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JALの次世代育成プログラム「空育」で「HAKUTO スーパームーン観賞チャーターフライト」

仙台上空でスーパームーン鑑賞

2016年11月14日 実施

JALが11月14日にスタートした「空育」の一環として、スーパームーン観賞フライトなどが開催された

 JAL(日本航空)は11月14日、次世代育成を目的に子供を対象としたプログラム「空育」をスタートすると発表した。これまでJALは子供向けに「飛行機を通じて自分の未来を考える」をコンセプトにプログラムを提供してきたが、「空育」では「自分」に加え、「交流を通じて『日本・世界』の未来を考える」「環境・宇宙を通じて『地球』の未来を考える」をテーマに展開していくという。

 そして同日、「空育」の取り組みの第1弾として、日本初の月面探査チームHAKUTOとコラボレーションした「HAKUTO スーパームーン鑑賞チャーターフライト」と、格納庫において月面探査ロボットや折り紙ヒコーキをテーマにしたイベントを、成田空港において実施した。

折り紙ヒコーキとローバーに沸きあがる参加者

チェックインカウンターに並ぶ今回の招待客

 今回のフライトとイベントに参加したのは、宮城県本吉郡南三陸町と熊本県の小学校からの招待客と、一般募集招待客の合計112名。

 チェックインカウンターのすぐそばには、オリジナルの折り紙作成ブースが開設されていた。ここでは撮った写真をすぐに折り紙として印刷できる、凸版印刷の写真印刷技術「OrigaMemory」を用い、イベントに使う折り紙ヒコーキ用の折り紙を作成する。プリクラのように気軽な感覚で顔写真入り折り紙が印刷できるとあって、チェックインを済ませた招待客は早くもちょっとした盛り上がりに。

 搭乗ゲート前のラウンジでは折り紙ヒコーキ教室が開催され、折り方を「折り紙ヒコーキ協会」の指導員が伝授。折り上げた子供たちのなかには、さっそくゲートラウンジ内で飛ばして遊ぶ姿も見られた。

カウンターそばに設けられたオリジナル折り紙作成ブース
モニターの上に設置されたカメラで写真を撮影
撮影から10秒ほどで写真入り折り紙がプリントされる
ゲートラウンジでは折り折り紙ヒコーキ教室が開催されていた
完成した折り折り紙ヒコーキ

 また、ゲート前で行なわれたイベントのもう一つの目玉が、HAKUTOの月面探査ロボットであるローバーだ。JALは2015年10月から、HAKUTOとコーポレートパートナー契約を締結し、サポートを行なっている。HAKUTOは現在、月面探査の国際賞金レース「Google Lunar XPRIZE」に参加しており、ローバーのフライトモデルが月面を走行する予定だ。

 今回、このフライトモデルの展示と、前バージョンにあたるプリフライトモデルの操縦体験が行なわれた。フライトモデルの展示は、子供はもちろん展示ブースの前でカメラを構えて撮影する保護者もいて、大人気。

HAKUTOの月面探査ロボットブース
月面探査ロボット・ローバーのフライトモデル

 プリフライトモデルの操縦体験はiPadを使ってローバーを操作し、月面を模した3m×3mの障害物があるコースを90秒の制限時間内に走らせゴールを目指すというもの。記者も特別に挑戦させてもらったが、ローバーが走る距離や旋回角度の感覚がつかめないと障害物に乗り上げてしまって難しい。

 しかし、子供たちのなかには見事な操作でスタッフを驚かせる子もいた。操縦体験は実際にローバーを動かせるとあって人気のコーナーとなり、何度も列に並びなおして挑戦する子供も。

ローバー操縦体験中のプリフライトモデル
iPadを使って操作し、コース端のフラッグを目指す
操縦画面。画面内にあるローバーの行き先をタップして動かす

記念セレモニーから搭乗そして特製空弁

 今回搭乗するチャーター便はJL8910便と、「ハクト」にちなんだ便名となっており、機材はボーイング 767-300型機。16時30分に成田空港を離陸後、宇都宮上空~山形空港上空と進み、仙台空港上空で旋回してスーパームーンを観賞。そのあと福島、水戸上空を経由して18時30分に成田へ着陸するという2時間のフライトだ。

