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ANAエアラインスクールと福岡女学院大学が教育連携協定を締結

学生向けに8月に学内講座と福岡空港での実務体験を実施

2016年4月12日 発表

 ANAホールディングス傘下のANAビジネスソリューションは、大学や短大に通いながら受講できるダブルスクール形式でエアライン業界に進む人材を育成する「ANAエアラインスクール」を運営しており、AIR DOやソラシドエア、スターフライヤーのCA(客室乗務員)職採用推薦校にも指定されている。

 今回このANAビジネスソリューションと、福岡女学院大学(福岡県福岡市南区)が4月12日に教育連携協定を締結。ANAエアラインスクールのベーシックコースを4日間に凝縮した集中講義と、ANA福岡空港での実務体験をセットにした「ANAエアラインスクール学内講座」が8月に実施されることになった。

 同日12日には双方の代表者が出席した協定の調印式が行なわれ、担当者へのインタビューの機会も得られたので、その様子をレポートする。

双方の関係者が福岡女学院大学での調印式に出席

調印式が行なわれた福岡女学院大学の125周年記念館
会議室には福岡女学院大学とANAビジネスソリューションの関係者が出席

 調印式は福岡女学院大学の125周年記念館2階第1会議室で行なわれた。まず、スクールのプロモーションビデオが流され、続いて同大学現代文化学科学科長の末澤明子氏から、今回の協定に至った経緯が説明された。

 末澤氏は、「従来より本学にありました“エアライン研修”と重なる内容があることも、今回の協定に至るきっかけとなりました。昨年、ANAエアラインスクール様よりご提案をいただきまして、エアライン関連の就職実績もある本学の現代文化学科にぜひ、ということになりました。学生がエアライン業界を知り、興味を持ち、そしてその道へ進むための一助となれば、と思います」と述べた。

式の冒頭ではスクールのプロモーションビデオが流された
福岡女学院大学現代文化学科学科長である末澤明子氏より、協定締結に至る経緯の説明があった

記念品の贈呈と調印式を経て双方より挨拶

ANAビジネスソリューション株式会社代表取締役社長の矢澤潤子氏(左)から、同学院学長の高島一路氏(右)へ記念品としてモデルプレーンが贈呈された
矢澤氏と高島氏によって調印書が取り交わされた
ANAビジネスソリューション株式会社代表取締役社長の矢澤潤子氏

 ANAビジネスソリューションの代表取締役社長の矢澤潤子氏から、同学院学長の高島一路氏へ記念品としてモデルプレーンが贈呈された。調印も無事執り行なわれ、記念撮影に。

 矢澤氏は、「本日は、福岡女学院大学様との協定が無事調印できましたことを大変うれしく思っております。関係者の皆さまに多大なるご協力、ご尽力いただきましたことに感謝申し上げます。ANAグループですが、SKYTRAX(スカイトラックス)社のエアラインランキングでは、2013年より4年連続“5スター”を獲得することができました。食事、エンターテイメント、座席グレードそのものといったさまざまなファクターから、社員一人ひとりが何倍もの魅力を引き出せた結果だと思っております。我がANAエアラインスクールですが、現役のCAとグランドスタッフが講師を務めております。心を込めたおもてなしが提供できるようになるプログラムで構成しておりますが、なによりもコミュニケーション能力を引き出す力を重視しています。福岡女学院大学様でも社会人育成に注力されているとのことで、当スクールとの相乗効果によって、社会を担う人材育成のお手伝いができればと思います」と挨拶。

福岡女学院大学学長の高島一路氏

 続いて高島氏から「本日は関係者の皆さまにお集まりいただき、このような調印式ができましたことを心より感謝申し上げます。いまも多くの卒業生がエアライン業界で活躍しております。先日も、東京からの帰りにANAを利用したのですが、CAの方に『高島先生ですか?」と、声をかけていただき、なんとその便が初乗務だったということで、お互いにうれしい出来事がありました。やはり学生にとってCAは花形の職業です。同時に精神的な強さであるとか、体力や専門性など、大変であろうことも多い。今回この講座開設にあたりまして、福岡女学院大学の、一人ひとりの新たな可能性を育てる校風とともに、講座のさらなる発展も祈念したいと存じます」とスピーチ。

※高島一路氏の「高」は「はしごだか」

全員で記念撮影。前列の中央に座っているのは調印式に駆けつけた理事長の十時忠秀氏

協定の双方の実務者に経緯と狙いを聞く

福岡女学院大学現代文化学科准教授の寄藤晶子氏(左)とANAビジネスソリューションの倉園恵美子氏(右)

 最後に、ANAエアラインスクールとの協定締結にあたり、交渉などの実務を担当した同大学人文学部現代文化学科の寄藤晶子氏と、ANAビジネスソリューションの講師であり現役CAでもある倉園恵美子氏に話を伺った。

エアライン系の授業は従来よりあったとのことですが?

