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京都から船で万博会場へ! 船のエレベーター「淀川ゲートウェイ」開通、新拠点「十三船着場」も見てきた
2025年3月18日 06:00
- 2025年3月16日 開通
万博輸送の「川船の拠点」完成
4月13日に開催が迫る大阪・関西万博を機に、京都~大阪を一気通貫するクルーズ船・水上バスの航行が可能になる。
大阪側の拠点となる「十三船着場」が3月16日に完成し、一番船「アクアライナー」を迎え入れる式典が行なわれた。
当日はあいにくの悪天候で、一部イベントは中止となったものの、当日は多くの関係者、十三船着場の地元・淀川区の方々が式典に出席。新しい船着場の完成を祝った。また、京都~大阪間の一番船となる水上バス・アクアライナーが、公募43名の乗客を乗せて十三船着場を目指した。
淀川大堰に完成、船のエレベーター「淀川ゲートウェイ」
京都~大阪間での船の運航にあたって、これまでネックとなっていたのが、約500mもの川幅を仕切る「淀川大堰」だ。淀川はここでせき止められ、上流と下流で最大3m、最小で60cmの水面差が生じるため、船が通行できなかった。
ここに、幅20mの2枚の鉄扉で水面を仕切り、70m幅の間で水面を上下動させ、「船のエレベータ―」のような役割を果たす「閘門」を設置。クルーズ船などを通行させるために、2022年から工事が進められ、アクアライナーのサイズなら4隻を通すことができる閘門が完成した。
10時40分ごろ、いよいよ「淀川ゲートウェイ」に一番船・アクアライナーが進入。船内の様子は式典会場に生配信で伝えられ、11時5分ごろに無事通り抜けていった。
会場では「淀川ゲートウェイ」という新しい閘門の愛称も発表された。今後は「京都発・淀川ゲートウェイ経由・十三行き」の船が、数多く通過していくだろう。
なお「淀川ゲートウェイ」の至近距離には淀川・大川を仕切る「毛馬閘門」(1907年供用開始)もあり、船内でインタビューに答えた小学生が、毛馬閘門の建設に尽力した沖野忠雄博士の名前を出して詳しく応える一幕も。水都・大阪の小学生ならではの博識ぶりに、近畿地方整備局の関係者が「タジタジです」と話す一幕もあった。
アクアライナーはJR京都線の上淀川橋梁、新十三大橋の下を通過し、11時23分には十三船着場に近づく。ここで、着岸作業に入る前に、大阪府知事の吉村洋文氏、京都府知事の西脇隆俊氏など約20名による盛大なテープカットが行なわれ、ほどなく無事に着岸した。
船着場がある「十三かわまちエリア」は、目の前に阪急京都線・宝塚線・神戸線の「3複線」鉄橋(淀川橋梁)が一望できる場所にある。阪急電鉄 十三駅からは徒歩10分ほどの場所にあり、「船と電車を一望できるスポット」として、人気が出そうだ。
十三船着場からは、船でどのように万博会場にアクセスできるのか? 3月16日時点で発表されている情報を見てみよう。
阪急 十三駅から徒歩10分。十三船着場は、結構便利!
関西・大阪万博が開幕する4月をめどに、京都・伏見船着場(京阪電車 中書島駅から1km程度)~十三船着場間の航路開設が可能となる。ただし、伏見船着場から万博会場までは、乗り換え込みで8時間ほどかかることもあり、定期航路の開設は現時点で予定されていないという。
また航行の安全上の問題もあり、京都・伏見から万博会場までの船移動は、十三船着場で乗り換える方式が取られる。十三船着場と周辺の十三かわまちエリアはBBQ施設や飲食の屋台などが並び、インバウンドを呼び込む取り組みや、子供向けの自然教室の開催でにぎわいを生みだす予定で、淀川区が整備を急いでいるという。
市内の堂島浜船着場から万博会場に向かう航路も予定している。いずれも鉄道・バスより所要時間はかかるものの、吉村洋文知事いわく「水辺を楽しむ航路にしたい」そうで、船ならではの開放感と空気を味わえる移動手段となるだろう。
期待がかかる「舟運」活性化。役割はそれだけじゃない!
近畿地方整備局長の関係者が語ったところによると、今回の船着場・閘門(淀川ゲートウェイ)の整備は、防災面でのメリットも大きいという。
1995年1月に阪神・淡路大震災が発生した際には淀川の堤防が崩れ、土やがれきの搬出で船が大きな役割を果たした。新しい「淀川ゲートウェイ」は500トン級の台船が通過することができ、大型ダンプなら30台分もの瓦礫などを一気に運べるという。
淀川では現在12か所の船着場があり、南海トラフ地震や「上町断層帯自身」など、有事の際に使用できるようにしている。万博輸送のクルーズ船は当初の計画より定期船の就航がやや少なめとなっているが、災害への備えとして、万博閉幕後も維持・活用されていくだろう。
まずは、万博輸送で舟運がどこまで役割を果たせるか。今後に注目したい。