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東京メトロ、銀座線開業当時の車両を再現した1000系特別仕様車両を公開

予備灯点灯、リコ式風吊り手、真ちゅう風の手すりなど「伝統」を強調

2017年1月11日 公開

1000系特別仕様車両

 東京メトロ(東京地下鉄)は1月11日、銀座線1000系特別仕様車両を報道陣に公開した。1000系はすでに銀座線で運行開始し、既存の01系をほぼ置き換えているが、最後の導入車両となる2編成は特別仕様車として、銀座線開業当時の1000形のイメージを再現したことが特徴。通常運用のほか、イベントなどでも活用する。

 特別仕様車は、銀座線の路線コンセプト「伝統×先端の融合」のなかから「伝統」を強調した車両。旧1000形を思い起こさせるものとしては、ポイント通過や駅進入時に一時的に室内灯が消灯し予備灯点灯シーンを再現可能にしたことや、内外装の随所に見られる旧1000形をモチーフとしたデザイン。操舵台車など1000系量産車のメカニズムはそのまま踏襲している。

 1000系特別仕様車両のうち、今回公開された第39編成は1月17日より、予備灯点灯などを行なわず、室内灯も白色の通常状態で運行を開始する。具体的な運行ダイヤは混乱などを防ぐため、現在のところ非公開とするという。特別仕様車の2編成となる第40編成については、まだ製造メーカーから納入前の段階だとしている。

開業時の旧1000形のイメージを再現

 内外装のデザインのモチーフとした旧1000形は、開業当時に走っていた車両。現在は東京都江東区の地下鉄博物館に所蔵してあり、車内も公開されている。

 特別仕様車の外見では、当時の鋼鉄製車両では必須だった補強板であるウインドシル、ウインドヘッダーをシートの色の濃淡で再現した。遠目に見ればウインドシルが出っ張っているように見え、旧1000形の雰囲気を出している。また、前照灯を1灯式に、尾灯形状の変更、外販塗装範囲の変更などで旧1000形に似せたほか、乗務員扉の握り棒や開閉ハンドル色を真鍮色にしている。

 ウインドシル、ウインドヘッダーは実際にパネルを貼り付けて表現する方法も検討されたが、取り付けには車体に穴を開けなければならず、後々のメンテナンスに影響があるため実現しなかった。また、シートでリベットも表現するなど、さらに旧1000形に近づけようという意見もあったが、スッキリとした外見にするため、今回の仕様に落ち着いたという。なお、1000系のイエローの車体はシートによるもの。剥がせば01系のようなヘアラインのアルミ地の車体として利用することもできるという。

1000系特別仕様車両
ウインドシル、ウインドヘッダーはシートのカラーの濃淡で表現
ヘッドライトはLEDが集合する1灯式。行き先表示は白色で点灯。早いシャッター速度で撮影しても縞模様にならないタイプ

 室内は木目調の内装とし、座席まわりやドア左右の手すりや貫通路のドア取っ手、点検の開口部の蝶番などが真鍮色となっている。これは真ちゅうではなく、通常仕様と同じステンレス製のものに真ちゅう色の塗装や表面仕上げを行なった。シートや床のカラーも旧1000系に合わせ、グリーンのシートに赤の床とした。

 また、窓枠などアルミとなっている部分は濃い赤色の仕上げとし、こちらも旧1000形のイメージに近づけた。

1000系特別仕様車両の室内。室内灯は電球色状態のもの
ドアの内側
多目的スペース
貫通扉のデザイン。銀座線沿線のアイコンがさりげなく並んでいる
リコ式ではないが、リコ式風の持ち手の形状

 独特だったリコ式吊り手は模擬形状とし、実際の使いやすさも考慮したもの。特別仕様を検討するなかで、本物のリコ式吊り手を再現することも検討されたが、手を離したときに乗客に当たる可能性やバネの破損とメンテナンスの問題から実現せず、模擬形状にとどめた。

 製造者銘板も当時のものに近づけ、製造メーカーも右から左に記載するなど、開業当時を再現したものとなっている。

 特徴的な予備灯は、地下鉄博物館にある旧1000形から取り外して3Dスキャナで読み取り、そこから再現したもの。切り子状のガラスや電球なども現在の基準に合わせながらできるだけ再現した。なお、予備灯のレプリカグッズの提供なども検討してみたが、非常に高価になるということで実現しなかったという。

予備灯
点灯状態

 室内灯の消灯と予備灯の点灯は旧1000形をはじめ、一部車両は1993年まで銀座線の一部車両で発生していたもの。ポイント通過などで集電線が左右で切り替わる際、車両の集電靴に一時的に電気が流れなくなるため室内灯が消灯し、その間に予備灯が点灯する仕組みだった。ポイント通過は先頭車から順に行なわれるため、電車の進行に従って前から順に一時消灯していた。

 今回の特別仕様車ではそれを忠実に再現可能。現在でも当時と変わらず銀座線や丸ノ内線はポイント通過時の一時的に電気が流れない区間があり、それを先頭車で検知、速度に応じて前から1両ごとに順番に室内灯消灯と予備灯を点灯させるという凝った仕組みで再現している。

 なお、室内灯は通常は白色点灯だが、イベント時になどでは電球色で点灯させることも可能となっている。

特別仕様車両で「お客さまに楽しんでいただく」

東京地下鉄株式会社 車両部設計課 課長 松本耕輔氏

 特別仕様車の導入の経緯としては、銀座線のダイヤ改正により、これまでの38編成から、必要な車両編成数が増え、1000系2編成を追加発注する必要が生じたため。

 車両を説明した東京メトロ 車両部設計課 課長 松本耕輔氏によれば、追加の2編成を、「よりお客さまに楽しんでいただけるものにしよう」という声があったことがきっかけとし、特別仕様車両に乗る乗客に対しては「雰囲気を楽しんでいただければ」と話した。

 イベントの運行はまだ検討段階だが、今年は地下鉄が走りはじめて90周年という節目の年。松本氏によれば、90周年キャンペーンイベントの中で、室内灯を電球色とし予備灯が点灯するイベントモードで運行することも検討しているという。