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浜松町ビルディングを建て替える「芝浦プロジェクト」計画全容。日本初進出のラグジュアリーホテル「フェアモント東京」も

野村不動産グループ各社は西新宿から移転

2022年5月23日 発表

「芝浦プロジェクト」で建築する予定のビル模型。右から野村不動産ホールディングス株式会社 代表取締副社長 グループCOO 兼 野村不動産株式会社 代表取締役社長 松尾大作氏、野村不動産ホールディングス 代表取締役社長 兼 グループ CEO 沓掛英二氏、東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役副社長 喜㔟陽一氏

 野村不動産とJR東日本は、「浜松町ビルディング」建替に伴い、2018年3月国家戦略特別区域計画の特定事業として認定を受け開始され、共同で推進している「芝浦プロジェクト」の計画詳細を発表した。

 発表では、ツインタワーの1つS棟には、アコーのラグジュアリーホテルブランド「フェアモント東京」が日本初進出すること、同じS棟に野村不動産をはじめとするグループ各社の本社が移転することなどが発表された。

 プロジェクトの所在地は、JR浜松町駅とゆりかもめ日の出駅の中間地点辺りで、首都高 浜崎橋JCTのすぐ横、日の出桟橋のすぐ内陸側になる。JR浜松町駅からは雨に濡れずにアクセスができるようになる予定。

 野村不動産が保有する浜松町ビルディングと、JR東日本が保有する東海道貨物支線大汐線用地を合わせた4ヘクタールを超えるエリアで、S棟とN棟からなる約235mのツインタワーを段階的に建てていく。S棟竣工時に芝浦運河桟橋が、N棟竣工時にはツインタワーの中間に水上テラスが整備され、東京湾を船で回遊することも考えられている。本発表会は、日の出船着場の船客待合所とレストランがある施設「Hi-NODE」にて行なわれた。

芝浦プロジェクト発表会場となった「Hi-NODE」
Hi-NODEの後ろに見えるのが「浜松町ビルディング」
日の出船着場の桟橋
ゆりかもめや首都高速、JRなどが交差する東京湾岸に位置する
今後N棟に生まれ変わる浜松町ビルディングは現在まだ使用中
浜松町ビルディングは旧「東芝ビルディング」としても有名。1984年03月竣工
東京湾側から見た芝浦プロジェクト。内陸側に東京タワーも近い

 ツインタワーはS棟とN棟からなり、S棟の工事は2021年10月に着工しており、竣工は2025年2月を予定する。N棟は現在使用中の浜松町ビルディングを取り壊して建設する。2027年度着工で2030年度に竣工を予定している。

全体計画概要

事業主体: 野村不動産株式会社/東日本旅客鉄道株式会社
所在地: 東京都港区芝浦1-1-1ほか
区域面積: 約4万7000m2
延床面積: 約55万m2
主用途: 事務所、商業施設、ホテル、住宅、駐車場、DHC(地域冷暖房システム)施設など
階数/高さ:
S棟 地上43階、地下3階/約235m
N棟 地上45階、地下3階/約235m
着工および竣工(予定):
S棟 着工2021年10月、竣工2025年2月
N棟 着工2027年度、竣工2030年度

当日公開された「芝浦プロジェクト」の最新模型
向かって左がS棟、右がN棟
東京湾側となる芝浦運河に桟橋が整備される
ツインタワーをつなぐように作られる水上テラス
都心の親水空間を目指している
ツインタワーをつなぐセントラルプラザ
JR浜松町駅からは直結する通路が作られる
上層階には段差部に緑の多いテラス
28階のスカイラウンジ
ホテル「フェアモント東京」のインフィニティプール
芝浦プロジェクト周辺のジオラマ。透明のビルは建設予定のもの

 発表会では、野村不動産ホールディングス 代表取締役社長 兼 グループ CEO 沓掛英二氏が登壇。この場所は1960年ごろ倉庫が建ち並び、海には船が浮かんでいる物流の要所であり、高度成長期には羽田空港をつなぐ東京モノレールの開通やビルの建築が進んだこと、1984年に東芝の本社社屋として「芝浦1-1-1」の住所に浜松町ビルディングが竣工し、それ以来日本経済を支えてきた象徴的な建物であったことなど、エリアの歴史を振り返った。

 2008年に野村不動産ホールディングスに東芝不動産がグループ入りしたことがプロジェクトの契機であったことなどを説明しつつ、「野村不動産の2030年ビジョンである『まだ見ぬ、Life&Time Developer へ』を具現化するものとして、グループ総力をあげて取り組んでいきます。一人一人の生活や時間に寄り添い、働き、集い、住まい、憩う、さらにDXとサスナビリティの要素を加えた、このプロジェクトを通じて新たな価値を想像していきたい」と述べた。