倉園氏:福岡女学院大学様の授業の一環として、東京へ行く「エアライン研修」という授業は従来より行なっており、弊社ではその授業を請け負っている形でした。授業内容もANAエアラインスクールで行なっているものと重複する部分がありました。そうであれば、本格的にANAエアラインスクールの講座を受けられるようにしてみては、という提案が今回の調印につながりました。

今回の教育提携によって、福岡女学院大学側の変化はありましたか?

寄藤氏:従来は、さまざまな学部や学科でエアライン業界に関心のある学生がいて、それぞれ個別対応していたところが、今回のエアラインスクールですと全学的に開けるので、それによって短大の学生とか、学部の垣根を越えて学べるようになった、というのが大きいですね。

エアライン業界を希望される学生は多い?

寄藤氏:オープンキャンパスや、入学してからしばらく時間の経った学生の声を聞いていると、やはりCAさんのような輝いている職に興味を持っている人が多いですね。グランドスタッフも含めて、エアライン業界全体への関心を持つ絶対数は多いです。

講師として授業の一番最初に学生へ伝えようと心がけていることは?

倉園氏:なりたい職業が決まっている方だけでなく、そうではない方もいらっしゃいます。まずは自身の目的・目標を立てていただくことが大事です。そこは確実にハッキリさせておきたいポイントです。「その目標に向かって一緒に頑張っていきましょうね!」と始めます。そうすることによって、学生さんご自身がハッキリと変わられる方が多いですね。目的がより明確になるので。最終的には、“自分で考えて自分で行動する”という状態を身に付けていただき、希望職種に就いてほしい。できれば一緒に働きたいと思ってます。

学校として、対外的に「エアライン業界に強い」というアピールは行なっていますか?

寄藤氏:はい、高校向けに出前授業などがあるのですが、観光系の内容ですと、いままで行なってきたエアライン系の授業や、業界への就職実績がありますので、いま興味がある学生さんにとってもお勧めできます。今回、この講座が始まりますから、さらに興味を持ってくれる人が来てくれると確信しています。

途中で「向いてない」となる学生さんはいるのでしょうか?

倉園氏:東京での授業ですと、ANAのさまざまな関連施設を見ることができますので、CAを志望されていた方でも、途中で「管制官になりたい」ですとか、「パイロットになりたい」など、ほかの業種を知り、新たなやる気が出てくる方がおります。また、総合職なども希望される方がいます。しかし、最初に申し上げた自身の目標を持つという点は変わりがありませんので、どこにいっても活躍してくれる人材を育てられていると思います。

寄藤氏:講義内容もCAにならなければ持ち腐れなのではなくて、基礎的なビジネスマナーや所作であるとか、多岐に渡って教えていただけるので、エアライン業界に進まなくても社会人としての力を身に付けることができます。

倉園氏:弊社では「ベーシックコース」というものがありますが、このコースが社会で広く応用が利く内容であると思います。

寄藤氏:エアライン業界を希望されて入学していただく学生さんも、さまざまな世界を知って、違う業種に進んだりすることも多いです。その逆も多く、途中で“エアライン業界に興味がでてきました”という人も多いです。そうやって自分の興味を自分自身で“知る”ことが大事です。学生の本当にやりたい道をサポートするのが大学の仕事でもあります。

授業の様子は?

倉園氏:短期集中型のカリキュラムですので、社会人基礎力やおもてなしの心をお伝えする内容となっています。先程も申し上げましたが、CAを希望される方以外に、お客さまと接する仕事に就きたいと希望職種がハッキリ決まってない方もいらっしゃいます。弊社では就活サポートも行なっています。最終的にご本人の目標が見つかって、それを叶えるというところが最終目的地なんです。

 このようにそれぞれの想いを語ってもらった。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、多くの訪日外国人を受け入れることになる。いまから観光業界で活躍できる人材を育成する、という狙いもANAエアラインスクールにはある。ANAエアラインスクールは、学生にとって「おもてなし」の能力をグローバルな舞台で発揮させるためのスペシャルな講義となるはずだ。この春も、福岡女学院大学には九州一円から、多くの「候補生」が集まってきている。この夏の特別講義を経て、世界に羽ばたいてほしい。

(赤坂太一)