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JAL、空港サービス世界ナンバーワンを決める社内コンテストを開催(本選編)
国内外空港5000名の中から選ばれた12名が参加
2016年11月21日 12:29
- 2016年11月14~15日 開催
JAL(日本航空)は11月14日と15日の2日間にわたり、「JAL 第5回 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」を開催。14日の予選では、5000名から選出された59名(国内空港48名、海外空港11名)がJAL第一テクニカルセンターにて質の高いサービスを披露。特に優秀だった12名が15日のファイナルに進出した。
「JAL 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」とは、常に新鮮な感動を得られるよう高品質なヒューマンサービスの提供を目指して行なわれるコンテスト。利用客に寄り添いながら、JALフィロソフィの価値観として体現できる「安全とサービスのプロフェッショナル」を選出するとともに、審査結果を元に毎年“プロフェッショナルNo. 1”を決定している。
15日の本選では、予選に引き続き「イレギュラーケースのアナウンス能力」、「カウンターチェックインでの旅客対応能力」の2つを審査。お題はコンテストの直前、もしくはた明かされないまま審査が始まるなど毎日の業務と同じ状態で行なわれ、日々の経験や対応力が試されることとなる。
本選の開会式では空港オペレーション教育訓練部・部長の上原博信氏が挨拶。「日々の空港の立ち振る舞いとともに、私たちはニーズに合ったサービスを行なうことが大事です。ここで学んだことをご自身の空港に持ち帰り伝えてください」と話した。また、本選では社外審査員を招待。帝国ホテル ディレクタープロトコール 室谷廣二郎氏、オリエンタルランドCS推進部長 南澄恵氏、アメリカン航空 アジア・太平洋地区担当 空港統括支店長 J.ラスフォートソン氏が審査員として並んだ。
海外空港部門は「アナウンス審査」、「カウンターチェックイン審査」の2つで評価。「アナウンス審査」は、あらかじめ課題が伝えられ、それに沿った文章を用意。今回の設定は「搭乗口において、搭乗前にエンジントラブルが発生し、出発時間が約1時間遅れる見込み」というもの。日本語、英語で3分間にまとめてアナウンスを行なった。
トップバッターは金浦空港の金健東氏。簡潔で必要な情報のみを伝える内容だが、言葉の隅々にまでお詫びの気持ちがこもっていた。声のトーンも静かでゆっくり、聞きやすく、利用者を落ち着かせてくれる口調だった。
「日本航空よりお詫びとお知らせを申しあげます。東京羽田行き12時10分発。日本航空92便はお乗りいただく飛行機の左翼のエンジンの整備作業のため出発が遅れる見込みでございます。誠に申し訳ございません。ただ今のところ、新しい出発の時刻は13時10分。飛行機への案内は12時50分頃を予定しております。恐れ入りますが、次の案内まで38番搭乗口付近にてお待ちください。なお、この便を担当いたしますのは金でございます。何かご不明な点やお困りのことがございましたら、私、もしくは日本航空の係員までお知らせください。本日はお忙しいなか、ご出発の便が遅れることを心からお詫び申しあげます。」
北京空港の魯瑩氏は、口調からにじみ出る優しさにほっとできる部分も。具体的にどの部分を整備しているのかを説明。整備士からの情報も加えていた。また、遅れた場合の目的地への到着時間もアナウンス。利用客が羽田から先の予定を立てやすくできるような心配りも見られた。
「日本航空より出発便の遅れについて、お詫びと案内を申しあげます。日本航空東京羽田空港行き、定刻16時40分発22便はお乗りいただく飛行機の右エンジンに不具合が発生したため、ただ今のところ部品の交換を行なっております。担当整備士の情報によりますと、およそ1時間ぐらい交換作業を終われる見込みでございます。出発が遅れますことを深くお詫び申しあげます。大変申し訳ございません。ただ今のところ、新しい出発時間は17時40分、飛行機への案内は17時10分の見込みでございます。羽田空港に到着する時刻は22時です。次の案内までE18番搭乗口付近にてお待ちください。私はこちらの便を担当しています魯瑩と申します。ご不明な所がございましたらお気軽にお知らせください。重ねまして出発が遅れましたこと、大変申し訳ござません。」
