ニュース

中部国際空港(セントレア)、東海沖地震を想定した貯油タンクエリアの防災訓練を実施

2015年11月17日 実施

空港島南端にある給油施設で実施された航空機給油施設貯油タンクエリア総合防災訓練

 中部国際空港給油施設は11月17日、中部国際空港(セントレア)で「航空機給油施設貯油タンクエリア総合防災訓練」を実施した。これは2006年の開港以来、毎年実施しているもので、大地震発生に伴う施設損傷、漏油、火災、けが人等の発生を想定した訓練となる。参加者は中部国際空港給油施設の自衛消防組織および常滑市消防本部、航空保安協会(空港消防署)など40名余り。

給油施設には容量7500kL、使用時6000kLのタンクが5つ並ぶ。タンク1つで約4日分の燃料を賄う
訓練はこの304タンクから燃料漏洩が起きた想定
燃料タンクがあるエリアにはいたるところに消火器などの消火設備が備わっている
中部国際空港給油施設 自衛消防組織の隊員
自衛消防組織隊長が訓練開始を宣言
地震発生を前に持ち場へと散っていく

 今回の訓練想定は、東海沖を震源とする震度6の地震により燃料の漏油および負傷者が発生、その後タンクから出火したというもの。

 訓練は13時30分に緊急地震速報が流れるところからスタート。30秒後に地震が発生、13時31分には管制課より地震の規模が300ガル、震度6であったことが伝えられる。同施設の管理棟には地震計が設置されており80ガル、震度5相当になると給油機の払出ポンプが自動的に停止、航空機への給油ができなくなるため、施設点検や情報収集を目的として災害対策室が設置され、状況に対処していくことになる。

地震発生の一報とともに対策室を設置、情報を収集。訓練のため屋外だが本来は制御室内に設けられる
人員の確認とともに防護班を結成
津波警報の発令がないことを確認後、施設の点検に向かう
304タンクの底部より燃料の漏洩を発見
消火器により警戒を行なうとともにタンク内残量を確認
消防へ連絡する一方、土嚢による流出防止措置を行なう
漏洩部周辺に積み上げていく
通報を受けた消防から指揮車が到着
指揮本部を立ち上げる準備
土嚢処置中にけが人が発生
けが人を救護
隊長が救急車の手配を要請
救護班も加わりけが人をタンカで搬送
救護所で応急処置を行なう
漏洩場所にも隊員を配置し状況を随時確認
救急車が到着
救急隊員により応急処置を実施
救急車に搬送し病院へと向かう
漏洩個所で火災が発生
消火器により初期消火を行なうとともに指揮本部に連絡
連絡を受けた消火班が出動
消火活動を開始
常滑市消防本部及び空港消防署の消防車と指揮車が到着
消防隊が現着を報告
常滑市消防本部大隊長の指示により一斉放水を開始
火元の304タンクに重点的に放水
延焼防止のため隣接する302タンクへも放水を行なう
大隊長と隊長により鎮火を確認
訓練は30分余りで無事に終了

 情報収集、施設点検、通報連絡、応急救護、初期消火、合同消火を経て訓練は無事に終了。当初、訓練は1時間の予定が組まれていたが、参加者の迅速な行動により30分余りで一連の処置を完了。日ごろの訓練の成果であるとともに、関係機関の連携がムダなく正確に行なわれた結果と言える。

 訓練終了後に講評を求められた常滑市消防本部消防次長の渡辺啓介氏は「日頃の訓練の成果が十分発揮され、迅速・的確に訓練は行なわれたと思います。皆さんご承知のとおり、危険物施設の災害というのは人的被害を伴う大規模災害に発展する可能性が非常に高く、迅速な対応が求められます。今後も各機関との情報の共有、連携の強化を図るため、訓練を継続して行なっていただき、有事の際には迅速に対応できるよう、よろしくお願いいたします。」と述べた。

 続いて中部国際空港 代表取締役副社長 兼 中部国際空港給油施設 代表取締役社長の各務正人氏が登壇。「この給油施設は空港のなかでも1つだけ離れた場所にありまして、限られた人数で運営されている特殊性がございます。そういったなかでの災害対策ということで、いろいろな工夫と常日頃の訓練が大事だろうと思います。本日は空港給油のほかに常滑消防、常滑警察署、空港保安協会と各機関の皆様にもご参加いただきまして、きちんと立派な訓練ができたものと大変うれしく思っております。来年(2016年)の5月にはサミットも、この近く、伊勢志摩で開催されます。常日頃からこういった空港の施設をしっかりと守り、またいざというときには的確に対応できる、そのための準備を常々怠りなく進めておくということがいかに大事か、本日の訓練を通じまして、改めて感じさせられたところであります」と述べ、訓練を締めくくった。

訓練終了後には常滑市消防本部消防次長 渡辺啓介氏による講評
参加した隊員たちにお礼を述べる中部国際空港株式会社 代表取締役副社長 兼 中部国際空港給油施設株式会社 代表取締役社長 各務正人氏
常滑市消防の化学消防車
空港消防署の化学消防車
放水銃は独特な形状

(安田 剛)