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ヤンマー、フィッシャビリティを高めた新艇「EX34」試乗会レポート
2018年3月8日 13:06
- 2018年3月8日 発表
ヤンマー舶用システムは3月8日、プレジャーボート(レジャー用途向けボート)のフィッシングクルーザーEXシリーズに新艇「EX34」を追加した。この発表に先立ち、大分県にあるヤンマー造船(大分県国東市)で報道向けの試乗会を行なった。
ヤンマーといえば、ある程度以上の年齢なら同社が提供していた「ヤン坊マー坊天気予報」でなじみ深い存在だが、エンジンや農業機械、建設機械の製造販売で知られるほか、漁船やボートのメーカーとしても長い歴史があり、同社が最初に手掛けたプレジャーボートは1980年4月発売。なお、ヤンマーは2012年に創業100周年を迎えている。
現在グループ内でプレジャーボートを製造販売するヤンマー舶用システムは2002年設立で、船舶用ディーゼルエンジンは兵庫県尼崎市のヤンマー塚口工場で製造し、そのエンジンを大分県国東市のヤンマー造船で製造するボート・漁船へ組み込んでいる。このほか、水槽や養殖網の洗浄機、浮桟橋など海洋まわりのさまざまな製品を手掛けている。
EXシリーズは、自分で船を所有して自由に遠くの海へ出て、より大きな獲物を狙いたいという釣り好きのために作られているボートで、今回の「EX34」はシリーズ中で「ミドルレンジよりやや上のポジション」に位置し、従来モデル「EX33」を置き換えるものになるという。価格は2697万6700円(税別)。
全長は10.63mで、最大搭載人員は12名。外観は2クラス上の主力モデル「EX38」を踏襲し、ステム(舳先)やバウ(船首)にその印象が感じられる。キャビンの周囲を歩き回れる構造で、キャビン側面でも釣り竿を構えることができるウォークアラウンドデッキとなっている。また、バウデッキはEX33よりステップを小さくして広さを確保、キャスティングしやすい作りとした。
アフト(船尾)デッキは、大きな獲物とファイトするためのチェアやポイントに止まるためのスパンカー(小さな帆)などのオプションを艤装(ぎそう:舟艇に装備を取り付けること)でき、今回の試乗艇には手洗いするためのシンク(オプション)も取り付けられていた。
外観で最も目を引くのは、キャビンの上部に据え付けられたフライングブリッジ(上部操船席)で、EX33では2名掛けだったものを3名掛けに拡大、ヤンマー担当者によれば「ハル(船体)に負けないインパクトを持たせたかった」とのこと。フライングブリッジは後方視界が非常によくなるため、ドライバーのメリットも大きいが、同乗者からするととにかく見晴らしがよくて気分がよい。
キャビンスペースはEX33と同じ寸法ながら、肘掛け付きのダンパー機能付きシートや開放感のある窓で圧迫感のない居住性を確保しており、さらに個人的に気に入ったのが船首にあるバウバース(船首のベッドスペース)。大人4~5名で座って過ごせるだけでなく、大人2名くらいが横になれる広さがあり、実際に寝てみるとこれが快適。船の揺れがちょうど心地よくて、すぐに眠れそうだった。両脇に小さな窓があるのも気が利いていて、天井には採光を兼ねたスカイライトハッチが付いている。
心臓部には、すでに海外で実績があり、シリーズ初搭載の電子制御のコモンレール式ディーゼルエンジン「6LY440J」を採用。コモンレールとはより燃焼効率を高めたクリーンな方式で、環境に配慮した仕様になっている。最大出力は440馬力で、船速は2名乗船時に33ノット。プロペラは新規形状を採用しており、振動の低減に効果があり、船速もややアップした(2ノット)という。
主機前駆動方式の充電器(2.5kW)とDC-ACインバータ(3kW)を標準搭載することでインバータエアコンと船内にAC電源(100V)を確保しており、エンジン動作中にエアコンを使えるのはもちろん、停泊中に陸電(陸上電力供給、オプション)で動作させることもできるため、「マリーナでパーティ」といった用途にも対応できる。
試乗会当日はやや風が強く波も荒かったようだが、その波を割ってぐいぐいと進むEX34は馬力の高さを感じさせる疾走感で、一方キャビンにいると静粛性が高く、特に大声を出さなくても普通に会話できることに驚いた。