天津空港の趙新明氏は、お詫びとともに遅れる時間を有意義に過ごすため新聞の配布を案内。搭乗予定時刻も2度言い換えて伝えるなど分かりやすかった。
「日本航空よりお詫びとお知らせを申しあげます。名古屋行き14時35分発840便はお乗りいただく飛行機のエンジン整備作業のため出発が遅れます。安全運行のため整備スタッフ一同確認しております。本日は皆さまの大切なご旅行、お仕事に対してご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ござません。ただ今のところ新しい出発時刻は16時35分。飛行機への案内は15時10分。午後3時10分頃を予定しております。次の案内まで103番搭乗口付近にてお待ちください。心ばかりではございますが本日の新聞、ご用意しております。このアナウンスの後、皆さまのところへお配りいたしますので暫くおまちください。なお、こちらの便を担当いたしますのは趙新明と申します。お手伝いを希望のお客さまはお気軽にお知らせください。」
続いてはカウンターチェックイン審査へ。設定は、(1)出場者の所属空港発で成田、羽田、名古屋行きのいずれか。(2)イレギュラーは発生していない。(3)並んでいる利用者の対応となる。また、利用客の設定は(1)旅慣れない日本人の女性。(2)赤ちゃん連れの女性。(3)車いすをご利用の方。(4)観光帰りの日本人女性3名。
トップバッターは北京空港の魯瑩氏。友人が空港におらず焦っている旅慣れない女性に対し、自分が日本語が話せることを伝え、旅行者に対して安心感をまず与えていた。北京空港が広いため1時間程保安検査や出国検査に時間がかかることを告げ、あとどのくらいで着けば間に合うのかを確認。また、予約状況を確認し友人が明日に変更されていること伝えて安心させた。赤ちゃん連れの女性への案内の最中には、赤ちゃんが泣き出す場面も。その際も柔らかな対応していた。隣の席をブロックするなどの配慮や、赤ちゃんがお腹が空いたから泣いてしまったとの話を聞き、一番近い授乳室も案内するなど臨機応変な対応を行なっていた。8分間で3組を案内していた。
天津空港の趙新明氏は、友人がホテルにパスポートを忘れ、焦ってしまっている女性に対し、まずは友人に連絡することを勧めた。自分の名前を伝え、着いた際に声をかけてほしいと対応。まず今すぐやらなければいけないことをアドバイスし、落ち着かせようとしている姿勢が印象的だった。また、抱っこをしている赤ちゃんが泣き出してしまった女性に対しては、「すぐにチケットを用意いたします」と話し、ベビーカーの貸し出しについて案内をするなどの配慮も。転んでしまい捻挫をしてしまった車いす利用者への対応は、目線を合わせじっくりと話を聞き、対応を行なっていた。8分間で3組を案内。
金浦空港の金健東氏は、細やかな対応と利用者とのコミュニケーションで会場のオーディエンスの心までつかんでいた。パスポートを忘れてしまった友人を待つ女性に対しては「ご安心ください。ダウンタウンまでは往復で1時間のため時間はまだ十分あります」と具体的な時間を提示して、落ち着かせていた。また、お土産のお勧めを教えてほしいというリクエストに対しては、イミグレーションエリアには免税店があることを説明。「キムチ好き?」という質問に対し、「実はあまり好きではないです」という答えで会場に笑いを起こすなど、終始笑顔あふれる対応を行なっていた。8分間で3組の案内を行なっていた。
海外部門の出場者3名の審査が終了したところで、アメリカン航空 アジア・太平洋地区担当 空港統括支店長 J.ラスフォートソン氏が総評。「とても心が温かくなり、情熱も感じました。アナウンスでは、利用者にとって重要な遅延情報を的確に伝え、ロールプレイングではよくあるシチュエーションのなかで素晴らしい仕事ぶりを見ることができました」と感想を話した。
保安検査場の様子を再現、空の安全を確実に守るための業務を披露
