ニュース
首都高「日本橋区間地下化事業」に伴う工事現場を報道公開。フェーズ1「出入口の撤去工事」を実施中
2022年6月27日 14:11
- 2022年6月24日 公開
首都高速道路は6月24日、「日本橋区間地下化事業」が進行中の江戸橋出入口ヤード(東京都中央区日本橋兜町3)などの現場を報道公開した。
道路の総延長327.2kmの6割以上が開通から30年以上経過していることにより構造物の高齢化が進み、綱桁やコンクリート床版などに損傷がみられるようになってきている。そこで、2013年に「首都高速道路の更新計画」を公表。「高速道路リニューアルプロジェクト」として、「羽田線(首都高速1号)」「渋谷線(首都高速3号)」などにおいて大規模更新および修繕事業を行なっている。
都心環状線(C1)の竹橋JCT~江戸橋JCT(約2.9km)においては、1964年に開催された東京オリンピックを前に供用が開始されており、建設からすでに50年以上が経過している。加えて、1日あたり約10万台もの交通量があるため損傷が激しい。また、神田橋JCT~江戸橋JCTは日本橋川に架かる高架橋となっていることから、維持管理に際して船を必要とするなどの制約も大きい。これらの理由を鑑み、更新計画にて大規模な作業が必要であると診断された。
当初は現在のコンクリート床版から鋼床版への取り替えを予定していたが、2016年に日本橋周辺の3地区が国家戦略特区の「都市再生プロジェクト」に追加されたことにより、翌2017年から周辺のまちづくりと一体となって地下化を検討。道路敷地の上下空間に建物の建設を可能とする「立体道路制度」を活用することで、本線を地下へと移動し高架道路を撤去、日本橋周辺の空を取り戻し景観や環境の改善を図ることになった。
地下化されるのは神田橋JCT~江戸橋JCTの約1.8km。神田橋JCTから八重洲線(Y)へのルートを利用して地下に潜り一石橋付近で分岐、江戸橋付近で地上に出て江戸橋JCTで本線に戻るかたちとなる。地下化に伴い、常盤橋/呉服橋/江戸橋の各出入口が廃止となっている。
事業概要
路線名 :都心環状線(C1)
事業区間 :東京都千代田区内神田2丁目~東京都中央区日本橋小網町
延長 :約1.8km
車線数 :往復4車線
設計速度 :60km/h、50km/h、ジャンクション部40km/h
道路構造 :トンネル構造 約1.1km、高架構造 約0.4km、擁壁構造 約0.3km
地下化の第一歩となる出入口撤去作業が進行中
日本橋地下化事業が進行中の江戸橋入口跡の現場において、首都高速道路 更新・建設局 日本橋プロジェクト推進部長 草壁郁郎氏が概要を説明した。
この工事区間は1963年に開通して以来およそ60年が経過するとともに、断面の交通量が1日およそ10万台あることから損傷が激しく、2014年度に「大規模修繕事業」として事業化されたと前置き。その後、日本橋周辺の再開発事業が都市再生プロジェクトに位置づけられたことから、まちづくりと連携して地下化していくことになった経緯を述べ、「地下化事業が終わりますと首都高のリニューアル、さらには周辺環境の改善、地域の魅力の向上にも期待している」とコメント。
現在の進捗状況はフェーズ1の「出入口の撤去工事」を実施中で、2021年の4月に工事着手し、5月に江戸橋および呉服橋の出入口を閉鎖。取材当日は桁の撤去をしており、その撤去が終わるといよいよ本体工事に入る。「2035年に地下ルートを完成しまして、その後5年をかけて高架を撤去していく」と今後の予定を述べた。
続けて、首都高速道路 更新・建設局 日本橋プロジェクト調整課 課長 江水淳氏が事業概要を説明。
日本橋区間地下化事業の全長は1.8kmで、そのうちトンネル部分が1.1km。神田橋JCTから見ていくと、既設の八重洲線を100mほど使って新しく作るトンネル区間に入り、開削工法とシールド工法によるトンネルを経て擁壁、高架橋で江戸橋JCTに至るルートだ。1番深いところで地下20mくらいだが、地下鉄 銀座線や浅草線をかわしながら通っていく「針の穴を通す」ようなルートになっているという。また、今回の工事は周辺の再開発と同時に行なわれており、「まちづくりとインフラの整備を同時に長いスパンで行うのは初めてで、都市内のリニューアルに伴う新しいモデルケース」とコメントした。
現在の進捗としては出入口の撤去工事を進めている段階で、これは現在の橋脚下部にトンネルが位置しているため。先にこの部分の橋脚を撤去しつつ、本線部のトンネル掘削に支障がない部分に仮設の橋脚を設置、その後トンネル工事に入っていくという。この撤去工事が2023年度に完了することにより「青空が1割ほど戻る」と述べた。
次に、橋桁の撤去作業が行なわれている現場へと移動。船上で首都高速道路 更新・建設局 日本橋工事事務所 所長 長田光正氏が橋桁の撤去作業を説明した。この作業では1径間分2本の橋桁を切断、そのうち1本を片側2機、計4機のジャッキにより吊り下げ、1回およそ50cmの収縮を20~30回繰り返すことで河川上の台船に降下させる。橋桁1本の降下に要する時間は3時間半ほどで、2本降下後にトラックに積み込めるよう6分割して搬出する。今後、残る橋桁を撤去していき、出入口の撤去作業は2023年度末の完了予定だという。