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WILLER、「NEXT WILLER 2017」で「ジェニック旅」とジェニックビークルを公開
バスや鉄道に続くシェアライド/コンテンツツーリズム/WILLER GATEWAY構想などの取り組み
2017年6月14日 13:55
- 2017年6月12日 開催
WILLERは6月12日、東京・恵比寿において交通のさまざまな課題を解決するソリューションの発表の場として「NEXT WILLER 2017」を開催した。イベントには多くの関係者や報道陣が参加し、WILLERの第3次成長戦略の詳細や、新しく提供を開始するサービスなどが発表された。
オープニング映像では、1994年の創業から現在までWILLERグループの成長や、WILLERの利用者数などが紹介された。最近10年間のWILLER利用者は2300万人、WILLERの交通サービスの走行距離は2億7500万km、WILLERのサイトアクセス数は3億回だという。
続いて、WILLER 代表取締役の村瀨茂高氏が登壇。「この“NEXT WILLER”というイベントは、社会の課題やお客さまのインサイト、こんな交通があればいいということを提供していくような、さまざまな交通事業者の移動ソリューション発表の場としていきたい」と挨拶した。また、今回に限定して、今年3月1日に第3次成長戦略として新しい取り組みをはじめたことを発表する場としたいとした。
まず、最初に発表されたのは、新CI。これまで10年ごとに、成長戦略を立ててきたが、第3期成長戦略に合わせ、新CIを決定したという。新しいロゴマークは、グローバルでも使え、日本のアイデンティティをしっかりと伝えるという“和”をモチーフにし、微妙な角度の吟味などを重ねて、「シンプルだが100年使っても飽きないデザイン」を作ったという。
続いて、WILLERが宣言している「OUR CHARLLENGE」として、「To All Places, for All People, by All Ways, with All Oeganizations & Technology. FOR ACCESS ALL」が発表された。
これを村瀨氏は、「私たちは移動文化を変えていく。世の中のあらゆる目的地へ、誰もが思いどおりに、最も快適にアクセスできるように、さまざまな技術を使い、さまざまな企業と協業し、新たな移動文化を作るプラットホームになる。
移動のすべてをあなたの思いどおりにするために、イノベーションを起こし続ける。交通事業のその先へ、私たちの挑戦は続く」と説明。「これを我々のチャレンジとして、次のステップに上がっていきたい」と述べた。
成長戦略を第2期、第3期と分けているのは、単なる延長線上ではなく、これまであったものを継続しながら進化させ、新たな次のステッフに向かうことを意味しているという。スライドでは、WILLERが使っているイノベーションピラミッドが映し出され、「これを順番に下から上へ、相互に関係しながらやっていくことで、先ほどのOUR CHARLLENGEが達成できる」と説明した。
下段の「INFRASTRUCTURE INNOVATION」は、新たな車両、新たな座席、新たな路線で、あらゆる目的地にシームレスにスムーズにアクセスできるようにすること。今までの常識にとらわれない新しい自由な移動を作り、移動時間そのものを価値のある豊かな時間と変えていくというイノベーションだという。
中段の「BUSINESS INNOVATION」は、どんな場所へも、誰もが好きなルート、価格、ランクで思いどおりに、快適にアクセスできるようにすることで、そのために新たに技術を取り入れ、新たな業界、企業とのコラボレーション、今までにない移動文化のプラットホームを作っていくことだという。下段の「INFRASTRUCTURE INNOVATION」と合わせ、この2段ができると、上段の「SOCIAL INNOVATION」が起きていくと考えているという。
「SOCIAL INNOVATION」は、移動産業を越えて価値を創造し、土地、街、文化の価値を作るイノベーション。地域に点在する魅力を結ぶことで、シティバリューを上げ、人の心を豊かにしていくことだという。
村瀨氏は第3期成長戦略について、「軸となるのは、イノベーションとグローバリゼーション。顧客が強くなった。商品を提供している事業者よりもお客さまの方がよく知っている。事業者が商品を提供するのではなく、お客さまの声をお客さまと一緒になって必要なサービスを作っていくという時代。プロダクトマーケティングからカスタマーマーケティングに変わっていく。それには、最新のいろいろなテクノロジーを使って新たな移動ビジネスを作るのが重要」と説明した。
