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西武鉄道、全席指定列車「S-TRAIN」として運行する新型通勤車両「40000系」公開

シートのロングとクロスを転換可能、コンセントやWi-Fi装備。3月25日から運行

2017年2月13日 公開

2017年3月18日 指定券発売開始予定

2017年3月25日 運行開始

3月25日から運行を開始する西武鉄道の新型通勤車両「40000系」。未来志向の機能がたくさん盛り込まれた進化した通勤車両

 西武鉄道は、3月25日から運行を開始する新型通勤車両「40000系」を報道陣向けに公開した。その車両の詳細をレポートする。公開当日新型車両の前で、西武鉄道の取締役会長である後藤高志氏から挨拶もあった。

 新型通勤車両40000系は、黄色の4ドア車両の2000系の代替車両として計画され、西武鉄道社内で20歳代の若手を中心としたプロジェクトチームを作り検討された。特に若い女性目線での利便性を考えたデザインが各所に活かされている。

 この40000系を活用して、東京メトロ(東京地下鉄)、東急電鉄(東京急行電鉄)、横浜高速鉄道をまたぎ、有料座席指定列車「S-TRAIN」として直通運転する。土曜・休日に西武秩父駅~元町・中華街駅(東京メトロ副都心線経由)、平日に所沢駅~豊洲駅を運行。料金は通常運賃のほかに指定席料金がかかり、西武秩父駅~元町・中華街駅の場合で1060円。詳しいダイヤや料金は、既報のとおり

 土曜・休日、通勤や通学などさまざまなシーンで使われることから「Scene」、全席指定で座れる座席の「Seat」、乗り換えなく直通運転で使える「Seamless」の3つの「S」から「S-TRAIN」という愛称にしている。

新型通勤車両40000系
40000系正面。直行運転に必要なため貫通ドアがある
40000系正面。尾灯点灯状態

 10両の固定編成で、2016年度時点で完成しているのは2台。公開されたのは4000系2編成。車体はアルミダブルスキン構体で、地下鉄乗り入れサイズに対応している。製造は川崎重工業。

 車体は、西武線沿線の風景が感じられる山の緑と空の青をイメージしたカラー。デザインは、全体がアルミのシャープさがあるが、前面が丸みを帯びていて柔らかさも感じられる。ドア付近などに外から分かりやすようにピクトグラムも多用されている。

尾灯のアップ。弧を描くLEDでとても目立つ
ワイパーは曲面ガラスを拭き取るために複雑な構造
前照灯は高輝度LEDが上部に設置される
40000系10号車の側面
先頭側面部分のアップ。先頭上部が曲面になっている
40000系中間車両7号車の側面
ドア周辺を囲むようにデザインされている
ドアにはピクトグラムで車内設備が分かるようになっている
10号車には、車いすやベビーカーで快適に過ごせるパートナーゾーンがある。ピクトグラムで外から分かるようになっている
運転席出入口にもピクトグラム
車両横の号車表示と車両番号表示
前方行先表示器
側面行先表示器は行き先と種別を交互切り替え表示。横にロング/クロスの表示
パンタグラフはシングルアーム
車内で提供されるWi-Fi接続に使われるWiMAX用の通信アンテナ
モノリンク式ボルスタレス台車
緊急時に出入りするための折りたたみ式階段を装備
階段は車両下部に収納されている
ドア解錠ハンドル
ドア外側に半自動ドアを開閉するボタンがある

 シートに特徴があり、通勤車両のロングシートと進行方向を向くクロスシートに転換。ロング、上り、下りの3モードで切り替える。運転台画面で「転換許可」をタッチ後、各車に用意されているスイッチで転換操作をするほか、運転台で全車一斉転換も可能。また、クロスシート時には、座席下のペダルにて個別に転換が可能となっていて、4名で向かい合わせシートにすることもできる。

 座席背面には、ドリンクホルダとフックがあり、2座席に1つ、窓際にAC100Vのコンセントが用意されている。これらはクロスシート時に利用が可能となっている。

 車端の優先席部分は、3席のロングで固定。AC100Vのコンセントはシート間の肘掛け下に用意されている。座席定員は440席。転換可能なクロスシートが344席、固定のロングシートが96席となっている。

 また、紙の中吊り広告を廃止し、17インチディスプレイを使ったデジタルサイネージの「Smileビジョン」をドア上部だけでなく、天井部分にも配置している。これはクロスシート状態で正対して視聴できるので、長時間視聴にも適している。1編成で17インチモニタを236面。2017年度は、広告貸切電車「Smile JACK」として運用される。

