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スカイマーク、洞駿新社長が就任会見。国内線はローカル to ローカルを拡大

2020年2月13日 会見

スカイマークの新たな代表取締役社長執行役員 洞駿氏が就任会見

 スカイマークは2月13日、1月31日に告知されていたとおり、代表取締役社長執行役員に洞駿氏が就任。都内で就任会見を開いた。

 洞氏は72歳で、1971年に運輸省(当時)に入省。2002年8月には国土交通省 航空局長に就任したほか、2007年にはANA(全日本空輸)に入社して副社長などを歴任。2018年7月からはスカイマーク非常勤顧問を務めていた。

 取締役会長の佐山展生氏は、前社長の市江政彦氏から1月に辞意を伝えられ、後任者を選定するなかで、「顧問として毎週火曜日の経営戦略会議には毎回出席していただいて積極的に発言いただき、その内容も的を得たよいご意見をいただいていた」と、現在のスカイマークをよく知る人物として就任を依頼したという。そして、2月13日の取締役会で新任の社長に決定した。

 さらに洞氏が国交省出身という経歴もあり、「航空業界は国交省らとの密接な関係を持ってお互いに理解しながら業界を伸ばすという、ほかの業種と違った面がある、航空局にいたので、手の内を知っているというと語弊があるが、本音の議論が国ともできるのではないか」と、今後の国交省との交渉においての期待も寄せている。

スカイマーク株式会社 取締役会長 佐山展生氏

 洞氏は「就任の話があったのはごく最近。予想もしていなかったのでビックリしたのが正直な気持ち」としつつ、「1年半にわたるスカイマークでの顧問の時間を通じて、とても楽しく、やりがいを感じた」と受諾の理由をコメントしたうえで、次のように述べた(要約)。

「スカイマークの競争力の源泉は、高い運航品質をベースとして、シンプルで非常に誠意あるサービスを身近な運賃で供する。これがスカイマークのビジネスモデルであり、広く日本のお客さまから強い支持を受けていると確信している。

 日本生産性本部や日本トレンドリサーチが発表しているが、顧客満足度調査においても、スカイマークは日本生産性本部の発表ではスターフライヤーに続いて僅差で2位に位置しているし、日本トレンドリサーチの発表では1番目がANA、2番目がスカイマーク、3番目にJALと2巨頭の間に顔を出している。今はトップクラスに踊り出て、定時運航率は2年連続で日本一になり、欠航率も一番少ない。

 スカイマークのビジネスモデルは、フルサービスキャリアでもLCCでもない独自のもの。広く国内市場を見渡しても、たくさんあった航空会社が大きく2色に分かれていく状況のなかで、スカイマークは小さいけどキラリと黄色の光を光らせながら立っている唯一の存在。

 この立ち位置をしっかりと堅持し、運航品質やサービスをさらに磨いて、日本のより多くの利用者の皆さまに享受していただくことが、私どもの責務であり、ミッションだと思っている。客観的に見てもそうなることが日本の国家国民のため、航空業界のさらなる発展のためにも必要なことではないかと、たいそうな物言いかも知れないが、そう思う。

 一方でスカイマークは非常に若い。以前は外部の文化を排除するような空気もあり、事業のノウハウや蓄積が薄い面もある。事業基盤も29機の飛行機を精いっぱい飛ばして余裕がない。仕事のやり方もまだまだ他社に比べると人力に頼る部分があり、後れている部分も多い。私の使命はスカイマークのビジネスモデルをブラッシュアップし、同時に基礎体力をしっかり整え、強化して、次の発展への橋渡しをすることだと思う。

