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WILLER TRAINSと道の駅「丹後王国『食のみやこ』」が貨客混載事業を開始
京都丹後鉄道で美浜地域の農産物を初出荷
2017年6月5日 19:03
- 2017年6月1日 実施
京丹後鉄道を運行する WILLER TRAINSと、西日本最大級の道の駅「丹後王国『食のみやこ』」を運営する丹後王国は、乗客を乗せて運行する列車に農産物も積み込んで輸送する「貨客混載列車」で連携。その事業化を記念して、初日となる6月1日には久美浜駅で出発式が行なわれた。
貨客混載列車事業は、久美浜エリアの丹後王国登録農家が生産する農作物を、京丹鉄道を用いて丹後王国の最寄り駅まで輸送するというもの。久美浜周辺の農家は、これまではそれぞれが別個に丹後王国まで生産物を運んでいた。距離にして片道約30km、およそ1時間かかっていたという。
今後は、個別の配送は最寄りの久美浜駅までの10分以内となり、荷は集約されて鉄道で運ばれるため、輸送にかかる時間やコストの大幅な節減につながる。久美浜駅で列車に積まれた農産物は、23.7kmを丹鉄で運ばれ、約30分後に峰山駅に到着する。峰山駅では、丹後王国の従業員が乗り込んで荷を下ろし「食のみやこ」に運び込むという仕組みだ。
最初の荷は近所の農家、和田泰幸氏と白岩智之氏がレタスやキュウリ、トマトなどを保冷ボックスに入れて運び込んだ。和田氏はこれまでに週2~3回、軽トラックで丹後王国に野菜を出荷していたが、人手不足もあり、往復2時間の道のりは大きな負担だった。今後、わずか2~3分で到着する駅までの配送となるため、大いに助かるという。
貨客混載列車は1日4本(久美浜駅を10時06分/11時13分/13時22分/14時26分発)のため、細かいオーダーにも対応しやすくなると話した。また、白岩氏も、地域の美味しい生産物がアピールできるチャンスだと語った。
10時30分から行なわれた出発式では、冒頭にWILLER TRAINS 代表取締役社長の寒竹聖一氏が挨拶。「この貨客混載事業には配送業者はなく、生産者と消費者が直接鉄道で結ばれる。ドライバーの人手の問題やCO2の問題にも貢献でき、経済を安定させる一助になりうる」と意義を強調した。
丹後王国 代表取締役社長の伊藤真人氏は「広い京丹後地域で、いかに効率的に集荷を行なうかということに常々悩んできた。公共交通機関を利用するという初めての取り組みで地域の課題を解決したい」と期待感を表わした。
また、国土交通省 近畿運輸局 交通政策部 部長の金指和彦氏は「農家の皆さまの力になりたいという関係者の思いが結実した。この事業には、地域への貢献と、農業分野における物流の効率化という2つの意義がある。後者は全国初の取り組みだ」と話した。
3名がともに口にしたのは、この新たなスキームが全国に発信され、同じような悩みを持っている地域に広まっていくことで、地方がもっと元気になる可能性を秘めているという点。期待も大きいが、試金石としての責任もあるとの認識を示した。
続いて、近畿運輸局からWILLER TRAINSに対して「総合効率化計画認定通知書」が授与された。これは2016年10月に改正施行されたもので、輸送手段などをお互いに供給するなどの連携により大幅な効率化が見込まれる場合には、認可の手続きなどが緩和されたり、税制上の特例を受けたりできるというもの。これによって、事業の計画から実現までは「あっという間」(寒竹聖一氏)だったそうだ。
その後テープカットが行なわれ、貨客混載の一番列車となる西舞鶴行き普通列車が11時11分に久美浜駅に入線、2分の停車時間の間に2つの保冷ボックスが積み込まれた。
11時13分、列車は関係者らに見送られ、久美浜駅を出発した。車両に設けられる貨客混載スペースは、専用に設計されたものではなく、乗客に注意を促すステッカーが貼ってあるだけのいたってシンプルなもの。貨物が積まれる際には、乗客に席を譲ってもらうことで対処する。貨物と報道陣が乗りこんできたことに、乗客も興味津々の様子だった。乗客の20代女性に話を聞いたところ「地域が頑張っていることが感じられます。効率化が進むことはいいことだと思います」と応えた。
列車は10時38分に峰山駅に到着。到着を待っていた丹後王国「食のみやこ」スタッフにより鍵が外され、素早く台車に積み込まれた。ここから「食のみやこ」へはクルマで約6.5km、10分程度の行程となる。
WILLER TRAINSによると、貨客混載列車で輸送された新鮮な農作物は当面「丹後王国『食のみやこ』」で販売されるが、今後は地域内外の飲食店、スーパーなどへの卸も行ない、販路の拡大を目指していくとのこと。より多くの人々に、丹後地域で録れた農作物の魅力を知ってもらい、地域の活性化に寄与していきたいとしている。