 空気清浄機の「プラズマクラスター」を搭載するほか、「SEIBU FREE Wi-Fi」のWi-Fiアクセスポイントも設置している。SEIBU FREE Wi-Fiは、主に訪日外国人向けのサービスだがメールアドレスの登録で日本人でも利用できる。

40000系クロスシート時の車内
40000系ロングシート時の車内
クロスシート時のシート状態
クロスシートでも足下間隔は十分に広い
クロスシートは向かい合わせにすることも可能
シートを向かい合わせにするには、このペダルを踏んで回転させる
なおロングシート時にはペダルが踏めなくなる
ロングシート時のシート状態
シート転換操作の連続写真
各車に装備されている座席転換スイッチ。通常は鍵がかかったパネル内にあるので、目にすることはない
座席背面
1座席1つドリンクホルダが使える
シート上部の注意書きと荷掛フック、持ち手
窓側に用意されているAC100Vのコンセント
ドア横の座席との間に備えられたAC100Vのコンセント
袖仕切は強化ガラス
美しい桜をモチーフにした柄が入っている
シートも合わせて桜柄
荷棚はガラスでできている
荷棚の上部
吊革は持ちやすさを考慮した作り
窓のスクリーンを下ろしたところ。完全な遮光ではなく柔らかい光になる
車端の優先席部分
ガラスの扉には、桜をモチーフにした柄
優先席シートの肘掛けは跳ね上げることも可能
優先席シートでは肘掛け下にコンセントがある
コンセントにさしにくい場合、肘掛けを跳ね上げればフラットになる
ドア付近。サイネージ「Smileビジョン」によって中吊り広告が廃止されている
天井部に設置されたSmileビジョン。クロスシートに着座して正対する位置にある
ドア上に設置されたSmileビジョン
ドアには半自動ドアスイッチを設置
手すりは木目調。金属部も手触りを重視した作り
「SEIBU FREE Wi-Fi」の表示
シャープ製プラズマクラスターを搭載。車両の製造は川崎重工業
室内照明はLED。調光と調色ができる

「パートナーゾーン」と呼ばれる、車いすやベビーカーでの乗車や、大型のスーツケースなどを持っていても快適に過ごせるスペースが、10号車に用意されている。大きな窓で子供が外を見やすいよう、手すりを設置したり、車いすの固定装置も用意されるなど工夫されている。

 2号車、9号車の車両端には、3席分を使った車いすの固定も可能なフリースペースが設けられ、4号車には車いす対応の多目的トイレが用意される。ここまで紹介したクロスシートの転換装置、トイレ、AC100Vのコンセント、SEIBU FREE Wi-Fiの設置は西武鉄道の通勤車両では初の装備とのこと。

車いすやベビーカーでの乗車で快適に過ごせるパートナーゾーン
パートナーゾーンの表示
パートナーゾーンの利用イメージ
パートナーゾーンの車いすスペース
車いすを固定する器具
車いすを固定した状態
車いすスペース横に介護者が使いやすいよう中腰いすがある
中腰いすは立ち上がりやすい作り
大きな窓に手すりが付けられている。上部が大人用、下部が子供用となっている
手すりの横はクッションが付けられている
2号車、9号車の車両端にはフリースペースが設けられている
4号車にはトイレがある
トイレの表記
扉の開閉はボタンで行なう
トイレの内部。車いす対応で広い
手洗いと非常通報器
オムツ交換シートも用意
運転台部分の室内側
運転台
運転台の表示パネルは3面ある
運転席後ろの操作盤
ドアの操作盤
車内放送設備
前方に貫通扉がある
緊急時乗降用のハシゴ
40000系の前で挨拶する、西武鉄道株式会社 取締役会長 後藤高志氏

 車両公開日には、取締役会長の後藤高志氏が新型車両40000系の前に立ち、「この新型車両40000系は、スマイルトレイン30000系の後継として運行を開始する予定です。西武鉄道では“あれも、これも、かなう。西武鉄道”というコーポレートメッセージとしていて、さまざまな方々に色々なシーンで快適な時間をシェアしていただきたいと思っています。今回の40000系は、そうした思いを体現した新型車両です。

 改革と挑戦のキーワードで進めてきて、各種装備を備えた、もっとも進化した通勤車両と自負しています。通勤電車の快適性向上が世の要請として高くなってきていて、その実現でもあります。2018年度には25年ぶりに新型特急車両も導入します。西武鉄道は次の100年に向かって、スピード感を持って走り始めています。安心、安全を基本にして、快適に西武鉄道をご利用いただけるよう、利便性を高め、沿線の皆様に愛される鉄道を目指していきます」との挨拶があった。

40000系の奥に30000系スマイルトレイン