続いては「保安検査部門審査」。予選で選ばれた3空港の3組が出場。航空機の利用客が必ず通過する重要なタッチポイントである保安検査場。ここでは厳格で確実な審査が求められるなかで、利用客にスムーズな検査を促し真摯な対応で快く協力してもらうことが重要。今回は案内係と接触検査係の2名1組で4名の利用客を対応し審査を行なう。検査時間を7分程度と設定し、過ぎた場合は減点、6分以内は加点となる。またカッターナイフの検出が出来なかった場合は失格となる。航空保安検査手順を遵守し、迅速、確実、丁寧な対応ができているかで審査を行なう。
トップバッターは羽田空港の福田勇亮氏、金納響氏のペア。「よろしくお願いします!」と声を合わせ、笑顔で保安検査を開始。
「時間がかかりすぎ」と話す利用客に対しては、「申し訳ございません」という言葉とともに表情や声でお詫びの気持ちを伝え、金属反応のある利用客にはポケットの中に鍵や携帯電話がないかなどの具体的な品名を挙げて、「ご提示ありがとうございます」や「お手数をおかけしまして申し訳ございません」と丁寧な対応をしていた。キビキビとした無駄のない動きと丁寧な対応が印象的だった。
続いては、熊本空港の太田啓太氏と江嶋遥氏のペア。対応中はもちろん利用客が見えていない場面でも常に笑顔を絶やさずに、行動していたのが印象的だった。「お待たせしました、こんにちは!」とチケットを受け取る際に挨拶し、好印象。接触検査員に対して「荷物1点です」と声をかけ合うなどチームプレイがスムーズに行なわれていた。また、間違えて保安検査場に予約変更のために来てしまった利用客に対しても、カウンターを丁寧に案内。また、後ろに並んで急いでいる方に対しても「もう少々お待ちください」や「お時間大丈夫でしょうか?」と声をかけていた。カッターナイフを所持していた利用客が廃棄を希望した際に、目の前でボックスに入れる姿を見せるなど相手の立場に立った行動が印象的だった。
ラストは福岡空港の菊原総司氏と坂倉穂菜美氏のペア。チケットの確認の際には「こんにちは」と気持ちのよい挨拶。金属反応が出た利用客に対してはポケットの中の鍵と携帯を出してもらえたときに、とびきりの笑顔で対応。「いってらっしゃいませ!」と元気に送り出す姿に心が温かくなった。急いでいる利用客にせかされてしまう場面でも冷静に、着実に検査を行なっていた。また、接触検査の前に「お時間は大丈夫でしょうか?」と出発時間を気にする配慮も見られた。カッターナイフが見つかった際も、カウンターでの預かりや見送りの方がいる場合は渡すこともできると提案。「機内では絶対に使わないので」と食い下がる利用客に対しても、柔らかくお断りをするなど、常に気持ちのよい対応が光っていた。
なお、審査の最後には日本航空 代表取締役専務執行委員 コミュニケーション本部・大川順子氏からの総評も。「保安というミッションは厳格さを求められ、それが安心と信頼につながります。そのなかで接客をするということは丁寧さと厳格さ、両方を満足させることは本当に難しいこと。でも皆さんはミッションを達成しながら、安心感を与えていました。なによりもそれが空の安全につながりますので、これからも頑張ってください」と語った。
アナウンスとカウンター対応をつなげ総合的にサービスを審査
国内空港部門の審査では「アナウンス/カウンターチェックイン審査」を同時にそのまま続けて行なった。フライトイレギュラーが発生しているなかでアナウンスを行ない、そのままチェクインカウンターにて対応を行なう。時間はアナウンス3分、カウンター8分。イレギュラーの内容は10分前に出場者に伝えられ、カウンターでの内容は知らされていない。アナウンスの設定は(1)悪天候のため国内線は2時間、国際線は3時間出発が遅れている。出発地は所属空港。(2)他社便は満席。(3)目的地に早く到着する便は当該機以外はない。ミールクーポンの配布は個人の判断、となっている。
ロールプレイングの設定は以下の通り(1)遅延で大事な用事に間に合わないと困っているビジネスマン。(2)観光目的で利用する女性。(3)観光目的の海外籍の利用者(4)赤ちゃん連れの女性(5)車いすを利用の方。
トップバッターは、成田国際空港・佐藤綾氏。時間を2つの言い方で伝え、ミールクーポンも配布。今日の天気なども含め、お詫びの気持ちがしっかりと伝わる内容だ。
