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南アフリカ共和国トコジレ・カーサ観光大臣会見「ツーリズムは“新しいゴールド”」

成長戦略や観光業への女性の参画促進について説明

2017年9月20日 開催

左から、南アフリカ観光局 最高経営責任者 シサ・ンツォーナ氏、南アフリカ共和国 駐日特命全権大使 トゥラニ・ロモ氏、南アフリカ共和国 観光大臣 トコジレ・カーサ氏、南アフリカ観光局 アジア太平洋地区プレジデント ブラッドリー・ブラウワー氏

 9月21日から24日に開催されたツーリズムEXPOジャパン2017の会期に合わせて、南アフリカ共和国から観光大臣のトコジレ・カーサ氏、南アフリカ観光局 CEOのシサ・ンツォーナ氏をはじめとする代表団が来日した。これを受けて、南アフリカ観光局は開会前日の9月20日に都内ホテルで業界関係者に向けたレセプションを開催。

 レセプションでは、観光業を取り巻く概況について、2016年に南アフリカを訪れた日本人旅行者が前年比27.7%増の約2万6000人で、12カ月連続のプラス成長であることや、日本は世界第6位の貿易相手国でもあり、日本の市場を重視していることなどが説明された。

 またレセプション後、トコジレ・カーサ氏とシサ・ンツォーナ氏が報道陣の質問に答えた。

南アフリカ共和国 観光大臣 トコジレ・カーサ氏
南アフリカ観光局 最高経営責任者 シサ・ンツォーナ氏

観光業はほかの分野を巻き込んで成長する「新しいゴールド」

 まず、「観光業が南アフリカの経済へもたらす貢献」について問われたカーサ氏は、観光は南アフリカの産業において6つの主要成長産業の1つで、GDP構成比は9%。さまざまな成長産業があるなかで、雇用創出数は観光業が第1位、約150万の雇用を生んでいると説明。この先10年間の成長戦略として、政府も観光業に力を入れることを明確にしているという。

 毎年南アフリカへの渡航者も増えており、2016年は1000万人を突破している。「より多くの新しい(観光)商品を渡航者へ提供する必要が出てきているということであり、女性・若者に雇用の機会が開かれているというだけでなく、自ら商品を開発するオーナーとしての役割も求められている」として、雇用の創出に止まらず、観光業に携わる人々が積極的に観光商品を生み出さなければならないと期待を述べた。「そのためには技能の開発・資金調達も必要で、9つすべての州において、さらなる展開を目指している」という。

 観光は単に環境・ホスピタリティ事業としてだけではなく、「経済全体の成長を促す触媒として機能している」とも指摘。観光業の成長がほかのさまざまな分野に波及しており、エネルギーの効率を上げることや農産物の加工を促進することなど、大企業だけでなく中小企業にも影響があり、観光が伸びれば南アフリカの経済に広くよい効果をもたらすと述べた。「南アフリカは鉱物資源が豊かな国として知られているが、われわれは観光、ツーリズムを『新しいゴールド』(New Gold)と呼んでいる」として、観光業の重要性を強調した。

今後5年で観光客を500万人増やすための戦略

 南アフリカが今後5年間で国内外の渡航者を500万人増やすという「5 in 5 観光成長戦略」を実現するための具体的な施策については、ンツォーナ氏が回答した。

 5 in 5 観光成長戦略では、海外からの渡航者400万人増、国内旅行100万人増を目標に掲げている。現在、世界中の旅行者は年間12億4000万人いるが、南アフリカのシェアは1%に過ぎない。一方で、パリやバルセロナといった世界的な観光地の都市を見ると、その土地に住む地元民よりも滞在する旅行者の数の方が多い。これは、「優れたインフラ投資を行なっているからこそ実現できる」と指摘して、「例えばパリで薬局の数を見ると、地元民1人あたりでかなりの数があるが、これは地元民だけでなく旅行者にもサービスを提供する必要があるから。旅行者が増えればよりインフラも整備されていく。薬局やマクドナルドもそうだし、小売業も同様」と説明した。

 具体的な戦略については、「冒険心の強い人にはバンジージャンプがあり、酒が好きならワイン通もうならせるワインを提供できる。南アフリカには多様性があり、あらゆる要望に応えられると自負しており、これはコストの観点からも言える。例えば国立公園で野生動物を観察する際、一つ星のテントもあれば、七つ星のラグジュアリーホテルから見ることもできる。学生から富裕層まで、あらゆる方を受け入れる素地がある」と考えを述べた。

観光業で女性の活躍を促すコンセプト「4R」

 カーサ氏が「この戦略は私が個人的に大切に思っている」と切り出したのは、観光関連企業・団体の要職に占める女性の割合で、今後5年以内に30%を目指す「ウーマン・イン・ツーリズム 30 in 5」についての質問で、カーサ氏自身が南アフリカにおいて「初の女性観光大臣」「女性アクティビスト(政治活動家)」であり、女性の支援に力を注いできたという。

 例えば南アフリカの与党では、すでに女性が50%近くを占めており、防衛、エネルギー、住宅、教育、外務国際関係など、多くの大臣も女性が務めているという現状を説明した。しかし、(民間を含めて)「どれだけ指導的な役割を果たせているかというと、まだまだ十分ではないという調査結果が得られた」と続けて、「観光業では多くの女性が活躍しているが、資格がないなどの理由で低い役職に止まっている場合がある」として、「4R」というコンセプトを掲げたという。

 4Rとは、女性を尊重する「Respect(敬意)」、企業の代表職を女性が担えるようにする「Representation(代表的役割)」、同じ役割の男女が同じ報酬を得られるようにする「Reward(報酬)」、女性の能力に対して評価を与える「Recognition(表彰)」の4つを指している。

 特に2つ目の「Representation」を推し進めるべく、「ウーマン・イン・ツーリズム 30 in 5」というキャンペーンを立ち上げ、官民両方において管理職など女性が要職に占める割合で30%を目指すとのこと。「なかには自営業の女性もいるが、こういった人たちの資金調達を助けることも含まれている。スキルの面でも手伝おうと考えており、技能開発のためのプログラムも用意している」と説明。

 2016年からはエグゼクティブ育成のためのプログラムを実施しているそうで、まずは20人の女性を対象に育成コースを始めたが、この修了生のうち5人がホテルのゼネラルマネージャーに就任するという結果が出ているという。

 カーサ氏は、「このキャンペーンを通じて、南アフリカと日本の女性の間でつながりを作っていければと考えている。お互いに学びあい、お互いに助け合うことができるのではないか。社会を変えていくことで、自分たちも社会のためにできることがあると思えるような環境を整えていきたい」と、さらなる展望を述べて締めくくった。