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JAL、地上旅客スタッフの接客技術を競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト北海道地区大会 2016」
北海道からは6空港の7名が本選出場
2016年10月20日 16:42
- 2016年10月19日 実施
JAL(日本航空)の千歳空港支店は10月19日、地上旅客スタッフによる接客コンテスト「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」の本選に向けた地区大会「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト北海道地区大会 2016」を実施した。
新千歳空港はこれまで同空港スタッフのみでコンテストを行なってきたが、2016年は新たな取り組みとして、道内5空港(函館、旭川、女満別、釧路、帯広)の本選出場者も交えてコンテストを実施した。5空港については11月に東京で行なわれる本選出場が決まっており、このような空港間交流の取り組みで、さらにスキルを磨くことを目的としている。
北海道地区大会には「優勝」「準優勝」「審査員特別賞」「グッドサービス賞」「アナウンス賞」の5つの賞が設けられ、これは本選出場決定済みの5空港のスタッフも対象となる。ただし、北海道地区大会は新千歳空港からの本選出場者を決める選考会としての役割もあり、この賞を受賞した新千歳空港スタッフの上位2名が、本選への出場権を獲得することになる
開会にあたって挨拶したJAL千歳空港支店長 篠原龍二氏は「北海道地区のこれまでの成績は2012年の第2位が最高。実は優勝者は北海道地区から出ていない。今日出場のメンバーからぜひとも上位入賞していただき、できれば優勝していただきたい。北海道には(プロ野球の)日本ハムファイターズ、(サッカーの)コンサドーレ札幌といった大きな風が吹いているので、ぜひ今年こそは優勝したいと思っている。緊張しているとは思うが頑張っていただきたい」と、参加メンバーの健闘に期待した。
今大会への出場者は下記の13名。新千歳空港の236名を始め、北海道地区の6空港で全320名の地上旅客スタッフから選りすぐりのメンバーが集まった。審査員はJALやJALスカイ札幌からの代表者4名と、ゲスト審査員4名による計8名となる。
新千歳空港スタッフ
旅客第1グループ 中山梨香氏
旅客第2グループ 山本梓氏
旅客第3グループ 狩野吏咲氏
旅客第3グループ 佐藤蒼氏
国際旅客グループ 五十嵐麻友子氏
国際旅客グループ 前田千香子氏
プレミアサービスグループ 中畑澄華氏
プレミアサービスグループ 戸田詞央里氏
道内5空港のスタッフ
函館空港 櫻岡優梨惠氏
旭川空港 古山実鈴氏
女満別空港 石島知奈美氏
釧路空港 徳永真美子氏
帯広空港 岩渕美鈴氏
審査員
審査委員長:日本航空 北海道地区支配人 中島喜一氏
副審査委員長:日本航空 千歳空港支店長 篠原龍二氏
審査委員:JALスカイ札幌 取締役総務部長 武田守人氏
審査委員:JALスカイ札幌 プレミアサービスグループ長 植田理英子氏
審査委員:JRタワーホテル日航札幌 執行役員総支配人 中島浩一氏
審査委員:JRタワーホテル日航札幌 料飲部長 木村尚志氏
審査委員:セノン 千歳支社長 森田弘氏
審査委員:ジェイ・エス・エス 札幌営業所長 田村寿江氏
アナウンス審査
コンテストはカウンターでのアナウンスと、カウンターを想定した接客のロールプレイの2種類を行なう。また、この両方の審査を通じて、「印象審査」も行なわれる。「笑顔・表情」「身だしなみ」「挨拶」「立ち振る舞い」「言葉遣い」というポイントで総合評価がなされる。
最初に行なわれたアナウンス審査は、チェックインカウンターでの受付開始を告げるアナウンスと、搭乗口での出発遅延を想定したイレギュラーアナウンスの2つを行なう。それぞれに日本語と英語でのアナウンスが求められ、「正しさ」「優しさ」「分かりやすさ」「再利用意向」「推奨意向」の5項目での採点となる。
