ニュース
ANA、約7100名の客室乗務員の頂点を競う「第3回“OMOTENASHIの達人“コンテスト」
(2015/12/3 18:38)
- 2015年12月2日 実施
ANA(全日本空輸)は12月2日、CA(客室乗務員)のサービス品質を競うコンテスト「“OMOTENASHIの達人“コンテスト 決勝大会」を実施した。同イベントは2013年に始まり、今年で3回目。
このコンテストは、同社のCAがサービス品質向上に向けた研鑽の成果を競うだけでなく、高いホスピタリティで「OMOTENASHI(おもてなし)」を体現しているCAのパフォーマンスを共有することによるサービスの底上げや、周囲のCAを褒め合う、讃え合う文化の醸成に繋げる目的も持っている。
コンテストはチーム部門、コンテスト部門に分かれる。チーム部門はエントリー方式で30チーム(3名1組)が参加し、9月から順次行なわれた予選を勝ち抜いた上位2チームが決勝大会に進出した。
個人部門は、入社4年未満のフレッシャーズ層、入社5年以上のエキスパーティーズ層に分け、所属する課のCAのなかから各層に投票。1次投票で52名の「2015 OMOTENASHI TOP 52」が選出され、9月~10月に行なわれた2次投票でフレッシャーズ4名、エキスパーティーズ4名の計8名が選出され、決勝大会に出場した。
決勝大会の開幕で挨拶した、ANA代表取締役社長の篠辺修氏は「このコンテストは今年で3回目になるが、こういうコンテストは客室乗務員だけでなく、ほかの職種でもやっている。一番古くからやっているのはANAテレマートのコンタクトセンターで、先月13回目を長崎で実施した(注:その模様はこちらの記事)。そして空港部門、いわゆる地上旅客の部門で、来月8回目を行なう。客室部門はわりと新しい取り組みとなる」と社内のスキルコンテストについて紹介。
目的としては、「モチベーションを上げること」「どんな人が私達のサービスの基準を遥かに超えた目指すべき姿なのかを現実の先輩で明らかにすること、励みにもなるし、若い人達の目標にもなる」の大きく2点を挙げた。
また、「私のスピーチは裏で緊張している選手の皆さんの気持ちを和らげるもの」とし、出場者に向けては「ここに出ることが目標。今日の場は皆さん方が普段やっている素晴らしさをを社内や招待しているお客様に味わっていただくことが目的なので、緊張する必要はない。(まわりにいるのは)おじさん、おばさんだけなので気にしないように。一種のお祭りだと思っているので、日頃、客室乗務員が努力して高い評価をいただけている、そのなかでも模範となる人達を紹介したいということなので、ぜひ伸び伸びやっていただきたい。明るく元気に自身をもってサービスをやっていただければと思う」とエールを送った。
一方、コンテストの運営に向けて取り組んできたスタッフに対しても、「こういう取り組みに対しては、大変苦労して準備したと思う。終わってもいないうちから裏方を褒めても仕方ないが、毎年いろんな工夫をして、私どもの会社にふさわしいような、こういうコンテストにしていっていただきたいと思う」と感謝の言葉を述べた。
ビジネスクラスで食事のサービスを競ったチーム部門
チーム部門の決勝大会は、乗務2課の佐藤由貴乃さん、谷村綾香さん、辻尾祐香さんによる「にこにこ Caring」。ロンドンベースのLoline Kokumaiさん、Kieran O'Halloranさん、Ingrid Duran Reyさんによる「The Smoothies」の2チームで争われた。
決勝大会の競技内容は、客室モックアップ施設を利用し、羽田発~ロンドン行き(NH211便)の国際線ビジネスクラスで食事やドリンクの提供を行なうシーンを想定した、約1時間30分間のサービスを競うもの。乗客役は篠辺社長ほか、社内外の役員、職員などが務める。
審査は、来賓6名の招待審査員によるCA育成評価指標を基本とした印象と手順の審査ならびにANAブランドの発揮、CAのサービスインストラクター5名によるCA育成評価指標やCAマニュアルを基本にした行動発揮ならびに総合的な印象を評価する。招待審査員は下記の6名。
