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成田空港、新ターミナルはどこにできる? 検討会が候補地を説明

第5回「『新しい成田空港』構想検討会」

2023年3月14日 実施

運輸総合研究所で開催された第5回「『新しい成田空港』構想検討会」

 NAA(成田国際空港)は3月14日、成田空港のさらなる機能強化に向けた「『新しい成田空港』構想検討会」の第5回を運輸総合研究所で開催した。中間とりまとめをするため、メンバーを集めた検討会は今回でいったん休止となる。

 前回と同様、会場にはオンライン参加も含め、代表取締役社長の田村明比古氏をはじめとするNAAの経営陣、周辺各市町村の市長や町長、千葉県の副知事、構想検討会の委員長を務める運輸総合研究所の所長である山内弘隆氏や各大学関係者が集まった。

 検討会が終了したあと、田村社長と山内委員長が取材陣に対して新ターミナルと新貨物地区のおおよその建設候補地についても説明した。

成田国際空港株式会社 代表取締役社長 田村明比古氏
一般財団法人 運輸総合研究所 所長 山内弘隆氏

 成田空港は開港から44年が経過し、既存の建物の老朽化による効率のわるさ、空港アクセスの高速化が求められるなど、事業者や旅行客からの要望は数多い。さらに政府とNAAの試算によると今後の空港需要はさらなる伸長が予想され、2032年度~2048年度にかけて50万回の発着回数が見込まれている。

 そこから予想されるのは旅客数が現在の4000万人から7500万人、貨物取扱量が200万トンから300万トン、空港内従業員数が4万人から7万人と増え、より多くのキャパシティが必要とされる。

 そのため、検討会の第1回で3本目の滑走路の新設、第2回目で貨物地区の新設、第3回目で集約した新ターミナルによるワンターミナル化、第4回目で空港へのアクセスについて話し合いが行なわれた。

 今回の検討会では、前回までに話し合われた内容をさらにブラッシュアップしたものを参加者に見てもらい、“中間とりまとめ案”から“中間とりまとめ”にする意見交換が行なわれた。概要は以下の4つに分けて説明され、各市町村から要望の多かった“地域共生・まちづくり”も別立てとして盛り込んだ。

1. 旅客ターミナル

 集約型ワンターミナルの整備により、直行需要とともにアジアをはじめとする三国間流動や国際線・国内線の乗継需要を取り込み、多様なネットワークを持つ国際ハブ空港を目指す。

・施設集約による柔軟性・高効率性
・コンパクトで高い乗継利便性
・インバウンドをはじめお客さまが楽しめる
・周辺地域の住民が楽しめる
・災害に強く高レジリエンス
・環境とコストへの配慮

2. 貨物取扱施設

 新貨物地区の整備および周辺地域との一体的展開により、直送貨物とともにトランジット需要も取り込み、東アジアの貨物ハブを目指す。

・貨物上屋とフォワーダー施設が密接に連携した新しい貨物フロー
・隣接物流施設との一体的運用
・圏央道ICから新貨物地区へのアクセス
・周辺地域と新貨物地区との連携による新たな需要の創出
・最先端技術の導入
・環境とコストへの配慮

3. 空港アクセス

 利用者のアクセシビリティ向上のため、速達性・利便性・確実性を確保するとともに、公共交通の充実や渋滞解消などによる環境負荷低減を目指す。

・鉄道の利便性の向上
・バスの利便性の向上
・タクシー/ハイヤーの利便性向上
・NAAが主体となった先端技術の導入
・空港内道路の混雑解消
・周辺道路網の検討
・高規格道路と空港との接続性の向上
・パークアンドバスライドの導入検討

4. 地域共生・まちづくり

 地域と空港が相互に連携して持続的に発展していく「エアポートシティ」の実現に向けて、積極的な地域貢献を目指す。

・地域に経済循環を拡大
・地域と空港機能の連携
・地域と空港の交流
・空港を支える雇用環境
・地産地消の積極的取り組み
・脱炭素化に向けた地域との連携

新ターミナルは第2ターミナルの南側、新貨物地区はB滑走路とC滑走路の中間を検討

 検討会を終えて山内委員長は取材陣に対し、「細かな意見はありましたが、反対や大きな異論はなく、内容について同意を得られたものと思っています」とし、今回の内容で中間とりまとめに向かう考えを述べた。

 田村社長も「最終的なとりまとめは委員の皆さまから委員長に一任すると同意を得ていますので、相談しながら年度内に最終案として公表できるようにしたいと思います」と今後の進捗について話した。

 また、新ターミナルと新貨物地区の建設候補地についても言及し、スライドに表示されている地図で説明した。新ターミナルについては「新しい旅客ターミナルの具体的な位置はまだ検討中であるが、C滑走路を含む3つの滑走路から見てほぼ中心となる第2旅客ターミナルの南側が有力な候補地である」とし、新貨物地区については「新貨物地区の具体的な位置もまだ検討中であるが、新規に用地を取得する空港東側エリアにおいて、B滑走路とC滑走路の中間となる地点が有力な候補地である」と明かした。

 来年度からは細かなスケジュールや建物の設計、コスト計算など、レベルを上げた計画を策定するとしている。加えて、現段階では例の一つであると前置きしたうえで、新ターミナルの半分が完成した段階で第1ターミナルを閉鎖し、第3、第2、新ターミナルをつないで運営を続け、新ターミナルがすべて完成した時点で既存のターミナルを閉鎖する、2ステップを経て移行する考えがあることも説明した。

地図上で建設候補地を説明する田村社長
新ターミナルは第2ターミナルの南側、新貨物地区はB滑走路とC滑走路の間を候補地としている

 検討会は冒頭でも触れたようにこれでいったん休止となるが、アクセスなどは関係者や事業者と個別に相談して進めていく方針だ。