今回のフライトではボーイング 767-300型機に搭乗
HAKUTOから便名を取って「JL8910便」に
北上して仙台で旋回するルートになっている
日本航空株式会社 代表取締役専務 執行役員 大川順子氏

 搭乗前には搭乗ゲート付近でセレモニーが開催された。登場したのはJALの代表取締役専務 執行役員である大川順子氏と、HAKUTOの袴田武史代表、そして今回のフライトを担当する人見徹機長の3名。

 大川順子氏は今回のイベントについて「次世代を担う子供たちがチャレンジを通じて成長できるような、そんなJALらしい取り組みをこれからもどんどん進めていきたいと思います」と挨拶した。

 HAKUTOの袴田武史代表は「我々にとって月というのはゴールであり、さらにそれを通過点にしてさらに大きな未来を描いていきたいと考えています。今回のJALの企画は、我々にとっても実は、月に一歩近づく非常にいい企画だと思っています」とコメント。

 人見機長は「今日、地上はあいにくの曇りで上空1万mまで雲がありますが、私たちはさらにその上に上がって月を見ます」と話した。

HAKUTOの袴田武史代表
今回のフライトを担当する人見徹機長

 搭乗が始まり、ボーディングブリッジを進むと途中でフライト中にいただく空弁が手渡された。今回はスーパームーン観賞フライトにちなみ、月に見立てた卵やおから、星に見立てたニンジン、流れ星に見立てた錦糸卵など、宇宙を意識した内容となっていた。また、ハンバーグとスパゲティといった子供向けメニューと、西京焼きや厚揚げ含め煮と大人向けメニューが併せて収まっている。

セレモニー後に搭乗を開始
搭乗機に向かう途中、空弁が配布された
空弁のパッケージにはHAKUTOのローバーが描かれている
弁当の中には月や星に見立てた料理も

特別機長からのメッセージと袴田武史代表の講演

日本航空株式会社 代表取締役社長 植木義晴氏はビデオ出演で挨拶

 JL8910便は16時35分にブロックアウトし、16時51分に離陸。今回は曇りということで揺れが強めだったため、シートベルト着用サインの消灯が遅れた模様だ。

 機内ではJALの代表取締役社長である植木義晴氏のビデオメッセージが流れた。今回、植木氏は特別機長ということで、「本日は日本航空8910便、HAKUTO便、スーパームーン行きにご搭乗いただき、まことにありがとうございます。私は機長兼社長の植木でございます。皆さま、観賞フライトはご一緒できませんが、操縦室別室よりご案内を申し上げます」とウィットを込めて挨拶した。

 そして植木義晴氏は、「さて本日、JALは『空育』宣言をいたします。今回、交流を通じた日本、世界の未来、環境・宇宙を通じた地球の未来を考えていただけるものも新たに追加。これまで以上に空の素晴らしさに触れていただき、新たなる発見や、さらなる学びを感じていただけるプログラムを実施していきます」と空育を紹介。

 そしてフライトの搭乗者に向け、「実は今回、ご搭乗のスーパームーン観賞フライトも『空育』の一つ。皆さまは記念すべき1人目の参加者になります」とメッセージを送った。

機内で袴田武史代表の講演が行なわれた

 続いてHAKUTOの袴田武史氏が子供たちに向け、「夢を考えるきっかけ」をテーマに講演。袴田氏は夢について考えるとき、「宇宙飛行士になりたい」となりたい肩書や職業を目指すのではなく、宇宙飛行士になりたいなら「なぜなりたいのか」「どういう世界を作るのが楽しいか」から考えるべきだと説く。

 肩書や職業にこだわると道を狭めることになり挫折しやすくなるが、何がしたいのかをもとに視野を広げつつさまざまな道を考えることで、自分に合った自分の夢を実現できる道を見つけ出せる、という。