これまでWILLERは日本国内でバスと鉄道を運行し、年間15万人に利用されている。これからは、海外での交通事業を展開していくという。まずはASEAN、ヨーロッパ、アメリカ、東アジアの4つのエリアでWILLERの交通サービスを展開していく計画だという。
交通サービスの根幹である「安全」については、何より重要だと判断し、IoTを活用した安全の取り組みを推進しているという。村瀨氏は、「運転手一人一人の教育も重要だが、健康管理を業界のみならず、世界の最先端を目指して、データを蓄積しながら安全の取り組みをしっかりとやっていく」と宣言する。
国内での動きとしては、2015年4月から運行を開始した京都丹後鉄道について、「ちょうど2年が終わり、たくさんの人から上下分離の成功事例として評価された。これもしっかりとデータを分析し、ほかの地方鉄道の処方箋となるように取り組んでいきたい。今後、国内だけでなく海外からもお客さまを呼ぶ取り組みを積極的にしていく」と語った。
WILLERの目標は、「2020年に売上500億円」だという。現在の売上は200億弱で、既存事業に新たなサービスを追加し、潜在的な市場を顕在化することで、2020年までに250億円~270億円まで売上を伸ばしたいとしている。残りの250億円というのは、世の中にまったくない新しいサービスを開発することで実現していくとしている。
次に、今回のイベントの核となる、WILLERの新しい4つのコンテンツ、「シェアライドサービス」「コンテンツツーリズム」「WILLER GATEWAY構想」「ジェニック旅」のそれぞれについて説明があった。
シェアライドサービス
WILLERが考える「シェアライドサービス」は、将来の観光サービスだという。“将来の”というのは法律上の問題で、地域の観光の課題を解決するソリューションは、このようなサービスだと考えているという。
シェアライドサービスを説明する映像では、海外から女性が「宮津駅を出発し、天橋立と伊根に寄って城崎温泉に泊まる」と登録すると、それを見た人が「この旅にJOINしよう」と、相乗りするというもの。
WILLERが京都丹後鉄道を運行しているが、実際、無人駅に降り立った場合に、バスがない、タクシーもないという状況が起きているという。そういった事態を解決ソリューションがシェアライドサービスだ。
今はSNSに上がった投稿を見て、「あの景色を見たい」「あの食事をしたい」というやりとりがされている。今までのようなメインの観光地だけを売る時代ではなくなった。街というのは、いろいろなコンテンツが点在して街全体を作っている。有名な場所でないと、なかなか行けないところが問題で、そこに行けるサービス。それをつなぐことで街のシティバリューが上がる。駅からタクシーやハイヤーをチャーターすると非常に高いが、シェアライドならコストを割り勘できるというのが特徴だ。
実際にサービスを運行するには、法的な規制の整理が必要。ハイヤーの法律でやるのか、バスの法律でやるのか、どちらにしてもそれぞれ引っかかる部分があるためサービスレベルを下げなければいけない。法的な部分を検証しながら、ユーザーが求めているのはどちらなのかを見極めていくことが必要だという。
また、日本でサービスに対応できるような車両を開発する必要もある。それでも、最短で年内にサービスを開始したいと村瀨氏は語る。遅くとも2018年度中にはサービスを開始できるとしている。
コンテンツツーリズム
日本にあるさまざまなコンテンツを活かす、エンタテイメントな交通が「コンテンツツーリズム」で、一つの柱にするという。村瀨氏はリオデジャネイロオリンピックで安倍首相がマリオの格好で登場したことを引き合いに出し、「日本はこれまで世界に向けて、日本の技術や物づくりをアピールし、世界中が認めていた。このオリンピックをきっかけに、日本が持つソフトコンテンツのレベルの高さを印象付けた。
すでに世界中で日本のソフト、コンテンツは受け入れられている。海外で日本が大好きという日本ファンは、アニメを見て好きになった人が多く、日本語はアニメで覚えたという人もたくさんいる。WILLERは、日本のコンテンツビジネスを交通と結びつけて、世界の方々がコンテンツビジネスの聖地である日本に来て、それを楽しめるサービスを展開していきたい」と語った。
「今回、WILLERは角川とのジョイントベンチャーとして、クールジャパントラベルに参画した」と説明した村瀨氏はいったん降壇し、今後のクールジャパントラベルの構想をクールジャパントラベル 常務取締役/Producerの石原輝明氏が登壇して発表した。
クールジャパントラベルは今年2月にKADOKAWAが展開する旅行会社で、6月にWILLERからの出資が決定した。アニメーションや映像作品など日本のコンテンツを海外に出していくだけではなく、2020年に向けて、たくさんの訪日外国人に、もっとコンテンツを楽しんでもらう体験を用意しようとしている。
