旅レポ

北ドイツの自然豊かな“水と緑の都”ハンブルク「ハーフェンシティ」を楽しむ(その2)

港町ハンブルクの街を散策する

港町ハンブルク。運河沿いの倉庫街「シュパイヒャーシュタット」の夕暮れ。遠くにエルプフィルハーモニーを望んでいる

 ドイツ北部にある港町ハンブルク。前回は、新しいランドマークとなるコンサートホール「エルプフィルハーモニー・ハンブルク(Elbphilharmonie Hamburg)」(以下、エルプフィルハーモニー)を紹介した。今回は、エルプフィルハーモニー周辺のハンブルクの街を歩いて紹介していきたい。

港町ハンブルクの象徴、赤レンガ倉庫街

 エルプフィルハーモニーのあるエルベ川の運河沿いに広がる赤レンガの倉庫街は、「シュパイヒャーシュタット(Speicherstadt)」と呼ばれ、世界中の国々からカカオ豆やコーヒー、茶、絨毯などの高級品が運び込まれ、貿易都市として発展してきたハンブルクの象徴ともいえる風景だ。運河沿いに整然と並んだ垂直にそびえ立つ歴史の感じられる建造物は、見るものを圧倒する。散歩をするのにちょうどよい広さで、今回紹介する範囲はブラブラと散策することができる。

 シュパイヒャーシュタットは、のちほど紹介する「チリハウス(Chilehaus)」のある「コントールハウス(Kontorhaus)」地域と併せて「倉庫街とチリハウスを含む商館街」として2015年にユネスコ世界遺産に登録されている。

赤レンガ倉庫街「シュパイヒャーシュタット」
赤レンガ倉庫街のシュパイヒャーシュタット。このような建築物がそびえ立っている
運河に沿って立ち並んでいるので、観光用ボートも頻繁に行き来している
運河には、要所でいくつも橋がかかっている
近年まで倉庫街は一般人の行き来が制限されていた。そのときのゲートが記念に残されている
その名残で、市街地とは金網で隔たれている
市街地は過去に何度か、水害の被害にあっている。堤防となる部分の橋に付けられた可動式防波堤
水かさが増したときには、防波堤で橋を塞ぐ
過去の水害で凍ったときの写真
道路側の倉庫街の景色
屋根部分には特徴的な装飾が施されている
エントランスまわりの装飾
各階へ直接運び込めるドアがある。最上部に滑車が付いていて、エレベーターのように荷物を上げられる
遠景で眺めたところ。上部の装飾が教会のようで特徴的
倉庫街の中間にある大きな駐車場も、赤レンガの作りに合わせたデザインで統一感がある
増水に備えて、高さのある避難橋がある
一部駐車スペースで使われている部分は、現在は使われていない線路があった
このあたりはオフィスが多い。これは大手海運会社のオフィス
運河は夜になると、美しくライトアップされる
昔のコーヒー問屋の内装をそのまま残したコーヒーショップ「Genuss Speicher」
コーヒーショップの内部。コーヒー豆などが購入できるほか、飲食も可能
店内に無造作に焙煎機も置かれている。古い器具なども展示されている

 この倉庫街から川沿いのウォータフロント地域は、現在欧州最大となる157ヘクタールの大規模な再開発が進行中で、「ハーフェンシティ」と呼ばれている。オフィスや店舗、飲食店だけでなく、住宅やショッピングセンターも混在させる予定になっている。住宅は、冷暖房を自然に頼るパッシブハウスが中心となるそうだ。2030年ごろまでかけて、段階的に建築されている。

「ハーフェンシティ」と呼ばれるウォータフロントは開発中
貿易港なので巨大なコンテナ船とクレーンがもちろんある
港には、船の建造や修理をする巨大なドックがある
停泊している美しい外輪船ルイジアナ・スター号
川辺に面するエルプフィルハーモニーの横にも船着き場がある
エルプフィルハーモニーから港沿いには、「ダルマンカイ(Dalmannkai)」と呼ばれる遊歩道が続き、景色のよい憩いの場となっている
ハンブルクの人々は、屋外で食事をするのが好き。遊歩道にはオープンな飲食店が並ぶ
再開発が進んでいる場所。ユニリーバのハンブルク支社「Unilever Haus」と高さのあるのは高級マンション「Marco Polo Tower」

