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JR北海道、本州最北端の新幹線駅となる「奥津軽いまべつ駅」駅舎見学会

2015年12月12日 開催

 2016年3月26日に開業を控える北海道新幹線。新青森から新函館北斗まで開業するが、その途中駅として「奥津軽いまべつ駅」(青森県東津軽郡今別町)と「木古内駅」(北海道上磯郡木古内町)の2駅が新幹線停車駅となる。12月12日には、報道関係者向けに「奥津軽いまべつ駅」が披露され、また同日はその後14時00分まで一般向けにも駅舎や新幹線ホーム等が公開された。奥津軽いまべつ駅の概要をお伝えしたい。

本州にありながらJR北海道管轄となる奥津軽いまべつ駅

奥津軽いまべつ駅を正面から望む

 奥津軽いまべつ駅は、本州の青森県にありながらも、営業区分上はJR北海道 海峡線(通称津軽海峡線の一部)の駅として開設されており、JR北海道としては最南端に位置する駅になる。もともとは、青函トンネルの本州側の保守基地(信号場)として計画されていたが、地元の請願により旅客駅として1988年3月13日に「津軽今別駅」として開業した。隣接地にJR東日本津軽線の津軽二股駅があり、乗換駅にもなっていた。

 津軽今別駅は、北海道新幹線関連工事に伴い、2015年8月10日より全列車が通過扱いとなり、その後ホームも撤去されて駅としての機能を失っていたが、駅名も奥津軽いまべつ駅と改められ、新幹線駅として新装開業することとなった。ホームは上下方向別の対向式ホーム2面3線となり、下り線には通過線を設置している。

 駅前ロータリーから望む奥津軽いまべつ駅は、高さ25mのガラス張り駅舎(タワー棟)がシンボルとなっている。正面から見て最上部の窓がアーチ上にデザインされているが、これは青函トンネルをゲート風にデザインしたものとなっている。そしてこの建物はエレベータ昇降棟となっており、2機のエレベータと階段(115段もある)が設置されている。駅周囲にはまだ大きな建物がないため、最上部のガラス越しからの眺望は抜群である。エレベータを降りるとホームに向かう長いガラス張りの通路がある。

タワー棟上部のアーチは青函トンネルのゲートをイメージしたデザイン

 この通路は複数の線路をまたいでおり、それらをガラス越しに眺めることができる。エレベータ側から順にJR東日本 津軽線の線路(非電化の単線)、その次に保守基地から新幹線軌道に結ばれる引き込み線、そして津軽海峡線(在来線)の線路2本(函館方面への下り線と、その待避線)が見える。そして通路の奥を右に曲がったところに改札口と駅事務室がある。新幹線ホームなどでその奥まで見えないが、新幹線ホームの向こう側には津軽海峡線(在来線)の青森方面の上り線とその待避線の2本がある。

奥津軽いまべつ駅の構造
駅通路、エレベータ側から改札方面を望む
反対側、改札側からエレベータ方向。ガラス張りで見晴らしがよい
通路から新青森方面の眺望。北海道新幹線の保守基地がある。一番右側の線路はJR東日本津軽線
通路から青函トンネル方向の眺望。左の単線と小さなホームが隣接するJR東日本津軽線の津軽二股駅。旧津軽今別駅へ上がる屋根付きの階段通路は閉鎖され、在来線のホームも撤去されている。手前からトンネルに入るのは保守基地への引き込み線。狭軌と標準軌の三線軌条となっている
改札前。駅設備について説明を行なう、奥津軽いまべつ開業準備駅長 石沢透氏
改札横にはみどりの窓口が設置される

 改札を入ると向かって左側が東京方面行きホーム(11番線)へのエレベータ、エスカレータ、右側が新函館北斗方面行きホーム(12番線)へのエレベータ、エスカレータなどとなっている。また改札正面の奥が駅事務室となっているが、全面ガラスとその内側に青森を代表する樹木である青森ヒバをあしらえ、オブジェ風の壁を設けている。

改札を入った正面は全面ガラス越しに青森ヒバのオブジェがあり暖かみのある雰囲気を醸し出す
改札口からホームへの連絡は、エスカレータ、階段、エレベータが両ホームに各1機ずつ設置されている