チェックインカウンターでの受付開始アナウンスは型どおりのアナウンスではあるが、表情や声質などに個性があったほか、トップバッターの前田千香子氏は規定されている日本語、英語に加えて中国語のアナウンスも披露。いきなりヒットを飛ばした格好だ。
イレギュラーアナウンスは、“出発地の悪天候”または“到着地の悪天候”を想定したもので、前者なら新千歳空港の大雪など、後者なら羽田空港に台風が接近しているなどの理由で、出発便に遅れが発生することを搭乗口でアナウンスするものとなる。
こちらは、先述のアナウンスとは異なり、やや暗い表情や声色を落とす出場者がほとんど。お詫びに「大切なご旅行またはご出張の折に出発が遅れ……」といった言葉や、国際線の出発遅れで「ご不安かとは思いますが~」といった一言を添えている例も見られた。
また、次回案内の見込み時刻、搭乗開始の見込み時刻、出発の見込み時刻などでは、時刻を言ったあとに一呼吸置く、時刻を2度繰り返すなどの工夫も見られた。日本語では出発時刻と搭乗見込み時刻の両方を話すが、英語では搭乗見込み時刻のみを話すなど、言語によるアナウンス内容の違いも興味深いポイントだった。
アナウンス審査終了時に講評を述べたJALスカイ札幌 取締役総務部長の武田守人氏は、「皆さん非常に聞きやすいアナウンスで甲乙つけがたい内容。それぞれの皆さんの演出や声量、抑揚の付け方などに優劣はなく、悩ましい点数付けをした。実際はお客さまを目の前にして、もうちょっと早口になるシーンなどもあるかもしれないが、非常に素晴らしいアナウンスをされていたので、ロールプレイでも引き続き頑張ってほしい」と述べてアナウンス審査を締めくくった。
接客審査(ロールプレイ)
続けて行なわれた接客審査は、実際の接客カウンターでのやりとりを想定したロールプレイを実施。こちらは、全出場者が同じ内容を行なうため、出場者は別室で待機し、審査のために会場に入室して初めて内容を知る仕組みとなっていた。審査を終えた出場者はそのまま会場に留まれるので、先に審査を行なった人は、ほかの出場者のロールプレイを多く見る機会が得られる。
そうした事情もあって、本選出場をすでに決めており、スキルの向上が北海道地区大会参加への大きな目的となっている道内5空港の出場者が先に審査を受けることになった。
ロールプレイは3名の接客を行なうもの。
最初の乗客はビジネス目的で搭乗する女性で、電話をかけながら忙しそうにカウンターを訪れ、途中で新聞を落とすことも。預け入れ手荷物のなかにPCが入っており、壊れ物を預けることへの対応を求められるシチュエーションとなる。
2番目の乗客は親子連れで、子供が1人で、初めて飛行機に乗るというシチュエーション。子供は花火を持っており、これは預け入れ荷物としても手荷物としても持ち込めないことや、子供をサポートするためのバッジを手渡すなどの接客が必要。さらに付き添え人のお父さんの見送りについても案内する。
3番目の乗客は、2番目の親子連れの後ろに並び、少々いらいらを見せながら順番待ちをする乗客。この乗客をカウンターに迎えた時点でロールプレイ審査が終了となる。
ここでは「気付き」「コミュニケーション」「YESの発想」「再利用意向」「推奨意向」の5項目が問われる。いかに乗客のニーズを察して案内ができるか、よいムードで会話できるかなどがポイントになる。
この審査は出場者ごとに対応や所作はさまざま。最初のポイントである「気付き」については、例えばビジネスマン女性に国内線の「クラスJ」シートをすぐに勧める出場者もいれば、乗客に空席を問われてから案内をする出場者もいる。また、親子連れのお父さんに付添人の入場について、問われる前に案内をしている出場者もいる。
花火についてはどの出場者も目に留めていたが、その対処法はさまざまで、「お父さんに持って帰ってもらう」「宅配サービスで現地へ発送する」「JALで預かって帰りに返却」などの提案をしていたが、このどれかのみを提案する出場者もいれば、複数を提示する出場者もいる。
コミュニケーションについては、特に子供との会話はバリエーションが豊富で、年齢を聞いたり、何をしに行くのか聞いたりして距離を近付けようとする様子があった。また、案内が必要な乗客であることを示す札を首にかけるときには、札そのものを子供に渡す出場者、子供にかけてあげる出場者と、ここでも行動に差が見られた。
