ニュース

セントレアで防災訓練。障害者の被災体験や煙中避難を初めて導入。空港勤務の約100名が参加

2019年9月2日 実施

煙中避難訓練などを初導入したセントレアの防災訓練。防災の日に合わせ、9月2日に行なわれた

 セントレア(中部国際空港)は9月2日、防災の日に合わせて毎年実施している防災訓練を実施した。15回目となる今回は、初めての実施となる煙に包まれた階段を下りる訓練や、障害者の避難支援のトレーニングを初めてプログラムに組み込んだ。

 セントレアの防災訓練は、地震や火災の発生に備えて利用者や、空港内勤務者の安全を確保するために初期対応について確認することを目的に毎年実施している。2019年は空港内に店舗を構えるテナントや航空会社の関係者など約100名が参加。常滑消防本部が指導に協力した。

 訓練はまず緊急地震速報が流れるのに合わせて「シェイクアウト訓練」を実施。姿勢を低くし、頭を守り、動かない、という3つの安全行動をとるもの。そして、初期対応として止血の実技を含む応急手当や、消化器/消火栓の使い方の座学、避難における一酸化炭素の恐怖や逃げ方のポイントなどを常滑消防署員がアドバイスした。

 ちなみに、この防災訓練に一般の空港利用者は参加していないが、ここまでの訓練はセントレア4階のイベントスペースで行なわれており、近くのシートで休息中の一般利用者が話に聞き入る様子も見られた。

4階のイベントスペースにセントレアで働く従業員約100名が集まり、災害発生の初動対応について学んだ
常滑消防署が指導に協力
地震発生時の3つの安全行動「姿勢を低く」「頭を低く」「じっとする」を実践する「シェイクアウト訓練」
出血時に第1に選択する応急手当である「直接圧迫止血法」の練習。ゴム手袋などで感染を防いで実施するなどのアドバイスも
出火時の消火、避難についての講習。一酸化炭素中毒から身を守る避難方法や、消化器/消火栓の使い方を消防署員が紹介

 ここからは2班に分かれて実技へ。1つの班はターミナルビル隣の第2セントレアビルへ移動し、非常階段を下りて屋外へ向かった。この際、非常階段が煙で充満しており、視界がわるいなか体を低くして安全に階段を下りる訓練も行なわれた。この煙中避難の訓練は今年初めて実施したという。そして、上記のアドバイスにもあった消火栓、消化器を実際に利用しての訓練が行なわれた。

 もう1つのグループはセントレアホールへ移動し、視覚障害や聴覚障害を持ついわゆる災害弱者と呼ばれる人たちの避難をサポートする訓練へ。この災害弱者の避難支援訓練も今年初めて行なわれたものとなる。

 具体的には災害発生時に障壁となるシチュエーションを体験するもので、目隠しをした人と介助者の2人1組で壁や足下の感覚を頼りに移動する体験、車椅子に乗る人と介助する人のグループで段差や狭い通路を通過する体験、外国人被災者を想定してシートに書かれた“お題”を言葉を使わずにジェスチャーを中心にして伝えたいことを伝える体験の3種類が用意された。

 現実において訓練参加者は介助者となるが、目隠しや車椅子に乗ることを通じて災害弱者の気持ちになり、“どのようなサポートがあると避難しやすいか”“どのような恐怖があるか”を話し合うきっかけにすることを目的とした内容となっている。

煙が充満する非常階段を下りる訓練。身を低くし、手すりを確認しながら慎重に避難
第2セントレアビル1階にある消火栓からホースを伸ばしての放水訓練
消化器の訓練
目隠しをした人と介助者が1組となって歩く体験
車椅子での移動が困難な場面を体験
言語を使わずにジェスチャーだけで伝えたいことを伝える体験
中部国際空港株式会社 取締役 執行役員 空港運用本部長 八鍬隆氏

 今回の訓練を担当した、中部国際空港 取締役 執行役員 空港運用本部長の八鍬隆氏は講評として、「万が一の災害発生時にお客さまの安全安心を守るためには初期動作が大切。救急車や消防車の到着には時間がかかるので、空港で実際に働いている方がいかにしてお客さまを守るかが一番大事だと思う。今日は地震から自分の身を守り、火を消すための消化器や消火栓の使い方を訓練していただいた。また、体に障害を持つ方についても安全に避難していただくためにどのようにしたらよいかを実際に体験し、皆さんに考えていただくことを実施した」と訓練の目的をまとめた。

 そのうえで、新たに災害弱者支援のプログラムを導入した理由について「2020年には東京パラリンピックもあり、セントレアは障害を持った方の利用も増えている。ハンデがあるぶん、災害が起きた際に戸惑われることもあると思うのが、うまく手助けするには、実際に手助けをする方も慣れておかないとできないと思うので、そのような経験をしていただいた」と目的を話した。

 また、今回の防災訓練の終えての印象として、「皆さん真剣に取り組んでいただいて、実際に消化器や消火栓もご自身で操作していただいので、いざというときにも、この体験は活きるのではないか」と期待を寄せた。