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特急しなの新型「385系」、優雅なグリーン車と客室設備を見てきた! 山間部を速く走れる振子式の特徴も解説

2026年5月12日 公開
385系電車の編成全景。手前が長野方先頭車の1号車で、グリーン車になっている

 JR東海は5月12日、中央本線の特急「しなの」に投入する新型車両、385系電車の量産先行車を報道公開した。この量産先行車を用いて試験を進めたうえで量産に移行する計画で、営業運行開始は2029年を予定している。

385系の概要

「しなの」は、中央本線と篠ノ井線を経由して、名古屋~長野間を走る特急列車。現用中の383系は1994年の登場だから、32年ぶりの新型ということになる。

 383系は2両・4両・6両の3種類があるが、385系は8両編成のみ。そのうち1両がグリーン車、7両が普通車で、定員は400名。

 もちろん、2030年代に向けての新型車両であるから、ACコンセントは全席に標準装備している。また、各車両の出入台には幅1000mmの大型荷物置場を設置、客室の荷棚もスペースを拡大している(+60%)。

「しなの」で営業運転中の383系。車体が妙に傾いているように見えるかもしれないが、気のせいではない。その理由はあとで説明する
右が383系、左が385系。こうして並べてみると、同じ会社の先輩と後輩、という関係性が伝わってくるような気がするのだが

 そして、曲線区間が多い中央本線や篠ノ井線を速く、かつ快適に走るため、足回りのメカニズムに工夫をしている。といっても、それは乗客の目からは見えないところだから、概要はあとで説明することとしたい。

385系の外観

 385系のエクステリアは「アルプスを翔ける爽風」をテーマとしている。

 383系は、6両編成の長野方先頭車のみが非貫通の流線型、そのほかはすべて貫通式とすることで、必要に応じて名古屋方に増結する仕組みとしていた。対して、385系は両先頭車とも流線型でまとめられており、貫通路は持たない。つまり増結をする意図はないものと読める。

 実は、385系電車は中央本線の名古屋口で使われている最新の一般型電車・315系と、編成両数・車両の全長・側扉の位置を揃えている。これは、名古屋圏で可動式ホーム柵を設置する駅が出てきており、その開口の位置を315系に合わせてあるため。

先頭部は両端とも流線型の非貫通形。1号車(グリーン車)も8号車(普通車)も運転台の直後は客室なので、最前列の席をとれば前面展望を楽しめる。白、黒、オレンジを組み合わせた側面の帯が側窓とその上部に寄せられているのは、可動柵越しに見る場面を想定したためであろうか
写真の1号車、それと3・6・8号車の側面には「385」のロゴマークが入れられている
前照灯(前部標識灯)をLEDとするのは最近の通例。先の写真でお分かりのとおり、前部標識灯を窓下と窓上の両方に配置しているのは、383系と同様
側面を見ると、特に腰部から下が内側に向けて絞り込まれている様子が分かる。振子式車両の特徴である
383系の側扉は、車端部に寄せて設置している場合がある
対して385系の側扉は、車端からいくらか離れている。この位置は315系に合わせたため。側扉を片側2か所から1か所に減らしているが、幅を拡げているのが分かる
名古屋駅で中央本線の電車が発着する7・8番線は、すでに可動柵を設置済み。「しなの」が使用する9番線はまだだが、途中の停車駅で可動柵が設置されれば、そこに「しなの」が発着する場面も出てこよう。だから可動柵のことを考慮した設計が必要になる

385系の車内(グリーン車)

 385系のインテリアは「木曽五木のイメージ」に基づいてデザインした。

 グリーン車は長野方の先頭車(1号車)で、これは383系と同じ。ただし、JR東海の在来線特急車としては久方ぶりとなる2列-1列配置で、横方向の余裕を大きくしている。しかもシートピッチは1300mmで、一般的なグリーン車の1160mmと比べると140mmも長い。

 そして、「優雅なプライベート感」をテーマにデザインしており、JR東海では初めて、バックシェル型の腰掛となった。だから、後ろの席の人に気兼ねせず、電動式のリクライニングを使える。また、足置きを設置する代わりに電動式のレッグレストを採用した点も目新しい。

車内全景。モケットの柄は「北アルプスの朝焼け」と「長野県花のリンドウ」をグラデーションで表現したもの
一人掛けの腰掛。長野方に向かって右側が一人掛けになる
二人掛けの腰掛。リクライニングを作動させると、単に背ずりが倒れるだけでなく、座面の後方が沈み込むととともに、座面全体が前方にせり出してくる。ちょっと見づらいが、窓側の席と座面前端部の位置を見比べてみてほしい
肘掛けに、電動式のリクライニングとレッグレストを作動させるスイッチ、それとカップホルダーが組み込まれている。電源コンセントは肘掛けの前側
バックシェル型で心配になるのは、背ずりとシェルの間に「落とし物」をする事態だが、ちゃんと途中で塞がれているので御安心いただきたい
バックシェルに組み込まれている小テーブル。ここにスマートフォンやタブレットを置いておける
側窓の間柱には装飾として、沿線の窯元で焼かれた美濃焼の装飾をあしらっている
デッキに設置している大型荷物置場
客室の荷棚も従来よりスペースを拡大した。ちなみに、荷棚では、廃車になったN700系からリサイクルしたアルミ素材が使われている
グリーン車のデッキは、どちらかというとダークな、落ち着きのあるイメージを演出している

385系の車内(普通車)

