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宮崎空港、車いすのまま小型機も乗降できる国内初のロング旅客搭乗橋を導入

三菱重工製、DHC8-Q400など小型機とターミナルを接続するPBB

2017年12月26日 供用開始

宮崎空港で国内初の小型機対応ロング旅客搭乗橋「ひなたらくちんブリッジ」の供用開始

 宮崎空港(宮崎ブーゲンビリア空港)で12月26日、国内初の小型機対応ロング旅客搭乗橋「ひなたらくちんブリッジ」の供用が開始され、ORC(オリエンタルエアブリッジ)が運航するボンバルディア DHC8-Q400型機で到着したORC65便の乗客を宮崎空港のターミナルビルに受け入れた。

 今回、供用開始された小型機対応ロング旅客搭乗橋(PBB:パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)は、これまでPBBが接続できなかった小型機へも接続し、乗客が地上に降りることなく乗降できるようにするもの。これは、同空港で現在行なっている2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた、ターミナルビル国内線施設の利便性と国際線施設の機能性向上に向けた改修工事の一つとして導入された。

機体と接続する部分
利用客が歩く部分は両面ガラス張り。柱にグリーンのカラーを取り入れた

 これまで宮崎空港では、小型機への乗り降りは駐機場を歩くかバス移動だったが、高齢者や足の不自由な乗客の不便を解消すべく、三菱重工交通機器エンジニアリングと5年の期間をかけて共同開発を行なってきたという。

ボンバルディア DHC8-Q400型機で到着したORC65便との接続の様子

 今回、三菱重工交通機器エンジニアリングは小型機対応のロングPBBを2基、トンネル通路内の段差がないステップレスPBBを3基、計5基のPBBを宮崎空港から受注。全基とも開放感にあふれるガラストンネル式を採用。外観には南国リゾート宮崎の青い空と山の緑、宮崎空港の愛称ともなったブーゲンビリアの花をあしらったデザインを採用する。

 供用開始前に行なわれた共同記者会見には、宮崎空港ビル 代表取締役社長 長濵保廣氏と三菱重工交通機器エンジニアリング 代表取締役社長 坂本一秀氏が出席して、導入の経緯や設備の特徴などが示された。

三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 坂本一秀氏(左)、宮崎空港ビル株式会社 代表取締役社長 長濵保廣氏(右)

 長濵氏からは導入に至る経緯が話された。現在、宮崎空港における1日の運航便数は47便、そのうちPBBを直接接続できない小型機は10機と比率は21.3%。また、PBBを接続できるが急勾配となっている13機を含めると全体の48.9%となっていて、機材の小型化が進んでいることが示された。

 長濵氏は「お客さまの利便性や航空会社の経済性から、大型機から中型機、特に地方空港は機材の小型化が進んでいる。雨の日、風の強い日、寒い日など、高齢者の方がエプロンを歩いて荷物を持ってタラップを上っていく、こういった光景をずっと見てきたが、何とかこれを解消できないかと7年ぐらい前に建築関係の皆さまと取り組みを開始した。しかし、最終的にはタラップを上ったり下りたりすることは避けられないということで、5年前に三菱重工さんに何とかできないかとお願いをした。これまでにない機械ですし、その当時でPBBに対応しない機種が5機種あり、全ての機材に対応するためずいぶん時間がかかりました」とこれまでの経緯を明かした。

 坂本氏からは今回導入する小型機対応PBBの概要が説明された。小型機対応PBBは、ガラス製トンネルが最伸41m、最縮29mと伸縮する。航空機と接触する部分には特殊ヘッドを採用するとともに小型機との接続に必要な渡り板を採用。これにより、今までPBBが接続できなかったタラップを装備する航空機、ボンバルディア DHC8-Q400/CRJ200/CRJ700型機のほか、エアバス A320/A321型機、ボーイング 737型機、さらに三菱航空機のMRJ(Mitsubishi Regional Jet)やエンブラエル機など、空港発着航空機の全機種に対応させた。

 坂本氏は「今回開発したPBBは空港を離発着する全機種に対応します。これまでのPBBは、タラップを装着した航空機には使用できませんでした。DHC8-Q400のようにタラップとその両側にある手すりが障害となりまして、通常のPBB構造では機体に直接接触することができないという課題がありました。そこで、このPBBには旋回式の渡り板を付けて通常時はヘッドの床下に収納し、DHC8-Q400などのタラップのある機種にはこの渡り板を前にセットして小型機の床の高さで接触させます。これにより車いすの方でもそのまま直接PBBに移動することを可能にしました」とその特徴を示した。

外観には宮崎空港の愛称ともなったブーゲンビリアの花をあしらったデザインを採用
小型機との接続に使用する折り畳み式の渡り板
渡り板は小型機との接続時以外は床下に収納されている
安全のための手すりも出てくる仕組み
車いすのままPBBに移動することができる
セレモニーでのテープカット。左から株式会社ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏、全日本空輸株式会社 宮崎支店 支店長 池田晴彦氏、宮崎県知事 河野俊嗣氏、宮崎空港ビル株式会社 代表取締役社長 長濵保廣氏、国土交通省大阪航空局宮崎空港事務所 空港長 村田俊満氏、三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 坂本一秀氏、日本航空株式会社 宮崎支店 支店長 伊藤洋一氏

 また、その後に行なわれた供用開始記念セレモニーには、宮崎空港ビルの長濵氏、三菱重工の坂本氏に加えて、国土交通省大阪航空局宮崎空港事務所 空港長 村田俊満氏、宮崎県知事 河野俊嗣氏、ANA(全日本空輸)宮崎支店 支店長 池田晴彦氏、JAL(日本航空)宮崎支店 支店長 伊藤洋一氏、ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏が出席した。

セレモニーで挨拶をした宮崎県知事 河野俊嗣氏

 セレモニーで挨拶をした宮崎県知事の河野氏は「(日本初に加えて)おそらく世界初ということで、素晴らしいものができたと大変うれしい。宮崎空港は年間300万人の利用がある空の大切な玄関口。宮崎を訪れた人が初めて踏み入れるPBBに対して、まさにおもてなしをカタチにした素晴らしい日本初のものができたと思う」と感想を語るとともに、「2年後にはラグビーワールドカップ、3年後には東京オリパラ、その年には国民文化祭など国内外から宮崎は多くのお客さまをお迎えするということで、もっとバリアフリーのユニーバーサルデザインの宮崎を作っていこうと、今取り組んでいるところ。そうしたなか第一印象は大事。宮崎に降り立った人が第一印象を得るこのPBBで世界初のものができたのは素晴らしい。南国リゾートのイメージ、おもてなしの心を感じることができるこのPBBで、宮崎のイメージがワンランクアップしたお客さまを受け入れることができる」と、今回の取り組みに対する感謝の言葉を述べた。

セレモニーでは、宮崎空港ビル株式会社 代表取締役社長 長濵保廣氏、国土交通省大阪航空局宮崎空港事務所 空港長 村田俊満氏から供用開始への喜びのコメントが語られた