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東京にいながら地方の食材を活かしたフレンチコースが楽しめる「旅するメーカーズディナー」。第2弾の徳島編に行ってみた
2023年3月7日 12:00
- 2023年2月26日 実施
JALは地方創生をコンセプトに「JALふるさとプロジェクト」を展開しているが、その一環として「俺のフレンチ グランメゾン 大手町」にてディナーイベント「旅するメーカーズディナー」を2月26日に開催した。同店で行なうイベントの第2弾として今回は徳島県とタッグを組んだものであり、同県のブランド素材をふんだんに使ったコース料理が提供された。
イベントは同店のシェフである神木亮氏と支配人兼ソムリエである長谷川純一氏が実際に徳島県に訪れ、生産者と交流を通して作成した特別ディナーコースをいただくというものであり、会場では大型スクリーンに徳島県の風光明媚な景色と生産風景が映し出され、旅情がたっぷりと感じられるようになっていた。
会の途中では、ビアノ演奏家である金山千春さんのライブ演奏も行なわれ、さらには長谷川氏が演奏に合わせて、丸焼きにされた阿波雄鶏のデクパージュ(切り分けサービス)を披露するなど、エンタテイメント要素もふんだんに取り入れた内容で会場を沸かせた。
メニューはデザートも含めて6品が用意され、それぞれにペアリングして楽しめるよう、選び抜いたワインなども提供された。最初に出されたのは、「酒粕のフィナンシェと“さくらももいちご“」にシャンパーニュをペアリングした組み合わせ。
さくらももいちごは佐那河内村で栽培されているブランドイチゴで、大粒で平均糖度が12度以上の果実だけを厳選して出荷している。人気は高く、初売りでは1箱で10万円以上の値が付くこともあるそうだ。飲み物はJALの国際線ビジネスクラスで採用されている「DELAMOTTE BRUT BLANC DE BLANCS」で、すっきりとした辛口で微細な泡立ちがほどよく感じるシャンパーニュだ。イチゴの甘さと香り、シャンパーニュの清々しい香りと泡が心地よさを感じさせ、次の一皿が楽しみになるスタートとなった。
また、提供に使用された小皿は徳島の焼き物である大谷焼で、お土産として持ち帰れるうれしいサプライズも用意されていた。
続いてサーブされたのは冷前菜で、「サーモンと黄金の村キャビアライム」にドイツ産のリースリングワイン「GEORG BREUER RAUENTHAL ESTATE RHEINGAU」の組み合わせ。
ノルウェー産の脂がのったサーモンにサワークリームがコーティングされており、ソースは徳島のスダチを使ったものになっている。添えられたキャビアライムはプチプチした食感と鮮烈な酸味が特徴で、コクのあるサーモンの脂を溶かしながらいただく趣向だ。
長谷川氏は酸味の強いメニューにワインを合わせるのはなかなか難しいとしながらも、酸度がもっとも高いと言われているブドウ品種、リースリングで作ったワインをチョイス。また、ドイツ産を選んだわけは、徳島県とドイツのニーダーザクセン州が姉妹都市であることからストーリー性にも配慮したことを紹介した。サーモンの濃厚な旨みを残しつつも、ソースの酸味、ワインの酸味がしつこさを感じさせない後味に仕上げてくれるペアリングは、クセになりそうな一皿だった。
温前菜として登場したのは、「猪と“コウノトリ蓮根”のファルシ」にブルガリアのオレンジワイン「VILLA MELNIK ORANGE WINE」を合わせたものだ。緑豊かな山中で獲れた猪と農薬・化成肥料を削減して育てた蓮根の組み合わせは、徳島県の大地を感じさせるものに仕上げられているとのこと。
ペアリングに選んだのは海外ではアンバーワインと言われる、琥珀色のオレンジワインで、お寿司や根菜料理に合うそうだ。本来ならオレンジワインの代表格であるジョージア産のボトルを選択したいところだが、特徴の一つである渋みが少し強いとのことで、今回はブルガリア産を用意したとのこと。
オレンジワインは陶器のツボで発酵・熟成させる特徴があるが、その風景が大谷焼の工房と似たようなシンパシーを感じさせるものであることもスライドで紹介し、そのつながる旅情を感じ取っていただきたいと長谷川氏は説明した。そうそう口にすることのない猪肉だが臭みはまったくなく、高級な豚肉のような力強い旨みを感じさせるもので、シャキシャキと歯応えのある蓮根ととてもマッチしていた。オレンジワインの独特な個性は、製法による違いがなるほどと感じさせる興味深い一杯に感じた。