いくつか例を挙げたが、ロールプレイはまさに13人13様の対応。そのなかで共通しているのは、本当にいろいろなことを頭に巡らせながら接客をしているということだろう。
ちなみにロールプレイは、休憩を挟んで3部に分けて実施され、各部の最後に審査員による講評が述べられた。
道内5空港の審査が終わったあとに講評を述べたセノン 千歳支社長の森田弘氏は「第1部の5名はそれぞれの空港の代表ということで緊張感もあったと思うが、さすがに空港サービスのプロで、それぞれ特徴あるお客さまにスムーズに対応していたのが伝わってきた。各空港の代表ということで緊張すると思うが、それを前向きに捉えて、自分のよい面を出していただければ本選でもよい成績が残せるのでは。たまたま昨年、羽田空港での本選へ応援に行ったら、非常に多くの観客と審査員の重役がいた。緊張はすると思うが、プレッシャーに負けずに実力を出してほしい」とエールを送った。
五十嵐氏から戸田氏までの4名が終わったあとに講評を述べたJRタワーホテル日航札幌 執行役員総支配人の中島浩一氏は「審査する立場にいること自体が本当に申しわけなくて、皆さんの接客のレベルを含めて、私の隣にいる料飲部長(木村氏)と話して我々のサービスに役立てていきたい」とのコメントで出場者の接客を讃えた。
ロールプレイ終了後に講評を述べたJAL北海道地区支配人の中島喜一氏は、「仲間や審査員の前という普段とは違う緊張のなかで、いろいろ難しい面もあったと思う。拝見していて、普段現場で一生懸命、お客さまの対応をしている、その業務経験から一つ一つ素晴らしい対応を見せていただいたので、うれしかったし、安心して見ていられた」と出場者の対応を評価。
このあとの結果発表を前に、羽田の本選の様子として「もっとたくさんの観客がいて、ロールプレイももっといろんな場面を想定した臨機応変さを求められる」としたが、一方で「今日の皆さんのアナウンスやロールプレイは、その人たちに負けない13名だと思ったので、新千歳空港から選ばれる2名と5空港の7名はトップを取れると思う」と健闘を祈った。
さらに、JAL元会長の稲盛和夫氏の哲学である「能力を未来進行形でとらえる」という言葉を取り上げ、「能力は勉強すれば進歩する。今日が終わって本選まで日にちがあるので、ここをこうすればよかった、ほかの人のを見てこういうやり方もあると思ったことは、職場に戻って日々の業務のなかで勉強して、ブラッシュアップして、能力を進化させて本番に備えてほしい。おそらく全世界のJALのなかで皆さんの誰かがトップを取ると期待しているので、緊張せずに……緊張はするが、それを楽しんで頑張ってほしい」とさらに研鑽を積むよう激励した。
ちなみに、中島喜一氏の挨拶では冒頭で「まず、すごいと思ったのは、ロールプレイの吉本新喜劇のような不思議な親子や、無言のプレッシャーをかけるいらいら感が、真に迫っていて感動した」と、出場者を支えた“助演者”たちへの苦労をねぎらった。ロールプレイでは出場者が気付けていないことを引き出すためのアドリブや、軽いジョークで場を和ませるなど、出場者以上の臨機応変さがあったように思う。
そうした助演者たちにも、コンテストの審査中の待ち時間を利用して優秀者を発表した。
結果、1位は、ロールプレイの3番目の役割を担った、国際旅客部の大友一絵氏。無言で列に並んで、自分が案内された瞬間に審査終了と、一言も言葉を発さない役割ながら、「後方から圧力をかける姿勢が極めて自然だった」「無言であれだけの演技ができるのはさすが大女優」といった賛辞が送られた。
その大友氏は「セリフのある役はやめていただきたいと事前にお願いしていて、無言の役で参加させてほしいということで、参加させてもらった。後ろから威圧感を与えていたつもりはなかったが、いつもの自分のとおりで、だいぶ威圧感があったんだなと思う」と振り返る一方、「皆さんを見ていて、本当に素晴らしいと思う。皆さんの(接客)を見て、勉強になったので、自分の接客やサービスを見直して、明日からまた頑張ろうと思うきっかけになった」とコンテスト出場者へのねぎらいも忘れなかった。
このコンテストには新千歳空港勤務者はもちろん、函館空港や帯広空港、旭川空港からも応援が駆けつけ、声援を送るとともに、接客の様子を見守った。