ホームは対向式ホーム2面3線、防雪防寒対策も万全

 新幹線のホーム部分は全長263mあり、さらに両端には列車が停止しない43mの余裕部分を持たせている。現在、はやぶさ号は全長が250m。将来の連結増に備えたもののようだ。またホームにあるドアなどが緑、黄、赤、青、ピンクに塗られていることに気付く。これは今別町に伝わる伝統芸能「荒馬まつり」の衣装に使用されている色を表現している。

11番線、新青森・東京方面ホームから対向ホームを望む。中央の線路は下り用の通過線。またホームにあるドア等のカラフルな色は地元の伝統芸能の衣装をイメージ
ホームには柱をなくして見通しをよくすることで視認性をよくし安全性を高めている

 北海道新幹線共通の特徴となるが、ホームに降りるエレベータやエスカレータ、階段などと、ホームの間には自動ドアのガラス扉が設けられている。風除(ふうじょ)室と呼ばれ、風が改札階に侵入しないように工夫されている。また、奥津軽いまべつ駅では万が一の際の非常口がホーム壁や橋上広場に多数設置されており、非常口から地上に出られるようになている。非常ドアの外側や非常階段は網状の床材を使用し、降雪時にも雪が積もらないよう工夫されている。奥津軽いまべつ駅は、全長53.85kmの青函トンネルの本州側出口から最寄りの駅ということになるので、トンネル内で万が一事故などが発生した場合には、乗客を安全に救出するための重要な拠点と位置付けられている。通路から見えた保守基地には緊急時に対応する救援車等が配備されるほか、駅自体も乗客を迅速に安全な場所へ誘導できるよう、各所に設けられた非常口をはじめとして万全の設備を整えている。

ホームに設置された非常ドア。外側の津軽海峡線(在来線)線路に出られる
橋上のフロアから緊急時に外部へ脱出する非常口
非常口の外側通路やその先に見える非常階段には網状の床材が使用されている。これは積雪を防ぐため
ホーム先端から新青森・東京方面の眺望
ホーム先端から青函トンネル・新函館北斗方面の眺望。中央の3線が新幹線、両側の各2線は在来線。海峡線は新幹線、在来線共用区間であり、この駅の前後は三線軌条となっている
改札は1カ所のみで橋上の2階にあり、お手洗いは改札外側に1カ所のみとなる
多機能お手洗いも完備

 駅から一歩出ると、管理はすべて今別町の管轄となる。ロータリ横には屋内駐車場、屋外駐車場が設置されており、駐車場を抜けるとJR東日本津軽線の津軽二股駅と、現時点で駅周辺唯一の商業施設である「道の駅いまべつ 半島プラザ アスクル」がある。アスクルの店内では青森各地のお土産品が揃うほか、新鮮な海産物などもメニューに並ぶレストランが併設されている。

 今別町長・阿部義治氏の話では、この奥津軽いまべつ駅はこれまで交通手段が不便だった津軽半島各方面の観光地への拠点としての期待が高まっており、新幹線のダイヤに合わせて公共交通機関(バス)の整備をしていくことや、レンタカー会社の誘致等を進めていきたいという抱負を語っていた。また、青森や函館への移動時間が短縮されることで、津軽半島から通学の手段として新幹線を利用する学生、生徒も増えることが想定され、今別町ではこうした学生、生徒の通学定期代の一部助成の検討も行なっている。なお、今別町は人口は2992人(2015年2月1日時点)で、新幹線駅が設置される自治体としては“最も小さな町”となる。

奥津軽いまべつ開業準備駅長 石沢透氏
今別町長 阿部義治氏
駐車場および駅ロータリに面した1階部分の待合室には今別町の伝統芸能「荒馬まつり」をモチーフにした絵が描かれていた
奥津軽いまべつ駅ロータリ横の駐車場。今別町の管理で、駐車場利用料は無料
駐車場を抜けるとJR東日本津軽線の津軽二股駅に出られる。旧津軽今別駅に上がる階段はすでに閉鎖されている。津軽今別の駅名表示はまだ残されていた
津軽二股駅は単線の無人駅である。新幹線駅とは対照的に静かなローカル駅といった感じだ
津軽二股駅横にある「道の駅いまべつ 半島プラザ アスクル」
「アスクル」には青森の主要な土産物が揃う
レストランも設置されている

【お詫びと訂正】記事初出時、軌道の表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

(木暮祐一)