魚料理は「“鳴門鯛”のアンクルート、“鳴門ワカメ”のヴァンブランソース」が提供され、鳴門市の本家松浦酒造が作った日本酒「鳴門鯛LED」を合わせる、鳴門尽くしとなっていた。渦潮が起きる鳴門海峡の急流でもまれたタイは身質に優れ、同じくワカメも肉厚でコシが強く、風味豊かに育つため、さまざまな料理で重宝される。
鳴門鯛LEDは、LEDを既存の酵母に照射して作った「LED夢酵母3826 Type2」を用いて醸造された新時代の日本酒だ。ヨーグルトの風味を感じさせる香りと酸味、トロピカルな甘みは既存の日本酒とは異なり、フレンチなどの洋食にも合うとのことでペアリングされた。かみしめるたびに味わいが広がる鳴門鯛と磯の風味が伝わる鳴門ワカメの強力なタッグ、それに白ワインを思わせるようなフルーツ感が楽しめる鳴門鯛LEDの組み合わせは、今まで知らなかった世界を見せてくれた。
メインディッシュの肉料理は「“阿波雄鶏”と“天恵菇”のシャスール風」が登場し、JALビジネスクラスで採用されたピノノワール100%のドイツ産赤ワイン「FRIEDRICH BECKER SPATBURGUNDER DOPPELSTUCK」がサーブされた。料理とワインがサーブされる前にはピアノ演奏と阿波雄鶏のデクパージュの演出も加わり、会場の期待感を高めた。
阿波雄鶏は自然が豊かな土地で約80日以上飼育されたプレミアムチキンで、天恵菇(てんけいこ)は徳島県で生まれた大型のシイタケで旨み成分であるグアニル酸が従来品種よりも3倍含まれているのが特徴。シャスール風は狩人を意味しており、キノコ、エシャロット、バターなど、山の幸を白ワインを使って煮詰めたソースであることも紹介された。ルポゼ(加熱した食材を休ませる)の技法を取り入れた阿波雄鶏はパサ付きもなくジューシーで、肉厚のシイタケと交互に旨みと歯応えを存分に味わえるテイストに仕上がっていた。
ドイツの赤ワインは長谷川氏が説明するように、とても華やかな香りが感じられるが、料理の強い旨みをジャマすることなく、土地を感じさせる余韻を持っていた。
最後のデザートが提供される前には、スクリーンに大塚国際美術館からのライブ映像が会場に届けられた。鳴門市にある同美術館は世界26カ国の西洋名画約1000点を陶板で原寸大再現しているのが特徴で、鑑賞ルートは約4kmにもおよぶというから驚きだ。原寸大で再現された名画のなかには、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の修復前と修復後がそれぞれ展示されていたり、システィーナ礼拝堂の天井画が完全再現されていたりと、まるで現地に訪れたかと錯覚してしまうスケールの大きさを感じさせる映像が続々と紹介された。
デザートには「“なると金時”のクレーム・ブリュレ“柚香”のソース」と日新酒類の「Le fleuve 徳島 SHINEMUSCAT」が登場した。サツマイモのなめらかな甘みと、デザートワインのフレッシュな香りが鼻孔を抜けていく、そんなサッパリとした締めくくりで旅するメーカーズディナーは終了した。
支配人兼ソムリエである長谷川氏とシェフの神木氏は実際に現地に行って、今回のメニューを考えている。イメージしているものと実体験は異なるとし、「イチゴは最初の構想では手を加える予定でしたが、地面に近い場所で収穫されたものを口にした瞬間、土地を感じさせるテイストを大事にしようと考えが変わりました」と話すなど、生産者の方と交流をしてロケーションを確認することはとても重要なことであり、そこからストーリーが生まれると説明してくれた。そして、今回の体験でより多くの人が徳島県を訪れるきっかけになってくれればと取材に答えてくれた。
JALの執行役員で地域事業本部長を務める本田俊介氏は、今回のイベントは大都市から日本の地域に行く理由作りを具現化した一つであるとし、数多くある地域の素材を有名シェフやソムリエの方に手伝ってもらい、多くの人に知ってもらうことは非常に重要なことであると説明する。
また、コロナ禍の影響で止まっていたインバウンド需要も再び動き出した今、「日本だけにとどまらず、海外の方にもこういったイベントを通して知ってもらえるよう、将来的には海外から人を招いたり、海外にてこのようなイベントを行なって、地域の産品で人を連れて来れるように広げていきたいですね」と今後の展望についても話した。
旅するメーカーズディナーの第3弾は奄美大島をフィーチャーした内容で3月19日に開催が決定している。また、第4弾、第5弾も検討を進めているとのことなので、地方のよい食材やストーリーに出会いたい人はJALの地域活性化カテゴリをチェックしてもらいたい。