野村不動産ホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 グループ CEO 沓掛英二氏

 続いて登壇したJR東日本 代表取締役副社長の喜㔟陽一氏は、このプロジェクトの湾岸エリアは1872年(明治5年)に日本で初めて鉄道が敷設された場所であること、そして1909年に現在の浜松町駅が開業、その後、竹芝や芝浦の島が整備され、浜松町駅は伊豆諸島への連絡駅としての役割を担い、1964年には東京モノレールが乗り入れ空港連絡ターミナル駅となり、さらに2000年には都営地下鉄 大江戸線 大門駅が開業、陸海空路の接点としての重要な役割を担ってきたことを紹介。エリアでの開発も大きく進み町は変貌、それぞれの開発施設を歩行者ネットワークでつなぎ回遊性向上を図っていると説明した。

 2020年には文化芸術を発掘する水を活かした複合型施設「ウォーターズ竹芝」を開業している。「2018年に発表したJR東日本グループ経営ビジョン『変革2027』により、鉄道のインフラを起点としたサービスの提供から、人の生活における豊かさを起点とした社会への新たな価値の創造へとビジネスモデルを大きく転換しています。すべての人の心豊かな暮らしの実現に向けて取り組んでいます。今年は新橋~横浜間に鉄道が開業してちょうど150年の節目の年、この記念すべき年に東京を大きく変えるプロジェクトを発表できることを光栄に感じます」と話す。

東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役副社長 喜㔟陽一氏

 最後に野村不動産ホールディングス 代表取締副社長 グループCOO 兼 野村不動産 代表取締役社長の松尾大作氏が、芝浦プロジェクトの発表を行なった。

 その冒頭、コロナ禍を経てライフスタイルや働き方が大きく変化したこと、PCがあればどこでも仕事ができることを体験したが、このスタイルにも限界があることを感じ、直接顔を合わせることで思考が加速し、合う価値を改めて知ることになったと言及。

「芝浦プロジェクトの最大の特徴は、空と海が完全に広がり圧倒的な開放感が得られることです。運河の浸水空間と豊かな緑地域空間に囲まれ、東京の利便性、空と海そして水と緑に囲まれた心休まる環境、その両方を同時に享受できる希有な街を創造します」と説明。価値観が変化した今の時代の新しいワークスタイル「TOKYO WORKation」を提案し、ウェルビーイングと生産性の向上していくとした。

野村不動産ホールディングス株式会社 代表取締副社長 グループCOO 兼 野村不動産株式会社 代表取締役社長 松尾大作氏
1960年ごろの浜松町、竹芝、芝浦
芝浦プロジェクト周辺
S棟とN棟の概要
広い緑化空間を整備する
オフィスフロアは都内でも最大級のフロア面積

S棟上層階にはアコーのラグジュアリーブランド「フェアモント東京」が日本初進出

 オフィスフロアは基準階面積約1556坪と、都内でも最大級のフロア面積。眼前に広がる空と海の眺望を活かすため柱スパンを一般的な7mの倍以上となる18m間隔とするほか、地上約138m(28階)にはワーカー専用の「スカイラウンジ」を用意する。

 浜松町駅から芝浦プロジェクトまでのアプローチや、敷地内は緑にあふれ、芝浦運河に面するテラスや船着場などの親水空間も合わせ、空と海と緑に囲まれる空間が広がるようだ。

 S棟35階から上層階には、日本初進出となるラグジュアリーホテル「フェアモント東京」が219の客室を備えて、2025年度開業することが発表された。「フェアモント」は1907年の創業以来、世界に80を超えるホテルを展開するラグジュアリーホテルブランド。

 アコー 東南アジア・日本・韓国最高経営責任者のガース・シモンズ氏からは、「フェアモント東京は、ザ・サボイ・ロンドン、ザ・プラザ・ニューヨークなどと並び、世界に誇るホテルの1つとなり、ほかにはないフェアモントならではのユニークなホテルとなるでしょう。フェアモント東京は、最高の立地よ崇高なデザインにより、訪れる価値のある場所になります。そして、芝浦というロケーションでは、新しいレベルのパーソナルなサービスとラグジュアリーな体験をしていただけます。日本初のフェアモントホテルを開業するにあたり、これ以上のプロジェクトはありません」とビデオメッセージを寄せた。

 アコーはパリを拠点とし、世界110か国で5300を超えるホテルやレジデンス、1万軒を超えるレストラン、バー施設を展開している1967年創業のホスピタリティグループ。ラッフルズ、フェアモント、ソフィテル、バンヤンツリー、プルマン、モンドリアン、ノボテル、メルキュールなど多数のブランドを持つ。アコーのラグジュアリーホテル進出は今回が国内初。