「日本航空よりお詫びとお知らせを申しあげます。台北行き18時ちょうど発。日本航空809便は皆さまにお乗りいただく飛行機の到着が遅れるため、出発が遅れます。申し訳ございません。本日、皆さまにお乗りいただく飛行機はベトナム・ホーチミンシティより参りますが、本日ホーチミンに霧がかかっております影響で3時間程遅れて成田空港へと飛行中でございます。ただ今のところ、新しい出発時刻は21時ちょうど。午後9時ちょうど。皆さまへの飛行機への案内は20時40分。午後8時40時頃を予定しております。なお、心ばかりではございますが、空港内のレストランで利用いただけますお食事券をご用意いたしました。お手続きの際にお渡しいたしますので、どうぞ日本航空チェックインカウンターまでお越しください。このたびは大切なお仕事、ご旅行のおり、また雨上がりでお足元の悪い中お越しいただいたのにも関わらず、お待たせすることとなり大変申しわけございません。何かご不明な点、ご心配な点がございましたら、お近くの日本航空係員までお知らせください。」
続いては、カウンターチェックイン審査。遅延によって困っているビジネスマンへの対応では、大事なクライアントとの会議で遅れることができないということで、他の空港会社も含めて搭乗便を検索。すべて満席であることを伝え、一番早い出発が搭乗便であると納得してもらうことに。また、遅れの時間をレストランで過ごそうとしている利用客が「3時間あるのでうなぎが食べたいので近くのお店でお勧めは? 成田駅にある?」と聞くと成田山の参道には美味しい鰻屋があると伝え、話が盛り上がる場面も。終始、相手の話をしっかり聞き、お詫びの言葉も伝え、会話の中から希望にそって提案をたくさんしていたのが印象的だった。4組を案内。
羽田空港の陳野はるか氏。事前に他社便が満席のため振替ができないことなど、利用客が聞きたい情報を盛り込む内容。伊丹空港への到着時間も案内し、どのくらいで目的地までいけるのかも明確にしていた。
「日本航空より大阪伊丹行き、111便をご利用のお客さまにお知らせとお詫びを申しあげます。大阪伊丹行き9:30発111便は福岡空港から到着する飛行機にお乗りいただく予定でしたが、福岡空港が霧のため、福岡空港を遅れて出発しました。そのためこちらの111便も出発が遅れます。申し訳ございません。新しい出発のお時刻は2時間遅れの11時30分。大阪伊丹空港への到着は12時40分を予定しております。また、本日他社の大阪伊丹行きは満席と情報が入っております。お振替ご希望のお客さま、ご希望に沿えず申し訳ございません。本日は大切なお仕事やご旅行のおり、ご出発が遅れ申し訳ございません。なお、私はこちらの便を担当いたします陳野でございます。ご不明な点やご心配な事がございましたら私陳野、またはお近くの日本航空係員までお知らせください。」
カウンターチェックイン審査では、困っているビジネスマンの話を自分の代わり聞いてくれた方に対しお礼を述べ、友人との待ち合わせをしていると聞くと機内でもWi-Fiが使えることも案内。また、利用客から「お勧めレストランを教えて!」と聞かれると「空港内でとてもお寿司が食べられますよ。美味しさを保証します!」と笑顔で送り出すなども対応も。イレギュラーの中でも笑顔を忘れずに、会話を発展させて相手をリラックスさせていると感じた。4組を対応。
続いては、福岡空港の野村翼氏。聞きやすいテンポでのアナウンスとどれくらい遅れるのか、そして新しい到着時刻を明確に伝え、お食事券の配布を告知。安心と信頼感を声から感じられるアナウンスだった。会場を見渡しながらゆっくりと聞きやすく言葉を発音しているのが印象的だった
「日本航空よりお知らせとお詫びを申しあげます。東京羽田行き17時30分発324便は、札幌新千歳空港が霧の影響を受け、皆さまのお乗りいただく飛行機の出発が遅れております。そのため、こちらの便の出発が2時間遅れる見込みでございます。お急ぎのところ大変申し訳ございません。ただ今のところ皆さまの新しい出発時刻は2時間遅れの19時30分、東京羽田空港への到着時刻は21時を予定しております。なお、お待ちいただく間、心ばかりではございますが福岡空港内でお利用いただけるお食事券をお配りいたします。恐れ入りますが、搭乗券やeチケット控えなどご予約の確認ができるものをお持ちになって1階日本航空カウンターまでお越しください。ご不明な点やご心配な点がございましたら、どうぞお近くの日本航空係員までお知らせください。」