 さらに宇宙飛行士という非常に人気の職業が、一般でも宇宙に行ける時代になると宇宙飛行士という職業がなくなってしまうかもしれない、と例を挙げ、世界の変化のスピードが速く、今ある仕事が10年後20年後になくなる可能性を指摘。「常に幅広い視野を持ちながら、自分の行っている道が常に夢に近づいているかということを確かめていくことが必要」と話した。

仙台上空でスーパームーン観賞

 講演が終わったあとはいよいよ観賞の時間へ。スーパームーン自体は正式な天文用語ではないものの、今年は月と地球の距離が68年ぶりの近さだと話題だ。国立天文台によると今年11月14日の満月は最小だった時の4月22日の満月に比べ、直径で約14%、面積で約30%大きくなるという。

 普段のフライトでは、月の満ち欠けや機内から見られる月の高度、時間と方角、座席などさまざまな条件が重ならないと、飛行機の窓からなかなか満月を見ることはできない。今回はスーパームーンのため特別に計画されたフライトだからこそ実現した観賞だ。

なお、飛行機は仙台上空でホールディングを行ない、その間に地上1万2000mの上空から月を見るという流れになっていた。肉眼で窓の外の風景を見ると、白黄色の月が雲海を照らしている幻想的な風景が。残念ながらこの微妙な光が織りなす月と雲海の風景は飛行機の窓越しにカメラで撮影するのが難しく、月のみの撮影になってしまった。

 観賞できる時間は約30分間。その間は機内の照明も落とされたいた。招待客は親子で窓からのぞいたり、スマホやデジカメを向けて月を撮影するなど、思い思いに地上で見るのと違った景色を楽しんでいた。

スーパームーン観賞中
月をスマホやデジカメで撮影する方も
機内から見たスーパームーン

フライト後は折り紙ヒコーキに夢を載せてテイクオフ

 JL8910便は18時12分に成田空港に着陸し、スポットインは18時30分。到着後、フライトを締めくくる折り折り紙ヒコーキイベントのため、招待客はバスで会場となるA格納庫へ移動。会場内では折り紙ヒコーキ協会の事務局長 藤原宣明氏が実演を交えつつ、折り紙ヒコーキを飛ばすためのセッティング法を紹介した。

 招待客が持つ折り紙ヒコーキは機内で各自、自分の夢を書きこんでいる。それをイベントで飛ばすのだが、まずは袴田武史代表を含むHAKUTOのメンバーが、巨大折り紙ヒコーキを手にステージへ登壇。それぞれ月や宇宙にまつわる広大な夢を紹介したあと、袴田武史代表が折り紙ヒコーキを飛ばした。

フライト後はバスでイベント会場へ移動
紙ヒコーキ協会の事務局長の藤原宣明氏がセッティングについて紹介
HAKUTOのメンバーの夢が書き込まれた巨大折り紙ヒコーキが空に舞う
招待客の代表として3人の子供が自分の夢を紹介した

 そしてラストは、子供たちの夢を載せた折り紙ヒコーキのテイクオフ。招待客から、宇宙にちなんだ名前の子供が3名、代表として出てもらい、それぞれ自分の夢を語ったあと、子供たちが全員集まって自分たちの折り紙ヒコーキを一斉に飛ばし、イベントを締めくくった。

イベントの最後に自分の夢を書き込んだ折り紙ヒコーキを飛ばした

 今回の「空育」第1弾についての感触について大川順子氏は「私は一番後ろの席に座っていたのですが、お客さまがすごく喜んでくださっていたのを見ました。心に感動する、体で感じることというのはきっと子供さんにとってものすごく大きなことだったと思うので、それ(フライト)を体験していただいただけでも本当によかったなと思いました」と語る。

 なお、「空育」では、2020年度末までに100万人を対象としたさまざまな活動を実施していくとのこと。今後の「空育」の予定については、JALでは折り紙ヒコーキを通じた交流、途上国における社会問題解決に関するワークショップや民泊体験、農業を通じた地域社会との交流、JALの環境講座「そらエコ」のさらなる展開、HAKUTOと連携した宇宙について考えるプログラムを新たに実施するなどが予定されている。