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ANA/JALら、持続可能な航空燃料の国産化に向け団体設立。非エネルギー・航空業界を巻き込んだ取り組みに

2022年3月2日 発表

国産SAFの商用化・普及に向けた団体「ACT FOR SKY」が設立

 日揮ホールディングス、レボインターナショナル、ANA、JALらは3月2日、国産SAFの商用化・普及に向けた団体「ACT FOR SKY」を設立した。

 SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)とは、化石燃料以外の原料、すなわち動植物油脂やバイオマスなどから製造する代替航空燃料で、航空業界各社の掲げるカーボンニュートラル(2050年までにCO2排出ゼロ)には欠かせない存在と言えるもの。SAFは既存の航空燃料とよく似た性質を持ち、保存する貯蔵タンクや機体への給油設備、使用する航空機自体に変更を行なう必要がない。異なる原料で製造したSAFを混ぜ合わせて使うこともできる。

 一方で、世界的な需要の高まりに対して国内では商用化にいたっておらず、ACT FOR SKYは原料の調達から製造・供給までの国内サプライチェーン構築を目指す。

 ACT FOR SKY参加企業は、前述の4社に10社を加えた14社を国産SAFに直接関与する「ACTメンバー」、ほか2社をサプライチェーン構築に関与する「SKYメンバー」と位置づけている。

登壇者による除幕
ACT FOR SKYのロゴは書道家の山口芳水氏が手がけたもの
日揮ホールディングス株式会社 代表取締役会長 CEO 佐藤雅之氏

 同日行なった会見では、上記4社の関係者が登壇。日揮ホールディングス 代表取締役会長 CEOの佐藤雅之氏は、「航空は技術的にCO2排出削減が困難なセクターとされており、SAFはその切り札だが、国内では商用に至っていない」と背景を説明する。SAFの普及拡大促進のために「ACTという強い意志」を持つ企業が資源循環などの重要性を訴えて、その先の行動変容を促さなければならず、そのための集まりが「ACT FOR SKY」だと述べた。

日揮ホールディングス株式会社 常務執行役員 秋鹿正敬氏

 現状、日本の航空会社が使用しているSAFは航空燃料全体の1%程度だが、業界では2030年に日本全体の航空燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、その量は120~130キロリットルと見られている(東京ドームの体積に匹敵)。

 将来の需要を見るまでもなく、単一の原料・製造方法ではすべてのSAF需要をまかなえないという実情があり、加えて、廃食用油・バイオマス・微細藻類・廃棄物などを原料とするSAFは既存航空燃料の製造と異なるため、原料・製造方法ごとに多様なサプライチェーンを構築する必要がある。日揮ホールディングス 常務執行役員の秋鹿正敬氏は団体設立の理由について、「これまでエネルギーや航空と関わりのなかった業界の協力が必要で、国産SAFの重要性や認知を進めることがカギ」と説明した。

秋鹿氏が示したスライド

 国産化、という点についてANA 代表取締役社長の平子裕志氏は、2030年に10%をSAFに置き換えるという目標を進めるうえで、世界中でSAFが不足して価格が上がる懸念を指摘した。現在はケロシンの4倍程度だが、それでは済まなくなる可能性があり、こうした観点からも国内サプライチェーンの構築が求められる。平子氏は将来的な可能性として、SAFを輸出できるようになる未来もあるのではないかと言及している。

 また、JAL 代表取締役社長の赤坂祐二氏は、「私が入社した30年前と比べて、航空機の燃費は半分になっているが、燃料の価格は倍になっている。同じことが今後30年でSAFにも起こると考えている」として、航空機の低燃費化とSAFの安定的な製造が業界の将来に必要だと強調した。

株式会社レボインターナショナル 代表取締役 越川哲也氏
全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏
日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