- 代表取締役社長 篠辺修氏
- 常務取締役 執行役員 CS&プロダクト・サービス室 担当、企画室長 福田哲郎氏
- 常務取締役執行役員 ANAブランド客室部門統括 河本宏子氏
- 常務取締役執行役員 フライトオペレーションセンター長 妹川秀樹氏
- 上席執行役員 CS&プロダクト・サービス室長 渡辺俊隆氏
- 執行役員 客室センター長 山本ひとみ氏
モックアップは2本の通路があり、それぞれの通路に分かれた両チームが、それぞれの客席で食事のサービスを実施。ギャレーも再現されており、出場したCAはギャレーと客室を行ったり来たりしてサービスを行なった。
また、あらかじめ特定の乗客が任命されている英語話者からの質問も含め、乗客側もCAに対してコンタクトを取った。例えば、ワインのセレクションを英語で訊ね、CAが社内や社外の複数の専門家が集まった「ザ・コノシュアーズ」の説明を行なうなど、さまざまな質問やリクエストに対して応対する姿が見られた。。
新鮮さと熟練の技を披露した個人部門
個人部門は、入社4年未満のフレッシャーズ層は国内線プレミアムクラスを想定して4分間、入社5年以上のエキスパーティーズ層が国内線プレミアムクラスまたは国際線ビジネスクラスを想定して8分間のロールプレイを行なうスタイルで実施された。個人部門の審査にインストラクターは関与せず、チーム部門と同じ6名の招待審査員が評価する。
会場がモックアップ施設ではなく、客室各課や来賓ら大勢が見守るなかでの実演ということで、出場者からは「緊張した」という感想が多く聞かれたが、「グローバルカスタマーの外国人なのに日本語が堪能」「風邪気味の乗客」「記念写真撮影のリクエスト」「お土産や観光スポットの問い合わせ」など、さまざまなハプニングや乗客役スタッフからの質問に、その都度、臨機応変に対応していた。
また、チーム部門同様、個人部門においても所属課からの応援団が駆けつけ、それぞれに個性豊かな応援を繰り広げた。
エキスパーティーズ層
全競技終了後、チーム部門、個人部門フレッシャーズ層、個人部門エキスパーティーズ層それぞれの優勝者を発表し、表彰式が行なわれた。
チーム部門の優勝者を発表したANA常務取締役執行役員 ANAブランド客室部門統括の河本宏子氏は「チーム部門の発表をするが、本当に多くのみんながチャレンジをしてくれた。きっとエントリーすることに戸惑いやためらいもあったと思うが、その一歩を踏み出してくれて本当に感謝。この後ろには30チーム、そして、それを支えた7100名がいるということがチームANAの強み」とコメント。
河本氏から発表されたチーム部門の優勝は「にこにこ Caring」。代表して谷村綾香さんが「このような機会を与えていただきありがとうございます。胸が一杯で何を言ってよいか分かりませんが、いつも飛んでいる班員のメンバーと、いつものようにサービスができたことをとてもうれしく思っています。温かく見守ってくださった皆さん、お客様の方、ありがとうございました」と受賞の挨拶をした。
個人部門のフレッシャーズ層の優勝者はANA常務取締役執行役員 フライトオペレーションセンター長の妹川秀樹氏が発表。発表前に「正直いって点数の付けようがなかった。素晴らしい。ここに来て、一番先にびっくりしたのは、玄関に着いたときに……、もうなかなか飛ぶ機会がない人達がたくさんいておもてなしを受け、たくさん応援団が来ていた。客室センターの底力を感じた。これから優勝者を読むが、(優勝者の名前を)読むのに気が引けるような4人の素晴らしいサービスだったと思う。4人に拍手を送りたい」と賛辞を贈った。
そして、発表された名前は2013年度入社の山田亜沙美さん。「今回このような賞をいただけたのは、私1人の力ではなくて、日頃支えてくれる班員や同期のみんなの支えがあったからこそだと心から思います。1人よがりのフライトではなく、みんなと手を取り合いながらサービスをしていきたいと思っています」と涙を見せながらコメントした。
