ニュース
JAL、CAのブラッシュアップ教育をテレワーク化。実地教育にはないメリットも
2020年6月17日 11:30
- 2020年6月16日 公開
JAL(日本航空)は、5月のゴールデンウィーク明けからCA(客室乗務員)の「ブラッシュアップ教育」のテレワークで実施している。6月16日にその様子を報道公開した。
JALは新人CAが国内線で乗り始めて4か月ごろ、国際線の乗務を開始したあと(およそ入社後1~2年目)、国際線のファーストクラスの乗務を開始したあと(およそ3~4年目)に、業務の知識や技量の向上を図る「ブラッシュアップ教育」を行なっている。
例えば、今回報道公開した「国際線ファーストクラスブラッシュアップ教育」は、訓練を経てファーストクラスに乗務できるようになってから約半年後に実施。知識・技量の向上、将来のリーダー昇格に向けたキャリアプランの検討などが行なわれるという。
新型コロナウイルスの影響で、ファーストクラス乗務資格を取得したあとに一度も乗務できていないCAが多いほか、4月以降はJALもテレワークに入り、すべての社員の出社が停止されたが、ブラッシュアップ教育は緩めることなく進める必要があることから、リモートで教育プログラムを履修できるように検討。4月に検討を始め、2週間弱でプログラムの改定を行ない、ゴールウィーク明けから実際にリモートでのブラッシュアップ教育を進めているという。
2020年度は前述した3つのブラッシュアップ教育の対象者が約1800名と見込まれており、これまでに40クラス、約650名がリモートでのブラッシュアップ教育を終えたという。
ブラッシュアップ教育では、教官が教えるというスタンスではなく、すでに資格を有し、業務にあたっているCAの気付きを導くというスタンスで、ファシリテータと呼ばれる立場で2名が指導にあたる。2名のうち1名はマネージャ。もう1名はアテンダントファシリテータと呼ばれており、1~2年前に同様のブラッシュアップ教育を受けたCAが担当。実際のプログラムでもマネージャーとアテンダントが交互に担当し、キャリアや気持ちの近いファシリテータとのやり取りを通じた発想を導くねらいがある。
テレワークが行なわれていた期間中はファシリテータも自宅から指導にあたっていたが、6月からはファシリテータ1名は訓練センターのモックアップからアクセス。
ニューヨーク線を想定したサービスを行なうロールプレイが行なわれ、受講者は旅客やシチュエーションに合わせた声がけの内容やサービスの方法などをZoomを通じて実践。ロールプレイはファーストクラスの商品やサービスの確認などを行なう事前準備、日本語旅客対応、英語旅客対応の3度行なわれる。ロールプレイを通じて気になるところがあればファシリテータが実演して見せることもあるほか、ワークショップ型なので受講生同士、自由に発言することが許されているという。
ブラッシュアップ訓練の受講者はすべて訓練を終えていることから、基本的な所作などは身に着けている。また、英語表現などAIを活用した教育プログラムも実施しており、そこで覚えた内容をブラッシュアップ教育に反映する受講者も多いという。
ならばファシリテータがモックアップにいる必要もないのでは? とも思うのだが、受講生へのアンケートでは、ファシリテータがモックアップにいることはモチベーションや緊張感の向上などで効果が出ているそうだ。さらに、リモートのカメラ映像では、ズームアップして表情をよりしっかり確認できるなど、実地で遠くの席からは見えにくい部分もしっかり確認できるというリモートならではメリットもあるという。
一方、モックアップに受講者が集まって実施する場合は、気になった所作を実際にやってみることもできるが、リモート教育ではそれができない。そのような場合は所属先のチーフに申し送りし、実際の業務を通じて磨きをかけていくという。
リモート化のプログラム改定を進めたJAL 客室本部 客室品質企画部 業務グループ マネジャー 岡部有里氏は、「(教育の結果の)到達点は変えず、やれること、やれないことを整理して組み立てた。国際線ファーストクラスのブラッシュアップ訓練は検討を重ねたので初回からそれほど大きく変わっていないが、アンケートの結果を見て改善を進めている」と話す。例えば、ファシリテータによる実演項目を増やすなど、受講者の希望に沿った内容への変更は行なわれているという。
JALでは2020年度のブラッシュアップ教育はテレワークにより実施する意向で、来年度以降については、新型コロナウイルスの収束状況を見て、改めて検討するとしている。