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JR北海道、函館新幹線総合車両所を報道向けに公開

2016年3月1日 公開

 JR北海道は3月1日、2016年3月26日に開通する北海道新幹線の函館新幹線総合車両所を報道機関向けに公開した。当日は同車両所に配置されているH5系新幹線車両全編成(4編成)が着発収容線に並んだほか、3月26日開業日に乗務予定の運転士、車掌へのインタビューや、函館新幹線総合車両所で業務を行なう検修社員へのインタビューなどが実施された。

函館新幹線総合車両所正門から左側に仕交検庫、右側に車体検査場等工場施設を望む。乗車したタクシーもたまたまH5系カラーだった
函館新幹線総合車両所俯瞰図(CG)。車両所最寄の函館線七飯駅前にあった案内図から
函館新幹線総合車両所の主な設備。青色の部分がすでに供用を開始している部分。緑色は新函館北斗開業時から使用

 函館新幹線総合車両所は、新幹線車両の日常的な検査から大規模な検査・修繕までを行なえる北海道で唯一の総合車両基地として、新幹線本線と函館線(在来線)に囲まれた扇状となる約36万m2の用地に建設が行なわれており、北海道新幹線開業に向けて一部供用が始まっている。東海道新幹線開業50周年にあたる2014年10月1日に新幹線準備運輸車両所として開設、2015年7月31日に函館新幹線総合車両所が開設され、翌日の8月1日に新幹線準備運輸車両所を統制移管。2015年11月1日には函館新幹線運輸所が総合車両所から分離開設されている。

 基地内には、車両を留置するための線路設備(着発収容庫、収容線)と、定期的に検査・修繕を行なうための検修施設、台車等の重要部品の解体検査・修繕を行なう工場施設のほか、線路、電気設備の保守を担う保守基地が併設されている。基地ではこの函館新幹線総合車両所とともに、運転・車掌業務を担当する「函館新幹線運輸所」、軌道・機械の保守を担当する「函館新幹線準備工務所」、電気設備の保守を担当する「函館新幹線準備電気所」が北海道新幹線開業に向けた準備業務を行なっている。

新幹線車両の“寝床”というべき着発収容庫

 営業列車として運行していない車両を留置する設備で、同所に配置されているH5系4編成、計40両が保管できるよう4線の収容庫が先行して落成しており、2015年10月から使用が開始されている。札幌開業時には写真右側の敷地にさらに8線増設が行なわれ、最大12線の収容庫となる。現時点ではまだ線路も敷設されていなかった。

JR北海道所有のH5系全車両(4編成、計40両)が収納されている着発収容庫。北海道新幹線開業後はJR東日本のE5系も出入りする

安全運行を陰で支える検修施設

 車両の検査業務を行なう施設で、施設内には4線の検査線が引き込まれている。

 検査業務には、2日以内に1回の実施が求められている「仕業検査」(パンタグラフ、台車、走り装置、ブレーキ装置、室内装置などの状態、作用機能について外部から行なう検査、および所定の周期で消耗品の交換等を行なう)と、3万kmまたは30日以内に実施が求められている「交番検査」(各機器のカバーを外し、内部の状態、機能確認を行なう)がある。

 交番検査では仕業検査に比べ精密検査となり検査項目も多くなるため、当施設では2線を交番検査用とし、残り2線が仕業検査および融雪作業用として使用される。

 仕業検査、交番検査を行なうこの建屋を「仕交検庫」と呼んでいる。

仕交検庫内部。正面から向かって4線あり、これは一番右側の「交検1番線」。交番検査を行なう
右側から2線目の「交検2番線」。こちらも交番検査用
右側から3線目は「仕業線」。仕業検査を行なう。交検線よりは設備が少ない
左端の線は「融雪線」となっている。温水を使って車体下部などに付着した雪を落とす
右側が仕交検庫。左奥の建物は事務所となる総合管理棟

 検修施設は北海道新幹線が試験運転を開始した2015年10月から一部使用が開始されている。このほか今回は公開されなかったが、120万kmまたは18カ月以内に実施が求められる「台車検査」(モーターや駆動装置、ブレーキなど、走行に必要な台車等の主要部分を取り外し、または分解のうえ細部について行なう検査)や、120万kmまたは36カ月以内に実施が求められる「全般検査」(車両の主要部分を取り外し、または分解のうえ細部について全般にわたり修繕、取り替えを行ない、新車状態にする検査)を行なうための工場設備が仕交検庫に隣接して建設済みであり、3月26日の新函館北斗開業時から使用が開始される。なお今回は、工場設備の見学は行なわれなかった。

