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西武鉄道、「黄色い6000系電車」のラッピング作業詳細

丸2日かかった、職人技の手作業によるラッピング工程

2015年4月17日開催

池袋線車両所小手指車両基地(埼玉県所沢市小手指町)

2015年4月18日より運行

公開された6000系(6057編成)の黄色いラッピング車両。ラッピングが完成しているのは1両目のみ

 西武鉄道は、6000系車両に黄色いラッピングを施した「黄色い6000系電車」を4月18日~2016年3月まで運行することを受け、車両のラッピング作業を報道陣に公開した。このラッピングは、西武池袋線の前身である武蔵野鉄道の池袋駅~飯能駅間が1915年4月15日に開業して以来、2015年4月15日で100周年を迎えることを記念して実施される特別カラー。

 西武鉄道の車両は101系以降、2000系、3000系、9000系と黄色のイメージが強いが、東京メトロとの相互直通運転対応車として導入された6000系は、オールステンレスのシルバー、もしくはアルミ製のグレー(編成の製造時期によって異なる)と青を基調としたデザイン。今回6000系に黄色いラッピングを施すことで、東京メトロとの相互直通運転区間を黄色い西武鉄道の車両が初めて走ることになる。もし、これから2016年3月までの間に東京メトロ区間で偶然見かけることがあれば、この1編成だけラッピングされた貴重な6057編成なので、見ることができたのは幸運といえるだろう。

 運行区間は、池袋線(池袋駅~飯能駅間)、西武有楽町線、狭山線、東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線、横浜高速みなとみらい線。池袋線だけでなく、都心から横浜元町や中華街方面でも見かけることができる。

 西武鉄道では、2009年から8両編成のラッピング車両「銀河鉄道999デザイン電車」を走らせたことがあるが(運行は2014年12月20日で終了)、10両編成としてのラッピング電車は初となる。

 ラッピング作業が公開されたのは、池袋線車両所小手指(こてさし)車両基地。西武池袋線小手指駅近くにあり、運行する多くの車両が「小手指行き」なのは、ここに回送されるためである。西武鉄道で最大規模の車両基地だ。

ラッピング作業が行なわれた小手指車両基地の入口
小手指車両基地。西武鉄道最大の基地で多くの列車が並ぶ
ラッピング作業が公開されたピット

 ラッピングは、難燃性のポリ塩化ビニール素材に接着剤が付いたシートを貼っていくことで、色を塗ったように見せる装飾テクニック。実際に車両に使うには、燃焼テストに合格したシートでないと使えないとのことだ。

 シートにデザインを印刷すれば、ロゴやマーク、イラストなどで装飾することもできる。シートにヒートガンで熱を加えることで伸ばしながら複雑な曲面にもフィットさせることができることもあり、ペンキに替わって、さまざまな場所の装飾で使われている。粘着剤が下地に残りにくく、不要になった際には、シートを剥がすことで元の状態に戻すことができることも特徴で、今回のような期間限定のイベントにも使いやすい。マイカーを気軽にイメージチェンジする目的や、電車やバスの広告などによく使われている。製品の箱から使われているのは3M製「Scotchprint」のようだ。これは約3年ほどの耐候性がある。

ラッピングに使われる黄色いシート。ロールから切り出したもの
黄色の色見本。実車両に合わせて吟味したとのこと

 作業の公開は屋根のあるピット内で行なわれた。ラッピング作業はすべてが同じピットで行なわれるわけではなく、工程によって下まわりなどは別の場所で段階的に行なわれるそうだ。10両編成をラップするのに丸2日かかる。サイズが大きいこともあり、効率よく作業するための計画が大変だとのこと。

 見学したラッピングの施工方法は、ロールから切って貼り付け位置に仮貼りし、ヘラを使って気泡を押し出すように形状に沿わせて押しつけて貼り付けていく。緩やかな曲面はそのまま追従して貼れるが、強い曲面はヒートガンで暖めながら伸ばしていく。あまり伸ばし過ぎると色が変わってしまうため加減が難しいそうだ。細かい部分はカッターで形状に合わせて切り揃えたり、残ってしまった気泡はカッターで潰すなど、かなり細かな作業だ。大人数で作業していたが貼り付ける面積が大きいこともあり時間がかかっていて、なかなか根気のいる職人技の作業だと感じた。