 年齢的には高齢者だが、幸いにして健康なので、体力気力の続く限りスカイマークに尽くすことが、いろいろな方面から受けてきたご恩に報いることだと思っている」。

スカイマーク株式会社 代表取締役社長執行役員 洞駿氏

成長要素は「新機材」「国際線」「国内線のローカル to ローカル路線」

 洞氏は会見の質疑応答のなかで、成長戦略のファクターとして新機材や路線について説明した。

 機材についてはスカイマークでは、現在のボーイング 737-800型機の後継機の選定が進められているが、ボーイング 737型機のMAXファミリーの運航再開の見通しが立たないなか、「路線を増やすにしても機材が足りないので次の飛行機を導入しなければならない。ここは成長戦略のキーファクター」と掲げる。また、専務執行役員の西岡成浩氏も「安全が大前提なので、時間軸ありきで慌てて決めることはせずに見極めていきたい」と補足した。

スカイマーク株式会社 代表取締役専務執行役員 西岡成浩氏

 路線については、羽田空港の発着枠の問題から「国内線の幹線は路線展開が難しい。拠点を神戸空港や茨城空港にも置いているので、拠点空港を増やしながらローカル to ローカル(地方間路線)の拡大を考えないといけない」との方針を示す。「神戸空港は発着枠が拡大され、新幹線よりも遅い時刻に到着できる(羽田発)神戸行きのダイヤを発表した。伊丹空港も発着枠は増えないなか、神戸空港を起点にいろいろな方面へ路線を張ってお客さまに乗っていただく余地はあると思う」「茨城空港は私どもが開拓して拡大してきた。北関東の大きな需要を後背地に持っているので、まだまだ可能性は高い。利便性を高める余地がある」と、神戸空港、茨城空港の今後の可能性について示した。

 一方で、LCCとの競合は考えていないとし、「LCCと競合する路線は運賃競争で共倒れになる可能性がある。ニッチな領域になるかも知れないが、過度の競争にならない市場を勉強して開拓していきたい」と話した。

 加えて、会長の佐山氏は「神戸空港が、いつか羽田空港のように24時間化されれば、関東~関西間の夜間の移動が柔軟にできるようになる。(インテグラルが)投資させていただいたときは羽田~神戸便もそれほど搭乗率が高くなかったが、最近は夕方の便はほぼ満席で、最近は私もほとんど乗れない。年間の搭乗率も全路線の平均が83~84%ほど。一般に大手2社が70%ぐらいなので、13~14ポイント高い。民事再生を申し立てたときは、茨城空港は閉鎖の候補空港だったが、茨城県のバックアップのもと伸ばしている。羽田空港が遠く飛行機を利用しなかった北関東の方に利便性にお気づきいただいたので市場は伸ばせる。茨城空港は国内線のみだが、国際線も魅力的になるのではないか」としている。

 国際線については、「成田~サイパン線を就航させたが、パラオに就航させる計画もある。その先についても考えており、国際線は成長戦略の重要なファクターになる」との認識を示している。成田~サイパン線については旅行会社などとのシステム的な連携がないなか平均で70%を超えているといい、佐山氏も「順調に来ている」との手応えを示した。

 一方で、この成長戦略を実現するうえで課題について、「ローカル to ローカルが増えるとイールドが下がり、コストは上がる。生産性を上げて、ユニットコストを今以上に切り詰めなければならない。一方で投資すべきものは投資しなければならない。システムの近代化も不可欠」と述べている。システムについて自動化、省力化の観点でも大手よりも後れているとの認識を示しており、更新する方針を示している。

 また、スカイマークは現在、他社とのコードシェアを行なっていないが、「コードシェアを否定しているわけではく、海外からスカイマークの予約ができるインターライン契約など、必要に応じてコードシェアをしたいと思っている。国内線は搭乗率が84%ぐらいあるので、コードシェアをする積極的な意義が今のところはない」とコメント。佐山氏も「2015年1月の搭乗率は50%ぐらいで、空いているところを買っていただくイメージだった。そして現在は搭乗率が84%ぐらいなので我々が買わないと行けない状況。こういった意味でのコードシェアはやらない。どちらか1社ではなく、お互いにメリットがあるのならばコードシェアの可能性を探るべきだと考えている」とした。