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ヤマハ、レンタルボートサービス「Sea-Style」のメリットを試乗会でアピール
話題の新コンセプトボート操船レポート
2018年4月20日 13:36
- 2018年4月17日 実施
ヤマハ発動機は、レンタルボートサービス「Sea-Style(シースタイル)」と船舶免許取得関連サービスの説明会を実施した。
説明会では、ヤマハ発動機マリン事業部の業績推移やレンタルボート事業における会員数と利用者の推移、Sea-Styleで新たに登場した法人会員の概要、船舶免許取得におけるヤマハボート免許教室のメリットなどが紹介された。また、説明会とともにSea-Style利用ボートとして加わった「SR320FB」「G3ポンツーンボートV-322RF」を含む6モデル6艇を動員して会場のザ・クルーズクラブ東京から40分ほど航海する試乗会を実施した。
この記事では、説明会の内容と合わせて試乗会で上船したG3ポンツーンボートV-322RFの乗り心地についてもレポートする。
ヤマハ発動機 マリン事業本部 マーケティング統括部長の飯田勝哉氏からは、マリン事業の業績推移について説明があった。それによると、水上バイクとボート事業、船外機事業ともに2017年売上高は2016年を上回り、2018年の売り上げも2017年を超えると予想している。また、日本における小型船舶免許取得者数と5m以上の新艇登録隻数でも2017年は2016年実績を上回り、2010年以降最も高い実績となった。「欧米では大型船需要が増えており、ヤマハ発動機の実績もそれにつれて好調。営業利益率も高い。今後も高収益型事業としてマリン事業を成長させていく」と述べた。
同 マリン事業本部 マリンソフトグループの鈴木葉月氏からは、Sea-Styleの現状とサービス内容について説明があった。Sea-Stayleは会員制のレンタルボートサービスで、購入価格が高く維持費もかかるボートをカーシェアリングやリゾートホテルのシェアリングと同じようにシェアするだけでなく、ボートを使った遊び方の提案や支援といった「新しいマリンライフスタイルのカタチを提供するサービス」という位置付けになる。
2017年時点で会員数は2万2000人と、サービスを開始した2006年から12年連続で増加している。さらに、利用回数においても2010年と2011年に落ち込んだものの、2012年からは回復して、2017年には2万4370回、約7万7000人がSea-Styleでボートを楽しんでいる。Sea-Styleには、所持している小型船舶免許の種類によってボートが利用できる「Sea-Style」とマリンジェットが利用できる「Sea-Style JET」のほか、小型船舶免許を持たない人でも操船者込みでボートをレンタルできる「Sea-Style Light」を用意している。とい
Sea-Styleの利用料金は入会金(Sea-Style/Sea-Style JET 各2万1600円、Sea-Style Light 5400円)と月会費(Sea-Style 3240円、Sea-Style JET 1620円、Sea-Style Ligh 月会費なし)のほかに、利用するボートごとに設定したレンタル料(3時間区切りと6時間区切りで設定。シーズンと曜日祝日と特別日で変動あり)と燃料代(Sea-Style Lightでは操船者派遣料が別途必要。目安は1~3万円)
燃料代はボートの使い方や目的地によって変化するが、説明会では、サンプルとして浜離宮の近くの隅田川沿いにある「勝どきマリーナ」から「AS-21」で出港して、レインボーブリッジまで南下、そこから折り返して隅田川を上って永代橋から日本橋川に入り、水道橋から神田川を下り再び隅田川へ。そのあと浅草の水上バス乗り場まで上って折り返し、小名木川に入って扇橋閘門(こうもん)で折り返し、隅田川から勝どきマリーナに帰港する、というコースを紹介。レギュラーシーズンの土日祝日3時間の利用で、ボート利用料が1万3300円、燃料代が5000円の合計1万8300円としている。これはボート1隻にかかる料金なので、1人当たりの費用は参加者で割り勘にすればよい。
Sea-Styleでは、日本全国約140カ所と海外2カ所(米国とタイ)で利用できる。これは旅行先で自由にボートが利用できるだけでなく、すでにボートを所有している人にもメリットとなる。例えば、関東にボートを保管している人が瀬戸内海や九州の五島列島、北海道や日本海側などクルージングの名所として知られている場所に自分の船で行くことは、日程や費用の関係でとても難しいが、Sea-Styleに所属していれば自分の船を保管している以外の場所でも気軽に海を楽しむことが可能だからだ。