仕交検庫内は車両下部・上部で点検業務を行ないやすいよう、線路下や車両屋根横などに点検設備が整えられている
黄色いパイプは車両トイレタンクから汚物を吸引する設備。タンクを洗浄する設備や給水設備などが並ぶ
仕交検庫内を上部から見る。手前2線が交検線、その奥が仕業線、融雪線
仕交検庫終端部。上部で点灯している「入」「切」は、架線への通電状態を示す

気を引き締めて開業に臨む

 この日は、3月26日の北海道新幹線開業日に乗務を予定している運転士、車掌や、函館新幹線総合車両所の検修施設に勤務する社員へのインタビューも行なわれた。

 開業日に乗務を予定しているのは、函館新幹線運輸所 主任運転士 澤川一之さん(2000年入社、36歳)と函館新幹線運輸所 車掌 里見拓真さん(2005年入社、33歳)。また函館新幹線運輸所長の伊藤章伸さん(1995年入社、45歳)もインタビューに応えた。

左から函館新幹線運輸所長 伊藤章伸さん、函館新幹線運輸所 主任運転士 澤川一之さん、同車掌 里見拓真さん

――一番列車を運転することになった今の心境、意気込みは?

澤川さん:今まで行なってきた訓練運転どおりに平常心を保ち、定時運行と安全運転に努めたいと思っています。新幹線開業は大変喜ばしいことですが、個人的な喜びというよりは今までお世話になった家族や、運転士見習いの時に指導いただいた先生方にお礼を言いたい気持ちです。職場の仲間たちにも代表として頑張りたいという気持ちを伝えたい。

里見さん:新幹線の車掌を務めるという、長年の夢がかないました。先輩方が作られた偉大な青函トンネル(現時点で営業路線として世界最長を誇る)を新幹線が通り、その車両に自分が乗務するということはまさに乗務員冥利につきるところです。実は入社試験の作文で「10年後に新幹線の車掌になって一番列車の乗務を務める」という抱負を書きましたが、それが本当に実現しました。

――運行で気を付けていきたい点などありますか?

澤川さん:新函館北斗から東京まで直通運転ということになります。北海道内は気候的にも厳しい環境での運行になりますが、本州内の運行に影響が出ないよう、定時運行を守ること心がけたいです。新幹線は在来線以上に秒単位の定時性が求められます。

――新幹線の乗務にあたり研修はどこで行いましたか? また新幹線に乗務するようになって感じたことは?

里見さん:在来線に約10年乗務したのち、JR東日本・盛岡新幹線運輸区に出向し東北新幹線に乗務させていただきました。新幹線という偉大な乗り物に乗って多くのお客様を目的地に送り届けることに緊張するとともに責任を感じました。在来線の倍以上のお客様が乗車されているので、一人ひとりのお客様に気配りをすることを疎かにしないよう務めています。

澤川さん:私はJR東日本・仙台新幹線運輸区に出向させていただき運転士として研修を重ねてきました。運転士が心がけなくてはいけないことは、先ほども申し上げた定時運行です。そのためには体調管理が大変重要なことと考えています。

――所長の伊藤さんにお尋ねします。このお二人を一番列車の乗務に任命した理由は?

伊藤さん:全員が開業準備にあたって熱心に研修と訓練を重ねてきましたので、誰を一番列車に乗務させるかというのは大変悩みました。特にこの2人は長い期間、研修や準備作業に勤しんできたということで決めました。

――所長の立場として開業に向けて思うことは?

