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セントレア新社長の犬塚氏「早めに課題を解決し、需要拡大に応えていく」

2019年7月10日 実施

 中部国際空港(セントレア)は7月10日、都内で報道関係社向けに記者会見を開催し、6月27日に新社長に就任した犬塚力氏が、同空港を取り巻く状況を説明するとともに、社長就任にあたっての抱負を述べた。

中部国際空港 代表取締役社長の犬塚力氏

 犬塚氏は、これまでのセントレアの歩みを振り返り、「来年の2月に開港15周年を迎える。15年前に愛・地球博とともに開港し、この間、リーマンショックなどもあり、大変厳しい経営環境が続いていたが、国をあげた訪日外国人旅客(インバウンド)の誘致、LCCの台頭などから、昨年度、万博特需にわいた2005年度の旅客数をようやく更新できた。開港以来、友添前社長をはじめとした歴代マネージメント層と現場のスタッフが一体となった努力を続け、航空ネットワークの充実や旅客・貨物需要の回復に向けた取り組みが結実し、こうした結果として表れたと考えている」と語る。

 そのうえで、「ここ数年、整備が進んでいた南側地区においても、昨年10月に『FLIGHT OF DREAMS』が開業し、今年の8月には愛知県の国際展示場『Aichi Sky Expo』、9月20日にはLCC向けの第2ターミナルのオープンを予定しており、将来の成長を支えるための新たな基盤が整備されていく。新たにこれらの3つの施設がそれぞれの強みを生かすことで、さまざまな相乗効果がいかんなく発揮されるとともに、空港の島全体に大きな吸引力が生まれ、最終的には地域の魅力、利便性の向上に大きく貢献していくものと考えている」と直近の動向を説明。

 この先の見通しとして、「今後のセントレアを取り巻く経営環境については、少子高齢化などによるアウトバウンドの伸び悩み、空港コンセッション拡大による空港間競争が激化する一方で、インバウンド需要の成長、LCC路線の拡大といった増加する航空需要への適切な対応といった観点も重要で、硬軟織り交ぜた判断が必要な状況が今後続くものと考えている。さらに長期的にはリニア中央新幹線の開業を契機に巨大経済圏の形成によって中部地域の活性化も念頭に置いて物事を考えていく必要がある」と述べた。

「夢と笑顔」をテーマに職員や地元と一緒に歩む

 続いて犬塚氏は「こうした状況を踏まえ、社長就任にあたっての抱負を申し上げたい」として、以下のように述べた。

「セントレアは安心・安全の確保を最優先のテーマとしつつ、今後想定される環境変化のなかにおいても飛躍的な成長を実現し、地域の皆さまに愛され、親しまれる空港であり続けることが使命であると考えている。地域の熱意と期待を担って開港したセントレアだが、今後の中部地域のさらなる発展に貢献し、ひいては日本の成長を支える重要な空港インフラとしての役割を果たしていきたい。そのためには、これまでに築き上げられたセントレアの資産をしっかり受け継ぎ、引き続きさまざまな課題を克服しながら、さらなる成長を成し遂げる、地域の発展につなげていくということが私と新体制に与えられた責務であると認識している。

 まずは、さらなる航空ネットワークの拡充と需要の拡大を重点とするが、とくに成長の糧としてLCCの拡大と昇龍道プロジェクトをはじめとした地域の魅力発信への取り組みが大変重要になってくる。LCCの拡大については、9月にオープンする第2ターミナルをLCCのビジネスモデルに沿った機能を最大限に発揮し、「空旅をもっと自由に自分らしく」をテーマに国内でも屈指の利便性の高いターミナルを目指していく。

 この地域は、ものづくり地域として長きにわたって日本経済を牽引してきたが、あわせてグルメ、観光素材、広域アクセスなど、どれをとっても類まれな観光の魅力・ポテンシャルを持ち合わせた地域だと認識している。今後も旺盛なインバウンド需要を取り込むためにも、地域の皆さんと協力し、空港インフラとしての役割をしっかりと果たしながら、訪日外国人旅客から選ばれる地域、選ばれるゲートウェイとなるようにしっかりと取り組んでいく。

 同時にお客さまから選ばれる空港であり続けるためには、開港以来島内関係者と一体で取り組んでいるCSマインドに磨きをかけるとともに、昨今の旅客増に伴う施設整備、機能拡充についても時期を逸することなく進めていきたい。

 地域が一体となって進めている2本目の滑走路の整備、推進については、地域の自治体、経済界をはじめとして関係する皆さまのご支援、ご協力なくしては成し得ない。これまで先代が築いてきた地域の皆さまとの協力関係をさらに進め、しっかり取り組んでいきたい。

 いずれにしても新しい時代、令和の幕開けとともに社長に就任したことは、大変光栄であるという一方で、セントレアの新しい時代の幕開けの舵取り役ということでの責任の重さに改めて身が引き締まる思い。私自身、『夢と笑顔』が座右の銘というかテーマと言っているが、この夢と笑顔を忘れずにセントレアグループの皆さんと一丸となって空港運営に努めていきたい。」

さらなる成長に向けて早めの課題解決を図る

 質疑応答では、グランドハンドリングの人材不足などについてコメントを求められると、「グランドハンドリング自体が人材不足で厳しい状況にあるのは確かで、グランドハンドリングの各社と打ち合わせを持ちながら、我々としてできることはやりますということで、対応を進めていただいているところ」(犬塚氏)と回答。

 同席した代表取締役副社長の各務正人氏も「今、グランドハンドリングやウイングサービスについて急激な需要の拡大があり、供給側の体制として非常に苦しい体制であるというのは事実。この問題はセントレアだけでなく、日本中で起きている問題で、国をあげて取り組まないといけない。情報を共有しながら、対応できるように進めている。新規就航の発表もあるように対応はできてきている」と述べている。

代表取締役副社長の各務正人氏

 第2滑走路については、「地元が大変熱い期待を持っているので、いつかというのは別として、成長のベクトルを維持し、向上させていくということを考えているので、いつか必要になってくる。24時間空港として進めている中で整備の面や何か起きたときの対応という点でも将来的に確実に必要になってくる。セントレアとしては、成長を維持、向上させていくためには、グランドハンドリングの件のように顕在化している課題もあり、成長に伴って顕在化していない課題も出てくることが予想される。そういったことに早め早めに対応し、健全な成長を続けていくことが我々の使命になる」(犬塚氏)と語った。

 また、海外進出の可能性については、「個人的には興味がある。企業が成長していくうえではグローバル化というのは一つの大きな要素。ただ、やらなければならないことがいろいろと出てくるので、優先順位を考える必要がある。自分たちの今のキャパシティや人的資源などを考えながら検討していくことになる」とする。

 インバウンドの需要の見通しについては、「我々の空港だけで見ると、他空港よりも高い伸びを示しており、まだまだ成長の余地があるのではないかと思っている。就航便数の拡大に向けて努力していきたい」という。一方、アウトバウンドについては、「セントレア発で海外に行くということを地元の企業や代理店に積極的に働きかけてお願いしており、そういう活動を続けていく。若者への需要喚起にも力を入れていきたい」としている。