カウンターチェックイン審査では、「他社のフライトがないか」や「新幹線ではどのくらいかかる?」と矢継ぎ早に質問されるが、満席であることや新幹線では東京まで時間かかることを伝えるなど素早い対応が光った。また、配布するミールクーポンで福岡空港内でのお土産も購入できるため“めんたいこ”をお勧めするなどご当地の名産にもふれた。また、「待っている時間でどうしようか迷っている。近場のレストランへ行きたい」という利用客には、空港内のショップとともに、「地下鉄で5分乗れば博多駅まで行けるため、そちらでのご飯もお勧めです」と利便性の高い福岡空港の特色を活かした案内も行なった。3組の案内を行なった。
函館空港の櫻岡優梨恵氏は、他の便も調べたが搭乗予定便が一番早く羽田に到着することを事前にアナウンスし、しっかりした口調で現在の状況を知らせた。
「日本航空より出発便の遅れに着いて、お知らせとお詫びを申しあげます。東京羽田空港行き14時55分発586便は、皆さまにお乗りいただく飛行機が、前の便にて伊丹空港の濃い霧の影響を受け、函館空港への到着が遅れております。そのため、定刻よりも2時間程出発が遅れる見込みでございます。ご出発のお客さま、お時間に合わせてお越しいただいたのにも関わらずお待たせすることとなり、大変申し訳ございません。なお、他にお乗りいただける便がないかお調べいたしましたが、あいにくこちらの便が一番早く東京に到着いたします。新しい出発時刻につきましては、分かり次第すぐにアナウンスにてお知らせいたします。次の案内をお待ちください。なお、ご不明な点、ご心配な点があるお客さまはどぞお気軽に私、櫻岡までお知らせください。」
カウンターチェックイン審査では、急いでいる客に対して他の便が満席であること、新幹線も利用ができないこと、他に移動する手段がないことをまずは伝えていた。また、友人と会う女性、ランチのお勧めを聞きたい男性、赤ちゃん連れの女性、車いす利用の方と出場者のなかで唯一、5組を案内できていた。また赤ちゃんが泣き出した際には「初めての飛行機で緊張しているのかな?」「赤ちゃんは泣くのがお仕事ですからね」と赤ちゃんを見ながら母親とコミュニケーションを取る姿が印象的だった。また車いす利用の方には、東京の明日の天気がよいことも伝え、旅が楽しみになる情報も話していた。
続いては成田国際空港の平坂彩氏。遅延の解消のため代替え便を検討したが、難しいこと、また一番早く目的地に到着するのが当該便だということも案内。聞くだけで現在の状況が分かるアナウンスだった。
「日本航空よりお詫びとお知らせを申しあげます。台北行き18時ちょうど発809便は皆さまにお乗りいただく飛行機の到着が遅れるため、出発が遅れる見込みでございます。申し訳ございません。本日皆さまにお乗りいただく飛行機は現在ベトナム・ホーチミンシティより成田空港へ向けて飛行中ですが、ホーチミンシティ地方、濃い霧の影響を受け3時間遅れて到着する予定でございます。そのため809便台北行きも3時間程度の遅れが見込まれております。現在のところ新しい出発の時刻は21時ちょうどごろ、現地台北への到着は23時15分ごろを予定しております。新しい情報が入り次第すぐにアナウンスにてお知らせ致しますのでご出発のお客さまは82番搭乗口付近にてお待ちください。なお、それよりも早く台北へ出発していただけるよう代替え便等も検討いたしました、あいにく他社便を含め全て満席であり、こちらの便が一番早く台北へ到着いたします。お急ぎのお客さまも多いなか、誠に恐れ入りますが、当便をご利用くださいませ。本日は大切なお仕事、ご旅行のおり、皆さまのご出発が遅れまして誠に申し訳ございません。何かご不明な点、ご心配な点などがございましたら、どうぞご遠慮なく私平坂、もしくはお近くの日本航空係員までお知らせください。」
カウンターチェックイン審査では、イレギュラー状況の中でも笑顔を忘れずに対応しているのが印象的だった。また表情豊かに会話をしており、会議に遅れてしまうと訴える利用客に対し、お詫びの気持ちを声を表情で素直に表現している部分も好印象だった。3時間遅れについて気にしていないよという利用客に対してもお詫びの気持ちを述べ、待っている時間何をすればいいかな?と聞く利用客に対し、眺めがよく飛行機が多く見ることのできる場所をお勧めしていた。8分間で3組案内を行なった。
続いては、高知空港の岡村美音氏。一つ一つの情報をゆっくりとアナウンスし、とても聞きやすかった。また他社便に関する情報も含め、利用客が今すぐに知りたい情報を加えていた。