具体的には、「君の名は。」のインバウンド向け公式ツアーが近日発売される。今まで6回のモニターツアーをやり、そこで得た情報をもとにしたツアーになるという。6月から新海監督の展覧会も予定に組み込む。また、メインアクティビティとして、各地で人気の「君の名は。カフェ」をレストランバスに組み込み、この夏に運行を開始する。ほかにも「艦隊これくしょん」のインバウンド向け公式ツアー、「氷花」の公式ツアーなどが発表された。
WILLER GATEWAY構想
2020年に4000万人、2030年に6000万人を目標とするインバウンドについて、これほどの外国人観光客が日本に来たら、日本の観光交通は対応できるのかという課題に対して、日本の魅力を堪能できるような交通の拠点を作っていく必要があるとWILLERは考えている。WILLERはこれまでの交通の発着所、インフラとしてのバスターミナルではなく、海外から来る観光客の新たなるエクスペリエンスの場としてのバスターミナルを作っていこうとしている。
バスタ新宿はWILLERも使用しており、非常に利便性がよく好評だが、バスタ新宿ができたことによって、高速バスを利用する人が増えたわけではないという。利用者とターミナルの関係、社会とターミナルの関係が変わることが重要だと村瀨氏は語る。特にインバウンドをターゲットに考えると、明確な発着場所が必要で、今までサービスを提供していなかった交通事業者がサービスを提供できるようになるようなターミナルが必要だという。
WILLERの考えるトラベルゲートウェイは、今利用している人のターミナルではなく、海外のインバウンドの明確な発着場所となり、サービスを提供する新しい事業者が集まって、それぞれの利用客に対応したサービスを行なっていくプラットフォームだという。
このトラベルゲートウェイは、100人の顧客がそれぞれ持つ100の希望を叶えられるものを目指す。特に日本の主要な空港、大都市に配置して、地方に向けて送り出し、新たな市場を生み出していくターミナルを作っていきたいと考えている。
まず、大阪の梅田スカイビルにあるWILLERのバスターミナルを、この夏からカスタマー・イン・マーケティングのテクノロジーを取り入れたターミナルとして取り組んでいく計画だという。
ジェニック旅
7月から始まる新たな観光交通のサービスが「ベトナムジェニック旅」だ。以前は北海道やハワイといった大まかな地域を決め、それから具体的な宿泊先やレストランなど目的地を決める旅行が主だった。最近はSNSで見つけた絶景や食、体験など、目的や目的地がピンポイントに決まり、それが行き先となるように順番が変わっている。ピンポイントに目的地を回るのが「ジェニック旅」だ。
ジェニック旅をしようと思ったときに困るのが、行きたい場所があっても交通手段がないこと。今回、このジェニック旅を可能にする「ジェニックビーグル」を開発した。
会場では「ベトナムジェニック旅」を説明する映像が上映された。ベトナムのホーチミンで撮影され、ジェニックビーグルでベトナムのさまざまな場所を楽しく旅する様子が流れた。車内エンタテイメントも充実し、コンシェルジュサービスでは、GPS連動で観光情報が出てくる。運転手との会話は、日本語で話せばベトナム語に変換される自動翻訳機能でさまざまなリクエストもできる。
このジェニック旅をサポートする車両はWILLERがプロデュースし、ベトナムのGMGオートモービルが車両を開発。運行は、ベトナムの大手運行事業者とマイリンが行なう。自動翻訳は現在、日本語/英語は完成しているが、日本語/ベトナム語は開発中だという。翻訳機能の開発は、6月12日に業務提携が発表されたフュートレックと一緒に開発を進めている。
今回はチャーターサービスとして紹介したが、シェアサービスも始める予定となっている。欧州4カ国で今秋から「サイトシーングバス」を開始する計画だ。
ベトナムでのジェニックビーグルは7月18日から運行を開始。6月12日からウェブサイトで予約可能で、料金は4時間で8800円からとなっている。
ステージには、プロトラベラーのAOI氏が登場。AOI氏はインスタグラムで6万8000人のフォロワーを持つ人気トラベラー。旅先に行って写真や動画を撮影し、SNSで発信して旅の魅力を伝えるという仕事をしている。
「ジェニック旅」に企画から参加し、先ほど上映された映像に登場するピンク色の教会やおしゃれなカフェまで、ロケ場所を探すのもAOI氏が担当したという。
村瀨氏に、実際に体験した感想を聞かれ、AOI氏は「今、旅行好きな女子が増えていて、まさにSNSで写真を載せるのがブームになっている。私自身も、その1枚の写真から旅に行きたいと思うことが多く、移動手段がなくて困っていた。今回はずっと行ってみたかった場所にも行くことができた。車内も快適。豪華でびっくりした。移動時間も楽しめるのも女子旅の魅力だと思った」と絶賛した。
