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JR飯田橋駅、急カーブを解消した新ホーム・新西口駅舎で営業開始。構内レポート

2020年7月12日 供用開始

7月12日から供用開始したJR飯田橋駅の新西口駅舎

 JR東日本(東日本旅客鉄道)は、中央・総武線の飯田橋駅新ホームと新西口駅舎、新西口駅舎前の歩行者空間、新ホームと東口改札を結ぶ通路の営業を、7月12日の初発から開始した。同社の許可を得て取材したので本稿でレポートする。

 従来のホームは、曲線半径が300mのきついカーブに位置していたため、停車する列車とホームの間に最大で33cmほどの隙間と約20cmの段差があり、年間10件ほどの転落事故が発生するなど、乗客の乗り降りに危険な状態が長年続いていた。

 この問題を抜本的に解決するためホームの位置を新宿寄りに約200m移設することとなり、2015年8月より改良工事に着工、現在に至るまで工事が続いていた。

 営業開始となった新ホームは長さが約210mで、曲線半径が900mに緩和されている。勾配にも配慮した設計となっており、隙間は最大15cmにまで狭められるとともに、段差もほぼ解消しているという。

同じく7月12日より供用開始となったJR飯田橋駅の新ホーム。曲線半径が900mにまで緩和され、列車との隙間と段差を改善している
新ホームでは列車との隙間が最大約15cmに狭まり、段差も解消している
新ホームを新西口駅舎前の牛込橋から見た様子
こちらは、2007年5月に牛込橋から撮影したもの。新ホームの部分には何もない状態となっている
ほぼ同じ場所から新ホームを撮影。景色が大きく変わった
飯田橋駅の改良工事平面図(画像提供:JR東日本)

 新ホームは旧ホーム同様の島式ホームで、1番線が御茶ノ水方面、2番線が新宿方面となる。ホーム幅は、東京寄りの最も広いところで約7.5m、中央付近が約6.5m、新宿寄りの最も狭いところで約5m。新宿寄りの部分は、旧ホームよりもやや狭くなっている。

 旧ホームは新ホームから東口改札を結ぶ通路として利用される。電車がすぐそばを走るため、安全に乗客が歩行できるよう柵を新たに設置。ただし、東口改札と旧ホームを結ぶ東京寄りのエスカレーターと階段に加え、新宿寄りの階段を上ったところから東京よりの旧ホーム部分は閉鎖となった。

 新ホームの一部と旧ホームの通路部分はまだ完成しておらず、一部は仮設の状態となっている。今後も引き続き工事を進め、床や通路の柵などを新しくしていく予定。合わせて、設置時期は未定ながら、今後新ホームにホームドアの設置も予定されている。

御茶ノ水方面の1番線側。わずかにカーブしているが、従来と比べるとかなり緩やかとなっている
新宿方面の2番線側。こちらもカーブが緩くなっていることが一目瞭然。今後ホームドアの設置も予定している
ホーム幅は、新宿寄りの先端部分で約5m、中央付近で約6.5m
東京寄りではホーム幅が約7.5mとなる
旧ホームは、新ホームと東口改札を結ぶ通路として利用される
旧ホームには仮設の柵を設置して安全を確保
東口改札に降りる新宿寄りの階段およびエスカレーターから先は閉鎖となった
新ホームの一部と旧ホームの床と柵は仮設となっており、今後綺麗にしていくという
新ホームの駅名標

 また、ホーム移設に合わせて、旧西口駅舎のあった付近に新西口駅舎を建設。新西口駅舎は鉄骨造・2階建てで、延床面積は約2200m 2 。改札内に多機能トイレ1か所を含めたトイレと15人乗りエレベーター1基、上りと下りのエスカレーターを1基ずつ設置、階段は新宿寄りと東京寄りの2か所に用意される。新西口駅舎は早稲田通りから階段を9~10段上る必要があるため、階段横にはスロープと、1階および2階へとアクセスするエレベーターも用意されている。

新西口駅舎は、早稲田通りの牛込橋に面する場所に建設。鉄骨造・2階建てとなっている
新西口駅舎コンコース
西口改札には、5本の自動改札を設置
自動改札横には有人改札を設置
きっぷや定期券、特急券の券売機を3台とSuicaなどの交通系プリペイドカードのチャージ専用機を1台設置
券売機横にみどりの窓口がある
改札を入ると、目の前に行き先表示板と時計が目に入る
新宿寄りの階段
東京寄りの階段
エスカレーターは上下2基設置
エスカレーターをホームから見た様子
15人乗りのホーム行きエレベーター
ホーム側のエレベーター乗降口
トイレには多目的トイレも用意
早稲田通りからコンコースへは約10段の階段を登ってアクセスする
階段と手すりは、暗くなると照明が灯る
階段横にはスロープを用意
スロープの途中から横に抜ける形で6段の階段がある
スロープの先には、改札階と2階へとアクセスするエレベーターを設置
コンコースにはコインロッカーとATMも設置されている

