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首都高、東名高速と接続する横浜環状北西線の進捗など報告。「橋脚水中部調査機器」をお披露目

2018年9月の定例会見

2018年9月12日 開催

首都高は東京・霞が関の本社で定例会見を開いた。会見で紹介した「橋脚水中部調査機器」

 首都高(首都高速道路)は9月12日、東京・霞が関の本社で定例会見を開き、代表取締役社長の宮田年耕氏が直近の首都高の状況について説明を行なった。

 東名高速道路と接続する横浜環状北西線(北西線)事業の進捗については、橋脚工が完了。桁架設工を実施中で、約70%の架設が完了している。シールドマシンによるトンネル掘削は8月9日に完了し、内部構築工や設備工をこれから実施していく。掘削を終えたシールドマシンは9月7日に報道向けに現場公開を行なっている(関連記事「首都高、横浜環状北西線のトンネル貫通。掘削を終えたシールドマシンを公開」)。北西線は東名高速道路 横浜青葉IC(インターチェンジ)と第三京浜道路 港北ICを結ぶ、延長約7.1kmの自動車専用道路で、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会までに開通する予定となっている。

首都高速道路株式会社 代表取締役社長 宮田年耕氏
横浜環状北西線のトンネル工事に使用したシールドマシン(9月7日公開時)

高速1号羽田線「東品川桟橋・鮫洲埋立部」更新工事の状況

 高速道路リニューアルプロジェクト「大規模更新事業」の第1弾として工事に着手している高速1号羽田線「東品川桟橋・鮫洲埋立部」更新工事については、2017年9月に上りを迂回路へ切り替え完了しているが、東品川桟橋部は更新上り線の橋脚工と桁架設工を実施、鮫洲埋立部は更新上り線の掘削工を実施している。

 2020年の「オリンピック・パラリンピックの時期まで」に大井JCT(ジャンクション)と上りの迂回路が接続され、更新上り線は「暫定下り線」として供用される。更新下り線は2023年冬に完成する予定だ。

「東品川桟橋・鮫洲埋立部」更新工事の進捗は、東品川桟橋部は更新上り線の橋脚工と桁架設工を実施、鮫洲埋立部は更新上り線の掘削工を実施している

第20回国土技術開発賞の最優秀賞を受賞

 首都高グループで運用しているスマートインフラ管理システム「i-DREAMs」が第20回国土技術開発賞の最優秀賞を受賞し、7月31日に受賞式が行なわれた。34件の応募があり、そのなかでの最優秀賞1件となる。

 受賞した技術名称は「ICTの活用による生産性向上を図る維持管理システム スマートインフラマネジメントシステムi-DREAMs」で、「GIS(地理情報システム)プラットフォームにおいて情報を統合管理するとともに、ICT(情報通信技術)などの活用により、維持管理の生産性を大幅に向上したシステム」が評価された。

 i-DREAMsは常に進化を続けており、開発中の技術が紹介された。現行の舗装補修計画フローでは、自動測定が路面を走行して確認、損傷(ポットホール)は高速道路を徒歩で巡回点検する必要があったが、3次元点群データとカメラ画像から舗装の劣化状況を自動算出、3次元点群データから局所的なポットホールを自動検出できる機器を車両に搭載し、一挙に2つの点検を行なえるようにするシステムを、2019年度から本格運用する予定とのこと。

首都高グループで運用しているスマートインフラ管理システム「i-DREAMs」が第20回国土技術開発賞の最優秀賞を受賞した
GISプラットフォームにおいて情報を統合管理するとともに、ICTなどの活用により、維持管理の生産性を大幅に向上した
i-DREAMsに追加するために開発中の技術として、舗装の劣化指標や損傷(ポットホール)を検査するシステムを紹介した

