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雪で見えない道路を衛星+高精度地図の自動運転で除雪。NEXCO東日本の試験車両に乗ってみた

ロータリ除雪車自動化の開発状況を実演公開

2020年11月25日 実施

NEXCO東日本 北海道支社が開発を進めるロータリ除雪車自動化試験車両

 NEXCO東日本(東日本高速道路)北海道支社は11月25日、北海道の高速道路における雪氷対策高度化システム「ASNOS(アスノス)」の一環で開発を進めているロータリ除雪車自動化の開発状況を夕張IC(インターチェンジ)のテストフィールドで実演公開した。

 冬の高速道路で除雪などを行なう雪氷車両は多種多様で、熟練を要する作業となっている。そのうえ、雪氷作業は吹雪などの悪天候により、ほとんど前が見えない状況で行なわれることがある。ところが近年、労働人口の減少や熟練者のリタイアによって技術伝承が困難となっており、非熟練オペレータでも安全・確実に作業できる環境構築が求められている。

 そこで、雪氷作業を自動化することで、吹雪や積雪で白線やガードレールなどの構造物が見えない状況でも、位置情報を認識して自動で運転・除雪作業ができれば、安心・安全な作業が可能だ。

 同社は準天頂衛星システム「みちびき」からの信号と高精度地図情報との組み合わせで除雪車の正確な位置情報を把握、車内にあるガイダンスモニターに表示するとともに除雪車の作動制御装置を連動することで走行や操作を自動化する計画を進めている。北海道支社 技術部長の市川敦史氏によれば、国内外を見てもこういった特殊車両の自律運転・自動化についてはめずらしい試みだという。

 今回紹介するようなロータリ除雪車は、スノープラウを装備して路肩に集められた雪などを除雪するとともに路外に飛ばす作業を担っている。実演公開ではNEXCO東日本が作成したPV動画を視聴したあと、自律走行するロータリ除雪車に試乗することができた。

NEXCO東日本「準天頂衛星システムを活用したロータリ除雪車自動化の開発について」
外観は一見すると普通のロータリ除雪車のように見えるが……
車両側面後部には北海道支社が手掛ける雪氷対策の高度化システムの名称「ASNOS(アスノス)」のロゴが書かれている
後部にはほかの雪氷対策車両と同様、大きな電光掲示板が設置されている
運転席上部中央に伸びるステーの上に黒く見える装置が準天頂衛星システム「みちびき」からの信号を受信するアンテナとなっている
運転席右側のガイダンスモニターには高速道路に設置されている設備の位置情報、路肩とロータリ除雪車との距離などが表示される
運転席内部中央のパネルで手動と自動との切り替え操作をする

 ロータリ除雪車の試乗では、エンジンをかけ発進してすぐにパネルを操作して自律走行へ変更。オペレータはハンドルから手を放し、自動で左側の白線に沿って細かく微調整しながら進んでいく感じだ。

 北海道支社 技術部 技術企画課 課長代理の白井和絵氏によると、ロータリ除雪車の自律走行は9月にこの夕張ICテストフィールドで確認がとれたばかりだという。テストフィールドは高速道路本線よりも曲線半径が厳しいカーブで構成されており、緩やかなR100の左コーナーから急なR15の右コーナーへつながっている。それにも関わらず、しっかりと自律走行状態で各カーブをクリアしていく。

 直線に入ると左側に電気施設や電話施設、橋梁ジョイントや排水マスなどの目印としてカラーコーンが置かれていたが、操縦席右側のガイダンスモニターに各施設の位置がしっかりと表示され、吹雪や積雪で各種施設が見えない状態でも正確な位置を把握できるようになっている。

 今後は実際の雪道での自律走行の確認・精度向上や、高速道路に設置されている各設備の場所に応じて排雪する雪の方向を変えたり、ロータリ機構部の高さの調節などの作業操作の自動化の試験を進め、本線での試験を行ない、2022年度にロータリ除雪車の自動化完成を目指すという。

自律走行中のロータリ除雪車。オペレータがハンドルから完全に手を放しているのが見える
除雪作業時には写真のようにロータリ機構部を回転させ雪を飛ばすシュートを展開した状態で時速3~6kmという低速で作業を行なう