旅レポ

摩天楼発祥の地・シカゴを歩く(その1)

NYよりもおいしい? シカゴの朝ごはんを堪能!

 ニューヨーク、ロサンゼルスに続く第3の都市として知られるシカゴ。ニューヨークよりも早く摩天楼発祥の地として、「アンタッチャブル」や「スティング」、近年では「トランスフォーマー」など数々の映画の舞台になった大都市ですが、実は美食の街として知られています。

 特に盛りだくさんな朝ごはんは有名で、最近のシカゴ観光の一つに挙げられるのだとか。イリノイ州観光局のプレスツアーに参加し、老舗のカフェからビーガン御用達の店まで巡りました。シカゴっ子に愛されるお値段も手ごろで立ち寄りやすいカフェをご紹介します。

これから旅が始まる! ルート66の起点にある老舗カフェ「ルー・ミッチェルズ」

レトロな雰囲気のルー・ミッチェルズ

 青空にニョキニョキ伸びるシカゴの高層ビル街を、ギャング映画「アンタッチャブル」のラストシーン、銃撃戦のロケ地に使われたユニオン駅に向かって歩いていくと、ルート66の起点のすぐそばに、1923年に創業した老舗カフェ「ルー・ミッチェルズ(Lou Mitchell's Diner)」のレトロな看板が見えてきます。

店の中央に長いテーブルが

 中に入ると、こじゃれたカフェというよりも雑然とした食堂のような作りで、昔ながらの「ドライブイン」の雰囲気が残っています。大柄なおじさんたちが、大皿を前にもりもりと食べて大きなマグカップを持ち上げる姿は、これぞ、アメリカ!

 ここの名物は、なんといっても巨大なオムレツです。メニューにも「ジャンボ・オムレツ」と書いてあります。マッシュルームスペシャルやトルコソーセージスペシャル、ブロッコリー&チーズやアップル&チーズなんていう変わったオムレツまでその数、なんと23種類。

フライパンに乗って出てくるグリークソーセージスペシャル、11.75ドル(約1240円、1ドル=105円換算)

 シンプルなオムレツにも心惹かれるけれど、野菜が多そうなグリークソーセージ、オニオン、トマトなどが入ったグリークソーセージスペシャルを注文。やってきたのは、直径25cmくらいあるフライパンの半分を占める巨大オムレツ。もう半分にはベイクドポテトがぎっしり詰まっています。

 日本の家族だったら4人で一つで十分ですが、隣の席の夫婦は一人1つずつ。ペロリと食べては、おなかをさすっていますが、アメリカのカフェやレストランはどこでも、余ったら箱に入れてくれるので、無理して食べ切らなくても大丈夫。心おきなく頼みましょう。

 さっそくいただくと、卵の味の濃厚さに驚きます。オムレツのなかはトロリと半熟。バターも効いていて、途中で飽きてしまいそうですが、さっぱりとしたトマトとオニオンがたっぷり入っているからか、一人1皿、食べられなくはないかもしれません。しかし、日本人女性にはあまりにもでかすぎる……できれば、2人で来店して、オムレツとサラダをシェアしましょう。

サラダの種類も豊富。マッシュルームにベーコンが入ったホウレンソウのサラダ、9.9ドル(約1040円)

 もう一つ。メニューを見て首を傾げてしまったのは、「ワッフル&ウィング」。日本でもおなじみの型で焼いたデザートのワッフルのことだと思うのですが、ウィングとは鶏の手羽!?

 店員さんに聞くと、「そうそう、ワッフルの上にチキンを乗せたのさ。そこに甘いシロップをかけるとうまいんだ」と答えます。デザートなの? おかずなの? 果たしてやってきたのは、言葉のままに、丸いワッフルにドーンと乗った手羽。これ、別々に注文してもいいのではないか? なぜ乗せた!?

