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「京急デハ230形」を展示する「京急ミュージアム」、横浜新社屋にオープン。館長は元運転士

子供だけでなく大人も楽しめる本気度が凄い

2020年1月21日 オープン

京急本社ビル1階にオープンした「京急ミュージアム」。“本物に触れる”をコンセプトにした体験型の博物館だ

 京急(京浜急行電鉄)は、2019年9月に竣工、10月に本社機能を移転した横浜・みなとみらい21地区の「京急グループ本社」1階に「京急ミュージアム」を1月21日にオープンした。

 前日に行なわれた内覧会をレポートする。

京急ミュージアムのエントランス。みなとみらい線の新高島駅からすぐの場所にある。横浜駅東口からは徒歩約7分

 京急はこれまで東京都港区高輪に本社を設置していたが、京急グループの業務効率の向上や連携を強化するため、2019年10月にグループ企業11社、約1200名を新社屋に集約。また、京急が2019年1月21日に開業120周年を迎えたことから、創立120周年事業の一環として京急ミュージアムを整備した。

 京急ミュージアムは「『本物』を見て、触れて、楽しむ」をコンセプトに、リアルな体験をとおして京急グループの魅力を伝えるものになっており、約2年かけて修繕作業を行なった歴史的車両である「京急デハ230形」が展示されているほか、沿線を忠実に再現した「京急ラインジオラマ」や運転体験コーナー「鉄道シミュレーション」、工作体験ができる「マイ車両工場」など、多様な展示を楽しめるようになっている。

 入館料は無料だが、一部コンテンツは有料になっている。また、2月24日までは、事前申し込み(受付は終了)による抽選で選ばれた人だけが入場できる点は注意してもらいたい。

オフィスエントランスがある2階からもミュージアムを見ることができる
「京急ミュージアム」概要

オープン日: 2020年1月21日 ※2月24日までは事前申込制(受付は終了)
所在地: 京急グループ本社1階(横浜市西区高島1-2-8)
開館時間: 10時~17時(最終入場:16時30分)
休館日: 火曜(オープン初日除く、火曜が祝日の場合は翌日)、年末年始および特定日
入館料: 無料(一部体験コンテンツは有料)
Webサイト: 京急ミュージアム

 館内に入るとまず目を引くのは、目玉である京急デハ230形。昭和初期から活躍したこの車両は、1978年(昭和53年)に引退するまで品川駅~横浜駅~浦賀駅間の直通運転を実現した歴史的車両であり、埼玉県の川口市立科学館で保存されていた車両を修復したものだ。

 脇にはホームも設置されており、乗り込んで車内を見学することもできる。車内の一部は京浜急行電鉄の歴史を紹介するコーナーにもなっており、創業から現在までの移り変わりを学ぶことができる。

 また、車両から離れた場所にはドアの開閉スイッチやパンタグラフの昇降装置なども設置されており、実際に操作することも可能だ。このあたりに“見るだけ”ではない、“体験できる”というこだわりを感じる。

1929年(昭和4年)に製造された京急デハ230形「デハ236号」。当初は湘南電気鉄道デ1形として製造され、京浜急行電鉄発足時にデハ230形へと改番した。1930年から運行され、1978年までの48年間路線を走り続けた
車体は2年かけて細部にいたるまで丁寧にレストアされており、見応え十分だ
1970年代を再現したというホームからは車内に入ることができる。京急の歴史を知ったり、床に取り付けた透明窓から動力部を見ることもできる
車掌になった気分でドアの開閉を体験できるのもポイント。ドアの外側には透明の板が取り付けてあるので車内の人が落ちる心配もない
こちらはパンタグラフの昇降を操作できる制御盤を試してみたところ

 京急デハ230形の隣には長さ約12mサイズの巨大な「京急ラインジオラマ」が展示されている。こちらのジオラマは沿線風景の中に京急グループ各社の施設や取り組みを再現したものになっており、その中を京急電車の鉄道模型(HOゲージ)が颯爽と走る姿を楽しむことができる。

 さらにこの鉄道模型の先頭車両にはカメラが内蔵されており、端に設置された800形電車運転台で映像を見ながら運転気分を味わうことも可能だ(1回100円)。模型から見る景色も意外とスピード感があり、細部まで作りこまれたジオラマと相まって、レアな映像は大人でも十分に楽しめる。

全長12mの巨大なジオラマが中央に鎮座する
品川・都心エリアから横須賀・三浦・葉山までを6つのエリアに分け、地域の特徴を再現している
ジオラマには800形電車運転台が設置されており、3分ほど鉄道模型を走らせることができる

 京急ラインジオラマの奥には、「鉄道シミュレーション」「バスネットワーク」「マイ車両工場」コーナーが設置されている。鉄道シミュレーションは、本物の新1000形電車運転台を使ったもので、実写映像を見ながら運転操作を体験できる貴重なものだ。難易度は「初級」「中級」「上級」に加え、お任せ操作の「わくわくコース」が用意されているので、小さな子供でも楽しめるようになっている(1回500円)。

4つのコースから選べる鉄道シミュレーション。受付横の券売機でチケットを買う必要がある。時間が5~7分かかるので、時間指定の定員制になっている

 バスネットワークは、バスの運転台を再現したものだ。こちらも運転席からの実写映像がバスの前に投影されているので、運転士気分を存分に味わうことができる。また、バスの前面に表示されている行き先案内を変更できる機器も設置されているので、外からも楽しむことができる。

電車だけでなくバス好きも楽しめる、京急バスのフロントと運転台を再現したもの。行き先を変更する機能も22のプリセットが用意されており、作った人の意気込みが感じられる

 マイ車両工場は小学生くらいまでの子供を対象としたワークショップで、スタッフから京急の車両について講義を受けたのち、オリジナルデザイン車両の工作体験ができるものだ。京急車両のプラレールに自分が描いたデザインを貼り付け、オリジナルボックスに入れて持ち帰ることができるので、こちらも非常に人気を集めることになるだろう。各回12名の定員制となっている(1回1000円)。

各自が台紙に絵を描いたりシールを貼ってオリジナルのデザインを作る。デザインした台紙をスタッフが縮小コピーしてシールにしてくれるので、それをプラレールに貼り付ければできあがり
京急オリジナルのボックスには紐が付いているので、首から下げて持ち帰ることができる

 京急の運転士だった館長の佐藤氏は、自身も鉄道が大好きで「マニアが高じて入社したようなものです」と話す。20年以上、運転席に座っていたが、ガラス越しに凝視している子供の姿が在りし日の自分と重なるそうだ。こちらのミュージアムではそのような子供たちに鉄道の素晴らしさを伝えていきたいと意気込みを語ってくれた。

館長の佐藤氏は運転士の経歴を持つ、自称鉄道マニア

 とにかくコンセプトどおり、リアルを追及した展示物は子供から大人まで幅広い年齢層が楽しめる内容になっており、乗り物好きならぜひとも訪れてもらいたい。ただし、前述したように2月24日までは事前申し込みによる入場のみになっている点は注意してもらいたい。

 スタッフによると今後の入場については、現在のところ未定ではあるが、土日祝は混雑を避けるために事前の申し込みによる入場、平日は申し込みをしなくても入場できるような方向で検討しているとのことだ。