鈴木氏によるとボートを利用する目的として多くの人が釣りを挙げるものの、釣りをしない人や釣り以外にもボートを楽しんでみたいという声も増えているという。Sea-Styleでは、フィッシングクラブを設立して釣り仲間の拡大やイベントなどを実施しているが、釣り以外でもボートを楽しめる海遊びのプランを約300コース用意して利用者への提案を行なっている。そのなかには、お花見や都会の運河、港のグルメなどを楽しむクルージングプランや多種多様なマリン遊びを仲間や家族で楽しめるプラン、そして、操船や航路設定など航海に必要なスキルを向上させるプランなど幅広い。
Sea-Styleで利用できるボートの種類は、2018年に登場した最新の「SR320FB」や新コンセプトボートとして発表当時から注目されている「G3ポンツーンボートV-322RF」など、クルージング、釣り、マリンスポーツ、そして水上バイクなど目的別に20モデル340隻を用意している。
特にG3ポンツーンボートについては、日本で販売の予定はなくSea-Style限定になる。すべての船はGPSナビゲーションと魚群探知機を装備するほか、3年ですべて入れ替えるので、経年劣化による不具合のリスクは低く、船舶保険にも加入済みなので、操船中に万が一定置網などの漁具の破損や船体そのものの破損が起きても、弁済は保険でまかうことができる(定置網を破損すると賠償額が数千万単位になるケースもある)。
また、法人会員は2018年から内容が変更になり、小型船舶免許所持者が使えるSea-Style会員証3枚と、持たなくても使えるSea-Style Lite法人会員証2枚をセットで提供することになった(これまでの法人会員は「団体会員」となる)。Sea-Style会員証は個人名義での登録になるがSea-Style Lite法人会員証は社員全員が利用可能だ。入会費は7万200円で年会費は11万6640円。
ヤマハ発動機 マリン事業本部 東日本ソフト課の相藤千恵氏からは、ヤマハボート免許の説明があり、小型船舶免許の取得者は2016年は前年同様であったが2017年では増加に転じたことや、2級免許が自動車免許と比べて費用は安く期間も短くて済むことが紹介された。学科講習は、eラーニングでできる「スマ免」を利用すれば講習を受けるレギュラーコースより費用が1万円近く安くなり、免許取得のために拘束される日数もレギュラーコースの3日間から2日間で済むといった説明がなされた。相藤氏によるとヤマハボート免許で受講する3人に1人がスマ免で学科を受講しているという。
試乗会で新コンセプトボート「G3ポンツーンボートV-322RF」乗り心地を試す
試乗会には、「SR-320FB」「SR-310」「FR-23EX」「S-QUALO」「G3ポンツーンボートV-322RF」「AR-240」の6モデル6艇を動員した。試乗コースは2つに分かれ、SR-320FB、SR-310、FR-23EX、S-QUALOは、ザ・クルーズクラブ東京から首都高速湾岸線にとって東京湾に出てレインボーブリッジをくぐって晴海ふ頭から豊洲に向かい、そのまま豊洲運河を上って隅田川との合流点から折り返す航路を進み、G3ポンツーンボートV-322RFとAR-240はザ・クルーズクラブ東京から京浜運河を下り、首都高速1号羽田線と国道357号、首都高速湾岸線をくぐって東京湾に出て、羽田空港沖を南下してD滑走路23側誘導灯を越えて羽田沖第1ブイから戻ってくる航路を進む。
今回の試乗で割り当てられたG3ポンツーンボートV-322RFは、新しい船の遊び方を提案する新コンセプトボートとして登場したもので、日本ではまだ販売していない。Sea-Style限定で乗ることができるボートだ。ヤマハ発動機の公式Webページでは船の仕様について公開していないが、船舶検査手帳にある記載を確認したところ、全長は5.82m(22フィート)、幅は2.47m、深さは0.74m、総トン数1.1トンとあった。エンジンは船外機を使用し、ユーザーごとに選択できるとしている。試乗艇には130psの船外機を載せていた(なお、船舶検査手帳にある型式は「G3 V3-22RC」とある。また、乗員定員はSea-Styleのカタログでは11名だが船舶検査証表示では12名となっている)。
形状は船というより「長方形の箱」だが、その分デッキの床面積は広くとっており、座席やウォーキングスペースを十分に確保した過ごしやすく動きやすいレイアウトだ。船体はモノハルでもカタマラン(双胴船)でもなく、3つの船体を並べたトリマラン構造を採用する。しかも、通常のトリマランは太い主船体の両脇にアウトリガーとして機能する細い船体を連結するが、G3ポンツーンボートV-322RFは同じ細身の船体を間隔をあけて3つ並べている。この船型のおかげで横揺れはほとんどなく安定している。
釣りやマリンスポーツも楽しめる(アフトデッキにトーイング用のポールも備えている)が、ゆっくりと波の静かな平水域で船を走らせる、もしくは、停泊して船上パーティを楽しむのに適した船といえるだろう。