日本では見ることのない組み合わせ「ワッフル&ウイング」、11.95ドル(約1260円)

 首をひねりつつ、食べてみれば甘いシロップが付いた手羽も、チキンの肉汁がちょっとしみ込んだワッフルも抵抗なく食べられます。しょっぱくて甘い生地も肉も慣れてしまうとむしろやみつきになりそうなのですが、アメリカの南部はこうした食べ方が多いのだそうです。なにはともあれ、日本人にとってフォトジェニックなメニューには違いありません。

 かつてアメリカ人は、旅が始まるから、今日はたくさん食べて気合いを入れて行こう! とこのカフェに立ち寄ったのでしょう。ドライブインとしての役割より、近所のオフィスワーカーの利用が多くなった今でも、カフェのあちこちに旅の高揚感が残っている気がします。

Lou Mitchell's Diner

所在地:565 W. Jackson Boulevard, Chicago
Webサイト:Lou Mitchell’s Diner(英文)

フレンチトーストならここ! 朝ごはんシカゴ ナンバーワン人気の「ヨーク」

 翌日やってきたのは、シカゴの朝ごはんで一番の人気を誇るレストラン「ヨーク(Yolk)」。店内に入るとオレンジとブルーを基調としたポップな内装で、店員さんもフレンドリーです。

女性に人気のあるヨーク

 アメリカの料理は炭水化物に牛肉、乳製品のメニューが多いので、確実に太ります。1日いただけで、悲しいかな、顔がむちむちしてきます。なるほど、シカゴは大柄な人が多いのですが、ここヨークに来ている人は、健康に気をつけている人が多いのか、お隣の席では、出勤前のワーキングウーマンが、大盛りのサラダをもりもりと食べています。

店内は明るく一人でも入りやすい雰囲気

 隣のスレンダーなお姉さんに習って、まずはたっぷりのサラダを注文しましょう。マッシュルームやシーズンサラダなど約10種類のサラダが並んでいますが、そのなかから、日本ではなじみがないケールサラダを見つけました。

ケールサラダ、13ドル(約1370円)

 ケールとはアメリカでよく食べられる葉野菜。これにチキンとイチゴ、ブルーベリーを乗せているようです。日本ではあまり、葉野菜にイチゴを混ぜたサラダを見ることはありません。しかし、大皿に山盛りになって運ばれてきたグリーンのサラダは春菊に似たケールの苦みと、イチゴやブルーベリーの甘酸っぱさがバランスよく最後まで食べられます。

 続いてフルーツジュースを……と、再びメニューに目を落とすと、サウス・ビーチとなんとも陽気な名前が付いたパイナップル・ヨーグルトを見つけました。豪快にも半分に割って中味をくり抜いたパイナップルにヨーグルトと、さくさくのコーンフレーク、イチゴとパイナップルを混ぜていただけば、確かに南国気分。シカゴのイチゴはジューシーで甘みがあり、栃木の「とちおとめ」に似ています。

サウス・ビーチ、10.5ドル(約1110円)

 ここでやめておけば、大変、ヘルシーな朝食なのですが、お皿を片づけに来た店員さんが、「うちのエッグベネディクトは評判いいよ」と微笑みます。どうしよう、シカゴに来ることはそうそうないかもしれない。

 果たしてやってきたヨーク特製のエッグベネディクトは、生地の上に豪華にもローストビーフ、ポーチドエッグが重ねられています。普通はハムですが、ローストビーフになると味わいがまるで違います。朝食にしてはだいぶ豪華になりました。

エッグベネディクト、13ドル(約1370円)

 ああ、もうお腹いっぱい、満足、満足とお腹をさすっていると、同行の女性記者さんが、「私のフレンチトーストもどうぞ」と取り分けてくれます。見れば、目にも鮮やかなフレンチトーストが3つ。それぞれピーナツバターを塗ったパンにバナナ、オレンジソースにイチゴ、レモンとパパイヤを煮詰めたペーストにブルーベリーが乗っています。

ツール・ド・フランス、12ドル(約1260円)

「これは何という料理ですか?」

「ツール・ド・フランスと書いてありましたよ」

 なぜ、フルーツ・フレンチトーストに自転車競技の名前!?