「日本航空より出発の遅れに着いてお詫びとお知らせを申しあげます。東京羽田空港行き、定刻11時45分発、494便はお乗りいただく飛行機の到着が遅れるため、出発が2時間遅れる見込みです。東京行きご利用のお客さまには、ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。ただ今、ほかの航空会社をお調べしましたところ、本日、東京行きは全て満席でございます。当便定刻11時45分発が一番早い出発でございます。新しい情報が入り次第、随時アナウンスにてお知らせいたしますため、当空港内にてお待ちください。なお、この便を担当いたしますのは、私、岡村でございます。ご不明な点があるお客さまはどうぞご遠慮なく、私かまたは、日本航空係員までお知らせください。本日は大切なお仕事、ご旅行のおり、ご心配をおかけしましたことをお詫び申しあげます。」
カウンターチェックイン審査では、お詫びの気持ちも表現しつつ、各利用者との会話を最大限に楽しんでいたのが特長だったミールクーポンを渡す際は、利用客からの「このクーポンでカツオを食べられるかな? とっても美味しいよね!」の言葉に思わず笑顔に。その後も高知の名産品、カツオをお勧めし利用客と大盛り上がりする場面もあり、オーディエンス側も笑顔になれる瞬間が多かった。また赤ちゃんが泣いてしまった際には、母親にJALとローソンのコラボのPontaシールをプレゼントするなどの心遣いも。飛行機が遅延しており、ピリピリした状態でも、利用客とのコミュニケーションで明るい気持ちになれるような対応をしていた。
羽田空港の水野志保氏は、新しい出発時刻をメインにアナウンス。振替便への案内が難しいことと、到着地に一番早く着くことも案内。豊かな表情でお詫びの気持ちを表わしていた。
「日本航空より台北へご出発のお客さまにお詫びとお知らせを申しあげます。台北行き18時20分発日本航空99便は使用機到着遅れのため出発が遅れる見込みでございます。大変申し訳ございません。ただ今のところ、新しい出発時刻は3時間後の21時20分。午後9時20分頃を予定しております。ただ今振替便をお探ししておりますが、あいにくほかの便は満席でございます。こちらの飛行機が一番速く到着地に到着いたします。また、新しい情報が入り次第すぐに案内いたします。私はこちらの便を担当いたします水野と申します。何かご不明な点、ご心配な点がございましたら、どうぞご遠慮なく私、水野までお知らせください。本日は大切なご旅行、お仕事のおりご迷惑をおかけしますことを心よりお詫び申しあげます。」
カウンターチェックイン審査では、赤ちゃん連れの女性や車いすご利用の方を優先して案内。列に並んでいる他の利用者たちに了解を得て、目の前にいる方だけではなく、広い視野を持って業務を行なっていた。「可愛い赤ちゃんでございますね!」と声を掛けつつ、赤ちゃんが泣き止んだ際に母親と笑顔を交わしたりととても自然なオペレーションを行なっていた。また、捻挫をしている足を見て、「体調はいかがですか? 機内でお手伝いすることはございますか?」と気遣い、希望に添って移動が楽な通路側の2名席を提案するなども。制限時間内に4組を案内した。
羽田空港の町野玲奈氏は情報を豊富に盛り込み、利用客がアナウンスを聞くだけで安心できるような内容。なぜ遅れるのか、出発時間と到着時間、他社への振替、食事券などかなり多くの内容を含んでいた。また、ゆったりとした口調で聞きやすかった。
「日本航空より台北松山空港へご出発のお客さまへお詫びとお知らせを申しあげます。台北松山行き18時20分発日本航空99便はお乗りいただく飛行機の到着が遅れたため出発が約3時間遅れる見込みでございます。お待ちいただくこととなり大変申し訳ございません。お乗りいただく飛行機はソウル金浦空港より到着いたしますが、あいにく金浦空港に深い霧が発生しており出発が遅れております。安全を最優先に考えた結果、霧が晴れるのを待って出発いたします。あいにく台北松山行きの便はほかの空港会社を含めこちらの便が一番速く松山空港へ到着いたします。日本航空99便の新しい出発時刻は21時20分、台北松山空港への到着は現地時刻24時ごろの予定です。お心ばかりではございますが、こちらのロビー内にてご利用いただけるお食事券をご用意しております。大変恐れ入りますがお手続きをお済ませのお客さまはご搭乗券をお持ちになり日本航空チェックインカウンターまでお越しください。お客さまに安心してご出発していただけるようただ今全力で準備を進めております。ご不明な点や、何かご質問等がございましたら、どうぞお気軽にお知らせください。皆さまの大切なご出発に際し本日は出発が遅れますことを心よりお詫び申しあげます。」
