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年頭所感:東急不動産ホールディングス 西川弘典社長

2025年1月1日

東急不動産ホールディングス株式会社
代表取締役社長
西川弘典

 昨年はインフレ経済への転換点という大きな節目を迎えた。足元の不動産市場は仲介市場の好調など良好な状態を維持している。ただ、国内の金利情勢など、そして海外に目を向ければ米国でのトランプ政権への政権交代、ウクライナ戦争、そして韓国の内政不安などリスク要因は枚挙に暇がないが、今こそこれまでの傾向延長にない高い成長や売上拡大を図り、利益を生み出す好循環へのシフトを模索する機会だ。金利のある世界を意識して、顧客に本当に価値があると認められる商品・サービスの提供に加えて、「スピード感」を今まで以上に意識しながら事業に取り組んでいきたい。

 最重要拠点の「広域渋谷圏」では、昨年4月に新しい体験価値を享受できる場所「創造施設」を目指す東急プラザ原宿「ハラカド」が開業し、昨年7月には渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」の街開きを迎えるなど、複数の大型再開発で旺盛な不動産需要の取り込みを図ったほか、線路や幹線道路をまたぐデッキを新設するなど課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化も同時に進めることができた。また当社グループは「環境経営」に注力しており、具体的には再生可能エネルギー100%のデータセンターを北海道石狩市で着工するなど再エネ電気を活用した事業展開のほか、広域渋谷圏や長野県の蓼科で TNFD に基づく生物多様性の取り組みを積極的に進めてきた。

 当社グループは長期ビジョンで「環境経営」「DX」を全社方針として掲げており、環境経営の分野では昨年8月に事業における生物多様性の回復傾向(ネイチャーポジティブ)を志向する、国内の不動産業で初めての「TNFDレポート」を公開した。広域渋谷圏を自然関連情報の検討・分析を行う優先地域に据え、東急プラザ表参道原宿など様々な緑化の工夫を凝らした物件と代々木公園などの緑とつなぐことで、生物多様性を志向する取り組みに力を入れていく。太陽光発電や風力発電など国内有数の発電量を誇る再生可能エネルギー事業などと合わせ、環境問題という国内外の社会課題解決の一助を担う存在となりたい。

 また、当社が持つリゾートホテルなどの観光資源とGX(グリーントランスフォーメーション)とを合わせ「地方共生」にも取り組んでいく。地域が抱える課題に向き合い、当社グループが抱える事業ウィングの広さや事業拠点の範囲の広さを生かし、当社グループが拠点を置く地域の住民や行政、ビジネスパートナーなど様々なステークホルダーとの協働・共創を進めながら、新たなビジネスの芽を開いていきたい。