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ANA、空港の接客、保安サービスを競う「第8回空港カスタマーサービススキルコンテスト」
(2016/1/23 00:00)
- 2016年1月13日 実施
ANA(全日本空輸)は1月13日、ANA総合旅客サービス部門総合訓練施設「SPECIA」(東京都大田区)で、全国の空港で活躍するグランドスタッフがサービススキルを競う「空港カスタマーサービススキルコンテスト」を実施した。同イベントは今回で8回目を迎えるもので、全国の空港スタッフが競い合うことで接遇スキルや業務手順の向上を磨き、人的サービスの向上を目指すことを目的としたもの。
2015年度は「YOUR ANA~また体験したくなる空港サービス~」をテーマに、国内、海外合せて52空港、約4000名のスタッフが参加。「旅客部門(カウンター国内線/国際線)」「旅客部門(ゲート)」「保安部門」の3部門に分かれ、それぞれに設定された審査基準により優秀者が決定される。
審査は社外からゲストとして招かれた、印象評論家の重太みゆき氏、羽田エクセルホテル東急 料飲支配人 姉崎良英氏の2名。ANAからはANA常務取締役 執行役員 CS&プロダクト・サービス室担当 企画室長 福田哲郎氏、ANA執行役員 客室センター長 山本ひとみ氏の2名で、計4名が印象面を担当。空港ならではの知識面は空港業務推進部員が務めた。ちなみに旅客部門のグランプリは過去7回中3回を羽田空港のスタッフが獲得している。
本戦を前に挨拶を行なったANA代表取締役社長 篠辺修氏は「スキルコンテストは、この部門以外に客室乗務員、コンタクトセンターなど3部門やっています。今回が8回目となりますが少しずつ変化させてきています」と前置き。その理由については「旅客部門を中心としたコンテストはどんどん環境が変わってきていますので、例えばシステム、2014年から2015年にかけても国際線のシステムが入れ替わったりしますので、そのほか手続きのトレーニングも変わっていきます。あるいはお客様の手荷物をお預かりするバゲッジドロップ(ANA Baggage Drop)も羽田でスタートしていますけれども、セルフバゲッジになっていて、それまでのご案内とは少し違った部分が出てきています。従ってコンテストの中身も課題もちょっとずつ変化しながらということになります」と説明した。出場者には「普段のとおりで結構です。このコンテストに出るだけでも代表になってますので、緊張しているかもしれませんけれども、勝とうがなにしようが職場に戻れば若い人達や新人の模範となることを期待しています」とエールを送った。
旅客部門(カウンター部門 国内線/国際線)
最初に行なわれたのは旅客部門の審査。本選を前に各空港から選出された出場者105名による予選が9月に実施されており、その結果、本戦出場を果たしたのは国内線18名、国際線8名の計26名となった。審査基準は身だしなみや笑顔、挨拶、コミュニケーションといった印象面、また、お客様の質問に対する回答やプラスアルファの提案といった知識面の、両面が重要となる。
審査はSPECIAに設けられた訓練用カウンターを使用、2名が交互にそれぞれ3名ずつの乗客に対応する。乗客が出してくる課題はチケットやマイル、子供のひとり旅をサポートする「キッズらくのりサービス」に関するものなどさまざま。ただ、あまり無茶な注文を付ける課題はなく、あくまでも「感じのよい接客」「ANAが実施しているサービスを的確に案内できるか」といったあたりに重きを置いているように見受けられた。
保安部門
空港内の制限エリアに入るための検査を行なう保安検査場のスタッフによるコンテスト。参加者は伊丹、鹿児島、成田の3空港のスタッフで、2名1組でのエントリー。乗客役の「鞄を1つ持った身軽なサラリーマン」風の職員に対応する。ただし、見た目とは裏腹にこの乗客は携帯電話やドライバーなどを身に着けたままゲートを通過しようと試みる。そんなシチュエーションで乗客にストレスを与えず、素早く金属探知機でのチェックおよび持ち込み禁止物の処置などを行なえるかがポイントとなる。
