ニュース
JALとモンベルが包括連携協定締結。エコツーリズムなど地域活性化で協力
スポーツイベント、環境保全、自然教育などで連携
2018年2月16日 06:00
- 2018年2月15日 協定締結
JAL(日本航空)とアウトドアグッズブランドのモンベルは2月15日、「地域活性化についての連携と協力に関する包括協定」を締結した。両社は自然体験や環境保全への取り組みなどについて情報・意見交換を重ね、お互いのノウハウ、施設、チャネルなどを使った具体的な事業化について協働していく。
同日、東京・高輪にあるモンベル品川店で記者会見を開き、包括協定書への署名と取り組みについての説明を行なった。
同じ志を持った仲間と一緒に地域活性化に取り組むと大きな成果につながる
会見にはJAL 代表取締役副社長執行役員の藤田直志氏とモンベル 代表取締役会長兼CEOの辰野勇氏が、上着から靴まですべてモンベル製品を着用して登場。まず藤田氏がマイクを持ち、協定締結までの経緯から説明した。
JALでは日本の各地域をテーマに取り上げて産品や観光名所などを紹介する「新・JAPAN PROJECT」、JALスタッフによる稲刈りボランティアなど、さまざまな地域活性化のための支援活動を行なっているが、それらを通じて2つの学びがあったという。
1つ目は「地域活性化の目的は、土地に暮らす人たちが豊かな生活をすることを目標にすること」、2つ目は「個々の企業が地域活性化の努力をすることには限界があるため、同じ志を持った仲間と一緒に地域活性化に取り組むと大きな成果につながること」。そこで企業をあげて地域活性化に取り組んでいるモンベルとの提携につながったという。
藤田氏が北海道上川郡東川町を訪れた際、この町は人口が8000人ほどで「国道・水道・鉄道の3つの道がない町」だと言われていたそうだが、その町にはモンベルの店舗があり、農作業に使うワークウェアの製造といった地域に根ざした活性化の取り組みを行なっていることが、藤田氏には深く心に残っていたそうで、「この提携をとてもうれしく思います」と語った。
地域活性化に関する包括連携協定には以下の7つの項目がある。
JALとモンベルの包括連携協定の概要
1. 自然体験の促進による環境保全意識の醸成に関すること
2. 子どもたちの生き抜いていく力の育成に関すること
3. 自然体験の促進による健康増進に関すること
4. 防災意識と災害対応力の向上に関すること
5. 地域の魅力発信とエコツーリズムの促進による地域経済の活性化に関すること
6. 農林水産業の活性化に関すること
7. 高齢者、障がい者などの自然体験参加の促進に関すること
以上について両社は意見交換、情報交換を重ね事業の具体化を検討していく。JALではパイロットが機内から見た地球環境の変化やJALの環境への取り組みなどを若い世代に伝える「そらエコ教室」、JALスタッフによる稲刈り・雪かき・被災地の復興支援といったボランティア活動、体が不自由な人がスムーズに飛行機に搭乗するための木製の車いすの導入といったものがあり、これらをモンベルの活動と組み合わせることが新しい化学反応につながるのではと期待を示した。
志は同じだという思いをあらためて強めました
モンベルの辰野氏は藤田氏のあいさつを受けて「モンベルが目指す方向と同じ、志は同じだという思いをあらためて強めました」と述べ、モンベルについて紹介した。
アウトドアウェア・ギアの製造販売を行なうモンベルは大阪市西区に本社を置き、日本全国に120店舗を展開。海外もスイス、アメリカ、カナダなどにライセンシング、直営で出店しており、韓国には100店舗もあるとのこと。
アウトドアスポーツ愛好者による会員組織「モンベルクラブ」は会員数約81万人、年会費で約12億円が集まる組織規模だという。このスケールメリットを活かした環境保全、自然体験、地域活性化などの取り組みを行なっており、「モンベル・チャレンジ・アワード」では「手作りボートでスイスから日本を目指す」「ガンと闘病しながら自転車での世界一周を目指す」といった「ING:現在進行形の活動」を支援している。
モンベルでは「アウトドアスポーツ7つのミッション」を掲げており、「SEA TO SUMMIT」や「ジャパンエコトラック」といったイベント、被災地への支援活動などで、それらのミッションを実践している。
モンベルの「アウトドアスポーツ7つのミッション」
1. 自然環境への意識の向上
2. 野外活動を通じて生きる力を育む
3. 健康寿命の増進
4. エコツーリズムによる地域経済活性
5. 防災、発災時の対応力
6. 農林水、一次産業の活性
7. バリアフリー
アウトドアを楽しみながら自然について考えるイベント「SEA TO SUMMIT」は地方自治体とモンベルの協働により2009年からスタート。2018年には全国12カ所での開催を予定している。イベントではカヤックや自転車などで体を使い自然を感じるものと、自然環境や地域振興について考える「環境シンポジウム」から構成されている。
「ジャパンエコトラック」はトレッキング、カヌー、自転車といった人力による移動手段で、日本各地の豊かで多様な自然を体感し、地域の歴史や文化、人々との交流を楽しみながら、旅をするエコツーリズム。ルート情報、協力店の情報、地域の魅力などを掲載した公式ルートマップをベースに参加者は地域の魅力を体験していく。
1995年の阪神・淡路大震災からは積極的に被災者への支援活動を行なっており、アウトドア製品やアウトドアのノウハウが、被災者の生活に役立たれているという。
両氏のあいさつのあとには、協定書への署名が行なわれた。モンベルはこれまでに三重県や鳥取県など日本各地の自治体と連携協定を結んでいるが、企業との提携はJALが初めてとのこと。
辰野氏はこういった取り組みがJALの訴求力によってより広まることに期待を寄せ、藤田氏も「JALの翼で広域的なものになるのでは」と語った。具体的な施策はこれからだが、JALのマイレージをモンベルのチャリティ活動への寄付金に使えたり、ジャルパックの旅行商品にモンベルのエコツーリズムを取り入れたり、イベントで使う自転車やカヌーの輸送を行なったりといった可能性について両氏は言及していた。