総合防災情報システムを活用した防災訓練

 i-DREAMsを基盤に開発した総合防災情報システムを活用した防災訓練を9月5日に初めて実施した。総合防災情報システムはGISで道路啓開優先路線や段差リスク箇所などのハザードマップの確認ができる。さらに、現場のタブレットなどの端末と本部のシステムがつながることでリアルタイムで緊急点検進捗や被害状況などの情報を収集・共有でき、復旧方針などの周知事項が配信可能になり、速やかな道路啓開や交通開放を実現することができる。

 従来は現場と本部は電話やFAXを使い情報伝達を行ない、これに約30分かかり、伝達ミスのリスクもあったが、これが約5分にまで短縮され、人的ミスも限りなくゼロに近くなる。さらに2018年度中にはドライブレコーダーからの映像確認が可能になる予定のほか、将来的にはドローンを使用した映像確認も研究を進めている。

総合防災情報システムを活用した防災訓練を実施した
総合防災情報システムはi-DREAMsを基盤に開発したもので、最新情報を短時間で共有できる
状況をリアルタイムで確認し情報配信できる
最新の道路状況をハザードマップ化して視認できる
パトロール車、徒歩による点検からタブレットを通じた情報共有などから現場の正確な情報を速やかに把握することができる
2018年度中にはドライブレコーダーからの映像確認が可能になる予定
将来的にはドローンを使用した映像確認も研究を進めている

首都高グループが開発した「橋脚水中部調査機器」

 首都高グループで開発した新しい技術として、2018年8月までの知的財産権保有状況は、特許権129件と実用新案権2件、意匠権10件(いずれも出願中含む)を数えるが、会見では首都高速道路技術センター センター技術研究所が主体となって共同開発した「橋脚水中部調査機器」が紹介された。

 首都高管轄の河川や運河内に建設されている鋼橋脚について、水中部分の点検は潜水士が潜って確認している。しかし、視界がわるかったり、水流に流されたりといったことが多く、潜水時間に制約もあった。

 橋脚水中部調査機器はアルミの骨組みにカメラと6つのスクリュー、LEDライトなどを備えた装置で、深さ5mまでの調査が可能。接続したPCでリアルタイムにモニターすることができる。

 伸縮するポールの先に機器を接続し、人がそのポールを持って水中に沈めて調査箇所に機器を押しつける。スクリューは上下左右の移動補助とともに、波に流されそうなときにカウンターとなる方向へ水流を回して機器を安定させる役目も果たす。これにより人が見ずに潜らなくても水中の調査を行なえるようになる。会見でお披露目したのは開発3号機で、これに改良を加えて現場に投入していく予定だ。

水中の調査は潜水士が行なうが、視界がわるかったり、水流に流されたりといったことが多く、潜水時間に制約もある
人が潜らなくても調査を行なえるように開発した「橋脚水中部調査機器」
アルミの骨組みにカメラと6つのスクリュー、LEDライトなどを備えた装置で、深さ5mまでの調査が可能
首都高グループで開発した橋脚水中部調査機器
LEDライトで調査箇所を照らしながら撮影する。前面にあるキャスターは調査箇所に押し当てながら移動するためのもの
機器の裏面。上下左右の移動のために4つの、前後の移動のために2つのスクリューを備えている
伸縮するポールの先に機器を付けて水中に沈めて調査する
機器を操作するリモコン
橋脚水中部調査機器を都心環状線で使用した様子が紹介された

首都高 中央環状線の交通量は東側で約1割減少も全体では横ばい

 首都高の2017年9月から2018年8月までの通行台数状況が紹介された。6月から8月までの通行台数はほぼ横ばいで1日あたり100万台強、前年同月比も100%前後で推移している。ただし、6月2日に開通した外環道(東京外かく環状道路)三郷南IC~高谷JCT間と、国道298号の国道6号~国道357号間の影響から、首都高 中央環状線の交通量は東側で約1割減少しており、それでも全体では横ばいで推移していることに「相当の変化が起こっている」とコメントした。

首都高の2017年9月から2018年8月までの通行台数状況