最後に、ANA上席執行役員 CS&プロダクト・サービス室長の渡辺俊隆氏が個人部門のエキスパーティーズ層の優勝者を発表。渡辺氏は発表前の挨拶で、「朝ドラ(あさが来た)で言うと“びっくりぽん”の連続だった。ビックリするおもてなしばかりで、よい気持ちにさせていただいた。熟練した素晴らしい皆さんの行動のなかに、どこか初々しいところや、昔の若い頃が少し入り込んでいて……失礼しました。ただ熟練してスマートな感じではなく、初々しさや一生懸命さがあったからこそ、よりよく見えるかなと思った。ぜひ、皆さんみたいな方をたくさん作っていただきたい」と総評。
優勝者は、2005年度入社の小松原由衣さんが選ばれ、「驚きの気持ちで一杯です。また今日1日、仲間と一緒に緊張しながらでしたけど、みんなでモチベーションを高めていきながらこの場に立てたことを誇りに思いますし、皆様に感謝したいと思っています。また、本日お忙しいなか足をお運びいただき、ありがとうございました」とコメントした。
表彰式に続いては、ANA常務取締役 執行役員 CS&プロダクト・サービス室 担当、企画室長の福田哲郎氏、ANA執行役員 客室センター長の 山本ひとみ氏が総評を述べた。
福田氏はコンテストを通じて感じた大切な2点として「気付く力」「お客様(カスタマー)」を挙げた。「乗客のニーズに気付いて応えることは客室においてとても大きな力。もっとも素晴らしい“おもてなし”をする企業はどこかと訊ねると多くの人が“加賀屋”を挙げる。私には夢がある。近い将来、そして遠くない未来において、それが“ANA”と呼ばれるようになりたい」と気付く力が、“おもてなし”力の高まりに繋がることに期待。
併せて、乗客からのメッセージで心に残っているものとして、「福岡から東京へフライトしたお客様が、飛行機を降りてドアを抜ける時に、CAに“空のペットボトルをお預かりしましょうか”と聞かれてとても感謝していた。この乗客は深夜に到着して、疲れて家に帰る時のはずなのに、PCを開いて、メッセージを書いて送ってくれた」というエピソードを紹介し、カスタマーのために、その生活をサポートするような気持ちが大切であると述べた。
山本氏は「コンテストに出場する皆さん、選考を経てラストに残った人達は本当に皆さんベスト。なかなか点数の付けようがなかった。手を挙げてコンテストに出場していただいた方も含めて、すべての皆さんが周囲のスタッフを含めて、ANAの品質を支えてくれる大切な仲間達。そういう思いがチームANAとして、これから大きく広がっていくと信じている。私達は笑いあり、涙あり、そしてチームの支えあり、そして、地上で支えてくださっているスタッフの皆さん合わせてすべてがANAの客室のサービス品質を作って行くもの。私はこれから客室のサービスで世界一を取っていきたいと思っている。必ずや成し遂げられると思っている。なぜなら、そこで働く心強い仲間達、それを支えてくれるチームがある。非常に楽しみにしているし、ハードルは高いかもしれないが、それは必ず超えていけると思っている」と力強くコメント。
「本当に涙が出そうだった。最後の閉会の挨拶も、(閉幕の挨拶で感激のあまり涙を流した)2014年度の河本さんみたいになるかもしれないと思っていた。だけど泣いてる場合じゃない。ANAグループというのはスマートではないかも知れない、少しずつスマートになりながら、一生懸命前を向いて、なんだか分からないけど努力し続けて、失敗を恐れずチャレンジしてきたことが、今の私達だと思っている。そして、生産性が拡大していくなかで、多くの仲間を迎えてANA流のジャパンクオリティを世界に発信していきたいと思っている。世界一になっていきましょう。ほかの皆さんも他人事ではない。出張に行く時に、また、ANA便を利用したときに、何か気付くことがあれば、その場で客室乗務員に優しく笑顔で厳しいことを言っていただけると、私達はまたさらに成長していけると思っている。皆さんも成長を支える同じグループの仲間として見守っていただきたいし、ともに成長していきたいと思っている」と述べて、コンテストの幕を引いた。