ニュース

大航海時代の船旅で生まれた「マデイラワイン」が日本で味わえる?! ポルトガル政府観光局がマデイラ島の魅力を紹介

2023年7月4日 開催

ポルトガル政府観光局がマデイラ島の魅力をPR

 ポルトガル政府観光局は7月4日、港区西麻布のポルトガル大使館で業界向け「マデイラ&マデイラワインセミナー」を開催した。

 ポルトガル領のマデイラ諸島は、首都リスボンから南西に約1000kmの大西洋上に浮かぶ4つの島からなる。“常春の島”と例えられるほど穏やかで過ごしやすい気候が特徴で、平均気温は夏場24℃、冬場19℃くらい。

ポルトガル政府観光局 プロモーションマネージャー 高岡千津氏

 主島であるマデイラ島の北側には「ラウリシルヴァ」という世界自然遺産の照葉樹林が広がり、南側にある港湾都市フンシャルには南国フルーツや野菜、鮮魚が並ぶ「ラブラドーレス市場」、その市街地と海の絶景を見渡す小高い丘の「モンテ宮殿熱帯植物園」では美しい花々が咲き誇る。

 また山の湧き水を町へ運ぶために張り巡らされた古い灌漑用水路が密林のトレッキングコースとして整備され、コバルトブルーの海ではドルフィンウォッチングやホエールウォッチングといったアクティビティも定番。諸島のなかで2番目に大きなポルト・サント島へ足をのばせば、約9kmにおよぶ白砂のビーチを楽しめる。

 面積約740km2と小さいながらこれら観光名所が多数点在し、マデイラ島は「大西洋の真珠」とも呼ばれている。

 宿泊施設もリーズナブルなものからラグジュアリーホテルまで充実していて、アクセスが簡単なヨーロッパ人にとっては余暇を過ごす人気リゾート(日本でいう沖縄のような位置付け)になっている。

 なかでもポルトガル政府観光局長のイネス・ケイロース氏がマデイラをお勧めしたい大きな理由として挙げたのが、1年を通じて開催されるさまざまなイベント。

 3月のカーニバル、5月のフラワーフェスティバル、6月のアトランティックフェスティバル。クリスマス&ニューイヤーイベントでは盛大に花火が打ち上げられ、これを見物するために1年前から予約しないとホテルがいっぱいで取れないほど盛況するのだという。

ポルトガル政府観光局長 イネス・ケイロース氏

 日本からの直行便はないが、ヨーロッパの主な14都市から直行便やLCCが頻繁に運航しているため、ポルトガルのリスボンを経由しなくてもアクセス可能。

 また、あまり日本人にはなじみのないマデイラ島でも、サッカーファンならクリスティアーノ・ロナウドの生まれ故郷として知っている人も多いはず。2016年には島の玄関口である「マデイラ空港」が、彼の栄光を称えて「クリスティアーノ・ロナウド・マデイラ国際空港」に改名された。空港内に鎮座するクリロナの銅像は、ちょっとした名物なっている。

 そんなマデイラの一番の特産品が「マデイラワイン」。今回のセミナーではマデイラワインの主要メーカーであるバーベイト社 代表のリカルド・フレイタス氏が来日し、製造方法や魅力についてプレゼンを行なった。

マデイラワイン・バーベイト社 代表のリカルド・フレイタス氏

 マデイラワインは、ポルトガルのポート、スペインのシェリー、イタリアのマルサラと同じ“酒精強化ワイン”に部類される。

 酒精強化とは圧搾したブドウ果汁にスピリッツなどのアルコールを加え、強制的に発酵を止めること。これを樽のなかで7年かけて加熱熟成(本来ならばワインの敵である熱を加えることで意図的に酸化して水分を蒸発)させることで、成分が凝縮し、独特の風味が生まれる。

 アルコール度数は一般的なスティルワイン(赤ワインや白ワイン)が9~15%なのに対し、酒精強化ワインは約17%ととても高い。しかし、栓を抜いてもすでに酸化がされているので一度に飲み切る必要はなく、その爽やかな酸味や芳醇な甘みを感じながら毎日少しずつ味わうのが流儀。また冷たいトニックウォーターやソーダで割って飲むのも定番という。

マデイラワインの特徴や歴史について解説するリカルド氏

 マデイラワインの歴史は古く、「15世紀の大航海時代に偶然発見されのがはじまり」とリカルド氏は話す。大西洋を横断する最後の寄港地であったマデイラ島で、商人たちはたくさんの食糧と水、樽のマデイラワインを船に積み込み、アメリカ大陸への長い航路へ出発する。

 その際に通過する赤道近くで熱が加えられ、美味しく熟成が進んだ。これがのちに美酒としてアメリカ人に好まれ、偉人や貴族にも知れ渡り、1670年頃からマデイラワイン生産業が発展していくこととなる。このような背景から、今日でも100年前、150年前のマデイラワインが流通している。

ヨーロッパからアメリカ大陸へ渡る航行のなかで偶然できた加熱熟成ワイン
米大統領にも好まれ、独立記念日にはマデイラワインで乾杯したという記述も残る
島で最も古いブドウ畑は樹齢100年以上

 島では起伏の激しい地形を活かし、ドライ・ミディアム・ミディドライ・スイートの4つのタイプに応じたブドウの品種を栽培している。例年8月第3週〜10月1週が収穫時期で、島内のワイナリーを訪ねれば収穫体験や足踏みでブドウを破砕する伝統的な体験もできるという。

 シーフードの炭焼きやシュラスコに似たお肉の串焼きエスペターダ、さつまいもパンのボーロ・ド・カコなど、地元の食材を使った伝統的な料理とのマリアージュも欠かせない楽しみだ。

 一体どんな味か試してみたい、でも現地まで足を運ぶのが難しい……という人は、銀座にあるマデイラワイン専門店「マデイラ エントラーダ」(東京都中央区銀座6-5-16)がオススメとのこと。

大西洋に面するポルトガルとマデイラ諸島
銀座にあるマデイラワイン専門店でその味を体験できる

 初心者向けのライトなものからヴィンテージまで160種類以上のマデイラワインが揃い、すべてグラスで注文できる。ポルトガル・マデイラの誇るワインツーリズムをぜひ疑似体験してみては。