「WILLERS」の紹介
4つのコンテンツの紹介が終わり、「WILLERS」の紹介となった。WILLERSとは、顧客とビジネスパートナー、WILLERグループの社員で構成される。第3次成長戦略の非常に高い構想は、この3者が連携しあって新しいサービスを生み出していくことが重要だと村瀨氏は語る。ステージでは「WILLERS」9名が次々に登壇して挨拶した。
今回の発表にあたりプレーンとなったTHE DAY Executive Creative Director/CEOの佐藤夏生氏は、「今回話をいただき、新しい移動産業の胎動を感じる。今後にもぜひ期待してください」と挨拶した。
音声の自動翻訳、多言語のガイドシステムを開発したフュートレック 取締役 インバウンド&プロモーション事業本部長の吉田一也氏は「自動翻訳は日本語/ベトナム語の開発がまだ必要だが、ガイドシステムはすでにあり、現在はより使い勝手のよいものに仕上げている」と説明した。
クールジャパントラベル 代表取締役 福田正氏は、「これから、コンテンツプロバイダーである母体を駆使して、さまざまなコンテンツと新しい旅行のアイデアを提供していきたい」と挨拶した。
再び登壇したプロトラベラー AOI氏は「私自身が海外で感じた不便なことを一緒に提案して、よいものを作りたい」と挨拶した。
DCARオートモービルのセールディレクターのグェン・ホワン・タン氏は「ジェニックビーグルは我が社が作った。これからの発展を祈っています」と祝辞を送った。
ベトナムでジェニック旅のサービスを運行するマイリングループのCEOのドー・ヴァン・タング氏は、「WILLERと一緒にサービスを提供できるのを光栄に思う。ベトナムでの事業をスムーズに進められるようにがんばります」と挨拶した。
エムビーエムサービス 品質担当部長の平井康夫氏は、「3年ほど前に村瀨社長から『面白いバスってなに?』と聞かれ、楽しいバス、景色が見えるバスという話をした。次に会ったとき、レストランバスを作りたいと聞き、いいですねと答えた。構造の問題や課題を考えたが、問題が難しいと考えるのではなく、どうしたら実現できるかという工夫をする思考回路になっていた。いろいろな制約があったが実現できた」と、当時を振り返った。
天龍工業 代表取締役社長の吉川德雄氏は「私どもは国内の100%に近いシェアで座席を作っている。村瀨社長とお会いしたのは13年前。日本のバスのバスは面白くない、お客の目線になっていないと言われ、この13年で14種類のシートを開発してきた。今後も世界にないシートを開発していきたい」と語った。
國光汽車客運 副董事長の呉定發(ゴー・ディンハ)氏は「毎回、村瀨社長の努力を見て感心している。今後の発展をお祈りしている」と挨拶した。
村瀨氏は、「この9名がWILLERSではなく、本当は今日会場に集まった400名に話をしてもらいたい」と、ステージ上の9名はあくまでも代表であることを強調した。
また、「WILLERの仕事をするときは、できない言い訳をするよりも、どうやってできるかを考えてしまうと聞きます。これが、WILLERSのすごさだと思っています。WILLERに協力してもらうのではなく、皆さんの“Will”を一緒に作っていく。世の中に今までなかった新しいサービスが、どんどんできていくのがWILLERSだと思っている」と称賛した。
最後に、第3次成長戦略に向けて新しくなった役員紹介があり、イベントが終了した。この「NEXT WILLER」は年に1回の開催を考えているという。
ジェニックビーグル
運行開始予定日:2017年7月18日
運行エリア:ベトナム・ホーチミン市内の空港・ホテルなどから運行開始
料金:プレミアム4時間コース8800円~/8時間コース1万1800円~、エグゼクティブ4時間コース9800円~/8時間コース1万2800円~
客室定員:7名(車両は10名)
イベント会場では、ジェニック旅で使用される車両「ジェニックビーグル」が展示された。ジェニックビーグルはエグゼクティブとプレミアムの2種類があり、装備やサービス、価格が若干違う。ボディーカラーは白、黒、シルバー3色が予定されている。この3色は、新しいロゴで使われるものと同じ。サービスカラーとしてピンクのラインがWILLERらしさを引き継いでいる。
10人乗りの車両だが、客用の座席は後部に7席で、定員は7名となっている。主な車内装備は、Wi-Fi、冷蔵庫、給電用のUSBポートなどで、エグゼクティブは大型モニターや金庫が付く。エグゼクティブは大型モニターを使った車内サービスとして、GPS連動観光ガイドやコンシェルジュサービスなどが提供される。
サービスイン時は2両の車両でテスト運行を重ね、6カ月後には10両程度に増やす計画だという。