カウンターチェックイン審査では、相手の言葉を復唱して確認も行ない、相手が話し終わるまでは目を見てじっくりと聞いていた。また、羽田空港とともに成田国際空港もあり、利用ができるが移動時間を含めると同じ時間になってしまうこともアナウンス。また、窓側の席を希望の女性に対し、搭乗口などが夜になると寒くなるのでブランケットを追加で必要かどうかも確認。暖かくして過ごしてくださいねと一言も添えた。8分間で2組の案内を行った。
審査ラストの関西国際空港の永井麻衣子氏は、簡潔な内容でアナウンスを行なった。到着時間が深夜になってしまうことも含め、一番気になる時間関連をメインに伝えた。
「日本航空よりお知らせとお詫びを申しあげます。上海行き19時15分発815便は、上海空港の霧の影響によりお乗りいただく飛行機が遅れるため、出発が3時間遅れる見込みでございます。新しい出発の時刻は22時15分。午後10時15分の予定です。なお、現地到着時刻は午前12時15分の予定です。お急ぎのところ、皆さまを予定通りの時間で案内できず申し訳ございません。上海行き815便をご利用のお客さまはただ今より案内を開始いたします。日本航空チェックインカウンターまでお越しください。本日は大切なお仕事、ご旅行のおり、皆さまの出発が遅れますことをお詫び申しあげます。」
カウンターチェックイン審査では他社便での案内が難しいことや、チケット発券の際にカウンターの外に出てチケットを手渡すなど、利用者の近くで業務を多く行なっていた。また、時間がかかるため赤ちゃん連れの女性へ座って話が聞けるように椅子を用意。負担を少なくする対応も行なった。また、座った際に目線を合わせ話しやすい雰囲気を出していた。4組の案内を行なった。
すべての審査が終わると同社執行役員 客室本部長の安部映里氏が総評。「ここは競い合う場ではなく学びの場。今日の発表を活かしてこれからもよいサービスにつなげていきましょう。世界で一番選ばれる、愛される航空会社になっていきましょう」と語った。
また、社外審査員の帝国ホテル ディレクタープロトコール 室谷廣二郎氏も「いつもは接客を意識し従業員のつもりで見ていましたが、今日はお客さんの立場、3番目に待っていると想定して見ていました。自主性を持ってお客さまに接しているかと、的確な情報を伝えているかを審査しました」と自身が注目しているポイントを伝えた。
そしてオリエンタルランド CS推進部長 南澄恵氏もコメント。東京ディズニーリゾートでもネガティブな状況が起こった際に、キャストが丁寧な対応を心掛けていることを例に挙げ、「ネガティブな環境をプラスにする魔法を皆さまはかけることができる。またそのような状況にこそお客さまに大ファンになっていただくチャンスだと私は考えています。今回のコンテストで最高のサービスがリレーされ、伝わっていくことを改めて実感いたしました」と語った。
受賞の奥には意外な事実も入賞者たちが喜びと胸の内を語った
約7時間にかけて、全プログラムを終了し、いよいよ審査結果の発表。保安検査部門の優勝は熊本空港の太田啓太氏と江嶋遥氏のペア。厳格な保安検査への対応と、旅の始まりに帯するとても素晴らしい心配り見ることができた部分が評価された。
太田啓太氏は「お客さまから大変お厳しい言葉をかけられることも多々ありますが、ありがとう、ご苦労様などのお声をかけてもらうこともあり胸が熱くなる瞬間もたくさんあります。これからも微力な力ではありますが、お客さまの笑顔と安全を守るために力を尽くしていきたいです」とコメント。
江嶋遥氏は「まだまだ未熟者ですが、コンテストというよい経験ができてよかった」と話した。
国内空港・海外空港部門の結果発表前にはサービスアドバイザーバッジの授与も行なわれた。アルメリアの花が描かれており、花言葉は「おもてなし」。全グランドスタッフのお手本として中心となり活動していくこととなる。笑顔でバッジを受け取り、襟に早速着け、おもてなしのプロとして、心を新たにしている様子が伺えた。