サイド部分のラッピング作業中の車両。正面部はすでに仕上がっていた
ドアや窓の周囲貼り付け作業
カットされたシート。メインの黄色のほか、黒とシルバーを使用する
ドアや窓の周囲など曲面のある細かい部分を先に貼り付けていた
まずは位置を合わせ仮に軽く貼り付けはじめる
角にクセをつけている
曲面の貼り付けはヒートガンで暖め伸ばしながら貼り付け
ヘラを使って強く貼り付けている
難所の曲面部分がキレイに付いた
複雑な形状部分のシートは複数重ね貼りしていく
乗務員ドアの貼り付け作業
まずはドア全体を貼ってしまう
その後、窓部分をくり抜く
窓枠部を貼り増し
細かな部分はカッターでカットする
ドアサイド部分も丁寧に貼り付ける
貼り付け時に気泡を押し出すが、取り切れない気泡はカッターで潰す
ドアノブ部の貼り付けは、かなり複雑な形状にカッターで切り出している
乗務員ドアの貼り付け完成

 ラッピングは黄色の車体のほか、正面の黒部分とドアパネルのシルバー部分も施工されている。2000系などのドアのシルバー部は本来はステンレス地だが、よくシールで表現されていると感じた。

 ステッカーなどを作成して貼り付ける部分も一部あるが、銘板やパイプ、ランプなど、車両に付いているものは基本的にすべて外さずに付けたままシートを貼り付けている。場所によっては、くり抜き作業もある。作業中は車両編成も切り離さないため、連結器がある妻板部分の細かなパーツが一番苦労する部分だとのことだ。もし見かけたら、ぜひ妻板部分の細部をチェックしてもらいたい。あまり目に入らないボディエッジの下まで丁寧にラップされていて感心する。

 この記念ラッピングの企画は1月から始まっていて、その間複数のデザイン候補から選考し、前面は3000系を、側面は2000系をイメージしたものを選んでいる。西武鉄道の特徴である正面の髭デザインは、6000系が左右非対称デザインであることなどから、見栄えを考え見送ったそうだ。また、ラッピングにあたっては、キレイに見えるようドアに戸袋窓のないタイプを選んでいる。

ラッピング車両正面
番号部分は黒色を丁寧にくり抜いて、地色を出している
屋根部の曲面は仕上がりに気を使った部分とのこと
車体横にある車両番号のアップ。キレイにくり抜かれている。番号は元色のまま
ドアパネル。左が貼る前で右が貼り終わったパネル
妻板部分。左が貼る前で右が貼り終わった車両
妻板にある銘板やパイプ周囲を避けて貼っている
100周年記念のステッカー。これらは上からシールで貼られている
取材時後半には、ドアや窓のエッジがだいぶ仕上がってきていた
5月14日までは中吊りで100周年記念フォトコンテストの告知を行う

 この黄色いラッピングがされた6000系車両は、2016年3月まで運行されるが、初日となる4月18日は、臨時電車として14時15分池袋発、快速急行所沢駅行きが運行された。臨時電車の各駅の発車時刻は以下だった。なお、下落合駅での人身事故の影響により若干の遅れがみられた。

4月18日に運行された6000系ラッピング電車のダイヤ
駅名時刻
池袋駅14時15分
石神井公園駅14時26分
ひばりヶ丘駅14時32分
所沢駅14時42分

 4月18日の臨時電車以降のラッピング電車の運転時刻は今のところ未定。日によって車両の運用が変わるため、運転時刻、運行区間が異なる。4月18日の臨時電車以降の運転時刻については、当日、西武鉄道お客さまセンター(電話:04-2996-2888 営業時間:平日9時~19時 土休日9時~17時)または西武線各駅まで問合せてほしいとのこと。

 最後に西武鉄道のスタッフは「(西武)沿線の方々はもちろんですが、直通運転の区間もありますので、それ以外の皆様にも黄色い電車を楽しんでいただけたら思います。1編成のみの運転ですので、もし見かけましたら楽しんでいただければと思います」とコメント。見かけたら、その仕上がりにぜひ注目していただきたい。

「黄色い6000系電車」のお披露目として臨時列車「快速急行所沢駅行」が4月18日に運転された

村上俊一