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Microsoft HoloLensを装着したPepperが自動走行。ANAが宮崎空港で自走を含めた案内業務の実地検証開始
自走は2月一杯、案内業務は5月中旬まで
2017年2月15日 19:47
- 2016年2月15日 検証開始
ANA(全日本空輸)とNSSOL(新日鉄住金ソリューションズ)は2月15日、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」(Pepper for Biz)の自動走行による空港案内の実地検証を宮崎空港で開始した。
これまでもANAは成田と福岡空港において、空港内での案内業務にPepperを使用してきたが、手荷物カウンター前であったり、チェックインカウンター前であったりと、いわゆる“据え置き”での運用だった。それを、マイクロソフトのAR(拡張現実)型ヘッドマウントディスプレイ「Microsoft HoloLens」と組み合わせることで、Pepperが自走で複数の業務現場へ移動できるようにするという試みだ。検証初日にその様子が報道公開されたので、レポートする。
宮崎空港でさまざまな案内業務を担当するPepper
6時30分~10時:手荷物カウンター前での案内
10時~12時:チェックインカウンター前での案内
12時~15時:休憩(充電)
15時~18時:ゲート案内のサポート
18時~21時:到着手荷物カウンターでのサポート
宮崎空港でのPepperの検証内容は上記のとおりで、毎日朝の6時30分から21時まで空港内のさまざまな案内業務を担当。なかなかハードだが、途中に休憩(充電)が3時間ある。初日ということもあり、ANAのチェックインカウンター前に現われたPepperに、グランドスタッフから記念のレイがかけられた。
預け入れ手荷物と、チェックイン関連の案内業務のデモンストレーションが行なわれた。手荷物カウンター前がここであること、口が開いている荷物は預け入れできないためテープを使い閉じる必要があることなどを日本語と英語で説明するPepper。ちなみにPepperは日本語/英語/中国語を使えるが、宮崎空港での検証期間は日本語と英語での案内にしている。今後検証を重ねるなかでさらなる多言語化も検討したいとのことだ。
チェックインカウンター前での案内業務では、Pepperに近づくと搭乗客の目的地を訪ねてくるので、胸のディスプレイで目的地、搭乗する便を選択すると、搭乗口への経路を表示して案内する。Pepperの案内業務の切り替えはスタッフが手動で行なう。
これまでの他空港での運用で、Pepperが案内をすると利用客はその内容に注目して、チェックイン関連の渋滞・行列が緩和される傾向があることが確認されているという。
チェックインカウンター前でのデモンストレーションが終わり、次の業務への移動となる。ここでPepperはMicrosoft HoloLensを装着。スタッフが移動モードに切り替え、移動先をディスプレイ上で指示すると、音楽を鳴らして移動を始める。移動中は胸のディスプレイに「注意/Caution」と表示し、音楽と日本語/英語による注意喚起のメッセージを繰り返す。約1m以内に人や障害物が接近するとPepperは停止するようになっている。
Microsoft HoloLensは本来人間が装着し、現実の視界にホログラムを表示するARデバイスだが、これを使い、空港業務においてWi-Fiやビーコンを使わずにPepperを自走させる試みは世界でも初という。NSSOLの技術協力を得て、今回の検証は実現された。
Pepperが自走するためには、まず事前にスタッフがMicrosoft HoloLens装着して空港内を歩き、経路と目的地を記録してマッピングを行なう。移動の際にPepperはマッピングデータをもとに、装着したMicrosoft HoloLensからリアルタイムに現在位置と周囲の状況、目的地情報を得て、対物・対人にはPepper自身のセンサーで衝突を回避しながら移動していく。自走の際には必ずスタッフが付き添い、また予期せぬ課題が発生した場合には、検証を中止することもあり得るとのことだ。
PepperがANA608便の搭乗客をお見送り
最後は宮崎空港の7番ゲート前に移動して、ANA608便(宮崎11時30分発~羽田13時00分着)の搭乗前の案内を行なった。ゲートを通過する際に必要なもの、事前改札などについて案内し、搭乗が始まると、「お待たせしました。皆さんを飛行機にご案内しますね。前の人を追い越してしまわないように、ゆっくりご搭乗くださいね」と話し、搭乗客を見送った。
ANAのホスピタリティをスタッフとPepperで提供していきたい
デモンストレーション中、解説をしていたANAのデジタル・デザイン・ラボ・エバンジェリストである野村泰一氏が、最後に報道陣からの質問に答えた。
これまでPepperがANAの空港業務の一部を担う係員として導入されたのは、成田空港と福岡空港。羽田空港で使われたPepperは、空港業務向けのカスタマイズを行なっていないため、今回の宮崎空港が実質的には3カ所めの導入空港となる。ちなみに現在、成田空港では2体、福岡空港では1体のPepperが運用されている。
宮崎空港での実地検証は2月15日から3カ月間行なわれるが、自走の検証は2月末までとのこと。以降も各種案内業務を行なうが、移動はスタッフが運搬する。3カ月間の実地検証後には関係者間で効果・実績を振り返り、本採用・継続利用となるかが決められる。
ANAは日本全国の空港と話し合いの場を設けているが、宮崎空港はPepperを使った成田・福岡空港での取り組みに大変興味をもち、熱意をもってくれたことが3カ所目の空港となった大きな要因だったという。また、自走の検証を行なうのに、大き過ぎず小さ過ぎずほどよい規模感であったこともあるとのこと。宮崎空港での自走検証がうまくいけば、さらなる巨大空港での自走検証にも挑戦したいと意欲を見せた。現在は那覇空港と話し合いの場を多く設けており、将来的に4カ所目となる可能性もあるそうだ。
過去の2空港での導入では、繰り返し利用客に伝えなければならない情報はPepperが受け持ち、利用客一人一人に個別に対応しなければならないことをスタッフが行なうといったことで、お互いがフォローし合えるよい関係を築けた実績があるという。Pepperが人間にとって代わるのではなく、協働という形で、ANAらしいホスピタリティを利用客に提供していきたいと野村氏は語った。