旅客部門(ゲート部門)
飛行機に乗り込む際に通過する搭乗ゲートスタッフによるコンテスト。改札機を通過する際に心地よい印象を与え、安心感や親しみやすさを感じさせる空港スタッフを目指すのが審査の趣旨。審査基準はカウンターと同じく印象面に加え安全性や情報提供、改札業務、空港独自の工夫などがポイントとなった。
この審査は空港によって設備が異なるため、主に使用される航空機のサイズなどによってカテゴリーA~Cの3タイプに分類。カテゴリーAが「主に大型機でプレミアムクラスのある便」、カテゴリーBは「主に中型機や小型機でプレミアムクラスのある便」、カテゴリーCが「主に小型機でプレミアムクラスのない便」と規定された。
なお、列の案内など多数の乗客がいないと不可能な部分もあるため、ビデオにより撮影された映像を使って事前に審査を済ませており、この日は結果のみの発表となった。
グランプリはやはりあの空港
すべての審査終了後、部門ごとに成績優秀者が発表され、表彰式が実施された。
ゲート部門の審査結果はカテゴリーAが松山空港、カテゴリーBが福島空港、カテゴリーCは佐賀空港が優秀賞を獲得。松山空港の山口温賀さんと入船巴美さんは「係員同士が信頼し合い、とても楽しくゲート業務を行なえました。その結果が、お客様に安心感を与えるような雰囲気作りにつながっており、大変うれしく思います」。
福島空港の館股千枝さんと古川美穂さんは「普段のハンドリングからお客様のために、どうやったら早く出発でき、どうやったら早く目的地に到着できるかを考えさせていただきまして、その結果がカテゴリーBの優秀空港に選んでいただきまして感謝しています」。
佐賀空港の下川佐緒里さんと平原加奈子さんは「限られた施設のなかではありますが、係員一人一人がお客様に心地よく搭乗口を通過していただくように、それぞれがさまざまなことを考えて常にゲート業務を行なっています。その結果が今日の結果につながったと思います」と。それぞれ受賞の喜びを語った。
保安部門の優秀賞となるエクセレントセキュリティ賞に輝いたのは、一般財団法人空港保安事業センター(成田空港)の大里幸樹さんと野田紗由莉さん。「今日に至るまでたくさんの方々からご支援、ご指導をいただきました。明日からの業務でも今回の経験を活かして、明るく元気に世界の空の安全を守って参ります」と、コメントした。
カウンター部門は審査員特別賞に羽田空港の加藤友紀奈さん、準グランプリは那覇空港の入戸野利香さん、新千歳空港の王茜さんが受賞した。
加藤さんは「本当にこのような素晴らしい賞をいただきまして、とてもうれしく思っています。ここに至るまで付き合ってくださった先輩方、上司の皆様、そして同期のみんなの力があってこその受賞だと思います」と涙ぐみながらのコメント。
入戸野さんは「本日は素晴らしい賞をいただいけて本当にうれしく思っています。那覇空港からは例年なかなか本戦に出場が今までできていなかったのですが、今年度こうして出場することができて、賞もいただけたことで本当に誇りに思っています」と、入社1年目ながらに冷静に分析。
王さんは「本当にこのような賞をいただけることを夢にも思ってなかったんですけれども、入社前は留学生で日本に来てイチから日本語を勉強したんですけれども、その時に“いらっしゃいませ”のフレーズとして覚えてメモした記憶があります。明日から業務に戻りますが、この賞は私一人の賞ではなくて新千歳空港全員の賞と思って、まずは社長室に飾りたいと思います」と、満面の笑みで受賞の喜びをかみしめていた。
最後に代表取締役社長 篠辺修氏がグランプリを発表。読み上げられた名前は羽田空港の長田恵未さん。「今日までに練習をたくさん重ねて、羽田空港の先輩方や空港で一緒に働く方々と今日の日を実らせられたことをとてもうれしく思います」と喜びのコメント。また、「普段の自分が出せていた。お客様のお話をよく聞いてお客様に寄り添った対応を常に心がけている」ことが今回の結果につながったとした。