そしていよいよ国内空港部門、海外空港部門の優勝、準優勝者を発表へ。審査員特別賞も発表されることになり、天津空港の趙新明氏、高知空港の岡村美音氏が選ばれた。
そして準優勝者の発表。海外空港部門の準優勝は、北京空港の魯瑩氏、国内空港部門は福岡空港の野村翼氏。それぞれが準優勝の喜びを語った。
魯瑩氏は北京から応援に来ている仲間に感謝し、「お客さま役の教官たちの難問に困りながらも、楽しめました。国内空港の素敵な接客を見ることができて沢山学ぶことができました。北京にもって帰ります」とコメント。
野村翼氏も「ここに立つために努力してきたことが報われてうれしいです。パイロット訓練生ゆえグランドスタッフの業務は1年半ほどの短い期間です。しかし、僕は胸を張って全力で取り組んでいると自負しておりますので、それを証明したく出場しました。少しでも仲間たちが頑張っていることを分かってもらえたらとうれしいです。現場や今後入ってくる後輩も含めよい刺激になればと思います。いずれ世界一の空港会社になれるようこれからも頑張ります」と語ってくれた。
そして、海外空港部門の優勝者は勤続17年のベテランである金浦空港の金健東氏。年齢もありコンテストへの出場を最初断ったという驚きエピソードも披露。プログラム終了後に話を聞いたところ、「少しでも金浦空港のレベルを上げられるようにこれからも頑張りたいと考えています。今回、日本の羽田、成田をはじめとする国内、そして世界各国の代表のサービスマインドを知り、それを伝えたいと思いました。若い方が多く出場される大会のため、当初出場を躊躇していましたが、考えが浅かったと気付きました。本当に本コンテストは自分の人生のためにもなりました。元々口数も少なく表情も硬いため、笑顔の練習もしましたが、これからは今まで以上に笑顔を大切にしてサービスを行なっていきたいと考えています。自分の足りない部分を知ることもできました。帰ってからも同じような対応を金補空港でし、リーダーシップをとっていきたいと思います」と話してくれた。
国内空港部門の優勝は勤続10年目の羽田空港の町野玲奈氏。優勝コメントでは「本当に人が好きですし、おもてなし、そしてJALが好きなのだと実感しました。以前は関西空港で勤務していましたが、経営破綻のときに羽田に来たという経緯があり、どんな状況でもお客さまに喜んでいただけるサービスをしていこうと心に決め頑張ってきました。最初はコンテストの出場を断っていた時期もありました。ですが、後輩にもサービスに対し熱い気持ちをもってもらうためには行動することだと気づき出場を決めました。練習の中で自分の苦手な部分や、気付かない部分を教官に引き出していただけてよかったです。日頃の業務内で綺麗に収まったり定型にはまっていたため人間らしさがないと言われることもあり、悩んだ時期もありました。ですが自分らしく、素をキーワードに殻を破れたと思います」と涙を浮かべながら語った。
受賞式では、代表取締役副社長の藤田直志氏ももらい泣きをしながら総評を行なった。「日々目立たない頑張りもあるなかで代表者がとてもレベルの高いサービスの形を見せてくれました。今日学んだことを活かし、さらにサービスのレベルを上げてください。より会社をよくして皆さまがもっと頑張れる場を提供できるようにしたいと思います」と語った。
また、閉会式では同社の空港本部長 阿部孝博氏が挨拶。「2日間素晴らしいパフォーマンスを見ることができ、より明るく、笑顔で働ける職場にしていこうと改めて決意しました。365日、24時間空港は動いていますので、これからも盛り上げていきましょう。これからも約90を超える空港で世界で一番愛される、選ばれる日本航空、それを支える一員として一緒に頑張っていきましょう」と締めた。プログラムの最後には出場者全員で記念撮影を行ない、2日間のコンテストが終了となった。
さまざまなシチュエーションを想定し、世界各国、そして日本国内から代表者が集いサービススキルを披露し学んだ「JAL 第5回空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」。交わす言葉の一つ一つや、アナウンスにたくさんの想いが込められていることが実感できた。空港利用の際はぜひ今まで以上に耳を傾けてはどうだろう。きっと新たな発見や笑顔の秘密が隠れているはずだ。