 新西口駅舎のフロア構成は、1階が駅施設と店舗が3店舗、2階は店舗が2店舗設置される。1階の3店舗のうち、コンビニエンスストアの「NewDays」は同日午前に開業。ほかの2店舗は、改札外にベーカリーショップの「ル・グルニエ・ア・パン」と、改札内におむすび専門店の「おむすび こももち」で、いずれも8月25日に開業予定となっている。

 これら3店舗と、2階に開業予定の2店舗を加えた5店舗は、駅構内商業施設「エキュートエディション飯田橋」として運営されることとなる。なお、2階の店舗の業種と開業時期は現時点では未定だ。

 このほか、新西口駅舎と早稲田通りの間には歩行者空間を用意。早稲田通りから改札階へとつながる階段を上った部分に広い空間が用意され、一部に植栽も設置。また、今後この歩行者空間には史跡を展示するとともに、駅舎2階にはこの史跡や周囲を見渡せる展望デッキも用意されることになっている。

 JR東日本によると、今回の飯田橋駅の新ホームおよび新西口駅舎の更新事業は、現時点で約6~7割ほどの進捗状況とのこと。完成時期は未定としているが、今後は西口仮駅舎の撤去や新ホームの一部と旧ホーム通路部分の整備、新西口駅舎周囲の整備などの工事が引き続き行なわれることになる。

 今回の事業は、安全を確保するためのホームの移設と新駅舎の建設を、電車の運行を止めることなく行なう必要があったことや、周囲に牛込見附跡の石垣などの史跡が点在しているなど、非常に難しい内容だったという。そして、その裏には千代田区をはじめ飯田橋駅周辺の地元の協力があったとのこと。JR東日本は、地元の多大な協力があったからこそ進められた事業で、JR東日本単独で取り組んだ事業とは考えていないと感謝の意を示した。

1階改札外にコンビニエンスストアの「NewDays」がある。7月12日午前に開業
1階改札外にはベーカリーショップ「ル・グルニエ・ア・パン」が8月25日に開業予定
1階改札内には、おむすび専門店の「おむすび こももち」が8月25日に開業予定
2階にも店舗が2店設置される予定。また、2階の周囲は展望デッキとなる
駅舎前に歩行者空間を用意
階段を降りた先も歩行者空間となっている
歩行者空間には植栽も設置
今後、歩行者空間に史跡が設置される予定
神楽坂入り口付近に新西口駅舎の供用開始を祝う横断幕が設置されるなど、地元も歓迎ムードとなっている
新ホームからは牛込橋や牛込見附跡の石垣が望める。周囲に史跡があり、運行を続けながらの難工事は、地元自治体の協力があったからこそ進められたとJR東日本は感謝の意を示した

 最後に新ホームと新西口駅舎供用開始前後の様子をお伝えする。

 供用開始前日の7月11日23時に、2016年8月7日から利用されてきた西口仮駅舎の営業を終了。そして、初発電車となる4時43分発中央総武線千葉行きが発車するまでの間に、西口仮駅舎から旧ホームへとつながる階段を撤去し、階段を撤去した部分に仮の新ホームを設置。また旧ホームの柵も設置された。

 これら作業を初発電車の発車までに終え、新西口駅舎は7月12日4時30分に営業を開始した。当日は日曜ということもあり親子連れも含めた鉄道ファンが詰めかけ、新ホームと新西口駅舎の開業を祝福。そして、定刻どおり4時43分に初発電車が出発していった。

7月11日23時に西口仮駅舎の営業を終了し、工事関係者が中へと入っていった
旧ホームと西口仮駅舎を結ぶ階段の撤去を開始
この段階ではまだ旧ホームに柵は設置されていないが、この後初発までの間に設置された
新ホームと新西口駅舎の供用開始を目前に控え、工事関係者が駅周辺を取り囲んでいた
駅開業を見守る鉄道ファンも多く駆けつけていた
7月12日午前4時30分に新ホームと新西口駅舎の営業が開始となり、利用者や鉄道ファンが駅内へと進んでいった
駅コーンコースでは工事関係者が供用開始を見守った
初発は4時43分発の中央総武線千葉行き
定刻通り初発電車が到着し、最初の乗客の乗せて出発していった
新ホームには、西口仮駅舎へつづく階段の一部がまだ残されている
新宿方面の2番線に列車が停車している様子
1番線に停車する列車