 普通車は2列-2列配置。「自然の心地よさ」をテーマにデザインしている。

車内全景。腰掛のモケットでは木曽の森林をグラデーションで表現している
よく見ると、モケットに点々と青い点が見えるが、これはリンドウの色をあしらったもの
普通車の腰掛。こちらは普通のリクライニングシートである
ただし、背面テーブルは383系と比べて面積比1.4倍に大型化した。ノートPCを使ったり、お弁当を広げたりする場面では助かる改良
383系の背面テーブル、こうして見るとサイズの違いは一目瞭然
肘掛の先端部に電源コンセントを組み込んだところは、N700SやHC85系の普通車と同様
荷棚にトランクを載せた状態のサンプル。機内持ち込みサイズ(100席以上)を想定して寸法が定められた
客室端部の仕切壁。天井の部材はHC85系と同じものが使われているとのこと。照明はLEDとして、省エネ・長寿命化が図られた
普通車のデッキはグリーン車と比べると明るい色彩
デッキと連結面の間に設けられた大型荷物置場。前述した事情から側扉の位置が連結面から遠いので、それによって発生した車端のスペースを荷物置場やトイレ・洗面所に充てている

そのほかのいろいろ

 普通車とグリーン車の概要はここまでとして、そのほかの見どころも紹介する。

客室の仕切壁には、フルカラーの液晶ディスプレイを使用する車内情報表示装置がある。ここに、列車名、行先、停車駅の一覧と次の停車駅、非常ブレーキ動作時の注意喚起、列車遅延情報などを表示する
一部の車両の出入台には、沿線ゆかりの工芸品を展示する「ナノミュージアム」が設けられている。すでにHC85系でもおなじみの設備
洋式トイレ。蓋と便座をボタン操作で開閉するメカが組み込まれている
蓋と便座の開閉操作や、温水洗浄便座などの機能を使用するためのボタン群
こちらは男性専用の小便所
洗面台。これはグリーン車のもの
運転台。最近の車両の通例で、速度計や圧力計は、機械式の計器ではなくディスプレイ装置に表示する仕組み

 バリアフリー関連設備も、最新のガイドラインに沿った内容になっている。車椅子スペースは6号車に3か所あり、このうち2か所は窓に隣接する配置。同じ車両に多機能トイレも設置している。

今回の報道公開では対象外だったが、6号車にバリアフリー関連設備を集中している

山間部を速く走るための電車

「しなの」は1968年10月のダイヤ改正から、特急列車としての運行を始めた。このときには181系気動車を使用しており、名古屋~長野間で4時間程度を要していた。ところが、383系が1996年12月から定期運行を開始したときには、名古屋~長野間を最短2時間43分まで短縮した。

 劇的ともいってよい所要時間短縮は、いかにして実現したか。アップダウンやカーブが多い山間部を走る列車では、最高速度をむやみに引き上げるよりも「いかに速度を落とさずに走るか」が問われる。

 383系も、新しい385系も、最高速度や曲線通過速度は同じだから、所要時間も同水準になると推察される。ただし、その速さを「より快適に」実現するところがキモである。

 383系も385系も、いわゆる「振子車両」である。これは、曲線区間を通過する際に車体を内傾させる仕組みを備えた車両のこと。曲線を速く走る際に発生する超過遠心力の影響を緩和して、乗り心地の悪化を防ぐ工夫だ。ちなみに傾斜角は最大5度。

 曲線に入るところで空気圧で動くシリンダがアシストして、スムーズに傾斜を開始させる。さらに、曲線通過時に発生する遠心力で車体の傾斜を増して、最大5度まで内傾させる仕組み。逆に曲線から抜け出すときには、アシスト機能を使って引き戻すので挙動がスムーズになる。曲線に入ると車体がスッと内側に傾き、さらにグッと傾斜を増して、速度を落とさずに駆け抜ける様子は、現行の383系でも体験できる。

 今回の報道公開では、そのアシスト機能を使って実際に車体を傾けて見せた。

真正面から見た、振子を作動させていないときの状態。車体の中心と、左右のレールの中間点が合っている
振子のアシストを作動させた状態。排障器にある2本の継目のラインと左右のレールの位置関係が、先の写真と大きく異なるのが分かる
下面に蛇腹状のものが付いている円弧型の部材が、車体傾斜のためのメカニズムを組み込んだ「振子梁」と呼ばれる部材。これは車体を傾斜させていない状態
車体を傾斜させると、その振子梁が左側にせり出してくる様子が明瞭に分かる
振子梁が、車体傾斜のアシストを作動させることでせり上がる様子を撮影した
こちらは逆に、車体が傾斜した状態から元の状態に「引き戻す」操作を撮影した様子

 実は、このアシスト制御の部分が385系で改善された。385系は、どの地点にどれぐらいの曲率のカーブがあるかという情報を持っている。そして現在位置と前方のカーブの情報から予測を立てる。

 そして、ジャイロセンサーを用いて車体が曲線に入ったときの動きを検知、それを受けて車体傾斜のアシストを行なう。つまり、「ここがカーブのはず」ではなく「カーブに入った」ことを検知してアシストするから、開始位置がズレない。

 具体的な制御の内容については、今後、走行試験を重ねながらチューニングを進めていくこととなろう。新しいシステムだけに、最適動作のためのチューニングは不可欠だ。

早くも関連グッズを発売

 前述のように、385系の営業運転開始までには3年ぐらいの間が開くが、ECサイト「JR東海MARKET」では5月12日から、385系オリジナルグッズの販売を始めている。

 2連アクリルキーホルダー(770円)、A4クリアファイル(380円)、きっぷ収納クリアファイル(990円、JR東海MARKET限定)、ステッカー(385円、JR東海MARKET限定)、定規(990円、JR東海MARKET限定)、キーホルダー(550円、JR東海MARKET限定)、着せ替えスマホスタンド(1320円、JR東海MARKET限定)といった陣容だ。

 ステッカーの価格が「385円」なのは、“狙った”ものであろうか。

これは商品の一例(クリアファイルとキーホルダー)