 ホテルのロビー階となる35階には屋外テラスラウンジがあり、最上階43階にはスペシャリティレストランやスカイバンケットを計画しているとのこと。

「フェアモント東京」が日本初進出と発表
アコー 東南アジア・日本・韓国最高経営責任者 ガース・シモンズ氏
フェアモント東京の35階テラスラウンジからの眺望イメージ
ゲストルームやレストランのイメージ

 脱酸素の取り組みとしては、オフィス用途の延床面積が30万m2を超える建築物では国内初 国内最大規模での「ZEB Oriented」の取得を目指している。「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」は、消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物を示していて、「ZEB Oriented」延べ面積が1万m2以上の建築物における評価基準。大型エアフローウインドウと高性能Low-e複層ガラスの採用や、建物内および地域冷暖房施設での省エネ、太陽光発電とカーボンニュートラル都市ガスの導入などにより、街区全体でのCO2排出量実質ゼロを実現する。

 事業継続に影響のある大規模な地震、高潮、津波、集中豪雨などの自然災害、感染症のリスクに対して、強力なBCP対策も施される。基礎構造体を直接的に地盤で支える直接基礎形式をとり、34階の上階に免震層を設置している。異系統2回線受電方式に加えて予備線を用意していて、系統電力途絶時はガス供給で動作するコージェネレーションシステムおよび、非常用発電機により約10日間、貸室内へ電力を供給が可能。停電かつガス供給も止まった場合には、ガスと重油の両方が使えるデュアルフューエル型発電機で連続稼働最低時間72時間送電ができる。

 水辺の立地であることを踏まえ水害には万全の対策をとっている。万が一の浸水に備え、敷地内に十分な高さの防潮板を設置することに加え、重要電気設備を4階よりも上に設置、内水氾濫対策として緊急遮断弁を設けられている。なお、防潮堤と水門が備えられているため、プロジェクト街区は浸水エリア対象外になっている。

脱酸素の取り組みで街区全体でのCO2排出量実質ゼロを実現
プロジェクト街区のハザードマップ
水害には万全の対策をとっている

 最後に、野村不動産ホールディングスと野村不動産をはじめとするグループ各社の本社を、芝浦プロジェクトS棟に移転することを決定したと発表があった。「1978年の新宿野村ビル竣工以来、44年間西新宿を拠点にしてきました。グループ全体でこれまで以上にチャレンジングな組織風土を醸成し、2030年グループビジョンを実現していきたい。そのためには社員が生き生きとウェルビーイングな日常を過ごすことが大変重要であり、この芝浦のロケーションがワークプレイスとして得難い立地であることから、移転するとの結論に至りました」と移転の理由について松尾社長が説明した。

隣接地上空から工事現場を見下ろす

 浜松町ビルディング29階から工事の様子や周辺の眺望を見ることができた。上層階からはこのような眺望が得られることになる。S棟は現在地下部分を工事中だった。

東京湾を晴海埠頭方向を眺める
お台場方面の眺め
芝浦埠頭方向を見たところ
芝浦運河を見下ろす
着工したS棟を見下ろす
工事を地上から見たところ
芝浦運河にある古川水門

 芝浦プロジェクトでは芝浦運河に桟橋が整備され、東京湾を船で回遊することも考えられている。発表会では、これを想定し、東京湾クルーズを体験する機会もあったので、その様子を写真でお伝えしよう。

 使われたのは「東京ウォータータクシー」で、最大8人乗りの船を15分単位で1隻チャーターするという船のタクシー。発着場所もコースも自由。15分5000円からで15分単位で予約できる。

「東京ウォータータクシー」の最大8人乗りの小型船。イエローで目立つ
日の出桟橋から出発!
意外と出足は早い。すぐに離れていく。芝浦プロジェクト方面を見ている
背後にレインボーブリッジ
すぐ横の汐留川水門を目指す。クジラの尻尾かな!?
近寄ると大迫力! 運河に入っていく
ここにはJR東日本の「ウォーターズ竹芝」があり、桟橋も用意されている
桟橋と小さな人工干潟がある
飛行船が飛んでいた。潮風を受けて気持ちがイイ
晴海埠頭の方面に向かう。東京オリンピックで選手村として使われた「晴海フラッグ」
この近辺にも桟橋が作られる予定があるとのこと
芝浦プロジェクト方面を遠方から見る
芝浦プロジェクト付近。後ろに東京タワーが見える
レインボーブリッジにも近づいてくれた
日の出桟橋のある「Hi-NODE」に戻ってきた
東京ウォータータクシーの船は小さく小回りがきく

 このようなコースでおおよそ30分程度だった。4人で1時間チャーターすれば1人分は2500円。ちょっとした気分転換に東京湾の船旅が楽しめる。桟橋が整備され定時で運航されるようになると、湾岸地区の魅力が一段と高まりそうだ。

 最後に、発表会で流された芝浦プロジェクトのイメージ動画のショットを掲載しておこう。CGで未来の芝浦プロジェクトの様子がよく分かる作りになっている。