲い”がないと営業許可が下りない」などと言われているが、そういった設備がなかった「きそば」を運営する中沢製麺の中沢社長によると「保健所の許可で問題が起きたり、指導が入ったりすることは一度もなかった」といい、「壁がないカウンター型の店舗が衛生的に不適合なら、より環境がわるいキッチンカーはNGなのでは?」と話していた。

 県や政令都市ごとに保健所ごとの判断があり一概に言えないが、きそば以外にも、売上がよくても理不尽な理由で閉店にいたる駅そば・駅ラーメン店は、意外と多いのかもしれない。

どうする? ホーム上の店舗、生き残り策

京阪電車 京橋駅の「ジューサーバー」。その場でフルーツをミキサーに入れ、製造していた

 ともあれ、ホームでの駅そば・駅ラーメンは、どんどん消滅している。また関西でも、京阪電車 京橋駅ホームで手作りのミックスジュースを提供していた「けいはんジューサーバー」が3月いっぱいで閉店する予定であり、「駅ホームでできたてを提供」というスタイルの飲食店そのものが、今後とも減っていくのかもしれない。

 そのなかで西新井らーめんは、2025年2月に「駅前店」を開設。こちらは3月以降も営業する予定であり、今後は「改札を出る」という選択肢をとったようだ。

 なお、先に述べた小山駅のきそばも、2022年1月にホーム上の店舗が閉鎖となったあとは、キッチンカーでの営業を経て、実店舗を足利市・小山市・宇都宮市などに提供店を出店。駅そばでなくなったのちも、行列が続いて1時間待ちとなるほどのにぎわいを見せている。

 きそばは長らく営業を重ねてファンを獲得していたからこそ、「売上がよかったのに閉店」という試練を乗り越え、駅から外で生き残ることができた。西新井らーめんも、駅前店でこれまでの常連客を掴めるか、しっかり見守りつつ食べに行きたい。

気になる「春日部のホーム上のラーメン」どうなる?

春日部駅ホームの「東武らーめん」
春日部駅「東武らーめん」名物、コロッケ入りラーメン

 ここで気になるのは、同じ東武鉄道のアーバンパークライン(野田線)春日部駅ホームにある「東武らーめん」だ。春日部市が舞台の漫画「クレヨンしんちゃん」がプリントされた柱を抜けると、大勢の人々がカウンター上で「コロッケラーメン」などを啜っているが、すでに駅高架化の工事が始まっており、今の店舗が将来的に閉店となることは間違いない。

 しかし、この店舗を運営している「東武食品サービス」(東武グループ)は、すでに東武らーめん店名を商標登録している(登録番号:第6091713号)。閉店したとしてもホーム上か、そうでなくてもコンコースなどで復活することを期待したい。

 いずれにせよ、ホーム上のそば・ラーメン店は「食べるなら、店があるうち」。今ある数々の店舗も、早めに訪問しておきたい。