 倉庫街から少し市街地に入ると、1924年に建てられた古いオフィスビルの「チリハウス(Chilehaus)」がある。北ドイツ表現主義建築を代表する建築家フリッツ・ヘーガーのデザインで、「コントールハウス(Kontorhaus)」と呼ばれるタイプのレンガを積み上げて作られたオフィスビル。近くで見ると装飾が凝っていて美しい。19世紀末ごろから北ドイツの港湾都市でよく見られる様式となっている。装飾も美しく、ユネスコ世界遺産に登録されている。

チリハウス(Chilehaus)
チリハウスは三角地帯に建設されていて、鋭角な部分がある
鋭角部分を船の舳先に見立てていて、飾り付けられている
壁面は優雅にカーブを描く部分もある
カーブを描く外壁を見上げる
整然と並ぶ窓
中庭への入り口アーチ部分
中庭側にも美しい窓が並ぶ
中庭にあるエントランス部分。1階にはさまざまなショップが並ぶ
美しく重ねられたレンガの装飾
こちらは隣に建っている「Sprinkenhof」という建物で、チリハウス同様のコントールハウス
中庭が大きく、より整然としている
さまざまなタイプのオフィスを表わす紋章が飾り付けられている
チリハウスの横にあるHACHEZのチョコレートミュージアム「CHOCOVERSUM」
すぐ近くにあるオフィスビル。こちらは装飾をシンプルにしたバウハウス建築の影響が見られる
近くには近代のモダンな建築物も多く、新旧の対比が楽しめる。「Deichtor Center」というビジネスセンター
すぐ近くにある「Der Spiegel」というドイツの週刊誌を発行する出版社

アルスター湖周辺ではショッピングも楽しめる

 もう少し内陸のほうへ足を伸ばすと、広大なアルスター湖と隣接するように賑やかなショッピング街が続いている。近くには19世紀末に建てられた、高さ112mのネオルネサンス様式の美しく重厚感あるハンブルク市庁舎がある。アルスター湖は、市街地に隣接する内アルスター湖とロンバルト橋より北側の外アルスター湖に分かれている。この近辺には日本人も多く居住していて、桜の並木や、毎年夏に行なわれるアルスター湖祭りでは花火の打ち上げもあるそうだ。

 内アルスター湖に隣接する「アルスターアルカーデン(Alsterarkaden)」は、ベネチア風の白いショッピングアーケード。運河沿いのアーケードは、フォトスポットになりそうなイタリアのベニスを思わせる美しい景色が続く。また、アルスターアルカーデンの横には、高さが112mあるネオルネサンス様式のハンブルク市庁舎があり、その周辺は広場になっている。

内アルスター湖から遠くにロンバルト橋が見える。周辺は観光スポットとして賑わっている
内アルスター湖と通りをはさんだショッピングアーケードのアルスターアルカーデン。白いアーケードがまぶしい
そばには運河があり、イタリアのベニスを思わせる。まったりとした散歩にはうってつけ
内アルスター湖に面する通り「ユングフェルンシュティーグ(Jungfernstieg)」もショッピングストリートになっている。アップルストアがあった
古いユングフェルンシュティーグ付近の写真。基本的に変わっていない
アルスターアルカーデンの横にはハンブルク市庁舎がある
ハンブルク市庁舎は、高さが112mあるネオルネサンス様式の豪華で重厚な建築物。内部はツアーに申し込むと見学できる
ハンブルク市庁舎前の広場から「聖ペトリ教会(St. Petri)」方面を望んでいる
聖ペトリ教会は、11世紀前半からあるとされ、途中大火事でネオ・ゴシック様式で建て替えられている
ここはアルスターアルカーデンの建物裏手の通り「ノイアーヴァル(Neuer Wall)」というショッピングストリート
有名な高級ブティック、時計店などが軒を連ねている
周辺には、パサージュ(passage)と呼ばれる、ショップが並んだ小径があちこちにある
この「メリン(Mellin)パサージュ」は、最も古く1864年からある。復元されたものだがアールデコ調の天井画が美しい
ノイアーヴァルのアルスター湖とは反対方向付近には、モールを建設中

日曜朝は賑やかな市場を楽しもう

 もし旅程が週末で日曜日が含まれていたら、ぜひ「フィッシュマルクト(Fischmarkt)」を訪れてみよう。300年前のハンブルク市で、教会が始まるまで開くことを許可した日曜朝市で、現在に至るまで続いている。早朝5時(冬季7時)から始まり9時30分までには終わってしまうので、少し早起きする必要はあるが、魚だけでなくさまざまな物が売られ多くの人で賑わう。サンドイッチなど軽食の販売も随所にあるので、朝食をとるにもオススメのスポットだ。