同コンテストは今回、長田さんがグランプリを獲ったことで、実に8回中4回を羽田空港のスタッフが占めることになった。この点については「羽田は日本で一番大きな空港でお客様との応対も多い」「応対するごとにご案内の幅が広がる」「職員中で褒め合ったり、改善し合ったりという雰囲気がある」と、同空港の強みを挙げた。
表彰式後には社外審査員による講評が行なわれた。羽田エクセルホテル東急 料飲支配人 姉崎良英氏は「今日いらっしゃってる方は本戦に出ているということで、皆さん優秀な方々で本当に甲乙付けがたかったというのが率直な感想です。皆さん、これからそれぞれのターミナルに帰って、今日あったことを後輩、先輩達にお話しして、ぜひよいオペレーションをしていただければと思います」とコメント。最後に「(受賞者に)羽田の方が2名入っていますので、ぜひ祝勝会は羽田エクセルホテル東急でよろしくお願いします」とホテルをアピールし、会場を笑わせた。
続いて印象評論家の重太みゆき氏は「出場者の美に関する意識が高い」「全日空さんのレベルの高さを痛感させていただきました」と評価。そのうえでグランプリの長田さんには「すべてパーフェクトを付けさせていただきました」と高い評価を付けたほか、準グランプリの入戸野さんには「素晴らしいなと思ったのは“ご安心ください”と言った瞬間に、お客様の気持ちがほっと落ち着くなという接客を日頃なさっているんだなと言うことを心から感じることができました」とコメント。また、即興で接客の「モテしぐさ」トレーニングを披露。印象アップの秘訣を参加者に伝授し「ぜひ今日からやっていただきたいと思います」とした。
コンテストの締めくくりとしてANA代表取締役副社長 執行役員 内薗幸一氏が登壇。「賞を取られた方を含めて、入社1年目とか2年目とか、さらに3年目なり15年目の方もいらっしゃって、それぞれのよさが出ていたと思います。1年目でも皆さん度胸があってとよいますか、要はパーソナリティですね。皆さんのよいものを出していただければそれがよいサービスにつながる。裏返せば画一的な学校のようなサービスをANAとしても求めているわけではなくて、それぞれの人間性が出るような、お客様が何を求めていらっしゃるのかということに対して敏感に反応してそれにあった受け答えをするのが一番大事なことだと思います。そういうことを皆さん一人一人が、皆さんの個性のなかで持っていらっしゃるんだなと、思いながら見ておりました」と、出場者を労いつつ講評。
また、保安部門についても「従来以上に、毎年より素晴らしいサービス、接遇がされているんだと思います。皆さん感じるように、保安は世界中どこの空港を見ても日本の保安が一番丁寧で確実な仕事をしているという風に、自分たちが世界をまわると感じるんだと思います。そのなかでの3つの空港ですので、まさに世界のトップスリーではないかなと思います」と、日本ならではのおもてなしの心を体現した接客スキルの高さを賞賛した。
一方でコンテストについては「今回のコンテストの中身は少し様相が違ったと思います。以前ですとコンピュータの操作をしながら応対する。ただ、ANAのサービスモデルは機械を使うことがどんどん省力化されて、お客様自身にやっていただけるようなサービスフローになっていますので、機械はより進化をさせながら、あとは違う人的なサービスをどうタイミングよくやっていくかという風にコンテストの中身も変わって来ているということだと思います。従いまして、ANAが目指していきたい姿、どういう空港のサービスを提供していく、そういうサービスモデルに変わっていくのかということに応じたコンテストに今後変わっていくんだと思います。そういうのにぜひ皆さん的確に反応していただいて、来年はまた違うサービスモデルを追求するかもしれませんので、それぞれ皆さんが感じながら、いいものに進化をしていきたい、そういうコンテストにしていきたいと思います。新しいサービスモデルの開発に向けてお客様に一番合った、的確な場面におけるよい印象を与えるサービスをこれからも皆さんと一緒に作っていきたいと思います」と締めくくった。