入社2年目の同期2名が本選に進出
優秀者5名の発表は、JALスカイ札幌 プレミアサービスグループ長の植田理英子氏が担った。
「アナウンス賞」は、女満別空港の石島知奈美氏。植田氏は「英語のアナウンスが特に素晴らしかった」と評価した。石島氏は「こんな素晴らしい賞をいただいて恐縮。すごくうれしい。来月(の本選)は頑張ってきたい」と挨拶。
「グッドサービス賞」は、函館空港の櫻岡優梨惠氏。植田氏は「とっても優しい雰囲気で素晴らしかった」と評価のコメント。櫻岡氏は「まさか賞をいただけるとは思ってなかったが、こんな素敵な、貴重な機会をいただけて本当にありがたい。これから(本戦までの)1カ月弱頑張りたい」と、石島氏同様に感謝と本選に向けての意気込みを見せた。
続いて表彰された「審査員特別賞」は、新千歳空港 旅客第3グループの狩野吏咲氏が受賞。「今日は緊張もしていて、なかなかもっとできたと思うこともあったが、本当に皆さまの応援のもと、賞をいただくことができた。これからの接客などに、いままで練習してきたことを活かしたい」と感想を述べた。
「準優勝」も同じく旅客第3グループの佐藤蒼氏が受賞。準優勝者からはティアラとマントの贈呈が行なわれ、2015年の新千歳空港の地区大会準優勝者で、本選でもファイナリストに残ったプレミアサービスグループの泉樹里氏から授与された。
佐藤蒼氏は「2015年もコンテストに参加し、泉さんと一緒に練習して、この1年間ずっとこのティアラを着けたいと思っていた。まだまだ未熟だが、皆さまに応援していただいて、あと1カ月間、一生懸命練習して、今度は(本選の優秀者に贈られるアルメニアの花がデザインされた)バッジを持ち帰りたいと思う」と話した。
そして「優勝」の栄冠は、新千歳空港 プレミアサービスグループ 戸田詞央里氏に。ティアラとガウンは2015年の地区大会優勝者で、本選でもファイナリストになったプレミアサービスグループの河田歩実さんからティアラとマントが授与された。
戸田氏は「先ほどの佐藤と同じく、私も2015年も出場して、いろんな先輩方の素敵なサービスを見て1年間頑張ってきた。6月からプレミアサービスグループに異動となり、和泉さんと河田さんにもたくさんご指導いただいて、今回やっとこのマントをまとえてうれしい。同期4名が早期入社で4人で頑張ってきて、そのなかでも一番仲のよい佐藤と一緒に行くのが、教育の頃から夢だったので、入社2年目にしてこの目標が達成できて本当にうれしい」とコメント。
コメントにもあるとおり、準優勝の佐藤蒼氏と優勝した戸田氏は同期で、専門学校から早期入社でトレーニングに入って、今年が入社2年目。「本戦をやる会場で訓練をしていたので、絶対にここに本戦で帰ってこようと訓練の終わりに目標にした」と4年越しの目標を達成した喜びに涙が止まらない様子だった。
昨年と今年のコンテストでの違いを尋ねると「昨年は表情も作り笑顔ではないが無理していたと思うことはあったし、お客さまに気付けるものがまだ足りなかった。そこは成長できたと思う」とコメント。本選に向けての課題として、「ロールプレイが終わった瞬間から悔しくて涙が出てきた。お客さまにもっと言えたとか、気付けたという部分があったので、この1カ月で直していきたい」と、さらに磨きをかけての本選出場に決意を見せた。
最後に植田氏によるコンテストの総評が行なわれた。「皆さまにはこれから重要な役割があると思っている、JALフィロソフィーに“一人ひとりがJAL”とあるように、JALのハンドリングに携わる一人一人がJALの顔であり、品質。1人が欠けても世界一は達成できない。今日優勝した戸田さん、準優勝の佐藤さん、そして素晴らしいサービスを体験した皆さんが、職場に帰って仲間の皆さんを巻き込んで、みんなで一丸となって世界一を目指す、その努力を続けることこそが大切だと思う。
皆さんの今日の接客は感動を与えられるようなサービスをしてくれたと思うが、そういうサービスをいつでもできるように、そしてその感動がお客さまにとって記憶になり、その記憶がずっと語り継がれて、もっとたくさんのお客さまにJALを選んでいただけるような、そんなサービスをみんなで目指していきましょう」と呼びかけ、コンテストを締めくくった。