その姿から、通常のパワーボートのように高速航行はできないと思ってしまうが、実はけっこうな速度が出せる。今回、電子海図航法アプリ「NAVIONICS」で航海ログを記録したが、その記録では最高で21ノット(38.2km/h)を出している。この状態でまだフルスロットルではなかったので、実際はもう少しスピードが出ると思われる。ただ、滑走タイプのボートながら、高速航海で舳先が上がる感じはそれほどしない。引き波を見なければスピードが出ているのを感じないほどだ。パワーボートの高速航行でつきものの跳ねるように揺れるピッチングも試乗中はほぼ発生しなかった。
屋根のない広いデッキのG3ポンツーンボートV-322RFはとにかく開放感がある。ソファのような座席はゆったりと座れて体をすこぶる楽にしていられる。両舷にある座席の間、船体中央は広い通路になっていて、前後2カ所に丸テーブルを設置できる。操船席は右舷側船体中央に設けている。ユニークなのは操船コンソールで、現代のパワーボートは小型船でも多目的ディスプレイを備えて電子海図や魚探を表示し、GPSと連動した航法アプリが利用できるが、G3ポンツーンボートV-322RFは、昔のスポーツカーのダッシュボードを思わせる針式計器を並べたクラッシックな雰囲気でデザインしている。デジタル航海機器としてGPSを使った速度計やソナーを使った深度計を用意しているが、それも値を表示するだけのシンプルな機器をさりげなく設置するのみだ。
試乗したG3ポンツーンボートV-322RFは、ザ・クルーズクラブ東京の浮き桟橋を出港した後、品川ふ頭橋をくぐり、若潮橋(仮橋)を左にやり過ごし、京浜運河水道橋、大井北埠頭橋、京浜運河道路橋(北)、八潮橋、かもめ橋、勝島橋、新平和橋、大和大橋、京浜運河道路端(南)をくぐって京浜南運河と進む。大都会の港湾地区を流れる運河らしく、途中途中で工事をしており、その付近には警戒船が停泊して運河を行き来する船を監視している。そういう警戒船や運河に係留している船の付近では船速を落として引き船を立てないようにし、通り過ぎてから加速するという「リバークルージング」のマナー通りに試乗艇は南下していく。
京浜南運河に入ったあたりで船長がこちらを振り返ってこう言った。
「たしか船舶免許持っていましたね。操船します?」
「えええええええええ、いいんですかあああああ!」
話題のG3ポンツーンボートV-322RFを操船できる機会なんてそう滅多にあることではない。ということで、ここからは、急きょ「試乗レポート」から「操船レポート」に切り替えてお伝えしよう。
独特の技もいるがとても安定した操船性能
船型が独特のG3ポンツーンボートV-322RFだけに、舵輪とエンジンスロットルを握る前はどのような挙動をするのか(ボート初体験の同乗者が多数いる手前、顔には出さないようにしていたが)不安だったが、いざ操船してみるとモノハルのパワーボートとそれほど変わらない感覚で操船ができる。
ただし、箱のような形状をした船型と細い船体を横につなげたトリマランということで、特に波を受けるときに独特の操船が必要だ。通常、波を受ける場合は斜め前から乗り越えるようにすると波しぶきが立ちにくく衝撃も抑えることができるが、G3ポンツーンボートV-322RFでそれをすると、前部座席に波が打ち込んでしまう可能性がある。船長からは「トリマランの特性を生かして横から波を受けるようにするといい」とアドバイスがあった。
試乗コースはほとんどが運河で羽田空港沖も波がなかったため自然に発生した波を乗る越えることはなかったが、並走していた別の試乗艇(AR-240)の引き波を受けるとき、前から受けるよりは横から受ける方が船が安定しているのを確認できた。
舵とスロットルの反応は素早く、ハンドルを切るとすぐに変針し、レバーを動かすとすぐに加減速してくれる。ただ、それだけに、切りすぎると大きく変針し、その修正操作を大きくすると船は容易に蛇行してしまう。スロットルもレバーの移動量が少しでも多いと加速減速で体がすぐに持っていかれる。このあたりの感覚は繰り返し乗ることで体に覚えさせて吸収するが、レンタルボートということは初めて操船するケースも多いと思う。G3ポンツーンボートV-322RFをレンタルして操船するときは、舵とスロットルは控えめにすることをお勧めしたい。
以上のようなことを考えつつ、京浜大橋、東京湾道路橋をくぐって東京湾に出た。右舷に羽田空港を眺めつつ、AR-240に続いて海上に突き出たD滑走路誘導灯の下をくぐろうと針路を定めたとき、船長から「この船はAR-240より船底が深いし、あのあたりは水深が浅いし、ちょうど大潮の干潮時なので危ないですよ」とのアドバイスを受けて、沖合に変針。誘導灯の延長上にある東京おおい沖灯浮標をぐるりと回って戻ることにする。
風向きの関係でD滑走路で発着する飛行機を楽しむことはできなかったが、それでも、オープンで開放的なデッキからゆったりとしたシートに座って周りのビル群や橋などを下から見上げて楽しめるG3ポンツーンボートV-322RFは都会の運河を行くリバークルージングにとても適したボートといえるだろう。この試乗で最も印象的だったのは、同乗した1人が言った「私、船に乗るとすぐに酔ってしまうんですが、この船は全然酔わないですね」だったことも最後に付け加えておきたい。