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熊本地震で通行不能の国道57号北側復旧ルート「二重峠トンネル」着工式

2020年開通予定。熊本市~阿蘇市のアクセス向上

2017年6月17日 実施

熊本県・国道57号北側復旧ルート「二重峠(ふたえのとうげ)トンネル」の着工式が開催された

 平成28年熊本地震による大規模な斜面崩壊によって通行不能となっている、国道57号。熊本市側から阿蘇市にアクセスするためには、大津町のミルクロードで迂回するルートを使用しなければならない状況となっている。

 通勤や土木関連の作業車両、さらに週末には行楽に訪れる観光客と、さまざまな車両が集中し、時間帯によっては渋滞が発生している。

 この混雑を緩和することなどを目的に、地震発生から2カ月後には新ルートの選定を開始。2016年11月には工事用道路の整備が着工していた。

 今回、「国道57号北側復旧ルート」と名付けられた総延長13kmのうち、二重峠(ふたえのとうげ)の下を通る延長約3.7kmのトンネル工事の着工式典が開催されたので、レポートする。

国道57号北側復旧ルート
着工式会場となった二重峠トンネル阿蘇側抗口

着工式を阿蘇側のトンネル抗口で開催

トンネル出口からミルクロードをまたぐ形でルートが設定されているため、しばらく高架が続く。橋梁の土台工事が進行中だった
大型のテントを設営して着工式は行なわれた
国土交通省 九州地方整備局長 小平田浩司氏

 着工式には国土交通省 九州地方整備局長、熊本県知事、阿蘇市長、国会議員らが臨席した。

 着工式では事業者代表として国土交通省 九州地方整備局長の小平田浩司氏から式辞が述べられた。

「昨年、甚大な被害をもたらした熊本地震の発生によって、通行が不能となっている国道57号の別ルートとして、国道57号北側復旧ルート事業を進めてまいりました。熊本市と阿蘇エリアのアクセス改善に向けて1日も早い開通が求められています。

 本日、着工を迎えた二重峠トンネルの掘削開始により、平成32年(2020年)度の開通を目指しております。国土交通省 九州地方整備局といたしましては、この北側復旧ルートをはじめ、国道325号の阿蘇大橋や、県道阿蘇高森線の復旧に向けても全力で取り組んで参りますので、さらなるご支援とご協力をたまわりますようお願い申し上げます」と話した。

熊本県知事 蒲島郁夫氏

 続いて、熊本県知事の蒲島郁夫氏は「昨年の熊本地震により、多くの県人が通勤や通学に支障をきたしています。また物流にも深刻な影響を及ぼしています。政府からは震災直後より強いリーダーシップと推進力で、北側ルートの整備方針を示していただきました。今後は国、県、自治体が連携し、1日も早くこの道路を作り上げていきたいと思います」と感謝の言葉を述べた。

阿蘇市長 佐藤義興氏

 阿蘇市長の佐藤義興氏は「熊本地震発災から1年と2カ月、今日ほど充実した日はありません。国道57号の寸断によって迂回路となっているミルクロードでは、慢性的な渋滞により、緊急車両の往来にも影響がでております。関係者の皆様方のご尽力によって、この着工式を迎えられましたことを深く感謝申し上げます。

 異例の早さで着工に至った北側復旧ルートのトンネル工事は、未来につながる道路として大いに期待するものであります。早期の開通と安全作業を祈念いたします。ありがとうございます」と関係者に向けて挨拶した。

設計と工事発注手続きの同時進行とトンネル内複数箇所の同時切削工法により工期を短縮

抗口の小さな避難抗に着工式のプレートが掲げられており、左側の山肌が本坑口となる

 この国道57号北側復旧ルートは、設計と工事発注手続きを同時進行させることにより、工事着手日程を半年以上前倒し、さらに工事に従事している施工者側から常に技術提案を行なうECI(Early Contractor Involvement)方式により、施工期間を1年以上短縮できるという。実際にトンネル工事着工のタイミングで、用地買収については80%ほどの進捗と、交渉や技術提案などが並行で行なわれている。

国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所所長 森田康夫氏

 着工式典の終わりに、国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所所長の森田康夫氏から、工事概要について説明があった。

「昨年4月16日の本震で、国道57号の北側山体より50万m3もの土砂が崩落したことにより、約250mが寸断された状態、そして阿蘇大橋が落橋するという非常に大きな被害を受けました。

 現在、山の斜面を下げる砂防工事も行なっていますが、まだ見通しの立ってない状況にあります。そんななか、政府の閣議決定により北側復旧ルートという新しい案を決めていただきました。ちょうど1年前からルートの選定と調査に入らせていただきました。その後、おおむねのルートの公開と意見の募集をさせていただき、7月6日にルートの決定となりました。

 以降、地元大津町で説明会を開催し、8月末より用地の交渉に移らせていただきました。2016年11月からは地元建設企業様に工事用道路の工事に着手しました。本日の二重峠トンネルにつきましては、今年3月に阿蘇側と大津側両方の契約を済ませ、本日の着工を迎えました。

国道57号の被災状況
復旧ルート決定までの経緯
国道57号北側復旧ルートの全容。総延長13kmのうち二重峠トンネルは約3.7km
国道57号北側復旧ルート大津側の拡大図。現状、交通が集中しているミルクロードの北側(赤点線)を通る
国道57号北側復旧ルート阿蘇側の拡大図。ミルクロードを高架でまたぎ赤水町の東側に接続する

 災害復旧の工事でございます。平成32年度の開通、発災から5年で開通ということをめどに工事を進めてまいります。今回のトンネル工事につきましては、従来であれば調査と設計を半年から1年かけて工事に着手していきますが、一刻も早く道路を通すために、設計をしながら並行して施工していく、常にすり合わせをしながら工事を進めていく方式をとっています。

 こうして工期の短縮を図ってまいりましたが、トンネルの掘削方法でも時間短縮のために、本坑と合わせて小さな避難抗も掘り、横穴を開けて本坑にアクセスし、同時に5カ所の断面で掘削作業を行ないます。

 今のところ、地下水はトンネル下を通っておりますが溜まり水などが出る可能性もありますので、都度確認しながら進めてまいります」と経緯と工事の説明があった。着工式の最後に、避難抗の前で安全を祈願した祈念発破が行なわれて式は終了した。

ECI方式による工事手続きについて
ECI方式活用によって、二重峠トンネル工事の工期を短縮
二重峠トンネル本坑掘削作業開始までの流れ
二重峠トンネル掘削作業は先行して避難抗の作業を進め、本坑に横穴を開けて複数箇所を同時に掘削していく
着工式に出席した関係者による祈念発破