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インドネシア・エアアジアX、LCC初の成田~ジャカルタ線就航。「お手頃価格」で需要掘り起こす

諸税込み片道9900円の就航記念プロモーション運賃も提供開始、5月13日まで

2018年5月2日 就航

インドネシア・エアアジアXが成田~ジャカルタ線に就航。5月2日の成田発初便は搭乗率85%を超える盛況となった

 インドネシア・エアアジアXは5月1日(現地時間)、成田国際空港~ジャカルタ(スカルノ・ハッタ国際空港)線に就航し、日本時間の5月2日に成田発初便を運航。それを記念したセレモニーを成田空港の搭乗口で実施した。

 この就航に合わせ、インドネシア・エアアジアXでは就航記念のプロモーション運賃の販売も開始。成田~ジャカルタ線を片道9900円(諸税、空港施設使用料込み)で販売するもので、5月13日まで予約受付。搭乗期間は5月1日~10月27日となっている。

 インドネシアへのLCC運航便としては、同じくインドネシア・エアアジアXによるデンパサール(インドネシア・バリ島、ングラ・ライ国際空港)線が運航されているが、首都のジャカルタ路線への就航は初めて。インドネシアはビザの緩和により交流人口が拡大。2017年は日本からインドネシアへの訪問客数が約53万人、インドネシアからの訪日旅客は約35万人で前年比30%増という大幅増となり、需要が高まっているなかでのLCC就航となる。

 成田~ジャカルタ線は現在、ANA(全日本空輸)が1便、JAL(日本航空)が2便を運航。ここに377席(ビジネスクラス12席、エコノミークラス365席)のエアバス A330-300型機を用いて参入することになる。

インドネシア・エアアジアXの成田~ジャカルタ線

XT408便:成田(11時30分)発~ジャカルタ(17時20分)着、毎日運航
XT407便:ジャカルタ(23時50分)発~成田(翌09時10分)着、毎日運航

インドネシア・エアアジアX CEO/キャプテンのスリスティオ・ヌグロホ・ハヌング氏

 セレモニーであいさつしたインドネシア・エアアジアX CEO/キャプテンのスリスティオ・ヌグロホ・ハヌング氏は、「インドネシア・エアアジアXの日本初就航は2017年5月で、成田からバリ島(デンパサール)への便だった。就航以来高い搭乗率となっており、アグン山の噴火などはあったが搭乗率は安定しており、2018年第1四半期は平均72%の搭乗率となった。インドネシア・エアアジアXにとって、日本は間違いなく極めて重要な市場」と、日本路線の重要性についてコメント。

 今回のジャカルタ線については、「成田からジャカルタに直行便を提供する唯一のLCCであり、お手頃な価格でインドネシア往復を実現する」とし、「ジャカルタだけでなく、ジョグジャカルタなどへも足を運んでいただきたい」と話した。

 その後、就航を記念したリボンセレモニー、主催者から来賓へのモデルプレーン贈呈などが行なわれ搭乗時刻に。

インドネシア・エアアジアXのCA(客室乗務員)も参加して、リボンセレモニー
スリスティオ・ヌグロホ・ハヌングCEOから、国土交通省 東京航空局 成田空港事務所 成田国際空港長 石井靖男氏へモデルプレーン贈呈
同じく成田国際空港株式会社 エアライン営業部部長 高橋広治氏へ
同じくインドネシア共和国観光省 ビジットインドネシアツーリズムオフィス 日本地区事務所代表 成田忠彦氏へ
記念撮影。両脇にCAが立ったほか、左から順にインドネシア・エアアジア コマーシャル・ディレクター リファイ・タベリ氏、インドネシア共和国観光省 ビジットインドネシアツーリズムオフィス 日本地区事務所代表 成田忠彦氏、インドネシア・エアアジアX CEO/キャプテン スリスティオ・ヌグロホ・ハヌング氏、国土交通省 東京航空局 成田空港事務所 成田国際空港長 石井靖男氏、成田国際空港株式会社 エアライン営業部部長 高橋広治氏

 両空港発の初便は、ジャカルタ発初便が80%台後半、成田発初便が90%台前半と、往復ともに約90%という高い予約率となり、実際の搭乗客もジャカルタ発初便は搭乗率77.4%で292名(幼児除く)、成田発初便は搭乗率86.47%で326名(幼児除く)と盛況。搭乗口も長い列ができたが、搭乗はスムーズに進みほぼ定刻どおりに出発準備が完了した。

300名を超える乗客が成田発XT408便の初便に搭乗。最前方の12席がビジネスクラスとなっており、プレミアムシート利用者は優先搭乗を利用できる

 インドネシア・エアアジアXはエアバス A330-300型機を2機保有しており、その2機ともが成田便に充当されることになったが、今回のジャカルタ便では、インドネシアの観光プロモーションのロゴマーク「Wonderful Indonesia」が付いた機体(登録記号:PK-XRC)が使用され、地上スタッフが手を振って見送るなか、成田空港のB(16L)滑走路から離陸し、ジャカルタへ向かった。

地上旅客スタッフがPBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)から手を振って見送るなかプッシュバック
プッシュバックされるXT408便
トーイングカー、トーバーを取り外し出発へ
グランドハンドリングスタッフが見送り
B(16L)滑走路から離陸するため地上走行していくXT408便