 スリムな自転車選手とは裏腹に、どうにも美味しそうな目の前のフレンチトースト。しかし、甘いものは朝だろうと別腹です。さきほどのヘルシーな大盛サラダを帳消しにするかのごとく、3つともいただきました。それぞれのペーストやソースにセレクトされたフルーツが見事にマッチしています。特にオレンジソースにイチゴを乗せたスイートオレンジブレッドは見た目よりもあっさりしているので、朝でも重くありません。

Yolk

所在地:747 N. Wells Street, Chicago
Webサイト:Yolk(英文)

旅の最後は健康ジュースで強力デトックス! ビーガンにも人気の「メリカフェ」

 ああ、もうシカゴの旅も最終日ともなると、スカートと腹まわりが合わなくなってきます。たった3、4日、過ごしただけなのに、日本に帰ったら服が全部入らなかったらどうしよう……とうろたえてしまうのですが、大丈夫。ヘルシーな朝ごはんメニューが充実していた昨日の「ヨーク」よりも、デトックス効果の高い店があるのです。

ワーキングウーマン御用達のメリカフェ

 その名は「メリカフェ」。ニューヨーク同様、バリバリ働くワーキングウーマンがごろごろいる街です。体型の維持にぬかりない女性たち御用達の店だと聞いて、ドキドキしながら扉をあけると、まるでバーのカウンターのような受付が。店内はスタイリッシュで夜でも使えそうです。

スタイリッシュな受付。接客も丁寧
ホテルのラウンジのような店内

 さっそくメニューを開くと、ずらりと並んだ健康ジュースの一覧が目に飛び込んできます。オレンジ色をしたニンジンとリンゴ、グレープフルーツのジュースやキウイ、ストロベリー、オレンジをミキサーにかけたフルーツジュースが見た目にも美しく、ひとくち飲むたびに体にビタミンがしみ込んでいくようです。

4色のジュース。どれも体にいい!

 ビタミンたっぷりで美味しいジュースのほかに気になったのは「ジャンプ・スタート・メタボリアン」という名の何やら緑のジュース。デトックスにおおいに効きそうではないですか! ニンジンにリンゴ、ホウレンソウにショウガ、そしてレモン汁も入っています。青汁に甘酸っぱさを足したような正直、なんともいえない味なのですが、良薬、口に苦し……と思えば、朝から確かにジャンプスタートが切れそうです。

ただのパンケーキではない? ビーガンパンケーキ

 続いて、リンゴと大豆をペーストにして練り込んだビーガンのためのパンケーキを注文。イチゴとバナナの上からサボテンの甘いシロップ「アガペー・シロップ」をかけていただきます。バターは使っていないのか、本当にあっさりした味の生地。バター特有の味の濃厚さやしっとりとした食感はないものの、よく噛んでいるうちに、素朴な自然の甘みが口のなかに広がります。小麦を全く使っていないグルテンフリーのパンケーキを試してみたい人には、「ポレンタ・パンケーキ」もあります。

見た目も楽しいアボガドトースト、12ドル(約1260円)

 ジュースとパンケーキで十分、お腹がいっぱいになりますが、同行の記者さんが頼んでいた色鮮やかなアボガドトーストも試食させてもらいました。人数が多いといろいろ食べられるので、楽しいですね。

 こんがり焼き上げたトーストの上に塗られているアボガドクリームはピリ辛で、ハラペーニョで味付けしているようです。グリルしたコーンや黒豆の上にはポーチドエッグ。一口では食べられないので、卵を食べてから下のトーストを食べようとしたら、「崩して混ぜていっぺんに食べなよ。味のハーモニーを楽しまなくちゃ」と現地の人に教わりました。なるほど、見た目はなんですが、この方が美味しいですね。

Meli Cafe

所在地:540 N. Wells Street, Chicago
Webサイト:Meli Cafe(英文)

 朝食はホテルでのんびり……という、いつものスタイルをちょっと変えて、シカゴの街のカフェで遅めの朝食はいかがでしょうか? ご紹介したどのカフェもスタッフは気さくでフレンドリー。美味しい朝食とウエルカムな笑顔で、長い一日のスタートを切れるかもしれません。

白石あづさ

フリーライター。主に旅行やグルメ雑誌などで執筆。北朝鮮から南極まで世界約100カ国を旅し、著書に「世界のへんなおじさん」(小学館)がある。好きなものは日本酒、山、市場。