 近くにあるかつて競りをしていた大きな倉庫のようなホール「フィッシュマルクトハレ(Fischauktionshalle)」では、無料のライブ演奏が行なわれていて、日曜の朝からビールを飲んで騒いでいる若者も多い。このホールでも食事ができる。トレーラー屋台をステージにして、1袋10ユーロ(約1250円、1ユーロ=約125円換算)で菓子やフルーツなど品物をどんどん投げ入れ、観客の大きな声援でさらにオマケしたりするスタイルで販売している。たまに観客めがけて品物を投げることも。このやりとりを眺めているだけでもけっこう楽しめる。

フィッシュマルクト(Fischmarkt)
日曜日の朝に開催されるフィッシュマルクトの会場。多くの人で賑わう
少し奥に入ったところ。左手に見えるのが、競りが行なわれていたホール
競りが行なわれていたホール周辺を川から眺めたところ
市場は港のすぐ近くにある
フィッシュマルクトの会場は川沿いに広がる
もちろん新鮮な野菜がたくさん並んでいる
ソーセージ類の袋売り
お土産になりそうなアクセサリーも
パンやサンドイッチはあちこちで売られている
競りが行なわれていたホールに入ってみることにする。建物の装飾も面白い
ホール内ではライブ演奏が行なわれていて盛況
ステージ前は朝からかなり盛り上がっている
多くの人が食べていた、ジャガイモのガレット風の料理
アムステルダムのショップが生花のたたき売り
男性の若者が大量に買っていた
お菓子のたたき売り。10ユーロで袋にどんどん詰めてくれる。リクエストも可
フルーツのたたき売り。バナナを観客の声援に応えて投げている。こちらも10ユーロ。お買い得感がある

レストランではドイツ地ビールを楽しむ

 後半は今回訪れたレストランを紹介したい。まず、ビールの醸造所直営の「シュテルテベッカー エルプフィルハーモニー(Störtebeker Elbphilharmonie)」。ここはエルプフィルハーモニーの中にある。1基目のエスカレーターを登った港が見える踊り場がレストランエントランスとなっている。北ドイツのシュトラールズントに醸造所があり、中世の海賊からネーミングしている。グラスなどのオリジナルグッズを扱うショップも併設されている。

シュテルテベッカー エルプフィルハーモニー(Störtebeker Elbphilharmonie)
エルプフィルハーモニーの中にある「Störtebeker Elbphilharmonie」のエントランス
店内は落ち着いた雰囲気。壁には樽の装飾
ビールは目の前でグラスに注いでくれる
グラスに注がれたStörtebeker。斜めに傾いたデザインのグラスも特徴
前菜の若いニシンの塩漬け。リンゴ、ビートルート、ヨーグルト、ディルなど
子羊のシチューとサラダ
併設されているショップ
ビールやグラスを購入できる。エルプフィルハーモニーがデザインされたロゴやケースなども
オリジナルグッズなども多数販売されている

「レッド・チャンバー(Red Chamber)」は、今回紹介したハンブルク市庁舎に近い、シーフードを中心にした中華料理を現代風にアレンジした料理を楽しませてくれるお店。本格中華料理ではなく、日本人にも食べやすいアジアンでおしゃれなメニューが並ぶ。ワインのストックも多い。

レッド・チャンバー(Red Chamber)
レッド・チャンバーの店舗。ハンブルク市庁舎にほど近い
ローカルビールを頼むとハンブルクのRATSHERRNというビールが提供された。スッキリしていて、何杯でもいけそうな飲みやすさ
ドイツでは、ビールをグラスに注ぐ分量に決まりごとがあるそうで。グラスには量を示すラインが必ずある。泡がラインより下ではいけない
今回のメニューはスモールメニューというもの。前菜の盛り合わせ。天ぷらや巻き寿司風のものが並ぶ
海老のスープ
ジャガイモと椎茸のふわふわの揚げ物が入っている
鱈のムニエルとライス、サラダ
最後は軽めのフルーツのデザート類

 今回は、ハンブルクの街並みなどを紹介したが、いかがだったろうか。比較的コンパクトなエリアに歴史が感じられる美しい建造物が多く、気ままな散策が実に楽しい街という印象。次回は、音楽の街としてのハンブルクを中心に紹介していく。

村上俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、Web媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。