搭乗率は目標80%。スカルノ・ハッタ国際空港 ターミナル3への移転も申請中

 同便の出発後には、インドネシア・エアアジアX CEO/キャプテンのスリスティオ・ヌグロホ・ハヌング氏、インドネシア・エアアジア コマーシャル・ディレクターのリファイ・タベリ氏、インドネシア共和国観光省 ビジットインドネシアツーリズムオフィス 日本地区事務所代表の成田忠彦氏が臨席したインタビューの場が設けられた。

インドネシア・エアアジアX CEO/キャプテン スリスティオ・ヌグロホ・ハヌング氏

 成田~ジャカルタ線の顧客層などについては、「バリよりはビジネス需要が多いのでそこにフォーカスを当ててはいるが、そのほかの需要も伸ばしたい。初めてのLCCとして参入し、私たちは新しい市場を作っている」(タベリ氏)と意欲的。成田~デンパサール線は95%が観光客だが、成田~ジャカルタ線の15%強はビジネス客になるのではないかとした。その点において12席のビジネスクラスの提供は一つのプロダクトとなり、そのほかの企業向けサービス、製品の提供も検討したいとしている。

 目的別では成田~デンパサール線は95%以上が観光客で、これまでの実績で60%が旅行代理店などの販路で販売。10~15%はグループ客が占めているという。一方のジャカルタ線は、インターネットやモバイルアプリなどによる予約が60%以上を占めると同社では見ている。

 成田~ジャカルタ線はインドネシア・エアアジアXの参入で1日4便、羽田路線を含めると東京~ジャカルタ線で1日6便が各航空会社により運航されることになるが、タベリ氏は「今後も需要は増えており、伸びると思っている。供給過剰とは考えていない」とコメント。初年の平均搭乗率は80%を目標にしているとした。

インドネシア・エアアジア コマーシャル・ディレクター リファイ・タベリ氏

 セレモニーでもコメントがあった、“ジャカルタからの先”の乗り継ぎについては、「ジャカルタからバンドンやスラバヤなどに行けるし、エアアジアグループではクアラルンプールやバンコクを経由してジョグジャカルタなどへ行ける」(タベリ氏)とネットワークの充実を強調。

 ちなみに、インドネシア国内線で最大のネットワークを持つガルーダ・インドネシア航空は2017年5月からジャカルタ・スカルノ・ハッタ国際空港のターミナル3を拠点とし、インドネシア・エアアジアXはターミナル2を拠点としている。この乗り継ぎも高頻度で運行されるモノレールやシャトルバスの存在で、利便性はよいという。

 さらに、CEOのハヌング氏は、インドネシア・エアアジアXのターミナル3への移転についても言及。「空港当局に申請をしているが回答は出ていない。よいビジネスを展開するためには利便性を考慮したいので、状況をよくしたい。ただ空港側がキャパシティ(許容量)をどう配分するかの問題があるほか、イミグレーションの課題など、さまざまな手続きを考慮する必要がある」と説明。ターミナル3への移転を希望はしているものの、確実とはいえないというのが現時点での状況となっていることを明かした。

 一方、成田空港でも第2ターミナルを使用しており、LCC専用として供用されているターミナル3を使用していないが、リファイ氏、タベリ氏それぞれがコメント。「タイ・エアアジアXが第2ターミナルを使用しているのでグループとして効率のよい選択」という点や、「チェックインカウンターの混雑やスロットの逼迫」といった点が主な理由になっているとしている。

 加えて、成田空港以外の日本への就航については、「拡張はしたいが具体的な時期はコメントできない。グループとしてはクアラルンプールと関空(関西国際空港)、バンコクと新千歳(札幌)の便を運航しており、新路線についてはグループ全体のネットワーク、既存路線の実績、インドネシア人利用者の目的地などの観点を考慮する必要がある」(ハヌング氏)と、現時点では明言を避けた。

インドネシア共和国観光省 ビジットインドネシアツーリズムオフィス 日本地区事務所代表 成田忠彦氏

 他方、インドネシア共和国観光省の成田氏は今回のジャカルタ線就航について、「2017年のバリ線で市場を温めていただいたが、ジャカルタ線の開設でインドネシア渡航が増えることを期待している」とし、インドネシア渡航のさらなる起爆剤となることに期待感を示す一方、「バリ島とは違って観光では難しいところもあると思うが、ジャカルタから行けるそれほど遠くないスポットもプロモーションしていきたい」と、新たな観光地への送客にも意欲的なコメント。

 インドネシア政府では以前より「10の新デスティネーション」としてジャカルタ、バリ島以外の観光客誘致を進めているが、現在はジョコ・ウィドド大統領の提案もあり、トバ湖、ロンボク、ラブハン・バジョー、ジョグジャカルタに注力する方向性になっている。特にロンボクについては大規模開発が進み、訪れやすくなってるという。

 さらに成田氏は、「東南アジアのほかの首都、例えばバンコクなどに比べて、ジャカルタはビジネス寄りの需要が中心。航空座席の販売もイールド(便あたりの収益性)の高いビジネスのシートが中心になっている。ジャカルタに観光客を呼びたい」と話し、「博物館には日本から寄贈されたものなど、さまざまなものがある。ジャカルタのよさ、ジャカルタの新しいところ、ジャカルタ市内を歩いてのんびり過ごす、ジャカルタの近郊を楽しむ」など、ジャカルタの魅力を広く知ってもらうための取り組みを進める意向を示した。

 実際、ジャカルタの市内地図をほしいという中高年や、鉄道を使ったジャワ島内観光を目的とした女性の問い合わせなども増えているといい、インドネシア・エアアジアX就航によってFIT(Foreign Independent Tour、個人旅行)客の増加にも期待を寄せた。