伊藤さん:JR北海道としてはじめての新幹線ということで準備を進めてきました。長年の悲願、そしていよいよ北海道に新幹線が来るということに大きな期待をしています。開業にあたってはJR東日本をはじめとして非常に多くの皆様に支援をいただきここまでやってきました。そうした方々に恩返しができるよう、しっかりと開業を迎えて、そしてこれまで先輩方が築き上げてきた新幹線の「ブランド」「高い安全性」「技術」をしっかりと守っていきたいと考えています。また北海道という自然環境の厳しい場所で初めての運行になりますので、そういった環境のなかでも安全に新幹線を走らせるために一生懸命努力していきたいと考えています。

【お詫びと訂正】初出時、運転士と車掌の研修時の出向先名称に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

函館新幹線総合車両所 車両技術主任 帰山隆さん(右)と、函館新幹線総合車両所長 井原禎之さん(左)

 一方、世界に誇れる技術をもって新幹線の運行を陰で支えているのが、検修施設で新幹線車両の各種検査等に携わる人達だ。仕交検庫で作業を行なう函館新幹線総合車両所 車両技術主任 帰山(かえりやま)隆さん(1997年入社、37歳)と、函館新幹線総合車両所長 井原禎之(ひろゆき)さん(1990年入社、51歳)が開業に向けた抱負を語った。

――配属されてから苦労した点はありますか? また、いよいよ開業を迎えますが、どんな心境で仕事をされていますか?

帰山さん:1年半前に配属されて着任したときは、まだ設備も整っておらず、仕事をすること自体の準備から始まった感じでした。1年半かけて準備を進めてきたわけですが、開業を迎えることによってようやくスタートラインに立てるといった感じです。東京まで運行するということで、走行距離も長く、今まで(試験走行)との違いや傾向などを観察して、注意深く対応していきたいと思っています。

――これまでどこで、どんな業務をされてきましたか? 新幹線の担当となり、業務が変わるところなどありますか?

帰山さん:函館運輸所で、在来線車両を対象に10年以上にわたって同じ検修業務を行なってきました。新幹線の検査は1編成(10両)単位で行ないますので、担当する検査スタッフの数も多く(交番検査は1回で11名のスタッフで対応)、1人1人のスタッフの技術ももちろん重要なのですが、それに加えてチームワークも求められてきます。みんなで協力して業務にあたっていきたいです。

――この検修施設で実施する、車両の融雪作業はどんな作業でしょうか?

井原さん:在来線車両と違って新幹線は車体の下まわりもカバーに覆われていますから、その中に雪が固着してしまい在来線以上に雪を落とすのが大変です。やり方は在来線も新幹線も一緒ですが、ただ、1編成の両数も多いですし、溶かしにくい場所に雪が入り込みます。温水を放出する設備を使って、根気よく溶かしていきます。

――開業まで25日を切りましたが、今のお気持ちは? 気を配っているところは?

帰山さん:1年半前からここで準備をしてきましたので、ようやくその日を迎えられる、やっとその日がきたかなという気持ちが強いです。あと25日後ということですが、もう明日に開業しても大丈夫という心持ちでいます。不安がないわけではありませんが、やっとその日が来たという楽しみな気持ちの方が大きいです。まだ実際の営業運行はしていませんので、営業運行を想定してシミュレーションを重ねている状況です。自信を持って業務に望みたいです。

――スタッフの新幹線研修はどちらで行なったのですか?

井原さん:車両所に勤務するスタッフは全員が実際の新幹線検査の現場で研修を受けています。JR東日本の新幹線総合車両センター(仙台)、および盛岡新幹線車両センター、同青森派出などに出向し、東北新幹線の検修作業の現場でノウハウを学んできました。すでに出向から戻って、いったん在来線の検修業務に就いてから着任したスタッフもいますし、現時点で出向中のスタッフもいます。期間は短いスタッフでも3カ月、長期では1年程度行なってます。

仕交検庫入庫口(手前)側から、台車検査設備棟を望む
着発収容庫から北海道新幹線本線(後ろの高架)を望む。その先が札幌方向である

 北海道新幹線開業まで残すところ25日となった。開業に向けて連日深夜に訓練運転が行なわれており、函館新幹線総合車両所も不夜城となって新幹線車両の運行を支えている。開業5日前の3月21日は海峡線の最終運行日となり、翌22日から25日までは地上設備切り替えのため青函トンネルを挟んだ蟹田〜木古内間が開業前運休となる。この間に日中の訓練運転も行なわれ、開業に向けたラストスパートを切ることになる。

 函館新幹線総合車両所には、所長以下、計53名のJR北海道社員が配置されており、協力会社も合わせ総勢100名を超えるスタッフが北海道新幹線の安全運行を見守ってくれている。

(木暮祐一)